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月の姫君とそのナイト?   作者: 向井司
一部 月の姫君とそのナイト?
4/188

3


 そう言えば。


 実は入学式の日のホームルームは委員を決めないといけなかったんだけど、私はなんとか会計をもぎ取った。

 精神的にはそれどころじゃなかったんだけど、そこはなんとか乗り切った。


 ホームルームで担任から委員の話が出た瞬間、会計に立候補した。



「会計、やります」

「会計? 明宮…できたら、お前には…」

「会計、や・り・ま・す」

「…他に会計やりたい者はいないか?」


 私の勢いにたじたじになりながらも、担任は声をかける。けど、手を挙げる人がいるはずがない。

 誰だって、面倒くさいのだ。

 私だって面倒くさい。


 本当は何もやりたくない。


 だけど、中等部三年のとき、そんな気分でのんびり構えていたら、よりによって学級委員長に推薦され、満場一致で決まってしまった。


 あれには呆然とした。


 確かに、委員長キャラに委員長やらせたいのは解る。

 解るけどねえ。


 多数決で決まった以上、ごねる訳にもいかないので仕方なく引き受けた。副委員長はおっとりとした男子だった。から、細かいことはおっとり君に丸投げした。


 全部を押し付けた訳じゃないよ。


 私もちゃんと委員長として、やることはやった。面倒事や揉め事なんかが起きたら、速やかに主犯格をシめた。

 一学期から全開で面倒事の芽を摘んだら、陰で三ーAの恐怖政治だとか、独裁者だとか言われた。

 別に気にしてないけどね。


 委員長としては、面倒事が起きない方がいいんだから。


 結果として、三ーAは実に平和なまま卒業を迎えたと思う。


 でも、もうやりたくないわけ。ってか、今の精神状態で委員長はきつい訳。


 じゃあ会計だって面倒くさいと言われそうだけど、高一の会計はそんなに仕事はないと推測している。

 中等部の会計の様子も何となく見てきたけど、金額の高いものは大抵銀行引き落としか、振り込みだった。

 現金を扱うのは、募金くらい。


 高等部も同じようなものだと、思うんだよね。 っていうか、委員長よりははるかに、仕事は楽だし。


 それは絶対間違いない。


 おそらく中等部のことを知っているだろう担任は私を委員長にしたかったようだけど、一応学級委員の中に入っているので、よしとしたようだ。


「じゃあ、会計は明宮に…順番が逆になったが、委員長を決めるぞ。まず、立候補」


 当然、誰の手も挙がらない。

 委員長選出は、例によって、推薦となった。

 私はその流れを、ただぼんやりと眺めていた。

 だって、もう他人事だもん。


 ちなみに、委員長は私と真逆の属性の、気の弱い委員長タイプの女子に決まった。


 ちょっとだけ申し訳なく思う。


 彼女が面倒事に巻き込まれたら、フォローはしよう。


 そういうの、ないのが一番いいんだけどね。


 おっと、早速配布物を渡されて戸惑っているよ。


「柴田さん」

「は、はい」


 気弱な委員長、柴田美弥子(しばたみやこ)嬢は、名前を呼んだら小動物みたいに飛び上がった。

 そんなに怖がらなくたって…


 まあ、いいや。


「そのプリント、配るんですよね?」

「はい…」

「半分、貸してください。それと回収の締め切りは?」

「え? あ、っと、十五日です」

「わかりました」


 きょとんとする美弥子嬢に手を差し出すと、美弥子嬢は慌ててプリントの束をくれた。


 その束を、私はさくさくと配っていく。


「締め切りは十三日です。遅れないようにしてください」


 配り終えて、教室中に聞こえるようにサバを読んだ締め切り日を告げる。

 そんなに強く言ったつもりはなかったけど、皆人形みたいにギクシャクと頷いているのは、何故なんだろう?


 後で聞いたところによると、回収率はかなり高かったらしい…



 まあ、いいか…

 うん。



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