*21
夢うつつのままジニーは薄く目を開けた。
臥牀の自分の隣。重なるようにして眠っている螢を見つけて驚いた。
「や、やだ! いつの間に……?」
高窓に目をやると外は既に朝焼けの光に包まれている。
「螢、ねえ、起きてよ、螢?」
慌てて揺すぶって尋ねる。
「あなた、一体、いつ戻ったの?」
「……今さっき、さ」
ほとんど眠りながら答える螢。
「ちょっと──」
「ああ、ジニー、頼むから眠らせてくれよ。俺、もう、クタクタなんだ……」
枕を奪い取って昏倒する王子だった。
ジニーは呆れて暫くものが言えなかった。
「何よ? 何が、『借りは返す。楽しみに待て』よ? 偉そうなこと言っといて……!」
とはいえ、ジニーの怒りは長くは続かなかった。
ほうっと息を吐くと苦笑せずにはいられない。
「……あなたってまだまだ子供なのねえ? 恋人とか妃とかって前に、あなたにはまだお姉さんが入り用なんじゃないの?」
疲れ果てて幼子のように眠る螢。
その砂色の髪を優しく撫でてやると同じ色をした砂粒が、絹の枕に、敷布に、サラサラと零れた。
それはそれで砂漠の王子様に相応しいな、とジニーは思う。
砂だけではない。
眠る王子の全身は、月や星……昨夜、沙海で浴びただろう幾種類もの光の被膜にすっぽりと覆われている気がしてならなかった。
でなければ、こんなに輝いて見えるはずがない──
「?」
髪から肩、そうっと滑り下ろしたジニーの手が王子の右手の上で引っ掛かって止まった。
「あら? どうしたのこれ……?」
宛ら、月の光を凝らしたような黄色い巾がしっかりと王子の手に巻かれている。
その鮮烈な黄色をジニーは以前、確かに目にした気がしてならなかった。
(あれは、いつ、何処でだったろう……?)
次回は合戦です。帝国軍の策略は果たして……




