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三郎
私はゆっくりと目を開けた。
そこには白髪になり、顔もシワだらけになった私の妻がいる。
今は23年後の4月10日である。
病院のベットの上、管に繋がれ既に永くない事は私が一番分かっている。
妻の手に触れ自分が話したい意思を示す。
「あなた、どうしたの?」
「23年前の事を思い出していた」
「あの時もっと早くに私の想いを君への想いを伝えるべきだった」
ゆっくりとゆっくりと必ず伝わるように妻へ話しかける。
「そう、でも伝えてくれたでしょ?」
「あぁ、私は君といられて幸せだった、結婚してくれてありがとう」
最後の記念日に私は妻へそう伝える。
全てを察した妻は泣き、その姿はかつて私が守ってあげたくなった昔の姿に戻ったかの様だった。
あの時はもしも等という妄想に逃げていたが、今自分の周りにいる子供や孫の顔を見ると私は理想の人生を歩んでこれたに違いないと妻の手に触れたまま目を閉じるのだった。
(了)




