第120話 ホットラインの向こうの貸与国家
フランス共和国、パリ。
シャンゼリゼ通りの喧騒から隔離された、共和国大統領官邸——エリゼ宮。その地下深くに設けられた重厚な防音扉の奥、国家最高防衛・安全保障会議(CDSN)が召集される極秘のオペレーションルームは、冷たく張り詰めた空気に支配されていた。
豪奢な装飾が施された地上の執務室とは打って変わり、無機質なモニターと通信機器が壁面を埋め尽くすその部屋に集められていたのは、フランスという国家の「剣」と「盾」、そして「眼」を担う少数の首脳陣である。
大統領を中心に、外務大臣、軍事大臣、統合参謀総長、そして対外治安総局(DGSE)長官。さらには軍医総監と、生体情報分析を専門とするインテリジェンスのクロス分析官が、息を潜めるようにして円卓を囲んでいた。
「……長官。君が提出したこのレポートの内容が事実であれば、我々は根底から安全保障の前提を書き換えねばならない」
大統領が、手元に置かれた分厚いファイルを指先で叩きながら、低く重い声で口火を切った。
「ええ、大統領。我々も当初は目を疑いました。しかし、複数のソースから得られた断片的な情報をクロスチェックした結果、これは無視できない『現実』として立ち上がってきました」
DGSE長官が、疲労の色が濃い顔を引き締めながら答える。傍らに立つ分析官がタブレットを操作すると、メインモニターに中東・シリア北部の荒涼とした衛星写真と、傍受された通信記録の羅列が映し出された。
「発端は、中東に展開しているアメリカ軍特殊作戦部隊(SOCOM)の、異常なまでの『低死亡率』です。
……いえ、低死亡率という言葉では正確ではありません。特定の部隊において、戦死者が事実上『ゼロ』になっているのです」
分析官が、冷徹な事実を報告する。
「約2年前、シリア北部において、米軍の小規模なレンジャー部隊が、中国の国家安全部(MSS)の息がかかったと見られる大規模な傭兵部隊の奇襲を受けました。戦力差、地形的優位性、使用された火器のデータを分析すれば、米軍部隊は全滅、あるいは甚大な被害を受けてしかるべき状況でした。
しかし、彼らは生還した。それも、一人の死者も出さずに、です」
会議室の空気が、ピリリと凍りついた。
「現地の協力者や、生き残った傭兵たちの証言、さらにはダークウェブ上で飛び交う暗号通信の断片を拾い集めた結果、ある共通する『キーワード』と『現象』が浮かび上がりました」
モニターに、いくつかの単語が大写しになる。
——『フェーズグレイ(Phase Gray)』。
——『灰色の注射器』。
——『不死身の兵士』。
「証言によれば、米軍兵士たちは被弾し、致命的な多臓器損傷や大量失血を起こして倒れたにも関わらず、懐から取り出した『灰色の薬剤』を投与した直後、即座に立ち上がり、戦闘を継続したとのことです。
さらに、中国側は最初から米軍の陣地ではなく、この『灰色の注射器』をターゲットにして部隊を動かしていた形跡があります。……彼らは、これを奪いに来ていたのです」
軍事大臣が、信じられないというように頭を振った。
「馬鹿な。ハリウッドのB級映画ではないのだぞ?
致死的な外傷を一瞬で塞ぎ、戦闘に復帰させる薬など、現代の化学や医学の及ぶところではない」
「既存の医学では、不可能です。……ですが、大臣」
DGSE長官が、氷のような視線を向けた。
「我々はすでに知っているはずです。現代の医学を遥かに超越した『魔法』を、ごく一部の特権階級に売り捌いている国があることを。
……ガン細胞のみを物理的に消し去り、死の淵から人間を蘇らせる、あの『消しゴム』の存在を」
その言葉に、円卓の全員が押し黙った。
フランスの政財界のトップ層にも、アメリカのディープステートを通じて、5000万ドルという天文学的な対価と引き換えに日本の極秘施設へ渡航し、ガンを完全に治療して帰ってきた者がいる。その事実は、この部屋にいる全員が共有する「公然の秘密」であった。
「……つまり、日本はガン治療の次に、戦場で死なない兵士まで作り出していたということか」
大統領が、深く椅子に背中を預け、呻くように言った。
「状況証拠から見て、その可能性が極めて高いと推測されます」
分析官が頷く。
「この『フェーズグレイ』——外傷、失血、多臓器損傷への即応技術は、ガン治療とは別系統の軍事用ナノマシンであると考えられます。
頭部の即死や脳の完全な物理的破壊を除けば、戦場における『死』を強制的に先送りし、兵士を即時帰還させる革命的な救命技術。……これが十分な数、特殊部隊に配備されれば、現代戦における『損耗率』という概念そのものが崩壊します」
会議室の空気が、医療への驚嘆から、国家安全保障の根幹を揺るがす事態への恐怖へと明確にシフトした。
「同盟国である我が国に、何の連絡もなしだと?」
軍事大臣が、苛立ちを隠せずに机を叩いた。
「アメリカは何をやっている! このような戦場のルールを書き換える技術を独占し、NATOの枠組みの中で共有しようとしないなど、明らかな背信行為だ。対テロ作戦や対ロシア戦線で、我々は常に彼らと血を流してきたはずだぞ!」
「イギリスも、すでにこの情報に向けて独自に動いているようです」
DGSE長官が補足する。
「MI6の動きが不自然に活発化しています。彼らもまた、『フェーズグレイ』の尻尾を掴み、裏で接触を図ろうとしていることは疑いようがありません」
「ロンドンがコソコソと東京へ頭を下げるなら、勝手にやらせておけばいい」
大統領は、フランス特有の強烈な自尊心とプライドを滲ませて、冷ややかに言い放った。
「我々はイギリスのように、アメリカの背中に隠れておこぼれを待つような三流国ではない。フランスはヨーロッパの軍事的な柱であり、独自の核抑止力を持つ大国だ。
少なくとも、同盟の核を揺るがすような事態について、堂々と事情説明を求めるだけの資格がある」
大統領の目には、強い意志の光が宿っていた。
「ホットラインを使う。
……まずは『友人として』、ワシントンに直接聞く」
フランスはまだ、自分たちがアメリカと対等に渡り合え、直接答えを引き出せる立場にあると信じて疑っていなかった。
◇
アメリカ合衆国ワシントンD.C.、ホワイトハウス。
大統領執務室の重厚なデスクで、キャサリン・ヘイズ大統領は、眉間を深く揉みほぐしていた。
「……今度はパリ?」
彼女は、首席補佐官から上がってきたフランス大統領からの緊急ホットライン要請のメモを眺め、深く、重い溜め息を吐いた。
「ええ。先ほどエリゼ宮から、直接の対話要請が入りました」
ソファで優雅にコーヒーカップを傾けているノア・マクドウェルが、少し面白そうに口角を上げた。
「世界中が、『次の奇跡』を探して血眼になっているようですね。イギリスに続いて、今度はフランスですか」
「今回は直接、ホワイトハウスの正面玄関をノックしてくる分、裏口から探ろうとするイギリスよりは、まだ可愛気があるかもしれませんね」
部屋の隅に立つCIA長官エレノア・バーンズが、氷のような声で皮肉を言った。
「フランスはイギリスよりも自尊心が強い。自分たちはアメリカの『特別なパートナー』であり、当然、軍事的な最高機密を共有される権利があると思い込んでいる。
……まずはワシントン経由で、堂々と答えを取りに来たのでしょう」
「つまり、彼らはまだ、こちら(アメリカ)に『答える側の格』があると思っているのね」
キャサリンは、自虐的に冷たく笑った。
アメリカ合衆国大統領。世界最強の権力者。
だが、今の彼女は知っている。自分が握っているのは、極東の島国が気まぐれに貸し与えてくれた『魔法の杖』の、ほんの先端部分に過ぎないということを。自分には、その杖の構造を明かす権利も、他人に分け与える権限も、最初から存在しないのだ。
「繋ぎなさい。……同盟国としての礼儀は尽くしましょう」
キャサリンは姿勢を正し、大統領としての完璧な「仮面」を被った。
数分後、最高度の暗号化が施された回線が開き、モニター越しにフランス大統領の顔が映し出された。
『——夜分遅くに申し訳ない、キャサリン。忙しいところ時間を取らせてしまったね』
「構わないわ。ヨーロッパの友人のためなら、いつでも歓迎よ。……それで、今日はどのような急ぎの用件かしら?」
序盤の会話は、長年の同盟国同士らしい、洗練された外交辞令の応酬から始まった。
だが、互いにその笑顔の裏で、ミリ単位の腹の探り合いを行っていることは明白だった。
フランス大統領は、軽い挨拶を手短に切り上げると、スッと声の温度を下げた。
『単刀直入に聞こう。
……最近、中東において、君たちの特殊作戦部隊が極めて「不可解な」戦果を上げているという報告が、私の手元に上がってきている』
来た。
キャサリンは内心で身構えたが、表面上は少しだけ眉をひそめる程度の反応に留めた。
『シリア北部での激戦をはじめ、複数の作戦において、米軍の重症外傷による死亡率が不自然なほどに低下している。
現地のネットワークや暗号通信の傍受記録から、我々は一つのコードネームに辿り着いた。……「フェーズグレイ」。
あるいは、一部ではこれが、あの日本の富裕層向け医療技術の軍事転用版ではないか、という情報すらある』
フランス大統領の視線が、モニター越しにキャサリンを鋭く射抜く。
『キャサリン。我々は共にNATOの屋台骨を支え、対テロ戦争で血を流してきた盟友だ。
もし、同盟の一角に、戦場医療のルールを根本から変えるような技術が存在し、しかもそれが一部の国家間だけで独占・運用されているのだとすれば……。我々フランスも、決して無関係ではいられない。
NATOの同盟国として、最低限の説明を求める権利があるはずだ』
それは、大国フランスとしての矜持と、同盟の義理を盾にした、極めて重い「圧力」であった。
知っているなら教えろ。そして、共有しろ、と。
キャサリンは、手元で組んだ指先に僅かに力を込めた。
ここで全面否定すれば、逆に「隠している」と確信を与えてしまう。フランスの情報機関を舐めてはいけない。彼らはすでに尻尾を掴んでいるのだ。
かといって、詳細を開示することなど絶対に不可能だ。
「……貴方の情報網の優秀さには、いつも感服させられるわ」
キャサリンは、ゆっくりと、そして慎重に言葉を選びながら答えた。
「確かに、戦場外傷医療における、極めて高度な次世代プロトコルの実証テストは存在しているわ。
……そして、その一部が極秘協力の枠内で、限定的に運用されているのも事実よ」
『ならば!』
「ですが、理解して頂戴」
キャサリンは、フランス大統領の言葉を冷たく遮った。
「その詳細を、現段階でNATOの枠組みに共有することは不可能よ。
これは極めて限定的で、かつ厳格な管理下に置かれているプロジェクトなの。成分の安定性や副作用の検証も含めて、無差別に広げる性質のものではないわ」
それは、明確な「拒絶」であった。
だが、フランス大統領も食い下がる。彼は、この技術がもたらす戦略的価値を誰よりも理解しているのだ。
『……キャサリン。
一つだけ、聞かせてくれ』
フランス大統領の声が、さらに一段、重く沈み込んだ。
『その「フェーズグレイ」と呼ばれる技術は。
……アメリカが開発した技術なのか?
それとも、あの「日本」の技術なのか?』
その直球の問いが投げられた瞬間、ホワイトハウスの執務室にいるノアとエレノアの視線が、一斉にキャサリンに集中した。
ここが最大の山場だ。
彼女がどう答えるかで、世界の認識が決定的に変わる。
キャサリンは、数秒間、完璧な沈黙を保った。
モニター越しに、フランス大統領と視線を交わせたまま、瞬き一つしない。
そして、彼女は真正面からは答えず、しかし、その言葉の選び方によって「全て」を漏らすという、極めて高度な外交的修辞を用いた。
「……それは」
キャサリンの赤い唇が、ゆっくりと動く。
「ワシントンが『単独で判断できる』類の案件ではないわ」
——。
そのたった一言が、ホットラインの向こう側の空気を、劇的に、そして決定的に変容させた。
◇
パリ、エリゼ宮のオペレーションルーム。
キャサリンのその返答を聞いた瞬間、フランス大統領の表情が硬直し、周囲に控えていた大臣や情報機関のトップたちの顔色が一斉に変わった。
『ワシントンが単独で判断できる案件ではない』。
それは、外交の世界において、あまりにも雄弁な「敗北宣言」であった。
世界最強の超大国であるアメリカ合衆国の大統領が、自国の軍隊が使用している兵器や技術の開示について、「自分の一存では決められない」と言ったのだ。
技術は、存在する。
だが、アメリカはそれを単独で管理していない。
つまり、アメリカはその技術の所有者ではなく、誰か別の国から『貸与』されているか、あるいは強固な制限付きで『使わせてもらっている』だけの立場に過ぎないということだ。
そして、アメリカにそこまでの制限を課すことができる国など、現在の地球上に一つしか存在しない。
「……では、我々が話すべき相手は、ワシントンではないと?」
フランス大統領は、地鳴りのような低い声で確認した。
モニターの向こうのキャサリンは、少しだけ目を伏せ、自嘲を含んだような微かな笑みを浮かべた。
『……私なら、そう解釈するわ』
プツン、と。
通信はそこで切断された。
エリゼ宮の地下室は、水を打ったような、いや、絶対零度に凍りついたような沈黙に支配された。
ホットラインの目的が、完全に逆転してしまったのだ。
最初は「アメリカから答えを引き出す」つもりだった。
だが、終わってみれば、「アメリカに聞いても何の意味もない」という、世界のパワーバランスの残酷な真実を叩きつけられる場となってしまったのである。
◇
一方、ホワイトハウス。
通信が切れた真っ黒なモニターを前に、キャサリンは深く背もたれに寄りかかり、目頭を押さえた。
「……彼らはまだ、アメリカが『配る側』だと思っていたんですね」
ソファから、ノア・マクドウェルがクスクスと楽しげな笑い声を漏らした。
「かつての冷戦時代のように、我々がパトロンとして同盟国に技術や兵器を分け与える立場だと、本気で信じていた。……滑稽なほどの時代錯誤です」
キャサリンは、ノアの言葉に少しだけ苦い顔をして言い返した。
「笑わないで。
……つい数年前までなら、私もそう思っていたわ」
その言葉には、世界最強の国家のトップに上り詰めながら、結局は極東の島国が差し出す蜘蛛の糸に縋るしかないという、超大国の無力さと悲哀が込められていた。
「フランスはイギリスより、ほんの少しだけ遅かった。それだけのことです」
エレノアが氷のように冷たく締めくくった。
「彼らもこれで悟ったはずです。自分たちが向かうべき本当の『玉座』がどこにあるのかを」
◇
パリ、エリゼ宮。
沈黙を破ったのは、軍事大臣の怒声だった。
「ふざけるな! 同盟軽視も甚だしい!
アメリカはNATOを何だと思っている! 自国だけが極秘の技術的恩恵に預かり、我々を盾として使うつもりか!
再度ワシントンに強い圧力をかけ、議会を通じてでも技術の共有を……!」
「……黙りたまえ。見苦しい」
大統領が、冷徹な声でその怒号を切り捨てた。
彼はすでに、感情の波を乗り越え、極めて合理的な国家のトップとしての思考へと移行していた。
「怒る相手を間違えるな。
先ほどの会話で分かったはずだ。アメリカは我々に隠したのではない。彼らにすら、あの『奇跡の技術』を我々に配る権限が与えられていないのだ」
大統領は、テーブルの上の世界地図——その極東の島国をじっと見つめた。
「我々は、アメリカの背後にある強大な影を見落としていた。
……なるほど。イギリス(ロンドン)の連中が最近、我々よりも早く、妙に大人しく動いていた理由が分かったよ」
「……イギリスは、先にこれを理解していたと?」
DGSE長官が苦々しげに問う。
「おそらくはな」
大統領は頷いた。
「だから彼らはワシントンに抗議するような無駄な真似はせず、最初から『東京』を見ていたのだろう。
……我々は、一歩遅れを取った」
会議室に、焦燥と屈辱が入り混じった空気が流れる。
だが、フランスという国は、イギリスのようにただ大人しく列の最後尾に並び直すような、素直な国家ではない。
彼らには「大国」としての絶対的な矜持がある。
「大統領。では、我々もイギリスに倣い、日本政府の機嫌を損ねないよう、恩を乞う形で非公式に接触を図りますか?」
外務大臣の提案に、大統領は即座に首を横に振った。
「馬鹿なことを言うな。我々は物乞いではない。
イギリスのように恩義や過去の栄光に縋って列に並ぶような、惨めな真似はせん」
大統領の目に、野心と誇りの火が灯る。
「フランスは『価値交換』で行く。
我々は、日本にとって有用な『取引相手』として東京のテーブルに着くのだ」
大統領の言葉を受け、閣僚たちの顔つきが変わった。
「我々が日本に提示できるパッケージを構築しろ。
地中海や北アフリカにおける我が国の広範な情報網。
フランスが誇る世界最高峰の医療・製薬ネットワークの裏ルート。
EUの法整備や制度運用における、日本への圧倒的な便宜供与。
国際機関での強力なロビー活動。
……そして何より、我々もまた『独自の核保有国』として、対等な立場で彼らの安全保障のパズルの一角を担えるという事実だ」
「……なるほど。我々は『買い手』としてではなく、『対等のパートナー』として名乗りを上げるわけですね」
「そうだ」
大統領は力強く頷いた。
「イギリスは恩義で入ろうとしている。ならば、フランスは価値で入る。
そのようにシナリオを組め」
「では、日本への具体的な入り口はどうしますか?
表の外務省ルートでは躱されます。駐日大使館を使うか、あるいは財界の人脈を使いますか?」
DGSE長官の問いに、大統領はニヤリと笑った。
「もっと実務的で、そして少しばかり図々しい入り方が良い。
……『防衛医療協議』だ。
フランス軍と自衛隊の間で、戦場医療や次世代の救命技術に関する共同研究の枠組みを名目に、直接、防衛省や内閣情報調査室の深部へと食い込むのだ。
我々は『君たちの戦場医療の秘密を知っているぞ。共に研究しようじゃないか』と、正面から微笑みながらノックしてやる」
それは、イギリスの陰湿なアプローチとは対照的な、フランスらしい洗練された傲慢さであった。
「……準備を急げ。
世界が、医療革命の次……『戦場で死なない兵士』という神の領域に足を踏み入れているのだ。
それが真実なら、これはもはや医療の問題ではない。国家秩序そのものだ」
大統領は、オペレーションルームのスクリーンに映る極東の島国を、射抜くように見つめた。
「ならばフランスは、観客席で指を咥えているわけにはいかない。
イギリスの後ろに並ぶ必要などない。
……我々は、東京のテーブルに、力ずくで我々の『椅子』を一脚、足しに行くのだ」
大国のプライドと、生き残りを賭けた実利の計算。
「フェーズグレイ」という日本が撒いた巧妙な餌は、アメリカの虚勢を暴き、そしてヨーロッパの二大国を、それぞれ全く別のルートから東京の玉座の前へと引き寄せることに成功した。
日本という国が放つ圧倒的な引力は、今や地球全土を歪め、あらゆる国家をその見えない重力圏の内側へと取り込もうとしている。
真実の壁の一段手前で、世界は狂ったように踊り続けるのだった。
最後までお付き合いいただき感謝します。
もし「続きが読みたい」と思われた方は、ページ下部よりブックマークと評価をお願いします。




