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月の姫君とそのナイト?   作者: 向井司
一部 月の姫君とそのナイト?
102/188

100-1 ネタ話

このお話は本編に全く関係ありません。ただのネタ話ですが、楽しんで頂けたら嬉しいデス。


 唯先輩に呼び出された。訳もわからないまま、とりあえず生徒会室に向かう。


 唯先輩がお呼びなんて珍しい。何だろう?


 これが火村先輩とか五十嵐先輩だったたら、ブッチしてたかもしれないけど、唯先輩なのでその選択はない。


 生徒会室の扉を開ける。

 中にいるのは女子ばっかり。生徒会関係なかったあ。

 なに、この異空間。さすがの私でも引く。っていうか普通に怖い。

 ヤバい、ブッチしておくべき案件だった。油断した。私の勘もまだまだだったか。


 うわ、奥の方に座っているのは、薄い本のふたり? 不穏だ。それでもって不安だ。


 しかも最奥に唯先輩がいる。

 何だろう、この女帝感。

 普段は何でもないところで、けろっと転んじゃうくせに、何故今ここで女帝ポジ?

今日の生徒会室使用も権力にもの言わせたね。


「明宮さん、待っていたわ。どうぞ中に入って」


 くっ、先手を取られた。逃げ道を塞がれた。


 私は仕方なく室内に入る。目の前にひとつだけ空いている席に渋々座る。


「今日、明宮さんを呼んだのは重大な事態になったからなの」

「…重大……?」

「由々しき事態です」


 唯先輩の隣で重々しく頷いたのは誰だ。


「これをご覧ください」


 薄い本コンビが薄い本を取り出した。


 出たよ。出てきちゃったよ。

 私は遠い目をした。


「私たちはイベントでこちらの本を頒布しています」

「は?」


 今、何つった?

 頒布ってあれか? 第三者の手に渡っているってことか?


 マジかっ!


 ところでイベントってなに?


「勿論、名前は『キング』様と『アリス』さんに変更しています」


 続けられた説明に、一同がうんうんと頷いた。合図なしに揃ったヘッドバンキングが異様だ。


 いや、待って。

 ちゃんと配慮しましたよー。って顔してるけど、いろいろおかしいからね。

 名前変えればいいってものじゃないよ。わかってる?


「イベントでは、結構ご支持を頂いてます」


 見ないよ?

 ご覧くださいってゼスチュアされても見ないよ。


 ねえ、これ何の集まりなのかな?

 私とアヤをモデルにした薄い本の報告とかいらないんだけど。


「皆さまに誤解をされないよう、奥付けにも『この登場人物にはモデルがいます』と注意書きもしています」

「え、何の誤解?」


 一体何の誤解が発生すると?

 そこでモデルの有無を知らせる必要性が解らない。


「勿論、私たちの空想ではないと知って頂くためです」


 薄い本コンビはドヤ顔 だった。


 ああ、確かに空想ではないかもね。そういうのは妄想っていうんだよ!


 やめてー。

 私たちを妄想の燃料にしないでー!


「ですが、先日のイベントで大手様に『こんな人間、現実にいる筈がない』と、嘲笑されてしまったのです!」

「由々しき事態です!」

「キング様の存在を否定するなんて!」


 口々に怒る君たちは誰なの…


 一体、何に怒っているのかね?

 何を拗らせちゃってるの。


 いないでしょ?

 現実にいないでしょ?


 執事服来てる女子高生とか、現実にいたら確かに嘲笑ものだよ。

 私だって鼻で笑うよ。いや待てよ。大爆笑かも知れない。うん、大爆笑。指指して笑うわ。


 脱力する私を他所に、みんなは怒っている。

 凄く、怒っている。


 誰か…タスケテ……彼女らの怒りポイントがさっぱり解らないよ…


「キング様を否定されると言うことは、私たちのアイデンティティに関わることなのです!」


 へえー…


 もう、突っ込みどころさえ解らない…


「それでね、明宮さん」


 今まで黙っていた唯先輩が口を開いた。

 そうだ。女帝がいるんだった。

 この、ラスボス感。どうした、何か悪いものでも食べたのかっ!


 唯先輩はふふっとか笑って私を見る。

 条件反射で身構えるのは、ほとんど本能だと思う。


 今までも大概ヤな感じだったけど、もっとヤな感じがする。


 に、逃げちゃ…ダメかな?


「今度のイベントで、キング様になってくれない?」


 嫌な予感的中!


 な・に・を、言い出すのかな?


「意味がわかりません」

「だから。執事服着て」

「嫌です」


 語尾にハートマーク付けても無駄だから。


 わかりましたー。って言える話じゃないから。


「お願いします!」


 みんなが一斉に頭を下げる。

 いや、だからね。

 無理だから。

 絶対、無理だから。


「お願い、明宮さん。一生のお願い」


 ヤメテー。

 捨てられた子猫みたいな目で見ないでー。


 無言の圧力が半端ない。空気が重いよ。


 怖いよー。これなら火村先輩とかの方がマシだよー。ん? いや本当にマシか?

 どっちもどっち?

 だけど、火村先輩はひとりだからね。

 四面楚歌な現状よりはマシ、のような気がする。


「明宮さん、お願い。今回だけ。一回だけ」


 唯先輩は両手を合わせてお祈りポーズをする。と、他の子もお祈りポーズ。


 うう…

 もう泣きそう。


 しかしそれは表情には出さない。隙を見せたらおしまいだ。


「明宮さん…」


 ぐぐぐ…


 にらめっこは得意じゃないんだよ。

 勘弁してよお。


 どれだけ拝まれていただろうか。

 根負けしたのは、やっぱり私の方だった。

 私は深々とため息をつく。


「……わかりました。今回だけですよ」

「ありがとう」

「ありがとうございます!」


 わっと歓声があがる。声だけ聞くと可愛いんだけどな。それに付随するものが、笑えない。


「今回だけですよ。以後、例外等一切認めません。いいですね。もし、次なんて言い出したら、唯先輩、絶交しますからね」

「!」


 彼女たちが瞬間青ざめる。

 しかし、念には念をだ。

 次はないと宣言し、現在のトップらしい唯先輩に約束を破った際の罰則も決める。

 一方的だが、多分これくらいしておかないと反古にされそうだ。


 なあなあにする気はないんだから。

 っていうか、こんな茶番、もうヤダー。


「わかりました。今回限りです。皆さんもよろしいですね?」


 頷いた唯先輩にその場にいる全員が、ゆっくりっしかししっかりと頷いた。顔だけ見ると非常に真面目だ。


「周知徹底します」

「二度とキング様にご迷惑はおかけしません」

「…信じます」


 えー、『キング様』はもう固定なんですかあ。

 自分の知らないところで、呼び名が決まってるなんて。

 しかも『キング様』。女子高生が『キング様』とか、もうおかし過ぎるー!


 かくして、暁の会。緊急会議は終了した。


 すごい疲れた。





100話記念がネタ…50話で終わるよねー。なんて思っていた時もありました(遠い目)

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