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第二章 53 『事後報告』

 セレーナはベージュと共に《紅焔轟者》や《水冥》と話をしていた。ロジェの提案により突然シャドーとの戦いに巻き込まれ、あの現場で何があったのかを伝える為の状況確認のような会話である。


「ほう。あの小娘とその仲間が最終的に組織のボスの戦いまで全部終わらせたってのかい。」


「はい。私達はシャドーに弱体化させられてたので少し記憶が曖昧ですが、ロジェさんとその仲間が敵のボスに対して圧勝している所はこの目で見ました。私達も戦いに参加したけど実力が足りてないので結局まともにダメージを与えられませんでしたけど....」


「でもマスター。自分で言うのもなんですが、セレーナも僕もかなり頑張りました。全部ロジェさんの提案ですが彼女に頼まれた攻撃魔法は全部使いましたし、むしろ僕達しか相手に攻撃していません。彼女はあくまでもアシストが得意な魔導師らしいので仕方がないですけど、それでも彼女の動きや指示には1つも無駄がありませんでした。彼女も十分尊敬に値する魔導師です。」


 セレーナはあそこまでの魔力量があって技術もあるのに、一度も自分から攻撃をしようとしない不思議な魔導師を見た事がなかった。


 あの時、街を覆い隠す程の巨大な火の塊を操って怒った精霊に当てるほどの実力があるのだから、攻撃魔法が使えない訳でもないだろうし、自分で戦った方が早く決着がつくのに、何故か私達に何度も攻撃魔法を使わせるし、魔法の杖だってただの警棒で魔法を使うとか言い出すのだから理解が出来なかった。前者はともかく、セレーナは即席の警棒で戦う魔導師なんて見た事も聞いた事もない。そんな摩訶不思議な事をするなんて御伽噺の中にいる魔女くらいだ。


「そうかそうか。それでガキ共、今回あの悪名高いシャドーと戦ってどうだった。この依頼にお前達をわざわざ巻き込んだのは、お前達が何か悩んでいるように見えたからだ。その戦いを通じて何かお前達の成長に繋がる事はあったかい?」


 ――そんなもの数えれば幾らでもある。


 シャドーと名乗る男の動きには一切無駄が無かったし、相手が魔法を使う時はとにかく静かだったので、あそこまで間近で強力な魔法を一瞬で使う瞬間を見た事がなかったセレーナにとって目指す到達点のような物が自分の中で確立出来た。

 ロジェからは、使えなさそうネタ魔法でも使い方次第では化ける事や、各魔法の利点を生かした応用力という物を身をもって学ばせてもらったのだ。


 戦いでは派手に負けたが、この戦いの経験は間違いなくセレーナとベージュを更なる成長へと繋がる1歩になるはずだ。そう確信させるだけの大きな経験が出来た事をセレーナは感謝している。


「はい!私はあの戦いで沢山の事を学ばせて貰いました!最初ロジェさんから戦ってくれと直接頭を下げて頼まれた時は驚きましたが、この戦いのおかげで私の目指す方向性が決まったので、敵に負けた事は全く後悔はしてません!悩み事も無くなりました!」


「僕もセレーナと同意見です。ロジェさんはきっと僕達が伸び悩んでいる事を見抜いていて、僕達の成長の為に戦わせてくれたと勝手に思っていますし、あの戦いを通じて実際に学ぶ事も沢山ありました。僕もロジェさんのような臨機応変な戦いが出来るようこれからも頑張ります!」


「ケッケッケッ。こりゃあの若い小娘に凄い借りを作っちまったもんだねぇ。それに、元々あたしもあの小娘に言いたい事があるんだ。こうしてガキ共の世話もして貰ったんだから礼もしなきゃだしねぇ....メイル。帝都に帰ったら忙しくなるから覚悟しときな!」


「.....グロリオサ、くれぐれも相手に手を出さないようにしてくれ。それとベージュ、セレーナ。お前達二人には頼みたい事がある。今じゃなくても良いが、ロジェさんを我々の元へと連れてきてくれないか?一度直接会って話したい事があると伝えておいてくれ。これは急ぎじゃないし、相手の事情もあるだろうから会うこと自体は帝都に戻ってきてからでも構わない。頼んだぞ。」


 ――この二人が直接誰かに会いたいだなんて言うのは珍しいわね....。二人が今までそんな発言をしてる所なんて一度も見た事がないけど、彼女に何するつもりなんだろう....?



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



「ねぇロジェ。あの銀髪のイケメンは結局誰なのよ!二人はどんな関係なの!」


「........何度も言いますがグレイは私のただの友達です。勘違いしないでください。」


 ロジェはガーベラに呼ばれたので、別室で2人で話していたのだが、何故かさっきから上がる話題がずっとグレイの事ばかりなので違和感がある。――もしかしてさっきまでの会話を見られていたのかな?だとしたらめちゃくちゃ恥ずかしい....。


「絶対嘘じゃない!私には何か友達以上の特別な感情があるようにしか見えなかったわよ?面白そうだから教えなさいな!」


「.....私に話したい事ってそれですか?その程度の雑談だったら私帰りますよ。さっさとこのメイド服から着替えたいし、暇じゃないので。」


「はぁ...。本当にロジェは素直じゃないしつれないわねぇ。まぁいいわ。その話はまた今度聞くことにするわね!」


 ――素直も何も別に隠してるつもりないんだけと....。グレイはどうせ私の事なんて何とも思ってないし無駄だよ?あの男はそもそも女の人に興味無いし、話せる事ないよ?


「ここからが本題よ。ロジェ、あなたはあの時精霊をわざと怒らせて影の鼓動を追い返してたわよね。あれは本当に狙ってやってたの?」


 ――そんなの狙ってるわけないじゃん。大体、そんな事をすれば犯罪者と同じだし、あまり常識のない私でもやって良い事と悪い事の線引くらいは付けてるつもりよ。あれで人が死んでない事が奇跡だわっ!


「逆に本当に狙ってやったと思いますか?どう考えてもそんなリスクが高すぎる手段を取るわけないじゃないですか。全部たまたまですよ。たまたまの成り行きでそう見えただけであって、私はそんな事狙ってません。」


「......ホント?あの時一緒にいた《水冥》さんは狙ってやったようにしか見えないって言ってたわよ?それに怒った精霊の誘導技術や精霊の攻撃も全部無効化する術を持ってる魔導師なんて世界に1人だけの天才かもしれないって言ってたし...」


 ――もしかして『すいめい』さんって馬鹿なの?精霊術を無効化出来るわけないじゃん!あれはたまたま得意な属性を使ってくる精霊が居たから何とかなっただけだもん!!!


「そもそも私はあの時街で影の鼓動の構成員が暴れていた事なんて知りませんでしたし、あの出来事は全てたまたまです。嘘でも隠してる訳でもなく、本当に運が良かっただけなんてガーベラさんもちゃんと言っといてください。私の実力なんてあのサンドホークと同じくらいですから。」


 そういえば式場にいたサンドホーク達、どうなったかなぁ....。ケーキに呑まれたしやっぱり爆発してるのかしら。というかケーキがシャドーの前で爆発したのもこのサンドホークのせいなのでは?


「.....やっぱりロジェ。あなたってホント不思議な人ね。普通ならこんな時は街中で全員に自慢する勢いで走り回る人がいてもおかしくない事を成し遂げたのよ?なんでそんなあなたは実績を隠そうとするの?」


 ――いやだってそもそも目立ちたくないし。といか私ホント何もやってないし、むしろ戦犯だから!


「だってこの程度なら私的には語る実績に値しませんから。ガーベラさんも何か勘違いしてるようですけど、本当に私は何もやってないので変な事言いふらすのはやめてくださいよ?」


「これですらロジェにとって語る価値がない実績なの.....?わ、分かったわ。ロジェがそこまで言うならあなたの実績は2人だけの秘密って事にして黙っておいてあげるわよ。《水冥》の方は無理かもしれないけど、お父様にはあなたの功績は上手い事隠しておいてあげるわ。というかシャドーを倒したのもロジェらしいじゃない。そんな事してるなら今更実績を隠し切るなんて無理よ?あの巨大犯罪組織を被害を出さずに完全壊滅させたんだから。」


「私はあの男を倒してないし、頑張ったのはベージュ達だし、倒したのもグレイですから何もやってまsんよ。どうせあとでアルロさんに呼ばれると思うんで、その時にも私からも言っておきます。信じて貰えないでしょうけどねッ!」


「......その時ですら何もやってないって言い張るならさ、結局ロジェはあの敵の襲撃中は何やってたの?」


 私は何をやっていたっていうのが正解なんだ....?

 私が式中にやった事は、間違えて造花を食べた事でしょ?盗まれた仮面の責任をガーベラさんに押し付けたでしょ?それに加えて平和に収まりそうだったケーキにポーション使って余計な事もしたし、魔法を使ってやばい奴らを式場に連れてきたし.....適当に話して精霊怒らせたりもしたわよね。オマケにシャドーもあそこまで怒らせた.........



 ――あれ?この襲撃事件、ほとんど私のせいでこの事件の話が大きくなってない?こんなん影の鼓動よりも悪い事してる極悪人じゃん!こんなんバレたら処刑だよ処刑!


 どう答えるか悩み続けた結果、ロジェはこう言った。


「――――鬼ごっこ.....とか?。」


「......ロジェ、まさかとは思うけど私が何言っても怒らないって思ってそんなふざけた回答してるんじゃないでしょうね。幾ら友達でもふざけた事ばかり言ってたら流石に怒るわよ?」


 別にふざけてる訳じゃないよこれは....精霊に追いかけ回された事もシャドーを怒らせた事も鬼ごっこといえばある意味綺麗に纏まるんだから。


「まぁいいわ。ロジェにも事情はあるだろうし。とりあえず色々言いたい事はあるけどはいこれ。ロジェが前に言ってたこの街の名店スイーツのリスト作っておいたからあげるわ。別に私に頼めばもっと凄い物渡せるのに、お礼は本当にこんなのでいいの?」


「わぁ!本当に作ってくれるとは思ってなかったのでびっくりしました。ありがとうございます!私はスイーツが大好きなのでこれで満足ですよ。というか私はこの事件で何もやってないのでこのリスト貰うだけでも烏滸がましいですから。」


「......ロジェ。あんたのその謙虚な所は良いところでもあるけど、何度も同じ事してたら嫌われるから気をつけなさいよ?十分凄いんだからたまには実績として認めなさい。」


 謙虚じゃないです。事実を言ってるだけなんです私は....



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



『どこでその技術を知ったか知らねぇけど、お前がそれを使うには早すぎる。技術も使う覚悟も無い奴がそんな馬鹿みたいな使い方してんじゃねえ!』


 シャドーはあの男との戦闘中に掛けられた言葉が一生脳裏に渦巻いていた。正直全く歯が立たなかったし相手の魔法技術は何倍も上だった。あそこまで虚術(ホロウ)を知り尽くしている者など今まで見た事がない。


 それに自分の倒され方も理解出来なかった。魔導師にとって相手の術理が理解出来ないという事は「死」を意味する。腕の良い魔導師は数秒与えれば攻撃を仕掛ける事が出来る以上、対策が分からない場合は手遅れになる可能性が高いのだ。

 だからこそシャドーは基本的な全ての属性魔法を中級魔法くらいであればそれなりに使えるし、幅広く知識もある。その中でも土と雷魔法には特に自信があったが、それを持ってしてもあの男の放った攻撃は理解が出来なかった。


 男から攻撃を受けた瞬間、確かに何かが腕を掠った感覚はあったが、擦った程度で自分の腕から血の噴水が出来上がる程の出血量になるのは明らかに異常だ。あれが虚術を極めた本来の攻撃方法なのだろう。

 あの男の剣技も中々に凄まじい物だったが、あの男をそのまま放置するにはあまりに危険すぎる。シャドーは脳内でそう警告を鳴らしていた。


 あのような『本物』の攻撃が出来るのならば、紛い物である吾輩の攻撃なんて塵以下だ。

 相手との力量差をあそこまで知らしめられれば流石のシャドーでも自信を無くしてしまう。自分は今まで一体どうやって強気に立ち回っていたのかすら全く思い出せない。


「吾輩は喧嘩を売ってはいけない相手に挑んでしまったのか…?それに吾輩は今までどう立ち回っていた…」


「......今回は相手が一枚どころか五枚くらい上手でしたね。私の情報統率にも問題がありましたけど、それを加味しても相手が強すぎました。あと、そこまで落ち込むのはシャドー様らしくありません。いつものように厨二病発言でもして元気出してください。」


「名が全く知れてないのに馬鹿みたいに強すぎる実力者をここまで隠していた帝都の頭には脱帽だ。あんな事されたら勝てる試合も勝てないしそこまで落ち込むんじゃねえよ。」


 三人は現在、帝都の騎士団が使っている護送用の馬車に乗せられて監獄に向けて移動していた。馬車の護衛として強者パーティとして有名な『彗星の神子』も帝都から派遣されているのでそう簡単には逃げ出せないだろう。


 シャドーだけが仮にここから抜け出そうとしても、自分の持っていた魔力をあの男に全て吸い取られただけでなく、指には幾つもの魔封じの指輪を付けられ、手足は拘束器具によって動きを制限されているし、仮に外に出られたとしても、近くには傷一つない彗星の神子もいる以上は奴らの包囲網から逃げ切る事は絶対に不可能だ。


 ドロシアに渡した保存指(スペアリング)やスペアの剣も全て回収されている以上は搦手も使う事は不可能だし、こうなれば監獄行きを大人しく受け入れるしかない。シャドーは初めて自分があの女に完全敗北した事を受け入れた。


「ドロシア、そしてスペア。今回はお前達に迷惑を掛けたな。今回牢獄行きという恥ずべき結果になったのは吾輩の責任だ。本当にすまない。」


「だからそう落ち込むなってば。俺はシャドーがやった事が悪かったとは言わねえ。派遣されてきた奴らが異常だっただけだ。だから前を向けよ。お前は俺達のトップに立つ男なんだからしっかりして貰わなきゃ組織が緩んじまう。」


「スペアさんの言う通りです。それに今回私達が落とされた事によりあの三人は確実に裏社会の賞金首リストに入ります。シャドー様自ら相手の首を取れないのは残念ですけど、奴らはいつか裏社会の者に殺される事になるので気にする必要なんてありません。それに貴方が死ぬまで行動を共にするのが右腕としての役割ですし、私はどこまでも御一緒します。なので私の頼れるマスターとしてしっかりしてください。」


 ――無理だ。裏社会程度の連中じゃあいつらを消す事は出来ない。あいつらは人外クラスの化物だし、幾ら強い奴らでも無理に決まっている。裏社会の連中全員を集めてようやく試合になるかの強さを誇る相手だぞ。あの警戒心のないアホ毛の女ならともかく、残りの二人がいる以上勝てるわけがないじゃないか。


 こうなれば火精をぶつけられた辺りで撤退するべきだっただろうか?結果だけ見れば奴らとの力量差は――圧倒的だった。


 もしかしたらあの女と初めて空中で戦った頃から既に奴の掌で踊らされていたのかもしれない。その辺でいつも通り撤退宣言を出すべきだった。予告状の成功や裏社会の立ち位置など気にせず恥を捨てて逃げるべきだった。


 なんにせよ『影の鼓動(シャドウ・パルス)』はもう終わりだ。組織の頭はこのまま何事もなく監獄へと送られるし、部隊の人間も一人残らずあの男の手によって帝都の牢獄へ送られたと聞いた。奴らもそのうちシャドー達と同じく監獄へと護送されてくるだろう。ここまでされればこの場から脱走しようとも、完全敗北したアホ毛の女に復讐しようとも思わない。


 今のシャドーの中に眠るのは『絶望』だけだ。もちろんあの女に再度出くわせば確実に殺しに行くつもりだが、そんな出来事がある訳がない。それが分かってる以上シャドーは何一つ行動を起こす気が起きなかった。


「.........二人とも。これまで吾輩に着いてきて1度でも後悔はした事はあったか?最後にそれだけ聞かせてくれ。」


 この質問をしたのはせめてもの罪滅ぼしだ。どうせ二人は『後悔していない』と答えると思うが別にいい。欲を言うならここで『後悔している』と答えて貰ってその罪悪感で吾輩を押し潰して欲しいところだが、無理だと分かってる以上強要はしない。

 二人が後悔していないのなら吾輩も特に思う事もなく、今の状態と比べて少しは自信を取り戻せるだろう。そう思ったのだ。


「そりゃ何度か後悔した事はありますよ。だってシャドー様はめちゃくちゃな事を言いますし、救えないレベルの重度の厨二病ですし、私もかなり手を焼いていますから。」


「それを言うなら俺にもあるぜ。シャドーはいつも口数が足りてないせいで想定外の事ばかりの試練を課してくるから、何度もお前の元に着いた事は後悔してきたぞ。」


 ――お、おう.....完全に予想外の回答だが、別に構わない。今はとにかく罪悪感に溺れたい気分だったしちょうど良い傷薬だ。もっと溺れさせてくれ。


「ですが、私はその後悔する回数よりも圧倒的に尊敬する回数の方が多かったですよ。普段の態度も指示もめちゃくちゃですが、戦闘時や作戦を練っている時のシャドー様はかっこよさと組織のトップに立つカリスマ性しか感じませんでした。ですので、『部分的に』後悔している。と答えさせて頂きます。こういうの、意外と恥ずかしいのでこれ以上言わせないでくださいっ!」


「あぁ。それは言えてるな。確かにシャドーはめちゃくちゃな指示をするが、間違った事は一度もしてこなかったんだ。そういった点は僕もすげーと思ってるぜ。だから、もし監獄から出られたら3人で奴らに絶望という物を見せてやろうじゃねえか。出れねえと思うけどな!」


 二人の言葉を聞いてシャドーの瞳に再び光が灯った。今まで真っ暗だった視界が突如として明るくなり、希望が見えてくる。


「あぁ。そうだな!二人の意見を聞いて吾輩も少しは楽になった。奴らに一泡吹かせる為にも絶対に生きのびてやる。そして再び我々影の鼓動を世に知らしめようじゃないか!」


 ――そうだ。吾輩には頼れる仲間がいるではないか。全員で掛かれば希望はまだある。外に出られると思っていないが、生きていればそのうち奴らに復讐する機会はあるかもしれない。その時は絶対に奴らの息の根を止めてやる。


 そうして護送される馬車の中でシャドーは、0に等しかった自信と戦闘意欲を仲間達によって再び掻き立てられ、奴らに復讐する事を誓った。


『あー!もうっ!次から次へと......!何故か馬車の中は急にうるさくなるし、倒しても倒しても無限に湧くからキリがないのですッ!』


「......なんだ?なんで馬車にいる護衛共がそんな声を上げている。吾輩がせっかく元に戻ったというのに台無しではないか。」


 突然護衛役の魔導師が声をあげるなんて何かがおかしい。何かが起きているのかもしれないと踏んで、馬車にある鍵の掛かっている窓からなんとか外を見る。

 すると作戦に参戦していなかった組織の生き残りと思われる者達がシャドー達を取り返そうと襲いかかってきていた。


「あれは.....今回作戦に参加してない生き残りですね。どうやら私達が負けた事を聞いて縄張りの奴らが殴り込んできたのでしょう。この様子だとサウジストも暫くは危ないかもしれませんね。まぁ、我々には関係ありませんし、どうでもいいですけどね。」


「この街がどうなろうがどうだっていいさ。おうおう。やれやれ!お前ら、俺達を死ぬ気で取り返しに来い!」


 その様子を見ながらスペアのテンションが上がり、そこそこ大きな声をあげる。暫くすると馬車の中がうるさすぎたのか少しすると馬車の中に『重力付与(グラヴィティ)』を直接掛けられた事で三人はその場から屈み込む形で体を固定されたので、完全に外の景色が見えなくなった。


 ――吾輩、ここまで皆に愛されていたのか.....。落ち込んでいた吾輩が馬鹿じゃないか....!


「ふっ。これほどの爆発の音と吾輩を取り返しにくるマウス共。まさにこれは吾輩の思い浮かべた最高のシチュエーション!我のフレイムが更に熱くなり....今ならこの世界すらも焼き尽くせそうだ....!まるでこれはゴッド・フレイムと言っても過言では無い!」


「――またですか.....と言いたい所ですが、元に戻ったようで安心しました。」


 シャドーは絶対に無理と分かっていても命を投げ捨ててまで取り返そうと襲いかかってくる同士達を見て、更に自己肯定を上げながら、元に戻った自分の姿を見てどこか嬉しそうなドロシアとスペアを横目に大人しく監獄へと護送されていった。

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