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1.8

 そして今日も自分は、酒場で仕事をする。

 もはやこの日常に慣れきている。


 自分は何をしてるんだ、早く元の世界に日本に帰らなければ。

 ――そう思う、思わないわけがない。

 でも、自分に何ができるのか。

 所詮17のガキだ。

 この世界のことさえよくわからない。

 そんな自分に何ができる。

 自分は無力でちっぽけで誰かに頼らなければ、生きていくことさえできない。

 この前の賊からの逃亡もブランテがいたから、勇気を振り絞りできたことだ。

 自分一人なら、震えて、なされるがままだったろう。

 そんな自分に何が――――


「おい! おい! タクジ! ビールを、角のブラマンテのとこだ。」


「あ、はい、すいません。」


 ビールを持ち、角の席まで届ける。

 ぼ~っとしてたのだ。なにしてるんだか。


「客も、捌けてきた。具合が悪いなら、今日はもう帰れ。」


 マスターが自分に言い放つ。

 やはり、ぼ~っとしてたのが悪かったのだろうか。


「いえ、自分は――


「いいか、お前は、まだこの村にきて、二週間と少しくらいだ。

でも、ブランテを、助けてくれた。サレムさんだってお前を信じてる。だから、お前は、俺にとっては大事な家族なんだ。隠すな。

いいから、休んだっていいんだ。」


 言われて、ハッとなった。

 自分は疲れているのか。


 この世界にきて、二週間たしかにどれだけ平然を装っても内心急いてばかりだった気もする。自分は焦っているのか。


「わかりました。今日は帰らせてもらいます。

お疲れさまでした。」


「おう、休みたくなったら言え。じゃあな。」


 酒場を出る。

 ふと、空を見る。

 月が見える、きれいだ、それはどんな時もきれいに幽玄にあると思った。

 だが、雲が濃いのかあまり星は見えない。

 こんなすらことも、自分は気にしてすらいなかったのか。


 家の前につく。

 サレムは、いないのか?

 家の中は人気がなかった。

 俺は自分にあてがわれた部屋に行く。

 ベットに腰かけ窓から月を見る。

 ブランテと親の話をしたからだろうか、今日は少し寂しさがある。

 でも、マスターは自分を家族と言ってくれた。

 サレムもそう思ってくれているのだろうか、そうだと嬉しい。

 自分はなぜこの世界に来たのだろうか。

 無力な自分はこの世界で何をすればいいのだろう。


「意味のないことなんてないんだ。

想ったこと、起こったこと、なにか意味があるんだよ。」


 ふと、もう亡くなった祖父の言葉を思い出した。

 涙が、ほほを、つたい、手に落ちる。

 自分は泣いているのだろうか。

 枕に顔を埋める。

 泣いた、この世界に来て初めての涙だ。


 その時、コンコンと扉をたたく音がした。


「タクジ、もう帰ってきたのかい?」


 扉の向こうから、サレムの声がした。

 音がしなかったが、彼が帰ってくるのを、自分が泣いていて気付かなかっただけだろう。


「...はい」


 涙を押し殺して答える。

 だが、彼には自分の嗚咽の音を聞かれていたかもしれない。


「そうか、今日くらいは早く寝るのもいいだろうさ。

 おやすみ」


 彼は何事もなかったかのように、いつものように言った。

 それが、なぜか嬉しく、胸のさみしさは消えていた。


「はい、おやすみなさい」


 そのあと、すぐに自分もまどろみの中に沈んでいった。

自分は毎回投稿するときの短めなんですけどこれでいいでしょうか。

あと、感想とかくださると喜びます。

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