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月の姫君とそのナイト?   作者: 向井司
外伝 隣の異界と白忍者
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16 指名依頼


 今日も朝御飯をゆっくり食べてからギルドに向かう。

 のんびりしている私を見て、ガトーは呆れていた。普通は朝一番にギルドに行って、少しでも割りのよい依頼を確保するものらしい。

 そうは言っても、私的には別に急ぐ必要ないんだよね。


 歩く茸とかのお陰で、思ってたより懐は温かい。衣食住に余裕があればがっつく必要はない訳で。


 今日は三つ目兎の討伐にしようかなあ。現物がどんななのか見てみたいし。

 あ、でも兎を剣で追うのは効率悪いよね。

 飛び道具が手っ取り早いんだけど。

 魔法が使えたらいいのに。


 まあ、飛び道具は隠し持ってますけど。

 針とか礫とか、マキビシだって踏ませるだけじゃないよ。

 でも、針以外は回収が面倒くさいなあ。

 森の中だと、拾いきれないよ。

 恐らく、礫もマキビシも手裏剣も特殊素材だから、余程の事態でもない限り投げっ放しにはしたくない。単純に勿体ない。あと、下手に出回ったらヤバい気がする。


 使い捨てが出来るものを調達した方がいいだろうね。

 道端の小石とかどうだろう…一センチほどの小石を一個拾ってみる。大きさ重さは問題ない。だけどこれは粒が揃わないと使い辛いな。

 同じような石を拾い集めるのも効率が悪い。


 ある程度、粒を揃えて作って貰うか。


 まずは、武器屋に行って話を聞いてみよう。


 一昨日行った武器屋に向かう。


 ここにも怖い顔のおじさんがいる。

 気難しい職人、みたいな感じ。


「ちょっと聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「クズ鉄って、出ます?」

「出るけど、それがなんだ?」

「そのクズ鉄から、これくらいの礫を作ることは可能ですか?」


 先刻拾った小石を差し出す。

 武器屋のおじさんは小石を拾い上げ胡乱そうに見た。


「こんなの何に使うんだ?」

「武器に」

「武器? スリングショットの弾か?」

「いえ、指で弾きます」


 おじさんは心持ち目を見開く。


「指って、どうやるんだ?」


 やっぱり解らないよね。


「…的代りにしていいものありますか?」

「あの柱にぶら下がってる板はどうだ?」


 おじさんが示したのは柱に下がっている木の板だ。A四サイズくらいの掲示板代りかな。隅に覚書みたいなものが打ち付けてある。


「では」


 おじさんから小石を返してもらい、板目掛けて親指で弾く。

 小石はビシッと音をたてて、板にめり込んだ。

 あ、意外と刺さる。でももう少し威力が欲しい。


「なるほど…なかなかエグい使い方だな」


 おじさんは的に近付き、じっくり観察する。


「兎みたいな小物には有効かと。あと、目潰しや気を逸らせることもできますよ」

「確かに、初動を抑えられるならかなり使えそうだ。エグいのには変わらんが」


 それは仕様がないよ。私が持っているのなんて、元々が暗器だもん。

 エグくない訳がない。


「それで、作ってもらえますか?」

「この石くらいの大きさでいいんだな?」

「はい、球でなくて形が多少不揃いでも構いません。ただバリは取ってください。指ギザギザになると困るので」

「まあ、やれなくもないな。どれくらいいる?」

「二十くらいあれば」

「ふん、暇な時にでもやるかな。明日の朝、また来な」

「お願いします」


 礫を注文し、私は武器屋を後にした。


 やあ、聞いてみるものだね。礫がまあまあ使える物なら、追加で頼めばいいし。これなら、使い捨てにしても大丈夫だろうし。まあ、拾えるなら拾って再利用するつもりだけどね。


 資源は大切に。


 さて、次に向かったのは服屋。

 着替えとかいるんだよねー。今着ている忍装束は謎素材なので汚れないみたいなんだけど、寝間着とか下着とかいるじゃん。ってことに昨夜気付いた。アゴル邸が快適だったので、ころっと失念してたよ。


 と言う訳で寝間着用のゆったり目の上下一着とシャツと半ズボンみたいな下着二着を購入。まああね、ビミョーな着心地な気がするけど、仕方ないよね。そこは目を瞑ろう。


 店内をぽやっと見てたら、濃い草木染めのような布が物干し竿みたいな棒に掛けられていた。

 何に使うものか聞いたら、カーテンとかシーツとか暖簾代わりとか用途はいろいろだった。虫除けの草で染めたから、防虫効果もあるらしい。

 広げたら二メートル四方くらいの大きさ。生地はまんまカーテンとシーツの間くらい。

 何か使い道がありそうなのでこれも買った、

 収納袋に入れたら荷物にならなくていいなあ。

 虫除けがポイントですよ、虫除け。

 どこまでの虫を除けられるのかは、今のところ解らないけど。

 魔物系の虫は無理だろうけど、蚊、蠅は除けてくれると期待している。


 さて、買い物も済んだので本来の目的であるギルドに行こう。

 三つ目兎は、礫が出来上がるまでお預けにするとして、他に何か丁度いい依頼はあるかな。


「おはようございます」

「あ、ショウさん!」


 ギルドに入ると、ベスが見るからにほっとした顔になる、


「どうかしました?」


 何かあったかな。

 ベスのところに行くと、直ぐ様依頼書を出された。


 ん、どゆこと?


「今日は来られないかと思いました」

「はあ、ちょっと寄り道をしてきたもので…それで、なんですか?」


 依頼書を覗き込む。


「ショウさんに、指名の依頼です」

「指名? F1で指名ってあるんですか?」


 Fランクってまだまだ初心者クラスだよね。F1はそれでも上の方ではあるのだけど。


「普通はありませんが、今回は特別なんです」

「特別、ですか…」

「はい。ルザ草の採取依頼です。本来は薬草採取専門の冒険者に出される依頼なんですが、イサドア入りが遅れるらしく、ルザ草の品不足が懸念されています」


 へえ、薬草採取専門の冒険者っているんだ。

 非戦闘員系かな。そう言うタイプも必要だよね。

 今の話からすると、薬草はかなり頼っているみたいだもん。

 それに薬草は専門家がいた方が安心だしね。


「内容は?」


 依頼書読むの面倒くさいので聞く。


「ルザ草十株です。期限はできれば一週間以内…十と言ってますが多少少なくても良いそうです。多い場合は、依頼料とポイントが数に応じて加算されます」


 割りと緩い依頼だね。受けても損はなさそうだ。


「わかりました。では今から森に行ってきます」


 一週間なら、なんとかなるような気がする。

 私はルザ草採取の依頼を引き受けた。


「よろしくお願いします」


 ベスの声を背にギルドを後にする。


 まずは昼御飯を買って行こう。


 パンとハムとチーズ、あと水筒を買い、水を詰めると森へ向かった。


 どれだけ見つけられるかなあ?




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