Conversation
「なあ、シロウ」
「どうした」
馬車に揺られながら、ルークはシロウに
問いかける。
「魔法側と化学側で仲良くできないのかな」
「そりゃお前、犬と猿が仲良くできるか?」
前にシロウが言ってた"犬猿の仲"を思い出し
ため息とともに返事をする。
「そうだよね…」
「犠牲者がいる以上、もう後には退けねえよ。手を出すのをやめてしまったら、犠牲になった仲間の魂が浮かばれないからな…」
「だよねえ…」
「さっきのお嬢さんと何かあったのか?」
「あの娘…きっと争いで両親を亡くしてるんだ。」
「!そうか…なら、尚更俺達が頑張らねえとな。」
「そうだね…」
シロウの言葉に励まされる。
(シロウの夢は確か"一流の侍"だっけ…)
シロウは日本人だ。西洋の鎧に日本刀という
奇妙な装備だが、彼は日本刀じゃなきゃ力がでない。それに、居合切りが得意なので
彼が抜刀しているところは殆ど見ていない。
常に気がつけば納刀しているといった速さである。そんな彼の戦闘スタイルは珍しく、
また強いことで有名だ。
「でも、お前の気持ちもわかる。」
シロウが不意にそんなことをいった。
「え?」
「俺も、できることならこのセカイから争いは消えてほしい。このままだと憎しみが終わらないからだ。」
「人の命がなくなる以上、やられた方が我慢しない限り、憎しみの連鎖は止まらないしね。」
「ああ、俺はそれで、兵士はともかく何の覚悟もできてない、それに何の罪のない民が死ぬのが一番許せない。」
「うん、俺もそう思うよ。」
「ルークはいつでも死ぬ覚悟できてんのか?」
「できてるさ、当たり前じゃないか。」
「ならいいんだけどよ」
「ねえ、シロウ」
「なんだ」
「俺、もっと強くなりたいんだ。
大事なものを争いから守り抜くために。」
「奇遇だな、俺もだ。」
「なら、2人で特訓して、今度街で開かれる
"剣王祭"にでないかい?」
「…そうするか、まずは街で1番強くなろうじゃねえか」
「1番は俺だけどね」
「言ってろ」
新兵の中の実力者2人は、3ヶ月後に開かれる
街1番の剣豪を決める"剣王祭"に出る決意を固めた。