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イントロダクション 台風一過のそのあとで
十一月に発生した台風二十七号は、この時期の台風としては珍しく本土上陸を果たした。
その翌日、市内有数の旧家である池月家では家族総出で私有地の見回りに自宅の裏山を訪れた。
小規模ではあったが生じていた土砂崩れや倒木の対応を父や叔父たちが話し合っている時、同行していた長女の優里はかすかなうめき声を聞いた気がした。
裏山には小さなお堂がある。
それは二メートル四方ほどの小さなものだが、まとう雰囲気はどこか人を近寄らせないものがあった。
厳しい祖母に言われたこともあり、自分から近寄ろうと思うことすらなかったそのお堂の前に優里は立っていた。まるでなにかに導かれたかのように。
秒速三十メートル近い最大瞬間風速にも耐えたお堂であったがその扉は外れ、中の祭壇から転がり出たらしい円形の金属プレート――和鏡が地面の上でぼんやりと淡い光を放っている。
優里は正体不明の緊張感の中で、全身を硬直させて目を凝らし耳を澄ます。
うめき声は和鏡の中から聞こえていた。




