Indigo girl
魔法側の土地の拠点。
ルークは血に濡れた鎧を取り外す。
空気がおいしく感じる。
シロウは鎧をとった後、ずっと放心状態だった。
結局、新兵は150人中50人が犠牲となった。
虚無感がルークの心を支配する。
「これが争いだ。犠牲は仕方ないのだ。
俺達がすることは、犠牲になった奴の分まで
剣を振るうことだけだ。」
隊長がルーク達を励ます。
はい…と新兵は覇気のない返事をする。
ルークは居心地の悪さから場所移動しようと
腰を上げ、拠点を後にした。
時刻は明け方。
草原に腰を下ろし、空を見上げる。
(隊長の言うとおり、割り切らないと…
俺だけじゃなくてシロウや皆も辛いんだ)
「あ、あの…」
「?」
声のかけられた方へ振り向くとそこには
この空と全く同じ、藍色の髪と瞳を宿した
女の子がいた。
「なにを…しているのですか…?」
女の子はおっかなびっくりといった様子で
尋ねる。どうやら自分の血の匂いがそうさせているのかもしれない。
「あ、怖かったかな?ごめんね」
優しく声をかける。
「ただ空を眺めてただけなんだ。そうだ、
君、名前はなんて言うんだい?」
「メ、メイです…」
「そっか、よろしくメイ。」
「はい!」
ルークの気さくな態度が功を奏したのか、
警戒を解いてくれたようだ。
「君は、何でここにいるんだい?」
ここは魔法側とはいえ民にとって脅威となる場所だ。そこに少女がいるなんてどう考えてもおかしい。
「近くの森で迷子になって…それで…」
「人がいたからここに来たってことかな?」
「はい…」
「そっか…ご両親が心配してるだろうね。」
「いや…両親はもう…」
「ご、ごめん!嫌なこと聞いちゃったね。」
「い、いえ…問題ないですよ…あの…」
「どうしたんだい?」
「あなたの目を見ていて…思ったんですが…
何か嫌なことでもあったのですか?」
そんな少女の問いかけに少しうろたえる。
(正直に話すべきだろうか…?うん、彼女も話したくないことを言ってくれたんだ。俺もいってしかるべきだろう。)
「実はね…僕は兵士で…今日が初陣だったんだけど…沢山の仲間が死んじゃって…」
「!!」
少女の顔が強張る。
(やっぱり言うべきではなかったか…)
そんな時、
「おーい、ルーク!帰るぞー!!」
シロウが自分の名前を呼んでいる。
「ごめん、また今度お話しよう。またね」
「は、はい…こちらこそ…」
手を振って別れ、ルークはシロウの元へ。
「誰かといたのか?」
「うん、とっても綺麗な女の子」
「そうか」
そんなやりとりをしながら、街へと馬車を
走らせた。
その頃、草原では。
「あの人の名前…聞きそびれちゃったな…」
「またお話しできたらいいな…」
空を見上げながら、独り言を呟くメイ。
「帰りますよ、メイ様…それとも"能力者"様の方がいいですか?」
「!ごめんなさい、すぐ行きます…」
馬車に乗った男かメイに言う。
「全く…我らのトップであるあなたが敵と
のんきにお話とは…」
「ごめんなさいナフサさん。でもあの人は、
あの人の目は、純粋でした。これから、あの人の目が争いによって濁っていくと思うと…辛くて…ごめんなさい…」
「……あなたの様な人に、暴力を強制させる
私がいけないのです。私にもっと力があれば…申し訳ありません、メイ様。」
「ナフサさん…いいんですよ」
メイ───化学側のトップである彼女は
部下のナフサの言葉に気丈な微笑みを返す。
どうやら太陽が顔をだしてきたようだ。
それと対象的に、メイの気持ちは沈んでいった。