99
なんかもう、99話っていうのが、我ながら信じられない。
次回、記念の100話は、しょーもない話を書きたいです(をい)
「明宮さん」
廊下を歩いていると背後から声をかけられた。
振り返らなくても誰かはわかる。さっき聞いたばかりだの声。
ちっ。
内心で舌打ちしてしまった。
はっ、現実にやってないよね。エア舌打ちだったよね。
ヤバい、ヤバい。油断大敵。
「何ですか? 火村先輩」
ここが学園内である以上、生徒会長を無視する訳にもいかず立ち止まる。
「話をしたいんだけど」
「私は特に話すことはありませんが?」
まだ続くのかな。
意外と食い下がるね。
「本当に、生徒会に立候補する気はない? できれば唯を助けてあげて欲しいんだけど」
あら、唯先輩が立候補するのは確定なのね。
生徒会長だろうか。副会長だろうか。
多分、どちらかだと思うんだけどね。
生徒会に守護者を入れるのは確定なんだろう。
後々の結界云々時の動きやすさを考えて。
もはや伝統の域だね。
唯先輩も大変だなあ。そこは同情するよ。
だが、しかし。
私が生徒会に入るかどうかは別問題なのだ。
でもって、私はやりたくないのだ。
「他にも誰か立候補するんですか?」
「書記に蓮が出るよ」
「なるほど」
「だから、明宮さんがフォローに入ってくれると、僕も安心なんだけど」
にこり、火村先輩は爽やかに微笑んだ。
火村先輩のファンなら悲鳴ものの微笑みだ。
どんなお願いだろうと、うっかり頷いてしまうだろう。
しかし、私には効果はないのだ。
ファンブル! 渾身の一撃は通用しなかった。
「河澄君がいるのなら、大丈夫ですよ」
今の好感度レベルなら、アヤが河澄君をフォローしていくだろうから、問題はない。
学力的に言うなら、アヤの方が補佐として有能だ。
ええ、学力的に!
ぐ、今のは自爆事案だった。
「やっぱり、駄目なのかな…」
「全力で拒否します」
私もにっこり笑ってみせた。
クラスでは、何かを企んでいると言われる笑みだ。
にっこりのつもりでもにやりに見えるらしい。
失礼なことである。
火村先輩は小さくため息をついた。
「引き継ぎで…二人きりになれるチャンスだったのに…」
ため息混じりの呟きは、小さ過ぎて聞こえなかった。
「? 何ですか?」
「何でもないよ。残念だけど、この件は引き下がるよ」
「そうしてください」
思ったよりあっさり引き下がってくれたのが、少々怖いけど、そこは追求しない。
言質を取ったのだから、善しとしよう。
「だけど、生徒会は関係なく、唯を助けてあげてくれる?」
「それは…私に出来ることがありましたら…」
さすが、転んでもただでは起きない。
外部からの協力を約束させられた。
まあ、ね。それくらいならいいよ。
生徒会の手伝いなんて、早々お呼びがかかるもんじゃなし。
…ないよね?
フラグじゃないよね?
うぬう、確かめようがないぞ。その時になってみないと解らないな。
まあ、来年度の話だもん。
今から心配しても仕様がないか。
「じゃあ」
右手を挙げて、火村先輩は颯爽と歩き去った。
ふう、やれやれ。
思ったより簡単に引いてくれて良かった。
これで詰め寄られたら、拒否どころか拒絶だよ。暴れるよきっと。
でも、そこまでには行かなかった。
ん?
この絶妙な引き際。
もしかして、私の性格をかなり把握されてる?
…火村先輩なら、有り得そうだ。
やっぱり、この人怖いわ。
さて、結論を先に話してしまうが、唯先輩は副会長に見事当選した。
っていうか、対抗馬はいなかった。当たり前か。
賑やかしはいたけど、あれはなんか参加することに意義があるとか、多大な勘違いをした人だった。
毎年、どういう訳か一人は発生するらしい、ネタ枠なんだそうだ。
なんだそりゃ。
河澄君も書記になった。
生徒会に二人守護者はいるので来年一年も安泰と言うことだ。
ふむ。
これで、ラストイベントに専念できると言う訳だね。
ラストイベント…世界の崩壊は…多分近い。
それを知っているのは私だけ。
はあ。
ため息出ちゃうよね。