キミの心に寄り添って
今回で最終回です。
《悪魔》と化してしまった杏樹を救うため、覚悟を決めた晶はついに『処刑人』へと目覚め――。最後に二人が選ぶ道は?
「そんな――。杏樹さん、杏樹さん!」
晶は心の奥底からの叫び声を上げた。だが、その言葉は彼女には届かない。
その光景には、乃述加と那雫夜も歯噛みするしかない。まるで、この世の終末を見ているかのようだった。
「―――――――――!!!!!!!」
《蘭型悪魔》が鳴き声にもなっていない音を発する。それが辺りの空気を振動させ、周辺のビルの窓ガラスをパリン、パリンと砕いていく。
幸いにも、先程晶が住民は避難させておいたので、死傷者は出ないだろう。だが、間違いなく町には尊大な被害が出る。
《蘭型悪魔》が触手を三人に向けて振る。
轟! と風が巻き起こり、砂埃が舞う。それに反射して、三人は一斉に目を閉じてしまった。
それが運の尽き。触手が襲いかかってくる。
「くそっ、こんなものではやられませんわよ!」
咄嗟に反応した乃述加が、担いでいた小型の火炎放射器でそれを間一髪燃やす。
だが、《蘭型悪魔》は攻撃の手を緩めない。
次々に触手が生えてきて、攻撃を仕掛けてくる。
その度に乃述加がガードしようとするが、そんなことを繰り返している内に、火炎放射器のエネルギーが尽きてしまった。壊れたガスマッチのようにカチカチと音を立てるだけで機能しない。
「今度はわたしが!」
那雫夜がそう叫びながら最前に移動し、弓で触手を払っていく。弓だけでも多少の攻撃力はあるようで、数本の触手を切り裂いていく。
だが、次の瞬間。
「甘いわ、人間の小娘が。その程度で妾の攻撃を防いだつもりかえ?」
《蘭型悪魔》が、素早く動いた。瞬時、その右腕が更なる異形へと変化する。掌から長い針が生え、その周りを植物の蕾のような形状のもので覆う。
それはまるで、蜂の毒針のようなものだった。
「心の臓、止めさせてもらおうぞ!」
その針が、那雫夜の胸に向けられる――。
「させませんわよ!」
だが、素早く乃述加が移動し、その針に向けてマシンガンを撃った。
ダダダダダダ! と銃声が鳴り響き、針だけでなく、《蘭型悪魔》の胸や脇腹、下半身の触手にも風穴を開けていく。
「ァァッ! ぬるいわ、この程度かえ? もっと、もっと楽しませてくりゃえ……」
だが怯みもせずに、次々と攻撃を繰り出してくる。
「不味いのん、これ以上は流石にこちらの身がもたないわん。早く、処刑をしてしまわないと……」
ポツリと那雫夜が呟いた言葉に、晶は血相を変えて反論した。
「そんな! 相手は杏樹さんなんですよ? そんな簡単に殺せるはずが……」
「煩いわん。こうなってしまった以上、わたし達は彼女を処刑しなければならない。全ての命を救おうだなんて、馬鹿なことは考え無い事よん」
そんな……と、晶は再び声を漏らした。
その時だった。
「皆! まだ無事ー? 大丈夫ー?」
少し間延びした、緊張感が何処か抜けているような声がした。
三人は一斉にそちらを見る。すると視線の先に、一人の女性が走っている姿が見えた。
信太巫狐である。
その声とは裏腹に、表情は深刻だった。
「晶、貴方無事なの⁉ 何か身体に異変は起きていない?」
そんな彼女は、驚く間もなく晶の肩に掴みかかり、揺さぶって来た。
「ええ、大丈夫ですけど……。巫狐さん、如何かしたんですか?」
「いや、北米支部から物凄い情報が入って来たものだから。良かった、安心したよー」
彼女はふう、と溜息を吐き、その場にへたり込んだ。
何故か足には何も履いておらず、裸足になっていた。よく確認すると、右腕の脇にスニーカーが抱えられている。途中で脱げてしまったのか、あるいは一度脱いでそのまま走って来たのか。だが、彼女は信頼されているとはいえ、既に『処刑人』の力を持ってはいない。引退している身で、役割はただの情報屋。戦いには参加することが出来ない。
「ええい! 何を話しておるか! もっと妾を楽しませい!」
少し目を離した隙に、《蘭型悪魔》は次の攻撃のモーションへと入っていた。
下半身の触手が伸び、全身を覆うように蠢く。
その姿はまるで、幼虫を成長させる繭のようだった。
瞬間、その繭の中から数本の人間の腕が伸びて来た。否、腕ではなく、それも樹木の触手であった。
その腕は迷わずにこちらへ向かってくる。
「不味いですわ! 早く逃げて!」
乃述加が叫んだがもう既に時遅し。腕は四人を囲むような形で動いていた。
「さあ、汝らはこれに対し如何動く?」
《蘭型悪魔》が茶化すように告げて来る。
だが、その時。
「セーマン!」
突如、巫狐が右手の人差し指と中指を立て、手刀を作り、空中に九字を切った。
するとその場所から、淡い光が溢れ、幾本もの触手を弾いたのだ。
「巫狐さん、貴女術が使えるんですか?」
「まあ、少しくらい。これみたいな小っちゃい結界くらいはまだ作れるんだよー」
晶の問いかけにも、巫狐は笑って答えた。
やはり、彼女が居ると心強い。
「さあて、元『処刑人九号』持して参りますか!」
「ほざけ! 貴様如きただの人間にやられてなるものか!」
《蘭型悪魔》が怒声を上げ、さらに触手を向けて来た。
だが、またしても巫狐が九字を切り、その攻撃を防ぐ。
ぐううううう、と、《蘭型悪魔》が喉の奥から怒りの唸り声を上げる。
晶は、自分達が優勢なことを喜んだが、反面、このような状況でも自分が何の役にも経っていないことが悔しかった。その思いが募り、ぎりぎり歯噛みする。
するとそれに気付いた那雫夜が、弓を構えながら声を掛けて来た。
「晶。何も自分をそこまで追い詰めなくてもいいのよん。貴方だって何かが出来るはず。彼女を救うための何かが――」
「……、その何かって何ですか。僕はただこの場に居るだけで、戦うことも出来ずにただ逃げるだけ。こんな僕に――」
「貴方だからこそよん。彼女は明らかに貴方に対して何らかの感情を持っていた。それから彼女の想いを導き出せば――。それが出来るのは晶だけなのよん」
「僕に、だけ――」
自信や実感は、全くない。
だが、何かをしたいという、想いはある。
それさえあれば――。
自分自身の闇に埋もれてしまった、可哀そうな少女を助けることが出来るかもしれない。
「頼みますわ、晶さん」
「晶、貴方があの子を、救ってあげなさい」
乃述加と巫狐も口々に言う。
仲間が、信じてくれている。
絶対に、《蘭型悪魔》を――杏樹を止めて、否、助けてみせる。
そう心に思った時、突然晶の『執行十字』が黒い光を放った。
『執行』時の光である。
今こそ自分も、『処刑人』に覚醒する時――。
「悪の権化を全て滅せよ!」
不意に頭に浮かんできた言葉を叫ぶ。
「正義の産声をここに上げん!」
不思議と、舌に馴染む。まるで生まれた時から、この言葉を叫ぶと定められていたかのように。
「『処刑人十八号』の名において、貴様に死刑を執行する!」
瞬時、漆黒の光が晶の全身を包み込んだ。
☥☥☥
光とともに、晶の姿が変わっていった。
両手に皮手袋、両足にも革靴を履いている。漆黒のマントを背に着け、服装も洋風にと変化していく。
その姿はまるで、西洋の旅人のようだった。
「『執行』完了――。『処刑人十八号=狂騎士』!」
彼はそう、声高々に叫んだ。
その瞳には弱さの欠片もなく、ただ正義の炎に燃えている。
凍野晶は――ついに本物の『処刑人』へとなったのだ。
「!!! やったねー、晶!」
真っ先に巫狐が叫ぶ。
正直、自分でも今の状況を信じることが出来ない。自分に戦う力が与えられてことが。
だが、これは紛れもない現実。自分には杏樹を救うことの出来る力がある! それがただ純粋に、嬉しかった。
「杏樹さん……」
《蘭型悪魔》と向き合い、彼女の本当の名を呼ぶ。
彼女の存在を、肯定するように。
「今、助けに行きます――!」
そう、宣言したが――、
「ほんに汝らは目出度い生き物じゃのう。」
その一言を呟き、《蘭型悪魔》は先程のものよりも、何倍も太い、触手を晶の身体に叩きつけて来た。
「ぐっ……ほっ――――⁉」
最初は、何が起きたのか分からなかった。
鞭で打たれた、なんていうものではない。電柱で殴られた、その表現の方がしっくりきた。『執行』して普段よりも格段に攻撃力や防御力は上がっているはずだった。なのに、血を吐き、一瞬だけでも意識が飛ぶ。恐ろしい攻撃だった。
「戦う人員が一人増えたところで、汝らが妾を凌駕することなど不可能――。それすらも分からぬのかや?」
《蘭型悪魔》が、冷たく吐き捨ててくる。
その表情には、何の感情も宿っていない。
はずだった。
だが、晶が彼女の顔に視線を向けると、そこでは。
「――――――」
言葉はない。だが、瞳からは一筋の涙が流れ出ていた。否、一筋どころではなく、大粒の雨が降るように涙を流している。
彼女が今、一体どのような感情を抱いているかは分からない。
だが、呆気にとられて見ていると、僅かながら動いた。
《蘭型悪魔》の唇が。樹川杏樹の唇が。
声は聞こえなかったが、晶にははっきりとその言葉が分かった。彼女の想いが分かった。
「(た・す・け・て)」
そう叫んでいるように見えた。
「(お願いじゃ晶。妾を――妾を助けてくりゃえ!)」
杏樹の声が――聞こえる。
自分に助けを求めている。
そこで晶も、理解した。ああ、彼女も苦しがっているのだ。もう一人の自分と、必死になって戦っているのだ。
それが分かってしまえば、何も迷うことはない。
彼女の想いを、全面的に肯定する。
「はい。今、助けてあげます」
そう呟き、晶は『狂騎士』を構える。
「死刑――執行!!!!!」
叫ぶと、瞬時、引き金を何度も引いて弾を乱射する。晶は戦いにおいては何もかもが初心者だ。当たるはずもない。だが、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。二発ほどの弾が、彼女を覆っている繭を掠めた。
この程度では、一パーセント程のダメージも通ってはいないだろう。
だが、そうして《蘭型悪魔》を油断させている間に、那雫夜が動いた。
「当っっ――――たれェェェェェェ!!!!!」
一度に三本もの矢を構えて、弓を引いた。
ビィィィン、と空気を切り裂く音が聞こえてきて、物凄い勢いで矢が《蘭型悪魔》の繭を貫き、取り払った。
「晶、今なのん!」
「了解です!」
那雫夜の合図を受け、走り出す。
「ぁぁぁぁぁ! 来るな、来るなぁぁぁぁ!」
叫び声が聞こえる。
だが、晶の耳に入っていたのは、別の叫び声だった。
「(お願い、助けて! 妾を、この闇の中から出してくりゃえ!)」
《蘭型悪魔》の声などは聞こえていない。彼はずっと、杏樹の想いだけを受けて走った。
「(届け――)」
息も切れて、声など喉から絞り出すことも出来ない。
だが叫ぶ。助けたい、守りたい人が――いるから。
「(届けェェェェェェェ!)」
「ええい! 寄るなと言っておろうが!」
《蘭型悪魔》は、一度破壊された繭を再び組み直し、我が身を守ろうとする。
だがそれよりも一瞬早く、晶はその中に飛び込み、彼女の本体と対峙した。
「杏樹さん。」
「しょ……う、かえ?」
人形じみている表情に、少しだけ人間味が戻る。
先程までは聞こえなかった彼女の肉声が、耳に届く。
「助けに来ましたよ」
そう、優しく告げてあげる。
もう少し、もう少しで彼女の凍てついた心に手が届く。数センチ先に、触れれば壊れてしまいそうな、儚げな少女が居る。晶は、彼女を救うために必死で手を伸ばす。
「もう安心してください」
その瞬間、杏樹の瞳から涙が溢れだした。
先程までの比ではない。大粒の涙が頬を伝う。
「こんな、こんな妾を救うために態々来てくれたのかや? 汝は、何処までお人好しなのじゃ?」
「僕は、目の前に泣いている人が居るのに放って措くほど、堕落しているつもりはありません。少しでも笑ってもらえるなら、手を差し伸べます」
杏樹の瞳に生気が戻り始めた。想いは確実に届いている。
「僕は貴女を救う方法があるのなら、何でも実践しますよ」
そう呟いた時だった。
「晶、《蘭型悪魔》を倒す方法なら、ある!」
繭の外側から、巫狐の声が聞こえてきた。
「《悪魔》っていうのは人間の『負の感情』が爆発して生まれた存在! だからその感情の憑代が無くなった時、自然にその力は消えるはずだよー! ただ――、」
不穏な空気を纏い、そこで一瞬言葉が途切れる。
「ただ、そうすればおそらく『人間』としての彼女も消える。それでも、救わなければならないんだよ!」
ドキリ、と晶の心臓が飛び跳ねる。
杏樹を救うたった一つの方法が、彼女の存在を打ち消すこと――? そんなことは嫌だ、したくない。
だが、これ以上涙を流している姿も見たくない。
無理難題、答えが見つからなかった。
「(杏樹さんを殺せば、彼女は救われる――? でも、僕は彼女に生きて欲しい。このまま、
消えて欲しくない!)」
「――構わぬよ」
不意に、杏樹が言った。
「妾はもうこれ以上穢れた存在に堕ちたくない。恥を晒し、惨めに生きるよりは、消えてしまった方がいい。お願いじゃ晶。妾を――殺してくれ」
それは彼女の、精一杯の決断だった。
この時、晶は思った。ああ、この人は何て優しい心の持ち主なのだろう。自分が死んででも周りの人のことを想っている。そして、改めて心に決めた。絶対に彼女を死なせたりはしない。どんな手を使おうとも――例え自分が堕落しようとも。必ず助けてみせる。
一瞬にして大量の思考を巡らせる。杏樹の『負の感情』を消し去るには如何したらいいのか。何故彼女はそんな感情を抱いてしまったのか。彼女の心を蝕んでいる闇は何なのか。
考えて、考えて、考えた。
そして――一つの結論に辿り着いた。
「杏樹さん。貴女は、一体どんな感情を抱いたのですか? あの時、《悪魔》に覚醒してしまった時」
「妾は――汝にあの姿を見られたくなかった。人殺しなど、好かれる訳など無かろう……」
杏樹は、か細い言葉を必死で紡いでいく。
晶もそれに応えようと、相槌を打つ。
「何故貴女は『処刑人』になったのですか?」
「それは――幼子の頃にあ奴に『執行十字』を渡されたため、だったのう……」
「貴女は本当に、《悪魔》を処刑することを自らの意志で進んで行っていたのですか?」
「いや、違う――」
そこで彼女の反応が変わる。
「妾はもう一人の自分を制御出来なくなっておった! 誰かの人生を否定し、断つことなど到底出来ぬ!こんな自分など、消えてしまえばいいのじゃ!」
その言葉を聞いた瞬間、確信する。以前那雫夜と巫狐に少し聞いた、『処刑人』になった者のハンデについてを、思い出した。彼女は『処刑人』になったせいで人格が二つある。
一つは、心の優しい、『正の感情』を多く持つ――仮に白の杏樹とする。
もう一つは、殺戮を好む、『負の感情』を多く持つ――黒の杏樹。
この二つの間に摩擦が起こり、このような悲劇をもたらした。
ならば解決する方法は、彼女が死ななくても済む結末の迎え方が一つあった。
巫狐は『処刑人』を引退した後も、力は使えた。だが、ハンデなどは持っていないようだった。
つまり黒の杏樹を生み出している権化――『執行十字』を破壊すれば――!
彼女が抱いている《悪魔》としての存在を支える『負の感情』が消え去り、杏樹は元に戻るはず。
本当にそうなるだなんて、確信はない。
だが、可能性が例え○.○○○○――一パーセント程の、一握りしかなくても、それに掛ける。彼女が助かるのならば、何だってしよう。
「晶、頼む。ここで妾に死刑を執行しておくれ。汝の手によって死ぬるのならば、それも良しじゃ。なあ、お願いじゃ――」
「分かりました。これから僕は、《蘭型悪魔》を処刑します」
「そうか……。ありがとう」
彼女がそう儚げに呟くと、晶はマントを翻し、革ベルトのホルダーにセットしておいた処刑道具『狂騎士』を構えた。
その銃口を、《蘭型悪魔》の胸元に衝きつける。硬い感触が手に伝わる。この場所だ、彼女の『執行十字』の位置は。
すると突如、彼女の胸に咲いている血色の花から棘か飛び出た。その内何本かが腕に刺さる。だがそんなこともお構いなしに、晶は笑みを浮かべる。
「僕は、《蘭型悪魔》を処刑します。そして――樹川杏樹を救いますよ。待っていてください、杏樹さん」
「! 汝、何を言っておる? そんなことが出来る訳なかろう。妾はここで死ぬのが一番なのじゃ。生きていても何も良いことはない。せめて、汝と出会えたことが幸せじゃった。他者に抱きしめられたのなど初めてじゃった。あの時の約束を果たしてくりゃえ、妾を止めておくれ――」
杏樹が涙を流して頼んで来るが、晶は首を横に振る。
「僕は誰かを犠牲にしてまで幸せを勝ち取ろうなんて思いません。助けられる可能性があるのなら、その可能性に全力を尽くします。貴女はあの時、自分に何かがあったら『止めてくれ』と言いました。でも僕は『助ける』って言ったんです。約束は絶対に守ります」
棘が腕に食い込み、血が流れ出る。だがそんな痛みなど感じている暇はない。ゆっくりと、引き金に指を掛ける。
「死刑――執行」
刹那、ダァァァァン! という銃撃音が辺りに鳴り響いた。
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多分、右手首の骨は折れた。感覚が全くない。
晶は、自分の膝に頭を乗せている少女を見下ろした。
大丈夫だ、まだ息はある。彼女は、助かったのだ。胸元には、赤い宝石の欠片が散らばっており、生物の心臓の脈打ちのように、点滅し光っている。
「杏樹さん……良かった」
そう呟くと、不意に彼女が相貌を開いた。
「晶……妾は、生きておるのかえ?」
「はい。助かったんですよ。もう貴女を苦しめるものは何もないんです」
すると彼女は、ふう、と溜息を吐き、
「汝は残酷じゃな。このまま妾に生き恥を掻かせおるか。これ程の、苦しみ、他では味わえぬぞ。それをわざわざ掻かせおって……」
言葉は辛辣だが、表情は優しげだった。
『負の感情』の全く存在しない、綺麗な笑み。これが本物の杏樹の姿なのだと、晶は思った。
「晶ー! 無事かー!」
すると、後方から声が聞こえた。
そちらに振り向くと、巫狐、乃述加、那雫夜の三人が走って来た。
三人とも安堵の表情を浮かべているようだった。やはり、このような展開になるとは誰も予想してはいなかったのだろう。那雫夜と乃述加の二人は既に『執行』状態を止めており、制服やらの普段着になっている。
走り寄って来たその時、那雫夜が突如「うげっ」と変な声を出した。
「貴方達……。少し今の自分らの状況を理解するのねん。ネットにうpしたらたちまち炎上しそうな状態よん……」
二人はその言葉に「?」と首を傾げる。そして、改めて自分らの状況を確認すると――。
晶は服のあちこちが破れて肌が露出している。杏樹に至っては、先程《悪魔》になってしまっていた時のせいで衣服が身から解かれ、全身裸体であった。
それに気が付いた二人は、ハッと顔を赤らめて、お互いに目を瞑る。
「うわ、際どっ」←巫狐
「キャアッ! 教育者として、この状況は民逃せませんわ!」←乃述加
「思春期……。まあ、規制されそうな状況ねん」←那雫夜
三人が口々に言っているが、そのようなものは耳には入ってこなかった。心の中には、ひたすらに羞恥心があるだけだった。さっきまであんなに感動的な場面だったのに――。
「ほら、せめて女の子はこれを着なさいー」
そう言って巫狐は、家を慌てて飛び出して来たからであろう。上着のポケットに無造作に詰め込まれていたエプロンを放り投げて来た。
だがそこで乃述加が、
「いや、巫狐。それはそれで規制されそうですわよ」
とつっこんだ。
まあ、それを実行すれば裸エプロン状態になってしまう。仕方なく、そこでは那雫夜が制服のブレザーを羽織らせてやった。
「これで……全て終わったのん」
表情の変化があまりない彼女が、珍しくそれを和らげていた。
「あとは、利里が退院すれば一件落着ですわね」
乃述加もそんなことを言っている。
晶は、改めて自分が一つの事件を終わらせたのだと、実感した。皆の笑顔を守ることが出来た。その思いで胸はいっぱいだった。
「晶」
ふと、杏樹が声を掛けて来る。そちらを見ると、瞳にはもう、涙の痕はない。何だかんだ言っても、強い心の持ち主なのだ。
「この恩は、一生忘れぬぞ。そして――一つ、妾の我が儘を聞いてはくれぬか」
「はい、何ですか?」
そして彼女は微笑み、こう告げてきたのだった。
「今後も――汝の傍に寄り添わせてくりゃえ」
晶は何も言わずに、ただ相槌を打つ。
空には、一番星が輝き始めていた。
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「巫狐。貴女でしょう? ネットを通じて杏樹さんをあたくし達の元へ連れてきたのは」
寄り添いあう晶と杏樹の姿を見ながら、乃述加は巫狐に向かってそう言った。
「さて、何の話かなー?」
彼女は知らないとでもいうようにそっぽを向く。だが、そんな反応では、まるで「その通り」と言っているようなものだった。
「だって貴女ぐらいしか居ませんもの。『処刑人』の情報を大量に持っている。それをデータとして流すことが出来る。『裏世界の情報屋』にしか出来ないような手口ですわよね」
乃述加がそう問い詰めるが、巫狐は断じて知らないふりをしていた。
「貴女――最初から知っていましたね? 杏樹さんのこと。彼女が『処刑人二号』だということ。分かったうえで今回こんな展開に運んでいましたね?」
「そんなことないよー」
「それに。貴女『処刑人』は引退した、とか言いながらもなんだかんだでそれは手放せずにいるのですわね」
そう言って乃述加は巫狐のズボンのポケットを指差した。そこからは、小さな黄色い宝石がはめ込まれている銀装飾の十字架があった。『執行十字』である。
「さっきも。密かに貴女『執行』状態にありましたわね? でなければ、結界だなんて作れるはずありませんもの」
「ミコはとっくに引退した身。本来ならば見守ってあげるのが一番なんだろうけどねー。やっぱり、手が、足が動いてたよ。ただ、それだけ」
問い詰めてくる乃述加を、巫狐は軽くあしらおうとする。
話が噛み合っていないようだが、そこは流石親友、といったところだろうか。考えていることは通じている。
「結局のところ、杏樹さんについては如何やって知りましたの? まさか、最強と謳われた『処刑人二号』は既に死亡していて、彼女がその後を継いでいるだなんて。何処のルートで?」
「全員を管理しているのは欧州支部。ミコがそんな情報を持っている訳ないでしょー」
そう言ってくる彼女に、乃述加は、はあ、と溜息をついた。
「貴女、逆に本部でも知りえない情報を稀に持っていますわよね? 今回の件もそうではなくって? 杏樹さんの正体や、《鳥頭獣型悪魔》の生存。最初からこの展開になるよう、手をまわしていましたわね。本当、何処までも抜け目ない……」
「別にいいんじゃないかなー?」
呆れている乃述加に、巫狐は笑ってこう言った。
「独り孤独に戦っている女の子を、助けてあげたかっただけだよ」
本当、彼女には一生敵わないかもしれないな、と乃述加は思った。
終刑 平穏を掴むが為に
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「そう――。あれは貴方のお父さんだったのネ……」
あれから一週間。
晶は、部室に向かう廊下を彼女と歩いていた。
「それじゃあ、僕の父親の最後を見ていたんですか、百波先輩」
利里である。彼女も怪我が全て完治し、三日前に退院したのだ。だが、まだ無理は出来ない状態だったようで、家で安静にしていたらしい。それで本日、目出度く出席して来たのだ。かく言う晶も、先日『狂騎士』を放ったときに痛めた右腕は完治しておらず、布で吊っている状態ではある。
部活に向かう途中にバッタリと出くわした二人は、過去の因縁について話をしている訳だ。
「ええ。記憶は薄れているけれど、確かに『処刑人二号』と《鳥頭獣型悪魔》が同時に倒れたのは覚えているわ。けれど、その後どうやって《鳥頭獣型悪魔》が生き延びたのかや、『処刑人二号』が殺されたのかは覚えていないのネ」
彼女の表情は一気に暗くなった。当時のことを必死に思い出そうとしているのかもしれない。
「そしてこれは、入院していた際の杏樹さんに聞いたんですけど、彼女は、僕の父親の弟子のようなものだったそうです」
そう。あの戦いの後に、短期間だが杏樹も病院にいたのだった。そして、彼女のお見舞いに行った際、晶はその真実を聞いたのだった。
「妾はかつて――先代『処刑人二号』の弟子じゃった。そう、汝の父親のな」
「それで貴女は、『処刑人』になったんですか?」
コクリ、と彼女は頷いた。清楚な病室である。そこには、晶と杏樹が二人きりで話をしていた。
「まだ妾が幼子だった頃。妾も汝と同じように『クロス』を多大に秘めていたようでの。生まれつき『処刑人』の素質があったのじゃ。それを師匠に見抜かれての。密かにその力を抑制するための訓練を受けておったのじゃ」
「僕が知らないうちに、父さんはそんなことを――」
「そしてある日、師匠は妾に『執行十字』を手渡して去ってしまった。そして、二度と現れなかった。幼かった妾には何が起きたのかは分からなかった。そして、つい最近のことじゃ。彼が《鳥頭獣型悪魔》と相打ちとなり死亡したと知ったのは」
「それで僕達の元へ来て、《鳥頭獣型悪魔》についての情報を聞き出そうとしたんですね」
彼女は再び首を縦に振った。
「偶然にも、百波利里は奴との因縁を持っていた。あの話に予想以上に食いつきがあったため、奴をおびき出すためのだしに、汝らを使ったのじゃ」
そう呟くと、杏樹はその綺麗な相貌から黒く輝く涙を流し始めた。
「すまぬ、真にすまぬことをした――! 我が一人の復讐心で、多くの者を傷つけてしまった。許されることではない。いっそのこと、やはり妾はあそこで汝に処刑されるべきだった――」
その彼女の言葉を、晶は真っ向から否定した。
「そんなことはありません。貴女は生きていても良いんです。必死になって自分の目的を果たそうとしていた貴女を、僕は絶対に殺せません。誰かが必死になって生きている。それを否定するだなんて権利、神様でさえ持っていないんです」
それを聞いた瞬間、杏樹の涙の量は爆発的に増えた。大粒の雫が、彼女の頬を、服を、ベッドのシーツを濡らしていく。
「すまぬ、すまぬ――晶! 妾は、此の恩決して忘れぬ! いつか、妾が汝を助けてやりたい。だから、これからも傍に居てくりゃえ! よいかの――?」
「もちろん。それなら、こうしては如何ですか?」
「?」
晶の突然の提案に首をかしげる杏樹。だが、その内容を聞くと同時に、その表情は一気に晴れた。
「いいのかや? 妾の居場所はそこでいいのじゃな⁉」
「ええ。だから、これからも一緒に戦えますよ」
「もう、何と礼を申したらよいか分からぬよ――。晶、妾は、絶対に汝を護り通してみせるぞ」
「僕も、ずっと貴女を護ります」
二人の、新たな誓いが立てられた時であった。
「私に、貴方に、杏樹に。まさか三人もの因縁が絡んでいたとはね。偶然にも程があるわネ。しかも、それを繋いでいたのが貴方の父親とはね」
利里が俯き、か細い声を発した。
「でも、その因縁があったからこそ僕達は巡り会えたのではないんでしょうか?」
「それもそうネ。ただ、この出会いが喜ばしいことなのか如何かは分からないけれど」
さっきから暗いことばかりを口にする彼女が気になって、晶はその表情を伺ってみた。するとその顔は、こらえているのだろうが、隠しきれない笑みで染まっていた。
彼女も、喜んでいるのだろう。この出会いを。皮肉な運命に導かれて辿り着いた、今の自分の居場所を。
「貴方も。父を超えるような『処刑人』になりたいとかは?」
その問いかけには、晶は考える時間もないくらいのスピードで即答した。
「もちろんですよ。当然、それが今の僕の目標です。父さん――。僕は勝ったんですよ。もう立派な『処刑人』ですよ。ね、先輩!」
「そうね。貴方も立派な一部員だわ」
利里はこう言ってはいるが、彼女が『処刑人』になった理由は両親の仇である《鳥頭獣型悪魔》を倒すためである。実質今の彼女に目的は存在せず、『処刑人』を続ける必要もないのだが――。
「私も、これからは貴方達を支えるために部に残るわ。新入部員が二人も増えたのだもの。気合を入れないとネ!」
そう、二人。あの事件の後、『処刑人部』にはもう一人の部員が増えたのだ。
その件の人物はというと。
「こんにちはー……。何をやってるんですか?」
晶が部室の扉を開くと、そこでは文字通りの乱痴騒ぎが起きていた。
「ぎゃああああああああ! 猫が、猫がぁぁぁ! お願いですから先生! 猫を近付けないで!」
「酷いですわ那雫夜! ほらぁ、このぬこさんだって貴女と遊びたいって言っていますわよ~」
「頼むから止めてほしいのねぇぇぇん!」
「アハハハハハ! 誠に、誠に面白いのう! ブハハハハッ!」
「なぁにやってるのネ、三人で仲良く」
利里が呆れた調子でいると、机の上で号泣している那雫夜がこちらに向かって状況を述べてきた。
「先生がまた近所から猫をかき集めて部室に連れ込んだのねん! 助けて、利里、晶!」
「はぁ、病み上がり早々馬鹿馬鹿しい……」
那雫夜の発言通り、部室内には軽く見積もっても三十匹くらいは猫が居る。小さいものだと二十センチ前後、大きいものでは六十センチには届いて良そうな猫もいる。
「ニャニャァー! 素晴らしいですのー! ぬこ、ぬこ、ぬこ! ああ、ここはもしかして天国⁉」
「自分でこの状況を創り上げておいて何をぬかすか! ぶっ殺してやるこのロリ、否、もっと下だ! このハイジ!」
「っですってぇぇ⁉ そこまで幼くはないですわ! せめてアリスにしてくださいまし!」
「義母さん。自虐ネタよ、それ」
利里は本気で呆れていた。何度も何度も溜息を吐き、教室奥の適当な机に腰かけた。
晶も荷物を置いたりしようかと思った、その時。
「此処は楽しいな、晶」
「! 杏樹さん」
そう。樹川杏樹。彼女が『処刑人部』の新入部員なのである。
先日の戦いにて《蘭型悪魔》と化した彼女を救うために晶は『狂騎士』を使用して彼女の『執行十字』を破壊したために、もう既に『処刑人』としての力を失っている。だが、それでも杏樹は、この道に残ろうと決めたようだ。
「これは楽しいの範疇なんですか? もうこれ高校生と成人女性のやり取りじゃない気がしますけど」
「別に良いではないか。ここには喜びや楽しみの感情が溢れておる。妾の心も洗われるようじゃ。ずっとこのような平穏が続くと良いのだがのう」
「――そうですね。ずっとこのままでいたいですよね」
うむ、と杏樹は頷いて、晶の手を取った。そのまま指を絡ませていく。
「? 如何かしましたか?」
「いや。何でもない。ただの――気まぐれじゃ」
その頬がほのかに赤く染まっていることに、晶は気付いていない。だが、突如として猫と戯れていた(?)二人と、何にも興味を持っていなかった利里が一斉にこちらに視線を向けて来た。
「晶。青春への第一歩、なのかしらん?」
「くっふっう。リア充共の誕生ネ。あっちもあっちで面白そうね」
「うああああああああっ! あたくしはまだ独身だというのに! 生徒が先に旅立つのは喜ばしいことなのでしょうが腹が立つぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
今度は冷やかしの乱痴騒ぎが沸き起こった。
「な、何を申すかこの戯け共っ! 妾は、別にそんな気は全くないぞえ! とんだお門違いじゃぞ!」
古語を喋るツンデレってレアだなぁ、と三人は思った。
ちなみに杏樹は『処刑人』としての力は失ったものの、その時に生まれたハンデの後遺症は多少あるらしく、口調があのままなのである。
頬が染まるどころか、彼女は顔全体を真っ赤にして暴れ始めた。
部室の隅の方に置いてあった自分の鞄を振り回し、三人に飛び掛かっていく。きゃあきゃあ皆が騒いでいるのを、晶は見ていて微笑ましかった。純粋に、この『場所』が楽しいと思えたのだ。
だが、その時。
突如部室に取り付けてあった電話が鳴り響いた。
「はっ、はい! もしもし。扇ノ宮学園高校です。御用件と――」
慌てて受話器を取った乃述加がことを全て言い終わる前に。
『お願いこっちに来て乃述加ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!』
スピーカーホンにしていないのにも関わらず他の四人にも聞こえるくらいの大きな声が鳴り響いた。
乃述加はこの声に聞き覚えがあった。独特の女口調、耳に優しいテノール調の音声、流暢に聞こえる外国人訛りの日本語。
「……もしかしてアルですの?」
『そうよんそうよん! アタシよアルバートよ! お願い、アジアB支部の皆さん! 今こっちでは大変なことになってるの! 頼むから助けて頂戴!』
『処刑人』北米支部支部長であり『処刑人四号』の通り名を持つ、アルバート=ハルマゲドンだった。
『邪魔です、退きなさい。――――お電話変わりました、エリーナです。アルの説明では理解していただくのが困難と思われますので私が状況を報告いたします』
今度はもう一人の北米支部の所属者、エリーナ=カルマスが電話に出た。何処か扱い方のおかしい丁寧語で語ってくる。
だが、この状況から言って、向こうでは何か大変なことが起きているのが分かる。
『率直に言います。アジアB支部の皆様にこちらへと来ていただき、応援を頼みたいのです』
「……は?」
いまいち意味が分からない、という風に乃述加は首を傾げた。一応生徒達にも聞こえるようにとスピーカーホンをつけたのだが、皆同様の反応をしている。
『だーかーらー! アタシ達だけじゃ手が回らないくらいに《悪魔》達が大量発生してるのよ! お願い、今すぐこっちへ来て! 航空代くらいはこっちで出すから!』
「何ですって! 早くそう言いなさい! 良いですわ、もう既に授業は終わりましたし、空港まで今行きますわ。もう少し待ってなさい! へばったりしたら承知しませんからね!」
そう告げると彼女は、ガチャン! と受話器を戻した。そうして急いで部室に置いてあった荷
物をまとめて出口へ向かう。
「ちょっと義母さん! 如何するつもりなのネ! 明日もまだ学校あるでしょう? それなのに――」
利里がそこまで言いかけると、素早く反応した乃述加は、
「構いませんわ! 利里、今すぐタクシー呼びなさい。あたくしは自分の二輪で行きますわ。これは一刻を争う事件ですわよ。皆さん、付いて来てくださいまし!」
言いながら部室の扉を出て行った。
「利里……。如何するのん? まあ、当然行くんでしょうけど」
少しやる気のなさそうな口調で那雫夜が申す。それに利里は、首を縦に振った。
「ええ。当たり前よ。《悪魔》を倒し、人々を守るために戦うのが『処刑人』でしょ」
それに続けて杏樹も。
「そうじゃのう。米の未来は塞翁が馬、現地で見てみねば判断出来ぬ。妾も行こうとするかの」
そして、晶も。
「行きましょう。僕達に出来ることをやるために」
全員が一斉に頷く。
利里がタクシーを呼ぶために電話を掛け、それから数分待つ。
校庭に迎えが来たのを確認し、四人は部室を出た。
迷いのない表情で。
「晶――」
「何です、杏樹さん」
「妾は、もう既に力を失った身じゃ。汝らのように強い生き物ではない。じゃが、自分に出来る何かがしたいのは、妾も同じじゃ」
彼女はそこで一旦言葉を切って目を瞑り、それから見開いて言った。
「人々の平穏を、妾は守りたい。汝は妾を暗闇から助けてくれた。だがあれは一歩間違えば手遅れになったやもしれぬ。もうあのような者を生まれさせてはならぬのじゃ」
「そうですね。そのために僕らは、闘い続けるでしょうね」
「何をぶつくさ言ってるのネ! 早く行くわよ!」
先頭を行っていた利里が、そう呼びかけて来る。
これから待っているのは辛い戦いだというのに、心は全く恐怖を感じていない。
この仲間となら、きっと大丈夫。
世界の平穏を掴むため――彼らは今日も立ち向かって行く
了
分かりづらい設定やつたない文章でしたが、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。