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月の姫君とそのナイト?   作者: 向井司
一部 月の姫君とそのナイト?
106/188

100-5 ネタ話

ネタ話はこれにて終了です。お付き合いくださいましてありがとうございます。


 更衣室を出て、エスカレーターを下ると、アヤたち三人が待ち構えていた。


 アヤと河澄君は手を取り合って歓喜にうち震えている。土屋君は腹を抱えて大爆笑。

 わかるよ、気持ちはよくわかるけど、ムカつくわー。


 私は土屋君に駆け寄ると、アイアンクローで頭を鷲掴みにした。


「オレ様を笑い飛ばそうなんざ、一万年早いんだよっ!」

「いたたたたっ」


 土屋君の頭に食い込む深紅の手袋。

 真っ赤な手袋ってアレだよね。紅茶とかケーキとか用意したら、鉄っぽい味がしそうで嫌だよね。


 ホント、仕事しないのね。このキャラ。


「痛い、痛い、痛いっ」


 ギリギリ絞めつつ、キャラが合っているか確認。唯先輩たちを振り返ると、きらっきらの顔で小さく何度も頷かれた。

 …なんか、赤ベコ思い出した。


 キャラの確認をしたところで手を離す。


「それはさておき、オレ様は朝と同じことするのか?」


 聞くと、唯先輩はしばし考えた後、首を横に振った。


「ジャンルが違いますからやめておきましょう」

「それが良いと思います」

「へー」


 ジャンルってなんだろう?

 格闘ゲームとダンスゲームの違いとかなんだろうか。

 知らなくても良さそうな情報なので、追求はしない。


「皆さんにお披露目したら、後は自由時間で如何でしょうか?」

「自由時間?」

「それがいいわ。今日はグッズのサークルさんも参加されているから」


 ほへー。

 グッズかあ。

 何があるんだろう。ちょっと興味あるかも。


「他にもサークルさん沢山参加されてますよ」


 ゆかり嬢がにこりと笑う。


「でも、何があるかわかんないし」

「パンフレットあるよ!」


 アヤがパンフレットと言うには分厚い本を取り出した。土屋君も河澄君も持っている。

 角で殴ると痛そうな厚みだ。って言うか固そうな本だよね。


 サークルさんかあ。

 ってことは…


「リュウ!」

「お、おう!」

「任せた!」


 土屋君は一瞬きょとんとしたが、ゲーマー名にピンときたのかすぐに私の言いたい事を理解したようだ。頷いてみせる。


「わかった」


 ゲームのサークルさん、何かあると良いなあ。


「じゃあ、行こうか」



◇◆◇


 自力で元の場所に戻れる訳もないので、唯先輩とゆかり嬢の後についていく。

 いや、さっぱり位置関係がわかんない。

 ここさっき通った? あ、通ったのは向こうの通路? 同じように見えるけど? ほら、机の上の本も同じ感じだよ? 女の子と女の子しかいないもん。え、組み合わせが違う? 違うかなあ? よくわかんない。違うのか、そうか…


 頭の中に?マークが一杯だよ。そのうち耳から零れて来そうだよ。


 あれじゃない? 見える人が見たら、本当に零れてんじゃない?


 とか言う訳で、蓋の位置に到着しました。それは覚えてる。


 着くなり薄い本コンビが色めき立つ。


「ゆかりん、それはまさか!」

「ベル様っ! ベル様が現実世界に降臨されたわっ!」


 阿鼻叫喚の世界だった。

 楽しそうだね。


 喜ンデモラエテ嬉シイデスヨー。

 本当デスヨー。


 キャラが適当なので、挨拶も適当にしておく。便利と言えば、便利だ。

 販売の邪魔にならないように、机の端に移動すると、薄い本を買った子がそっと伺うようにこちらに来た。


「あの…キング様は…」


 あー、鬼畜執事目当てかあ。

 残念、ヤツはもういない。


「悪いな。あれは午前シフトなんだ。オレ様で我慢してくれな?」


 言いながら頭を撫でたら、喜ばれた。


「ありがとうございます」


 お礼まで言われた。

 あれ? 薄い本買った別の子がやってきたよ。

 何かを待っているみたい…はっ、頭か! 頭を撫でて欲しいのか!


 断る理由がないので撫でる。

 五人くらい撫でたところで、時間がなくなりそうになり、ゆかり嬢の助け船でその場を離脱した。


「じゃー!」


 片手を挙げると、周辺の、女子が手を振ってお見送りをしてくれた。

 それを背に通路を抜けていく。

 入り口にはアヤたちが待っていた。


「で?」


 真っ先に土屋君に声をかけると、土屋君はパンフレットを開いた。


「サークルっての? 一応二つあった」

「じゃあ、行こうか」


 パンフレットの配置図を手に迷路を進む。

 何でみんな迷わないのかと思ったら、端の机にはアルファベットや片仮名平仮名の紙がついてた。

 これを目印に進んで行くんだ。気が付かなかったよ。

 だって、端の一角にしかないんだもん。


 不馴れな四人はあーだこーだ言いながら、ようやく目当てのサークルにたどり着いた。

 この辺り、全部ゲーム系のサークルなんだね。

 でもって、お目当て、ソウル・エッジのサークル。

 机の上の本は…


「を? これはっ!」


 これはゲームのキャラクターデザインした人では?

 中はラフスケッチ集みたいだけど、初めの仮デザインから決定までのスケッチがある。

 うわっ、このキャラ一番始めは髪型こうだっんだ。変遷が面白い、面白い、面白過ぎる。


「ちょ、リュウ。これすごい」

「わ、マジ? 斬月別人?」

「忍者コンビ変わんない」

「刀デザインは変わったみたいだぞ」


 あまり薄くない本を手に私と土屋君のテンションが上がる。


 これは買わねば。今ゲットせねば!


 値段は少々お高いが、あの薄い本と比べると高過ぎってわけでもないと思う。

 何しろこの内容。

 今手に入れなければ、絶対に後悔する。


 私と土屋君は当然、ちょっと厚い本をゲットした。


 隣はゲームのキャラクターを使ったあるあるネタの四コマ。

 これも、にやりとする内容なのでゲットする。


 いやあ。こんな本が手に入るなんてイベントすごい。


 私たちは本を抱えてホクホクだ。


「じゃあ次はグッズ見に行こ?」

「いいよ」


 グッズも気にはなるよね。

 何があるんだろ。


 再び、四人であーだこーだ言いながらグッズ系のサークルへと向かう。


 グッズ系はグッズ系で凄かった。

 数がとにかく多い。


「グッズ系はパンフレットに乗ってないんです」


 河澄君が開いて見せるページには範囲指定がされているだけだった。


「全部見るのは無理だよ」

「雰囲気で見当を付けてみるか…」

「雰囲気?」

「ここから見ると、あの辺猫っていうかペット系?」


 土屋君が指差した先は確かに猫の看板? みたいなイラストが見える。

「あー、そうするとこっちはアクセサリーかな?」


 アクセサリーも見て判る。

 キラキラしてるもん。


「見るならどちらかですね」


 どちらか一方にしても、全部は無理だしー。


「近場から行こうか」


 移動する時間も勿体ない。

 目の前からサクッと行こう。


 この辺りはアクセサリーメイン。ビーズとかスワロフスキーとか?

 可愛いのが一杯。


 河澄君は楽しそうだけど、土屋君は手持ちぶさたな感じ。


 まあねー、土屋君がいきなりキラキラアクセサリー買い出したらびっくりするよ。


 でも、キラキラ系だと私も手が出せないんだよね。


 机に沿ってねりねり歩く。


「あ、これ…」

「なになに?」


 目に止まったのは、歯車が透明な樹脂の中に幾つか組み合わされたもの。

 スチームパンクっていうんだっけ?


 艶消しの金銀黒で統一されたものは甘くなくて良い。デザインも少しずつ違う。


「折角だから、みんなで買おう?」


 アヤが提案するのに、反対する理由はなかった。


「委員長とお揃いですか?」


 どこまでもぶれない河澄君は期待に満ちた視線を私に向ける。


 見るな、そんな目で。


「ま、いいんじゃないか。俺、これにする」

「私はこれ」

「僕はこちらにします」


 手に手にストラップを取り会計を進めていく。

 で、出遅れた。

 私も四人に続いて購入。


 と、この辺りで時間切れだ。


「悪い。ここまでだよ。更衣室行くから、アヤたちはグッズ見てなよ」

「うん、もうちょっと見てから行くね」

「リュウ、ちょっと本持ってて」

「了解」


 本を土屋君に託し、アヤたちを残し、私は更衣室に向かった。


◇◆◇


 更衣室はまだ人は多くはない。

 もう少し経つと閉会に合わせて人が増えるらしい。


 メイクを落とし着替える。地味な委員長スタイルだ。

 眼鏡もかけて、髪も結んで。

 うん、どこから見ても別人。

 メイクの力は凄いもんだね。もうFSXの世界だもんね。


「今日はお疲れ様でした」

「それでは失礼します」


 ゆかり嬢に挨拶して、更衣室を出るとアヤたちのところに向かった。

 入り口のATMの近くにいると連絡来たから、まっすぐ向かう。


「ミーシャ!」

「お待たせしました」

「…………」

「なんですか?」


 土屋君の視線がなんだか痛い。


「いや…どれがお前なわけ?」

「さあ? どれでしょうね」


 どれってほどもないよ。


 まあ、ショウが素ではあるんだけど。


 私たちはこのまま別の駅に移動してご飯を食べた。


 仕方なく来た割には充実していたなあ。


 まあ、こんなのも悪くない。

 コスプレはもうしないけどね。




次話より本編にもどります。

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