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自宅に届いた『惑星開発キット』で、社畜SEは異世界工場の管理者になる ~運用保守はもう終わり。現代の物資と無限の資源で、銀河規模の自動化帝国を築き上げます~  作者: パラレル・ゲーマー
第四部 静寂の監視者と硝子の迷宮編

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第48話 首都圏パノプティコンと法治の黄昏

 東京都千代田区永田町。

 日本国の心臓部である首相官邸。

 その地下5階に新設された『特別情報分析室』は、通常の危機管理センターとは異なる、異様な静謐さに包まれていた。

 壁は分厚い鉛と電磁シールドで覆われ、出入り口には生体認証と虹彩スキャンによる二重ロックが施されている。

 許可された者以外、ここに入ることはおろか、その存在を知ることさえ許されない「国家の聖域」である。


 部屋の中央には巨大な円卓があり、その周囲を、副島内閣総理大臣をはじめとする主要閣僚、そして警察庁長官や公安調査庁長官といった治安維持のトップたちが囲んでいた。

 彼らの視線は一点、正面の巨大スクリーンに注がれているが、まだそこには何も映っていない。


「……では、始めます」


 スクリーンの脇に立つ内閣官房参事官、日下部が静かに告げた。

 彼は手元のコンソールを操作し、最初に一つのスイッチを押した。


「『位相干渉装置(Jammer)』起動」


 ブゥン……。

 部屋の空気が微かに震えたような錯覚。

 実際には、テラ・ノヴァから持ち込まれたジャミング装置が不可視の波動を展開し、この部屋を物理的にも電子的にも外界から完全に遮断したのだ。

 これで、いかなる盗聴器も、レーザーマイクも、あるいは「工藤創一のレーダー」であっても、この部屋の中を覗き見ることはできない。


「ジャミング、正常に作動中。

 これより先の発言は、いかなる記録媒体にも残りません。

 ……皆様、ご覚悟を」


 日下部の一言で、室内の空気が一段と重くなった。

 総理が短く頷く。


「構わん。

 見せてくれ、我々が手に入れた『眼』を」


「承知いたしました」


 日下部がキーを叩く。

 スクリーンに光が走り、そして——「東京」が現れた。


 だが、それはGoogleマップや衛星写真のような平面的なものではない。

 ワイヤーフレームと半透明のポリゴンで構成された、極めて精緻な3次元モデルだ。

 ビル群が透け、地下鉄のトンネルが網の目のように走り、その中を無数の光点——人々や車両——が流動している。


「現在、テラ・ノヴァ側の『位相空間レーダー』1基を、ゲートを通じて地球側に向けて固定しております。

 有効スキャン範囲は、ゲートの設置点である東京都新木場を中心とした、半径100キロメートル圏内です」


 日下部がポインターで円を描く。

 東京23区は完全に覆われ、東は千葉の成田空港、西は神奈川の厚木基地や山梨の一部、北は埼玉や茨城の主要都市、南は東京湾の洋上まで。

 首都圏のほぼ全域が、その円の中に収まっていた。


「……これが全て、『手のひら』の上だと言うのか?」


 警察庁長官が渇いた声で呻いた。

 彼はモニター上の新宿駅周辺を指差した。


「ズームできるかね?」


「可能です。

 工藤氏の言葉を借りれば、『マップのフォグは晴れている』状態ですから」


 日下部が操作すると、視点は滑らかに新宿の上空へ飛び、さらにビルの壁を透過して雑踏の中へと降りていった。

 地下街を歩く人々。

 改札を抜けるサラリーマン。

 カフェで談笑するカップル。

 彼らの姿が、サーモグラフィーのような熱源表示と、骨格を捉えた透過映像として、リアルタイムで映し出される。


「解像度は?」


「ミリ単位です。

 彼らが持っているスマホの機種はおろか、ポケットの中の小銭の枚数まで判別可能です。

 さらに……」


 日下部は音量フェーダーを上げた。


『……だからさー、昨日レミがマジでウザくて……』

『えー、まじ? ウケるー』


 スピーカーからクリアな会話音声が流れてきた。

 カフェにいる女子高生たちの会話だ。

 マイクなどない。

 空気の微細な振動をレーダー波で読み取り、音声として再構築しているのだ。


「なっ……!」


 法務大臣が絶句し、口元を押さえた。


「会話まで……!

 これでは、プライバシーなど存在しないも同然ではないか!」


「ええ、存在しません」


 日下部は冷徹に肯定した。


「この半径100キロ圏内において、『密室』という概念は消滅しました。

 コンクリートの壁も、地下シェルターも、防音ガラスも意味をなしません。

 我々は神の視点から、全ての国民の生活を、行動を、会話を、リアルタイムで監視することができます」


 会議室は凍りついたような静寂に支配された。

 あまりにも強大すぎる力。

 国家権力が決して手にしてはならない禁断の果実。


「……待て」


 外務大臣が青ざめた顔で手を挙げた。


「100キロ圏内といったな?

 その中には港区や千代田区も含まれている」


「当然です」


「……各国の大使館があるじゃないか!」


 外務大臣が悲鳴のような声を上げた。


「アメリカ大使館、中国大使館、ロシア大使館……。

 それらの内部も、すべて『丸見え』だと言うのか!?」


「技術的にはYESです」


 日下部はスクリーンを操作し、港区の某国大使館を表示させた。

 建物内部の構造、執務室にいる大使の姿、そして地下にある通信室の様子までもが、透視図のように浮かび上がる。


「ウィーン条約違反だろッ!!」


 外務大臣が机を叩いて立ち上がった。


「外交関係に関するウィーン条約!

 公館の不可侵! 通信の秘密!

 これらは国際法の根幹だぞ!

 大使館の中を勝手に覗き見るなど、盗聴器を仕掛けるよりタチが悪い!

 もしバレたら、国際問題どころか、戦争の口実になるぞ!」


「落ち着いてください、大臣」


 日下部は眉一つ動かさずに諌めた。


「見なければいいのです」


「……は?」


「我々には『見る能力』がありますが、それを行使しなければ条約違反には当たりません。

 平常時は大使館エリアには『マスキング(黒塗り)』処理を施し、オペレーターが見られないように設定します。

 ですから、大丈夫です」


「子供の言い訳か!

 『能力がある』時点で、相手国からすれば脅威なんだよ!」


「ですが、もしもの時は?」


 日下部の声が一段低くなった。


「もし大使館の中でテロの計画が練られていたら?

 もし日本転覆の陰謀が進められていたら?

 ……それでも『条約だから』と言って見逃しますか?」


「そ、それは……」


「このシステムは、全てを『記録ログ』しています。

 我々が見ていなくても、レーダーは24時間365日、エリア内の全ての事象をハードディスクに書き込み続けています。

 過去に遡って再生することも可能です」


 日下部は悪魔のような論理を展開した。


「つまり、事件が起きてから『遡って確認する』ことが可能なのです。

 普段は見ない。

 ですが、有事の際には、その『ログ』が決定的な証拠となり、我々を守る盾となる。

 ……外交上の配慮と国家の安全。

 どちらを優先すべきかは明白ではありませんか?」


 外務大臣は言葉を失い、力なく椅子に座り込んだ。

 反論できない。

 この「神の眼」があれば、テロも工作も未然に防げるかもしれない。

 その可能性を前にして、条約遵守という建前はあまりにも脆い。


「……総理」


 官房長官が総理の方を向いた。


「いかがなさいますか?

 大使館への監視、およびログの保存。

 ……許可されますか?」


 副島総理は組み合った指に顎を乗せ、深く考え込んでいた。

 その瞳には、苦渋と覚悟の色が混ざり合っている。


「……敵性国家に対しては、いいだろう」


 総理が重い口を開いた。


「中国、ロシア、北朝鮮……。

 彼らが我が国に対して行っている諜報活動の激しさを考えれば、こちらも相応の手段を持つ必要がある。

 相互主義だ。向こうがやっているのだから、こちらもやる」


「では、同盟国であるアメリカなどは?」


「……グレーゾーンだな」


 総理は苦笑した。


「彼らも我々を盗聴している(エシュロン)のは公然の秘密だ。

 お互い様と言いたいところだが……バレた時のリスクが大きすぎる。

 アメリカ大使館については、原則として『マスキング』をかけろ。

 ただし、ログは残せ。

 いざという時、彼らが裏切っていないか確認するための保険だ」


「……仕方ありませんな」


 外務大臣も渋々ながら同意した。

 毒を食らわば皿まで。

 すでにナノマシンという毒を飲み込んでいるのだ。

 今更、レーダーの一つや二つで躊躇してはいられない。


「しかし……」


 防衛大臣がモニターの円を見つめながら呟いた。


「100キロか。

 凄い範囲だが、日本全土をカバーするには足りないな。

 大阪も名古屋も福岡も見えない。

 それに……これでは『専守防衛』の域を出ない。

 敵基地攻撃能力——つまり、海外の敵国の動きを察知することはできないのか?」


「ご安心ください。

 そのための『オプション』も用意してあります」


 日下部はタブレットを操作し、モニターに手のひらサイズの小さな機械を表示させた。

 無骨な金属製の箱にアンテナがついているだけのシンプルな装置だ。


「『座標特定用ビーコン(Targeting Beacon)』です」


「ビーコン?」


「はい。

 テラ・ノヴァ側のレーダーは、このビーコンが発する特殊な位相パルスを感知し、その座標を『基準点』としてロックオンする機能を持っています。

 つまり……」


 日下部は世界地図を表示させ、北京、ワシントン、モスクワの上に赤い点を打った。


「このビーコンを現地の工作員に持たせて、目標地点の近くに隠させるのです。

 そうすれば、テラ・ノヴァのレーダーは次元を超えてその座標を捕捉し、ビーコンを中心とした半径100キロ圏内を、即座にスキャン範囲に収めることができます」


「なっ……!!」


 防衛大臣が絶句し、椅子から腰を浮かせた。


「そ、それはつまり……。

 工作員が北京のホテルにこれを置いてくれば、中南海の中が丸見えになるということか!?」


「理論上はYESです」


 日下部は平然と答えた。


「ワシントンのホワイトハウスも、モスクワのクレムリンも、平壌の将軍様の寝室も。

 物理的な距離は関係ありません。

 ビーコンさえ設置できれば、全てがこの部屋のモニターに映し出されます。

 地球上のどこであっても『死角』はありません」


 おぉ……。

 会議室にどよめきと戦慄が走る。

 それは核兵器以上の抑止力だ。

 敵の意図、戦力配置、指導者の心理状態まで全て把握できるなら、負ける要素がない。

 日本にいながらにして、世界の全てを覗き見る「神の眼」だ。


「……素晴らしい。だが、危険すぎる」


 総理が釘を刺した。


「ビーコンが見つかったらどうする?

 解析されて『日本製の装置』だとバレれば、スパイ行為の動かぬ証拠になる。

 即座に開戦の口実を与えかねんぞ」


「おっしゃる通りです。

 ですから、海外への展開は慎重の上にも慎重に行わなければなりません。

 ビーコン自体にも『自壊機能』はついていますが、リスクは高い。

 当面は国内の防衛——首都圏の監視に限定し、海外展開は『緊急事態』以外には使用厳禁とすべきでしょう」


「うむ。

 『切り札』として懐に入れておく分には、心強いがな」


 総理は頷いた。

 使わなくても、「いつでも見ることができる」という事実だけで、外交上の優位性は揺るぎないものになる。


「……さて、話を国内に戻しましょう」


 警察庁長官が身を乗り出した。

 彼にとっては国際情勢よりも、目の前の治安維持の方が切実だ。


「総理。

 我々、警察にも、このシステムの利用権限を頂きたい」


「警察にかね?」


「はい。

 この100キロ圏内には、東京、神奈川、千葉、埼玉が含まれています。

 日本の人口の3割、経済活動の半分が集中するエリアです。

 ここで起きる犯罪——殺人、強盗、テロ、誘拐——これら全てが、このレーダーで『視える』わけです」


 長官は熱弁を振るった。


「犯人の逃走経路、アジトの場所、凶器の隠し場所……。

 捜査の常識が変わります。

 未解決事件など存在しなくなる。

 迷宮入り(コールドケース)という言葉は死語になるでしょう。

 国民の生命と財産を守るため、是非とも活用させてください」


「うむ……」


 総理は腕を組んだ。

 治安維持の観点からは、これほど強力なツールはない。

 だが、法務大臣が猛反発した。


「待ってください、長官!

 それは『令状なしの捜索』を無制限に行うのと同じですよ!

 憲法35条違反だ!

 一般市民の家の中を警察が勝手に覗き見るなんて……。

 そんなことが許されたら、日本は法治国家ではなくなります!」


「テロ対策だと言えばいい!

 現に中国の工作員が入り込んでいるんだぞ!

 非常時だ!」


「だからといって、無関係な市民まで監視していい理由にはなりません!

 プライバシーの侵害も甚だしい!

 これでは、ジョージ・オーウェルの『1984年』だ。

 完全な監視国家サーベイランス・ステートじゃないか……」


 法務大臣が頭を抱える。

 その嘆きに対し、日下部は冷ややかに反論した。


「失礼ですね、大臣。

 『監視』ではありません。『記録』です」


「言葉遊びをしている場合か!」


「いいえ、重要な定義です。

 我々は市民の生活を、いちいち覗き見るほど暇ではありません。

 システムは淡々と、物理現象としてデータを記録するだけです。

 そのデータにアクセスするのは、事件が起きた時だけ。

 つまり……『監視は、あとからするかもしれないし、しないかもしれない』のです」


 日下部は詭弁を弄した。

 シュレーディンガーの猫のような理屈だ。

 箱を開ける(データを再生する)までは監視は行われていない。

 だからプライバシーは守られている、という論法。


「……分かった」


 総理が裁定を下した。


「警察への権限委譲は認める。

 ただし、使用は『犯罪』および『国家の安全に関わる事案』に限定しろ。

 アクセスログは厳重に管理しろ。

 誰がいつ何を見たか。

 不正利用があれば、即刻、懲戒免職だ」


「はっ!

 肝に銘じます!」


 警察庁長官が敬礼する。

 これで日本の警察は、世界最強の捜査能力を手に入れた。

 完全犯罪など不可能な、ガラス張りの東京が誕生したのだ。


「……日下部くん」


 経済産業大臣がおずおずと手を挙げた。


「その『マスキング』だがね。

 例えば……我々閣僚の事務所や私邸は、どうなっているのかね?

 もちろん国家機密を扱う場所だ。

 当然、保護されているのだろうな?」


「現在は保護されていません」


 日下部は即答した。


「えっ」


「100キロ圏内にある以上、大臣のご自宅の寝室も、料亭の個室も、愛人宅も、全てスキャンの対象です。

 もちろん覗くつもりはありませんが……ログは残ります」


 ざわっ……。

 閣僚たちの間に露骨な動揺が走った。

 やましいことがあろうとなかろうと、自分の私生活が全て記録されているというのは、生理的な恐怖だ。


「そ、それは困る!」

「プライバシーの侵害だ! 我々にも人権はある!」

「マスキングだ! すぐに私の家を黒塗りにしろ!」


 口々に叫ぶ政治家たち。

 日下部は、その反応を待っていたかのように、にこやかに微笑んだ。


「お気持ちは分かります。

 ですが、システム上のマスキング枠には限りがあります。

 ……そこで、お勧めしたいのが、物理的な防御手段です」


 日下部は小さな黒い箱を取り出した。

 今この部屋を守っているものと同じ『位相干渉装置ジャマー』の小型版だ。


「これです。

 これを設置すれば、半径50メートル以内はレーダー波が干渉し、砂嵐のようなノイズしか映らなくなります。

 これなら、どんな権限があろうと、覗き見ることは不可能です」


「そ、それだ! それをくれ!」


 経産大臣が身を乗り出した。


「申し訳ありませんが、これはテラ・ノヴァからの輸入品でして。

 数が非常に限られています。

 現在、手元にあるのは5台のみ」


「……5台か」


 官房長官が目を細めた。

 彼は日下部の意図を完全に理解した。

 誰にジャマーを渡すか。

 その決定権を握る者が、永田町を支配する。


「日下部くん。

 そのジャマーの配分は、官邸主導で決めさせてもらうよ。

 ……協力的で、信頼できる人物を優先する」


「承知しました」


 大臣たちは押し黙った。

 文句を言えば、ジャマーは回ってこない。

 自分のプライバシーを守りたければ、総理と官房長官に忠誠を誓うしかない。

 目に見えない首輪が、彼らの首に嵌められた瞬間だった。


「ですが、問題があります」


 日下部が最後に、最も重要な課題を口にした。


「この広域監視網を維持し、さらにビーコンによる遠隔スキャンを行うためには、莫大な電力が必要です。

 日本全土をカバーするために、レーダーを20台に増設する計画もありますが……。

 今のテラ・ノヴァの発電能力では、限界が来ています」


「電力か……。

 工藤氏は『ソーラーパネルを増やせばいい』と言っていたが?」


「土地にも限界がありますし、夜間の電力確保が課題です。

 レーダーは常時稼働させなければ意味がありません。

 ……工藤氏には、より強力なエネルギー源——『原子力』への移行を促すべきかと」


 総理の目が野心に輝いた。

 「神の眼」を維持するためなら、原子力のタブーなど些細な問題だ。


「……急がせろ」


 総理が命じた。


「工藤氏に伝えろ。

 『電力不足なら、どんな手段を使っても構わん。解決しろ』と。

 資材が必要なら、いくらでも送る。

 金なら、いくらでも出す。

 工場をもっと大きくし、発電所をもっと増やせ。

 ……日本全土、いや世界中を、この『硝子の迷宮』の中に収めるのだ」


「承知いたしました」


 日下部は一礼した。

 これで工藤創一へのオーダーは決まった。

 「もっと電気を」。

 その要求は、彼をさらなる危険な技術——ウラン濃縮と原子力発電——へと駆り立てることになるだろう。


 会議は終わった。

 ジャミングが解除され、扉のロックが開く。

 閣僚たちが重い足取りで退出していく中、日下部は一人、モニターの前に残った。


 画面の中の東京は静かに脈打っている。

 無数の光点。無数の人生。

 その全てが今は自分たちの監視下にある。

 そして、その気になれば、ビーコン一つで海の向こうの国々さえも……。


「……見えすぎるというのも、考えものですね」


 日下部は呟き、ポケットから胃薬を取り出した。

 知らなくていいことまで知ってしまうストレス。

 そして「見られているかもしれない」と疑心暗鬼になる世界の指導者たちとの腹の探り合い。

 胃痛の種は尽きそうにない。


 彼はモニターの隅にある「録画(REC)」の赤いアイコンを確認し、電源を落とした。

 画面が暗転し、硝子の迷宮は闇の中に消えた。

 だが、レーダーは眠らない。

 日本の地下深くで、静寂の監視者は目を見開いたまま、世界中の罪と嘘を記録し続けている。



最後までお付き合いいただき感謝します。


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