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第三章 05 『真実②』

 ――僕がいない間、なにがあったのかな....



 時は流れ、夕日が沈み始めた頃。あーるんは何故か眠っているリンを宿舎に送り届けるために、杖と共に彼女を背負いながら街中を歩いていた。

 帰りに狩った魔物の買取についてセージと一試合を終えてキルメと共に帰宅すると、家の中に流れる空気が最悪だった。ロジェはリンが寝ているベットの上に顔を乗せて気持ちよさそうに寝ていたのに対して、グレイはかなり落ち込んでたので何があったのか全く想像出来ない。



 ロジェちゃんがグレイちゃんと喧嘩するような事なんて早々起きないだろうし、本当に何が起きたんだろう.....。全く想像出来ないや。



 あーるんは一度話を聞こうとしたがグレイは何も教えてくれなかった。それどころか『余計な事を言うな』とかなり強めの釘を刺してきたし、元気なのか怒ってるのか落ち込んでるのか分からない。あの男は昔からテンション高い時以外感情が表に出にくいから何を考えているのか分かりにくいのである。.......ロジェちゃんはそこに惚れているらしいが正直何がいいのか分からない。



 喧嘩したわけでもないし無さそうだし.....もしかしたらロジェちゃん、この子に自分が『魔女』である事でもバラそうとしたのかな。



 気持ちよさそうに眠っているロジェはともかく、何でも考えてから動くグレイがあそこまで落ち込むのは珍しい。なんでもかんでも物作りの素材にするようなイカれた男だが、根は誰よりも優しく、真面目で頑固な男だ。そんな男がガッツリ落ち込むなんて初めて見るレベルだし、あそこまで落ち込む理由もそのレベルの大事件しか有り得ない。



 あれからリンちゃんと何度も僕も話してるから悪い子じゃないのは保証出来るけど、流石にそれだけはダメだよロジェちゃん。僕もあの時はすぐ村に帰る予定だったから余計な事言ったせいでそれを言わざるを得ない事になったのかもしれないけど『真実』だけは絶対に隠さなきゃ。



 迫害種族の辛い所だ。いくら信用出来る相手であろうと絶対にその真実だけは隠さなければならない。そうしなければ確実に取り返しのつかない事になる。どこから情報が漏れ出すか分からない以上は、いくら信用出来る仲間であってもその行動だけは絶対にしてはいけない。


 そんな事を考えていると、背中に乗っていたリンが目を覚まして動き始めた。何があったのか聞いてもいいが、グレイが居る以上確実にリンは記憶操作されているので聞くだけ無駄だろう。下手に刺激したら消した記憶について思い出すかもしれないので、あーるんはそこまで馬鹿な事をするつもりはない。


「うぅん....?あれぇ.....私は一体さっきまで何を――ってあーるんさん!?それになんで私は貴方の背中に!?私はさっきまでロジェさんと話してたはずなのです!」


「あ、ようやく目覚めたね!リンちゃんは疲れて眠っちゃってたの!だから僕が今宿舎に連れて行ってたとこだよ。」


「そ、そうだったんだ......。私、ロジェさんに話を聞きに行ってたのに途中で寝ちゃうなんて一体私はどこまでダメな子なんだろう.....。てかロジェさんと何を話してたんだっけ……確かロジェさんからスイーツを貰って……ってあれ?何故かその後の記憶があんまり残ってないのです。なぜ……なぜ?どうして.......え?」



 ――この感じを見れば分かるけど、やっぱり記憶操作されてるんだろうな。多分だけど記憶を中途半端に消されたせいで出来事の辻褄が合わないから軽い混乱が起きてるっぽいし、何とか誤魔化しておかなきゃせっかく消した会話も思い出す可能性あるかもしれないよね。



「そんな自分を責めなくて大丈夫だよ。ロジェちゃんも途中で眠ってたからね!もしかしてだけど、リンちゃんもサウジストの事気になってたりする?僕で良ければだけど色々教えるよ?ちなみにあれ、ロジェちゃんの大活躍だったの!一人で組織の人間を騙して丸ごと乗っ取るなんてロジェちゃんホントやる事が大胆だしすごいよねー!」


「え....?あ、はい!噂程度でしか聞いてなかったけど、本当なら凄いことですよ!そもそも影の鼓動って十億超の賞金首がトップにいる訳ですし、立ち位置的にも裏社会では相当高い位置に居ると聞きますからね。そう簡単には組織に潜入なんて出来ないですし、あそこまで強いならロジェさんも冒険者になったらいいのに……ってたまに思うのです。あの人なら少なくとも私達と同じ階級までは来れると思いますよ!それは私が保証します!」


「それはちょっと無理なんじゃないかな〜。あの子は誰かと動くよりも1人で突っ走る方が得意だし、そもそもロジェちゃんが冒険者になんかになったら簡単に天下取れちゃうからつまんないでしょ?」


 ロジェちゃんが最強なのは事実だが、そもそもあの子は本来ならば戦えない子だし、そんな子が冒険者になればどんな危険が潜んでいるか分からない以上、僕達だけでも守りきれなくなる可能性がある。だから僕は絶対に止めるし、そんな事は認めない。

 ただでさえこの前の依頼によって裏社会の間で高額の懸賞首になってしまった以上、もしかしたらあの子は今まで以上に賊に狙われるかもしれない。そう考えれば反感を買いやすい冒険者などなるべきではない。


「その.....あーるんさんはロジェさんをどういう人だと思ってるのですか?あーるんさんの口からはさいきょだー!とかはよく聞きますけど、それ以外はあんまり聞かないし少し気になるのです!」


「僕からの評価?そうだなぁ.....」


 それはまた難しい質問だなぁ。最弱にして最強の魔女って言いたいけどそんな事は言えないし、呪いの件だってきっとロジェちゃんは世間に公表されたくないだろうから上手く言い辛い....。


「.....言うなればあの子は、この世界で最も愛されて生まれてきた最強の魔導師ってところかな!あの子はどんな窮地に至っても絶対に負けない正真正銘の化物だよ。正直、あの子の実力は僕やグレイちゃんなんかが追いつける実力じゃないし、そもそもあの子は結果だけみれば、戦いと名前の付くものに一度も『負け』がないから、強さの格が圧倒的に違う神っていうのが正しいかもね」


 ロジェちゃんは小さな虫一匹すらも殺すことが出来ない弱い女の子だ。だけど――あの子は必ず最後には相手を圧倒して帰ってくるし、『窮地を切り抜ける力』が誰よりもある。

 だから、どれだけボロボロになろうが最後には必ず生きて帰ってくるし、例えそれが神でも悪魔でも負けない。そう言い切れる何かが彼女にはある。それが偶然だろうが、実力だろうが、どちらにしても勝ったことには変わらない。


「なるほど....でも確かにそれは言えてるかもなのです!双竜の砦でも私も似たような事思いましたし、その言葉が聞けて安心しました」


 その言葉と同時にリンが笑みを浮かべながら答えてくれた。どうやら彼女の本当の魅力に気付いてくれていたらしい。彼女の魅力を語れる仲間がいる嬉しさをあーるんは心の底から喜びながらリンを背中に背負って移動する。


「あ、そうだ!リンちゃんさぁ。この街にある冒険者用でかつ初心者向けの良い感じの酒場とかって知らない?サウジストの件もあるしみんなが集合した記念で1度盛り上がりたいなー!って思ったの!多分僕が言えば許してくれるし、時間あったらリンちゃん達も来る?」


 酒場に行けばきっと2人もあの重すぎる空気感から立ち直ってくれるだろう。人目につくだろうがそもそも問題を起こさなきゃ良い訳だし、初心者向けの酒場にいるような雑魚に興味が無いので絡みに行く訳が無い。強い冒険者がいるなら喧嘩を売りに行く可能性はあるけど、そういう人は初心者向けの酒場に来るはずがないので大丈夫だ。


「酒場ですか.....。だったら『白鯨の霧』という酒場がおすすめなのです!あそこは初心者御用達のお店だし、店主さんが優しいので相当な乱闘騒ぎを起こさない限り追い出されませんからね。誘ってもらえるのは嬉しいですけど、私達が行くと無駄に注目を集めちゃうし邪魔になるかもしれないので今回はお断りします。是非とも皆さんで楽しんできて欲しいのです!」



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



「しっかし、昼間は酷い目に逢いましたねロリイーネさん。まさかあのよく分からない魔物寄せの効果が1時間も持つなんて完全に想定外ですぜ。」


「あぁ。誰が仕掛けたのかは知らんが、喧嘩を売ってきた相手を見つけたら絶対にタダでは済まさん。」


霜刻の凍鳥(フラアイス・フロー)》の6人は自分達の拠点に戻り、あの時の戦闘のことを振り返っていた。


 出てくる魔物はオーク中心だったし、どの個体も街道ということもあって大したことは無かったが、どの個体も情報通りの強さをしていなかった。

 恐らく違法な魔物寄せの効果で魔物に何かしらの影響を大きく与えていたのだろう。異常なまでに興奮したオークキングには流石に少しは本気を出さなければ負ける可能性のある魔物に変貌していた。

 オーク以外の魔物もいたし、基本的に群れを作って襲いかかってくるので、⦅氷嵐⦆の二つ名を持つロリイーネ・ダイスキルアが居なければ周りの街や街道に大きな被害が出ていたと予想できる。


 ポーションなど色々と消耗していたので、使用した備品を調達していたベイスとその仲間達が戻ってきた。


「一応さっき使った備品を回収するついでに変な黒猫を引き連れた女を街中で探してきたけど見つかりませんでした。馬車の件もあるので確実にこの場所に居ると思いましたが見当たりませんでしたね。情報も一つも掴めてないっす。」


 今のところ自分達に喧嘩を売ってきたのは黒猫を引き連れた女という事が最有力候補だが、それ以外の可能性は無くはない。だからまずはその女を見つけ出して話を聞くべきだ。

 奴らが魔物寄せに関して何かしら知っているのならば犯人だと確定し、その舐めた性根を捻り潰すだけだ。なぜ明らかに法に反した魔物寄せを持っているかなど色々問い詰める必要だってあるだろう。


 10段階のうちの7段目の立ち位置にいるのであれば、自分達より上にいる冒険者など限られているので、他の冒険者の模範にならなければならない以上は違法な薬物を持つ者を咎めるのは当たり前のことだ。


「結局何も分からねえと言った所か。最近俺達もダンジョンに籠りっきりで長らく帝都には戻って来てなかったのはあるが、色々と変わったものだなこの国は」


 ロリイーネはこの国に戻ってきた時に色々な話を聞いた。

 この国で何百もの龍の襲撃があった事や2つの巨大犯罪組織の陥落、他にも色々と不穏な話は聞いているが、世界の中で最も平和だと噂されていた帝都イリステリアでこのような事件が連続して起こるのは異例の事態だ。何か不吉な出来事が起きる前触れの可能性もある。


 その不穏な出来事を聞いてこの国から逃げようとしている者も居ると聞いたし、何か大きな戦いがあるのであれば1人の戦士として霜刻の凍鳥も戦えるよう準備をする必要もあるだろう。この国に色々と世話になっている以上は恩を返せるように務めるのが人としての筋というものだ。


 そんな事を考えていると、腕を後ろに組みながらキースが口を開いた。


「まっ。とりあえず俺達に出来る事は黒猫を引き連れた女を探すことくらいですぜロリイーネさん。誰の仕業かは知りませんが、あの魔物の襲撃も無事に跳ね除けましたし、ここは一発酒場でパーッとやりませんか?近々巨大なオークションで街が騒がしくなりますし、時間をかけて☆7ダンジョンを攻略してきたのもついでに祝うのも悪くないかと。オークションの時期が来れば派手に騒げなくなりますから」


 キースはこのパーティの副リーダーとして優秀な男だ。常に周りの気配りが出来るし、交渉でもドジを踏まないどころかむしろ裏をかいて話を進めるような化物だ。戦闘の面においても狙撃手の割には近接もかなり出来るし、総合的な戦闘力だってロリイーネの次に高い。この男は隙という物が存在しない。


「それもそうだな!久々の帝都だしここは一つ豪快に酒でも浴びて次の依頼や攻略に備えるとしよう。下手すりゃ他の冒険者共から黒猫を引連れた女について分かるかもしれない。まずは情報収集だ!」


 そう言って《霜刻の凍鳥》は、久しぶりに酒場に行って羽を伸ばす選択をした。特徴的な黒猫を引き連れていてかつ帝都から来たの専用の馬車に乗っているのだから、それなりに知名度がある奴だろう。他の冒険者に話を聞けば何か分かるかもしれない。



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



「どうしても私の中で記憶が足りない。ロジェさん達に何かされたのかな......?」


 リンは宿舎にある自室に戻りつつ、自分の欠けた記憶についてずっと考えていた。

 しかし、ロジェと話をした記憶を自分から思い出そうとすれば何か脳にズキッとする痛みが走り、視界が一瞬白くなる。

 その欠落した記憶は、まるで喉に刺さった魚の小骨が気になるように引っかかり、無視しようにも中々無視できない。


「でもあの優しいロジェさんが私に対してそんな酷い事をするとは思えないのです.....。私が何か余計な事聞いちゃったのかな」


 リンはあまりの頭の痛さにふらつきながら自分の部屋へ戻り、今日のところはこれ以上同じ事を考えるのをやめた。無理に思い出そうとすればするほど頭が壊れそうになるからだ。

 それでもリンは諦める気はない。何年かかっても必ずこの欠けた記憶を取り戻すと決めていた。



 ――全ては私の数少ない友達にして、尊敬するあの人の事を少しでも理解するために。



 そしてリンは自分の部屋に机に向かい、日々の出来事を細かく書いている1冊の手帳を手に取って、いつものように日記として中身を書き始める。


 この日記を書く作業はリンが冒険者になってからずっと続けている日課だ。日々の小さな出来事から大きな事件、魔法を使って何故そうなったの考察など色々なものを事細かく記載しており、日々の振り返りに使ったり、ヒューの無茶振りで作った魔法の研究記録としても使っている。この日記はリンにとって切っても切れないとても大切な手帳だった。


「そういえば私、双竜の砦で何か大事な事を忘れている気がするけど......なんだっけ....?」


 そう思って過去の日記を読み返した瞬間、リンの手の動きが止まった。そこに書いてあったのは、ヒューが無理やりロジェを巻き込んで勝手に引き受けてきた『双竜の砦』の依頼についてだ。その中でもあーるんと初めて交わした会話について気になる点がある。


 文字は確かにそこに書かれている。紙も、インクも、文字の癖も、何一つ変わっていない。目を擦って何度も確認するが、これはどう見ても毎日自分の手で書いていたはずの文字だ。


 ――なのに、そのページに書かれた一部の内容だけが読み取れない。


「なに....これ.....。私の大切な日記なのになんで.....?なんでここだけ読むことが出来ないのです!?」


 見たこともない言語。理解不能な記号の羅列。自分で書いたはずの文字なのに絶対に読むことが出来ない不思議な現象だった。

 視線を合わせようとすると文字がわずかに歪むし、読もうとした瞬間に意識が滑り落ちるように内容だけが抜け落ちる。それはまるで自分の脳が書いてある言葉の理解を拒否しているようだった。理由は分からない。誰が何のために自分に対してこんな酷い事をしたのかは分からない。けれど確信はあった。


 ――この出来事に触れたら、私の中で何かが大きく壊れる。


 リンはロジェ達の事について個人的に考察した内容も一緒に書かれている日記を静かに閉じ、いつもの棚の中に再びしまった。


「きっとロジェさん達には何か触れてはいけない闇がある。そして私は今日、その闇に触れたせいで記憶を消された。って事はやっぱりあの人達は.....そういう事なのかな?」


 この謎の現象を見て、状況証拠からリンは『かもしれない』を『だろう』へと疑惑の階級を一つ上げた。もし仮にこの予想が当たっていたとしたら、彼女達の『真実』がバレた時はこの国も、日記も、自分の立場も、自分に関係するもの全てが大変な事になるかもしれない。そんな事を頭の片隅に置きながらリンは深い眠りについた。



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



「ただいま――ってあれ?誰も居ないの?」


 あーるんは宿舎にリンを送り届けて自分達の家に戻ってきていた。家を出る前まではリビングでグレイが落ち込んでいたり、ロジェがベッドの上で寝ていたりしていたのだが、今は誰かいる気配がしなかった。すぐに感じ取れるのはキルメの気配くらいだ。


「ったく......。二人共どこ行ったんだろ?僕に黙って勝手に行くなんて酷いじゃん」


 せっかく死にかけの2人を元気づけようとわざわざ酒場の様子を見てからここまで帰ってきたというのにこれでは意味が無い。せめて何か一言言ってくれれば良いのだが、どこへ行くか書いた置手紙も見当たらなかったのでなんだか裏切られた気分になる。


「はぁ。せめて何か一言書いといてくれれば良かったのに.......」


 そんなこんなで自分の部屋に戻って仮眠でも取ろうと思い向かっている最中だった。何故か知らないがキルメがロジェの部屋の前で丸まって寝ていた。こんな場所で何をしているのだろうか?


「ねえキルメ。あんた人の部屋の前で丸まってなにやってんの?」


「..............夜明けの時だ。」


 長い事付き合っているから分かるが、これは何かを隠している時に発する鳴き声だ。もしかしたらこの猫は何か知っているのかもしれない。


「..........もしかしてキルメ、あんた何か隠してるでしょ?なんでもいいから教えなさい!」


「夜明けだ!夜明けだ!」


 警告のような鳴き声をキルメが発する。恐らく図星なのだろう。グレイは買い物か何かで出掛けているのかもしれないが、ロジェならばまだ部屋に居る可能性がある。そう考えればキルメが部屋の前で丸まっていた事にもある程度納得出来る。なによりキルメはロジェの事が大好きであり、何かと彼女の近くにいたがるところがあるのだ。


 頑なに入る事を止めてくるキルメを上手く退かしながらあーるんはドアを開くことにした。


 ――とりあえず中に入るしかないかぁ.......勝手に入ってごめんよロジェちゃん!


「ねーねー。ロジェちゃんいる?もし良かったらなんだけ―――ど.......」


 そう言いながらいつものようにあーるんがドアを開けると、そこには驚きの光景が広げられていた。


 部屋の中ではグレイとロジェがベットで一緒に寝ていたのだ。グレイは完全に爆睡していたが、ロジェはベットの上で座っており、手元にある紙を見て顔を赤くしながら軽く混乱状態になっていた。二人共服は着ていたが状況証拠から察するにこれはアレだ。二人が一線を超えたあとの時間だ。だとしたら邪魔するわけにはいかない。


「!? あーるん!?ちょっとあなた入ってくるならノックくらいしなさいよ!てかこれは違うの!私は何もしてなくて――」


「あー........なんかごめんね?僕のせいでお盛んな後の時間を邪魔しちゃったよね。僕の事は後でいいから2人ともゆっくり楽しんで!あと僕みたいな奴がいるからそういうのは鍵をかけてからやるべきだよ!」


「―――っ!ちょっ、ちがっ........ちがーーう!まちな――」


 ロジェが声にもならない高い声を出しながら爆発寸前の爆弾のように顔を赤くしていた。


 そしてその姿を確認し、ロジェが全て言い終わる前に2人の雰囲気を邪魔しないようあーるんはドアを閉める。ドアを叩きながらドア越しにロジェが必死に弁明してくるが、せっかくの二人の時間を邪魔するわけにはいかないので、あーるんは勝手にドアが開かないようしっかりと力を込めて反撃する。


 ――てかいつの間に2人ともそんな距離が縮まってたの…?僕知らなかったんだけど...


「夜明けの時だ。」


 理由は分からないけれど、目の前にいたキルメの鳴き声が心なしか呆れているように感じた。

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