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月の姫君とそのナイト?   作者: 向井司
外伝 隣の異界と白忍者
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3 猫おじさん


 無一文でどうやって生きて行くんだよお!


 つまりなんだ。狩りか、狩りをしろってことなのか。と言うことは、ここはアクションゲームの世界なのか?


 でもっていきなり、サバイバルから始まるのか。


 これでどうやって異世界生活を楽しめと言うのか。


 楽しめるかー!


 …取り敢えず、現実的な問題として、狩りをするべきか…

 食料を確保しないと。後、水の確保。

 大事、大事。この二つは最優先事項だ。


 食料…気配察知の範囲を広げてみる。


 狩りをするだけだったら、吹雪も時雨も使っていいでしょ。

 誰かに見られないように注意すればさ。

 もう、そういうことにしておこうよ。

 何事も臨機応変だよ。


 かなり気分は投げ遣りだよ。やさぐれそうだよ。


 気配察知で近くに狩れそうな動物がいないかを探る。

 狩ったところできちんと扱えるのか不安。

 やってみるしかないんだけどね。


 と、すぐにヤな感じに行き当たった。


「なんだろう? ヒトっぽいのと、獣っぽいの…なんかトゲトゲした気配なんだよね。主に獣っぽい方が」


 トゲトゲ、ギザギザした気配…なんて言うか、もしかしたらこれ殺気?


 トゲトゲに殺気という名称を当てはめたら、もうそれ以外に考えられない。


 殺気ってことは、ヒトっぽいのと獣っぽいのが争っているってことだ。


 気配の強さからして、不利なのはヒトっぽい方だ。


 ヤバいやつかな? でも一応、様子は見てみよう。

 この気配なら、私は勝てる。


 私は気配の方へ向かって駆け出した。


 あら、すごい。

 森の中をザクザク進んでいるのに、足音がほとんどしない。

 隠密レベルハンパない?


 さすがニンジャマスター。ここでも潜在能力を実感する。

 ゲームじゃ、足音とか関係ないもんねえ。


 駆けた時間は五分くらい。ガタガタだけど、一応人の手の入ったらしい道に出た。

 街道でいいのかな。


 森の街道を進めば、すぐにゲギャゲギャした声らしきものが聞こえた。そして馬車の姿が見える。所謂荷馬車で荷台には幌がかかっている。


 馬車を背にしているのは…猫おじさんだった。

 アタゴ○ルって猫知ってる? 解らなかったらググれ。

 あのアタゴ○ルに雰囲気が似た恰幅のよい猫おじさん。アタゴ○ルは、直立歩行の猫形態だけど、おじさんはベースは猫でもちゃんとヒト。なんて言うのかな? 人間が猿から進化して今の形になったのなら、猫おじさんは猫系から進化したんだよね。って推測できるような感じ。

 顔の造作はヒトなんだけど、目とか鼻のラインは猫っぽい。耳は三角のが頭の上にある。ちなみに茶トラだ。髪も同系の茶色だ。

 猫おじさんは杖のような棍棒のようなものを振り回している。

 猫おじさんの正面にいるのは、緑色の肌をした怪人? 猫背でがに股で腕が微妙に長くて頭大きくて、すごいバランスの悪い体型。これ何から進化したか推測が全くできない。から、怪人。

 身長は百五十くらい。猫おじさんは百六十くらい。


 緑怪人は錆びた剣を振り回して、猫おじさんに攻撃している。

 猫おじさんがなんとか堪えているのは、攻撃が単調だからだろう。

 でも、これが続いたら体力的にはわからない。


 猫おじさんの必死さが伝わってくる。

 だけど、見てる方はあまり危機感がない。

 動物番組とかでさ、猫対蛇なんてシーンが出た時みたい。本人たちは必死なんだけど、見てる方は『あらあらどうする。どうしちゃう?』くらいの気分になる。

 そんな微笑ましい気分で眺めていると、猫おじさんが私の方を見た。


 猫おじさんの血走った目と目が合ってしまった。ここで無視できるほど、私は極悪人ではない。


「……助けはご入り用ですか?」

「お、お願いしますぅ!」


 猫おじさんは絶叫した。声が裏返っていた。


「了解しました〜」


 私は頷いて軽く辺りを見回す。

 ナイフが一本落ちていた。

 拾うとちゃんと手入れされている。


 ふむ、猫おじさんのものかな。

 最初はこれで応戦しようとして、リーチの差で失敗したってことかな。

 これならいいでしょ。

 助かったわー、自分の武器使わなくて済んだわー。


 私はナイフを手に緑怪人に歩み寄る。


 緑怪人は私に気付いていない。

 猫おじさんに気をとられ過ぎなのか、私の気配も先刻交わした言葉にも全く注意を向けていない。


 駄目だなあ。

 背後を疎かにし過ぎだよ。


 緑怪人の背後に立った私は、首筋目掛けてナイフを振り下ろした。


「ギャ?」


 緑怪人の一人が倒れる。隣のもう一人が突然のことに慌てて振り返った。

 遅いよー。


 その喉元に向けて真横にナイフを払う。

 直ぐ様飛び退いて、喉元から吹き出す返り血から退避する。


 白装束だから、返り血とか嫌なんだよね。

 べったり着きそうなんだもん。

 緑色の血とかね、勘弁だよね。


 それにしても、忌避感とか全くないのがすごい。っていうか、私大丈夫か? って感じ。

 メンタルまで忍者仕様になっているんだろうか。

 そういう気は利くのに、何故財布がないんだ…ぐぬぬ…


 緑怪人か倒れると、猫おじさんは杖を支えにその場にへたり込んだ。


「はああぁ…助かった…」

「えーと、大丈夫ですか?」


 声をかけると、猫おじさんはぐったりしながら顔を上げる。


「危ない所をありがとうございました……それで…あの……そのお姿は……」


 そこかよ!


 命拾いして、気になったのそこなのかい。

 そうか…

 この純白の忍装束はそんなにおかしいのか…

 命の次に気になるほどなのか。


 思わず目を逸らして、言い訳を考える。


 だって、私の趣味だと思われたら困るもん!


「…こ、れ、は、ですね。所謂流派的なアレなんです。仕様がないんです。私の好みも趣味も希望も一切反映されていませんから!」


 言い切ると、猫おじさんはぽかんと私を見上げていたが、数秒後に何度か頷いた。


「はあはあはあ、なるほど。テダ流の門下生は赤い胴着を着用すると聞きます。そのようなものなのですね」

「そのようなものです」


 テダ流が何の流派かは解らないけど、話が通じて良かった。

 前例があるなら、そこに乗っかっておこう。

 詳しく聞かれると困るし。


 あ、でもこの流れが変わらないうちに。


「それで、助けたお礼についてなんですが」

「は、はあ…」


 いきなりお礼の話を始める私に、猫おじさんは警戒の色を見せる。

 私はぐいぐい話を進める。


「あのですね…何かこの上から羽織れるようなもの……ありません? あまり目立ちたくないんですよね」


 こんな格好していて今さらではあるのだけど、マントの一枚くらい譲ってもらえるとありがたいんだけどね。


「なるほど、お待ちください」


 猫おじさんは立ち上がると、馬車の荷台に上がり、トランクのようなものを引き摺り出した。

 蓋を開くと、服らしきものが一杯。

 ん? 猫おじさんが今着ているものとは、趣味と言うか傾向が違う。もしかして売り物?

 猫おじさんは服を掻き分け、黒のチュニックコートを取り出す。


「これなんか如何でしょう」

「ありがとうございます」


 受け取って袖を通す。

 おお丁度良い。続けて手渡されたベルトを締める。


「あと、これですね」

「はい?」


 今度は焦げ茶色のマントを手渡された。

 うわ、これ何の皮? 滑らかで丈夫そうで、風合いも良い。これ絶対に高いよ。

 そう言えば、先に渡されたチュニックコートも高そうな手触りだった。


「あ、あの…自分で言い出しておいて何ですが……いいんですか、頂いても……」

「よろしいですとも! 貴方は命の恩人です!」

「では、遠慮なく頂きます」


 今の私に遠慮と言う二文字はない。

 貰えるなら、がっちり貰うぜ。


 チュニックコートの上からマントを羽織れば、忍装束は足元くらいしか見えない。これくらいならもう大丈夫でしょう!

 良かった、不審者扱いされなくて済むよ。


 はあ、ひと安心。


「ありがとうございます。助かりました」

「いえいえ、それは私どもの台詞です」


 私がぺこりと頭を下げると、猫おじさんもぺこぺこ頭を下げる。

 二人してお辞儀合戦をしていたら、馬車の下から少女が這い出して来た。

 緑怪人から隠れていたのかな?


「お父さんっ!」

「ああ、ララル」


 這い出して来た少女は、猫おじさんと同じ毛並みの猫耳を持っていた。ふんわりした茶色の神くりくりの目が可愛い。


 名前はララルのようだ。


 猫おじさん、助かった安堵でいろんなこと忘れてたな。

 多分、馬車の下に潜り込ませ、先刻の緑怪人から隠していたんだろう。


「ララル、もう心配ないよ」


 猫おじさんが優しくララルに声をかける。

 しかし、ララルの顔は強張ったままだ。


 ララルは必死の形相で私に駆け寄る。


「お願いです。ギルさんとテッドさんを助けてください!」


 今にも泣きそうに緑色の瞳を潤ませて、ララルは私にすがり付いた。





と言うわけで、ロープレの世界です。

とりあえず、元の世界から二人くらい巻き込もうかと思ってます。リクエストありましたら、感想欄にどうぞ。名前だけでも構いません。

期限は、巻き込まれ一人目が本編に登場するまで。

あ、アヤ(ヒロイン)は除外で。



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