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月の姫君とそのナイト?   作者: 向井司
外伝 隣の異界と白忍者
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61 暴風グッズ

こっちも更新。


 翌日、久我っちに問答無用でシェリスさんとこに引っ張って行かれた。


「なんで、私関係ないよね?」


 鍛冶屋ならガリオという伝があるんだけど。

 そう言うと、久我っちは呆れたようにため息をつく。


「お前、あのゴウトル氏の紹介だぞ。ここで新しい伝を作っておけばいいだろうが」

「そうかなあ」

「大体、クエストってのはこういうきっかけで発生するもんだろうが」

「へえー」


 あれか、民家に不法侵入して宝箱とか勝手に開けちゃう系か。


「せめて、村人全員に話し掛ける系と言え」

「あれ、面倒くさいよね。誰が誰だか解らなくなっちゃうもん。出会い頭でファイト、だと考えなくても済むんだけどなあ。殴ってきたら殴り返す、みたいな?」

「お前は本当、見てくれの割に殺伐としてんな…」


 久我っちはビミョーそうな顔で私を見た。

 そうこうしているうちに、シェリス氏のところに着く。

 大通りを一本入ったところだけど、店構えはなかなかだ、

 ガリオが町の鍛冶屋さんなら、こちらは上級クラス。っていうか、この通りがそういった感じの店ばっかりだ。


「なんか、一見さんお断りな雰囲気が…」

「紹介状あるんだから大丈夫だろ」


 久我っちは全く頓着することなく店の扉を開ける。


「いらっしゃいませ」


 穏やかそうなお兄さんが条件反射のように言い、次いで私たちを見て僅かに首を傾げた。


「ゴウトルさんの紹介で来た。シェリスさんっているか?」


 久我っちはゴウトルから渡されたカードを差し出す。


「少々お待ちください」


 例によって、応接室に通された。

 うーん、VIP待遇。


 待つこと暫し。

 やって来たのは壮年のおじさん。人間だ。職人ぽくはない。ガリオの方がよほど職人っぽい。

 まあ、私の主観なのだけど。


「お待たせしました。ホロ・シェリスです」


 シェリスは先に私に視線を向け、それから久我っちに移動した。


「いきなり、済まない」

「今日はどのようなご用件で?」

「魔石の加工を頼めるかな? これなんだけど」


 久我っちはテーブルの上に暴風の魔石を置く。


「これは、なかなかのものですね」


 魔石を手に取り、シェリスは呟く。


「どのような加工を? 武器でしょうか? これだけのものでしたら、大抵のものは造れますよ」

「武器、は間に合ってるかなあ」


 久我っちは考えながら呟く。

 この世界で私たちが持つ忍者刀を越える剣は簡単には造れないだろう。なんと言ってもエセ神がいちから造ったんだから。所謂、御神刀だもん。


「防具、ですか?」

「かと言って、鎧とかは無理だな。俺はスピード特化型だから」

「となると、籠手とか脛当てとか、額当てとか?」


 動きを阻害されるものは、まず除外。

 となると、出来るものは限られてくる。

 なら、胸当てもありか。


「素材にこの魔石を加工する、という形になりますね。純度の特に高い部分を厳選すると、額当て、籠手までかと」

「それでいい」


 久我っちはあっさり頷いた。即決だ。

 いいのか、そんなに簡単に決めて。

 私の視線に気付いて、久我っちは苦笑を浮かべる。


「これ事態、棚ぼたみたいなもんだからな。そんなに拘りはないぞ」

「ふうん」


 シムルグに遭遇したのは偶然だからなあ。

 元々ないものなんだから、ぱあっと使うってことか。

 ま、いいんじゃないの。久我っちのものなんだし。


 納得していると、シェリスの視線が私に向けられているのに気付く。


「?」


 僅かに首を傾げると、シェリスが口を開いた。


「ご注文はよろしいのですか?」

「あ、私は特にありません」


 なんで、私も注文すると思ったんだろう?


「水か氷系の素材を手に入れたら、その時お願いします」

「入手のご予定が?」

「そこは『聖なる盾』の皆さん次第なので」

「聖なる盾?」


 久我っちが首を傾げる。


「前に火竜の魔石を譲ったから、そのツテで」

「あれをお譲りなさったのですか?」


 シェリスが唖然としている。

 そんなに不思議なことか?


「火系は、私が扱い切れると思えないので。使える人に使ってもらう方がいいですよね?」


 あれが水や氷系だったら、譲ると言う選択肢はきっとなかった。


「そうですか、その際にはぜひ」

「やけに、気にかけますね?」


 こっちからお願いするならまだしも、向こうからお願いしてくるのはおかしくない?


「火竜の件に関しましては、町の者のほとんどが感謝をしていますよ。時間が少々空いてしまったので、誰も面と向かって言わないでしょうが」

「なるほど?」


 よくわからない。

 もう何ヵ月も前のことだもん。私の中では完全に過去の話だ。


「火竜って何だ?」


 久我っちが聞いて来るのでかいつまんで経緯を話す。と、久我っちは盛大なため息をついた。


「お前、もう本当に何なの…」

「え、何が?」


 なんで盛大に呆れられないといけないんだ?


「火竜相手に時間稼ぎとか、バカだろ」

「他に方法がなかったんだから仕様がないでしょ。私だって、一撃必殺の力があればサクッと終わらせたよ」


 丸太を斬るのと火竜を斬るのでは訳が違うんだよ。


「まあ、そうなんだけどな」

「そうなんだよ」


 深々とため息をつかれたところで話は終わった。

 火竜の話も終われば、久我っちの注文も終わったので私たちはシェリスの元を辞した。


 予定外に私も縁が出来たみたい。

 

 でもさ。


 水か氷の魔石が手に入ったとして、ガリオとシェリスのどっちに持ち込めば良い訳?

 うーん。今度、誰かに聞いてみよう。







このまま、ペースを戻したい……

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