表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月の姫君とそのナイト?   作者: 向井司
外伝 隣の異界と白忍者
145/188

29 紫茸は幻覚系だった


 さて、今日はルザ草採取に専念する。

 ゴブリン討伐は予定外だったからね。

 まだ五株しか採取できてない。予定の半分。

 これはよろしくないですよ。

 期限ギリギリで探し回る事態だけは避けたい。っていうか、避けるべきだ。

 精神的なアレのためにも。

 そもそも私は、夏休みの宿題は最終日二日前くらいに終らせる主義なのだ。ラスト二日間は遊ぶ、なにがなんでも遊ぶ。絶対に勉強とか宿題とかしない。そういう主義なのだ。


 じゃあノルマ達成には、どこがいいかなかと思ったんだけど、ここはひとつ。

 ビギナーズラックにあやかることにした。


 最初にラザ草を採取した場所。初めてで四株も採れた場所。

 そこそこ近いし。

 今日はアゴルのところに行くから、早めに帰らないとだし。多少でも勝手が解る場所がいいよね。不測の事態にも対処できるから。って、一回しか行ってないけど。

 ゼロと一では、当然一が良いってことで。


 昨日のショックを引き摺っているのか、バーンは姿を見せなかった。

 そんなにかあ。


 まあ、私はいつものペースで行けるから構わないんだけどね。


 方向は大体覚えているから、門を抜けてからばく進する。

 途中、ラザ草を見つけたけどこれはスルー。

よそ見はしないぞ。


 ルザ草ルザ草。


 おう、ルガ草発見!

 やっぱり、こちらの方が、ルガ草も何となく多い?


 よし、ルザ草出てこーい!


 うむ、ルザ草発見。

 幸先良いよ。

 続けて二株採取したよ。


 やっぱり、こっちに来て良かった? 若干の部類かもしれないけど。

 よし、この流れで遅れを挽回するぞ。


 お昼を食べてから、もう一株。

 よしよし。


 順調だ。実に順調だあ。


 ひとりでほくそ笑んでいたら、小鳥やら小動物が脇を駆け抜けていく。


「…前にもこんなことあったよね?」


 うわ、ヤな予感。


 大体、嫌な予感ほど当たるんだよね。

 何でかね?


 実のところ、普段は気配察知のレベルをかなり下げている。生命の危機レベルに達するような、殺気とか以外は掛からないように網の目を


 今回も、その予感は的中した。


 予想通りに茸がゆらゆら歩いて来たよ。

 今度は紫! ド紫っ!


 エグい、紫の歩く茸はエグい。とりあえず、蛍光付いてないだけマシか。いや、大して変わらないか。

 紫って、昔の日本じゃ貴色だったはずなのに、なぜこうもエグくなるのか。茸効果なのか。

 笠の辺りのちょっとヌメった感が、全てを台無しにしているのかっ!



 ギシャァァ!


 茸は奇声を発しながら、私の方に向かって来る。


 やっぱり来るのかあ。この辺りはルザ草と歩く茸がセットなんだね。わかった、覚えた。


 ため息をつきながら、針の準備。

 切ったらだめだって言うのは解ってるからね。

 今回は、最初から針を使うよ。


 縦一列に針を放つ。前回同様三本。場所も大体同じ。

 急所がどこか解らないもん。

 三点のうちのどれかなのは間違いないから、気にしない。

 礫と違って針は回収するから、無駄使いじゃないしね。


 針を受けて、紫茸は仰向けに倒れた。なんて言うか、危機回避能力低すぎない? がっちり入り過ぎでしょー。斬られることが前提だからか。いつもなら斬られたところで盛大に胞子を吐くから、むしろ下手な防御はしちゃいけないのか。

 歩く茸の生涯も大変なんだね、ほろり。


 なんてことを考えてている間にも動き出さないのを確認してから近付く。


 胞子が飛び出さないよう、魔石をそっと取り出して、収納袋に紫茸を突っ込んだ。


 また出てくると鬱陶しいから、今日は撤収しよう。

 予定個数まで、あと二つ。まあ、何とかなるでしょ。


 足取りも軽くギルドに戻り、デニスに紫茸を渡す。


「ほうほう、紫の歩行茸かね」


 デニスは嬉しそうに、紫茸を捌いていく。

 胞子嚢をそっと取り出したところで聞く。


「この茸の毒は何になるんですか?」

「確か、幻覚だったかな。赤黒いのは胞子に触れると、爛れるから気をつけてね」

「爛れる…特に気をつけます」


 毒茸でもあるよね。触るとあっという間に爛れて、生命の危険もあるっていうやつ。


 赤黒いのはソレ系かあ。気をつけよう。最悪、近付かないうちに逃げることも考えておこう。痛いのは嫌だからね。


 あ、そだ。あと聞いておかないといけないことがあったっけ。


「ところで、歩く茸の急所はどこなんですか?」

「急所知らないで、歩行茸を倒したのかね! いやはや、何とも…歩行茸の急所は体のど真ん中のここだよ」


 あ、ど真ん中だったか。なるほど。

 確かにいい位置に針が刺さってるわ。


 次に遭遇したら、針は減らしてみるか。一点集中。命中率上がるかな。


 歩く茸の査定も終わり、ルザ草の確認もしてもらい今日のお仕事は完了。


 お支払も終わって、機嫌よくギルドを出た。


 今日はもうやることないなあ。

 どうしよう。

 ちょっと早いけどアゴルのところに行こうかな。

 手土産とかいるのかな。

 お菓子とか?

 でも、呼んでるのアゴルだし。ララルだらお菓子か花なんだろうけど。

 手ぶらで行っていいものなんだろうか。

 解らないなあ。

 私が採った珍しい系、ギルドにみんな渡しちゃったし。

 うーん。


 考えても仕方ない。

 手ぶらで行くか。


 ご飯にご招待のようで、お仕事の話だろうって言う推測もある訳だし。

 その話を聞きに行くってことで。


 あ、でもまずは宿に戻って荷物は置いて来よう。


 収納袋とか必要ないもんね。剣は…持って行っておくか。

 冒険者だもん、剣くらいは持っておこう。…剣がなくても暗器があるって言うのは内緒にね。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ