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アウトロダクション その後の文芸部

 一週間が過ぎた。

 文芸部はふたりだけの部活に戻った。

 部室の静けさこそ三人の“侵入部員”が来る前と同じだが、違うところがひとつある。

 それは、時折、紗登子の溜息が聞こえること――だった。

 その気持ちは環士にもよくわかる。

 よくわかるどころか、もしかしたら紗登子よりも環士の方がいなくなった“侵入部員”――すなわち“三人の小悪魔たち”への喪失感は強いかもしれない。

 性格制御を施されていたとはいえ、ずっとひとりだった環士にとってフィーマ、マリイ、テレインは紗登子以外で初めて心を許し、初めて得た“仲間”だったのだから。

 そして、人を信じることができないゆえにそれまで避けてきた“人と話し、人と行動すること”を教えてくれた存在だったのだから。


 放課後、部室への廊下を歩く環士の前に紗登子の後ろ姿があった。

 駆け寄った環士が声を掛ける。

「ちぃ~ッス」

「あ、環士くん……」

 その表情はやはり少し暗い。

「元気ないッスね」

「う~ん。やっぱ寂しいね」

 そう言って無理矢理作った笑顔を向ける。

「ボクがいるじゃないですか」

 自分でも思わぬ言葉が口を衝いた。

「そうだね。ありがとう。でも……」

「なにか」

 紗登子が溜息を挟んで続ける。

「部活整理の話があるのよね。活動実績や部員の少ないクラブは今年度で……。私は卒業するけど、なくしたくないなあ文芸部」

 それは確かに残念だけど、でも、自分の力ではどうしようもないなと環士は思う。

 思わず黙り込んだ環士だが、なにか明るい話題はないかと話を逸らせる。

「新人賞はもう?」

「あ、今日で校正を終わらせて送信するつもり」

 思い出したように続ける。

「でね、応募じゃないんだけど次は蛍と一緒になにかやろうって話になって」

 蛍とはもちろん、マンガサークル代表、梅小路蛍のことである。

「原作と作画で分担みたいな?」

「うん、そう」

 答えながら紗登子の手が部室の扉を開ける。

「だから細川ってバカなんだよー。きひひ」

「それは確かにバカだマル」

 ブチロウを抱いて噂話に興じる地依子とドルド丸がいた。

「ふっふっふっ」

 複雑な数式で埋めた黒板を見て不敵に笑う海唯子がいた。

「……」

 険しい表情で少女マンガを読んでいる風羽子がいた。

「なぜ」

「どうして」

 ぽかんと見ている紗登子と環士に気付いた地依子が手を振る。

「やほー、ひさしぶりー」

 海唯子が向き直る。

「一週間ほどあっちで暮らしてたが、あまりにも退屈なもんでね」

 風羽子がマンガから顔を上げる。

「とりあえず卒業までは通うことにした。イヤになったらいつでも辞められるしな。せっかくある選択肢を切り捨てることはない、だろ」

 紗登子が紅潮した頬で応える。

「みんな、おかえりなさい」

 その様子に環士は思う。

 とりあえず文芸部は安泰である――と。


 そして――。

 優里の祖母によって新しい御札を貼られた和鏡は、今も池月家のお堂の中で静かに運命の時を待っている。


全編終わり

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