罪悪=始まり
「こないで!!」
一人の少女が、泣き崩れながら叫んだ。
多くの死体が生み出した血の沼の真ん中で。
この状況を目にしたのは約、10分前のことだ。
・・・
「なんでしょうか、グレイ様」
神たちが住む、神界・神の城に、私が呼び出された。
「うむ。今すぐに、魔王が住む、城に行ってくれないか?」
「なぜでしょう?」
「人間たちが・・・魔王と創造神を殺した」
「なんですと?!」
なんてことか!
私は人間など、腹黒い生き物だと思ったが、もっと腹黒い生き物なんだな!!
「うむ。だから、その魔王と創造神の子供たちを守ってほしい」
「わかりました」
「だが」
「だが・・・?」
「おぬしだけでは心配だ。焔の神も同行するように」
「わかりました」
私は、クルリとグレイ様に背を向け、ヘブンズドアを起動させる。
「クロノ・・・」
「はい?」
「必ず、生きて帰って来い」
「わかってますよ。グレイ様」
ギギギッ・・・
ヘブンズドアが開き、そこにつながるほうに、私は歩み始めた。
・・・
そして、この有様だ。
魔王と創造神の子供の長女、カロン・J・ブルーフレアがもう、人間兵を全員殺してしまった。
パシャ・・・
私は、一歩前に出た。
「こないで!!また・・・人、殺しちゃうよ・・・!」
「大丈夫だ。私は時の神。お前が殺そうとしても、私が時を止めて、お前を助ける」
「ナラ・・・」
「・・・?」
少女は、何か変わった。
少女の瞳は、血のような真紅に変わり、私を見つめた。
「ワタシヲトメテミロ!!トキノカミ!!」
ヒュン・・・
少女は消えた。
まさか、加速魔法・・・!
だが、習得するのに、3年かかるはず。
ザクッ
鈍い音が、王の間に響き渡る。
「?!」
なんだと!
私の力を出す前に刺された・・・!
「・・・グホッ」
口から、血を吐いた。
その血は少女の顔に付いた。
少女の瞳は、だんだんと水色に変わり、顔に付いた血を手で触った。
「・・・あぁ!」
「グホッ・・・大丈夫か?」
「あぁ!!神様を・・・刺した・・・!」
「な・・・?私が、その憎しみを受け止める。それでお前を助けられるなら・・・死んでもかまわない・・・!」
「嫌!私はもう、人を殺したくない!!私のために死ななくていい・・!!」
「・・・そうか」
私は、少女を優しく、そして強く抱いた。
父親と母親は自分たちのために死んだ、その罪悪感を和らげるために。
「・・・アァ」
「ウァァァアアアッ!!!」
少女は泣いた。
自分の感情のコントロールができず、憎しみだけで、人間たちを殺してしまった、その罪悪感を。
そして、私の意識が朦朧として、目の前の風景はブラックアウトした。
・・・
この出会いから、5年がたった。
少女は、この出来事があってから、私が親の代わりとなって育てていた。
少女の弟は、焔の神・イースが育てることになった。
この姉弟は、いずれか大魔導師と魔族の民が呼ぶようになった。
前に、魔族の国に魔物が現れて、それを姉弟が魔法で倒したという。
そして、少女は10歳、弟は8歳。
とうとう、この神界をでて、人間たちが住む国で生活をすることになった。
「忘れ物はないか?フレア?」
「ないって!クロノ!」
この年頃になると、私をクロノと呼ぶようになった。
前は、神様と呼んでいたのに。
「クロノさん、師匠、そしてグレイ様。今までありがとうございました」
「いえいえ。これぐらいしないと、あなたたちの両親に見せる顔がありません」
「ふん、お前がいなくなって逆に安心するわ」
「うむ。また、来てくれ」
「それじゃ、行ってきます!クロノ!イース!グレイ!」
ヘブンズドアが開き、姉弟は歩み始めた。
・・・
「行ってしまったな」
閉じたヘブンズドアを見つめている私とグレイ様・・・
「泣くなって、イース。そんなに寂しいのか?」
閉じた後、すぐにイース泣き出した。
「うぅ・・・だってさぁ・・・」
「うむ。これが、人間で言う、ツンデレというものか・・・!」
「 ! なぜ、人間が使う言葉をグレイ様が!」
「ははっ。時々、人間たちが住む国に遊びに行ってな、ネットカフェは楽しかったな・・・!」
はぁ・・・
今日も、神界はにぎやかだな。