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第二章 52 『魔女の私は目立たず過ごしたい!②』

 ガーベラは1人の友達から話を聞く為に式場内部を探していた。途中まではロジェと一緒に行動していたのだが、彼女が精霊相手に時間稼ぎしてからは何も知らないのだ。彼女が倒した(らしい)シャドーの事やあの精霊の事など聞きたいことなんて山程ある。


 それを聞くために式場の中を適当に歩いていると、何やら隠れて中の様子を見ているあーるんが居たので話しかけることにした。


「ねぇあーるんさん。ロジェがどこ行ったか知らない?あの子に色々と聞いておきたい事があるんだけど....」


「!?あーびっくりしたぁ....ガーベラさんだったかぁ。ちなみに、ロジェちゃんは今お取り込み中だから余程急ぎじゃなきゃそれは後にしてあげて。今は良い所なの!」


「良い所....?何かあったんですか?」



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



 シャドーとの戦いから暫くすると、別空間に隔離されていたあーるん達や《水冥》と共に行動していたガーベラが戻ってきた。ベージュ達もグレイがしっかり治療してくれたので問題ないだろう。


 今回、あれだけめちゃくちゃな事をやったのに幸いな事に敵以外での死人や重傷者と言った怪我人は1人も居なかった。本当に奇跡である。


 グレイはロジェと合流する前にこの街から撤退していた影の鼓動の組織の人間を全員テレポーター経由で帝都の牢獄に直接送ったらしいし、式場の参列者も50人弱居たがそのうちの30人は敵組織の人間だったらしく、式場の職員にも内通者が何人か居たようなので《紅焔轟者》が全員見つけて焼いたそうだ。


 そんなこんなで依頼のオマケとしてあった『影の鼓動(シャドウ・パルス)』の完全壊滅を成し遂げたという事になる。....ロジェは結局の所何もしていないし、むしろ場を無駄に混乱させたり、事故とはいえ街を丸ごと壊そうとしたりとめちゃくちゃな事しかしていないが。


 そんな式場会場に活気が戻ってきている中、ロジェとグレイはガーデンウエディングの会場に繋がる外の階段で2人きりの状態で話をしていた。

 誰か1人くらいここに来てもおかしくないのだが、誰も来ないあたりどうせあーるんが中に人が来ないように規制でもしているのだろう。....別にそんな事しなくていいのに。


 ――くーーーっ!雰囲気ある場所でのグレイと2人きりの状態、やっぱり何回体験しても少し緊張するなぁ。一応ここは式場会場なんだし、もしかしたら何かあるかもって思うとドキドキが止まらない....!もしかして告られるかな?告白するには雰囲気ばっちりだし、ワンチャンあるかもしれないわよね!きゃーっ!


 頭の中がピンク色なロジェが勝手に1人で浮かれていると、グレイが話しかけてした。


「それでロジェに1つ聞いておきたいことがあるんだが…」


「.....!え?なになに!?答えられる範囲なら答えるわよ!」


 ――何の話かな?グレイは真面目で負けず嫌いで斜め上の事をする事が多いけど、もしかしてこれは期待しても良いやつですか!?期待して良い奴なんだよね?期待しちゃうよ....?もう受け入れる準備は既に出来てるよ!来るならいつでも来なさいっ!!


「結局お前、あのシャドーとかいう男に何をしてあそこまで怒らせたんだ?話を聞いたけど相手は裏社会の中でも有名な組織らしいし、そんな相手を怒らせるって簡単に出来る事じゃない。隠してる事があるならはっきり言ってくれ。」


 ――うん知ってた。この女の子に興味が全くない男がそんな自分から恋愛話なんてするわけないですよね!はいはい知ってた!知ってましたよ私はッ!!!


「.......やっぱり期待して損した。グレイのバカっ。」


「あ?今なんか言ったか?」


「いや別にぃ?なんにもないもんっんだ。ちなみに私はそれに関しては本当に何もしてないから答えられる事はないわよ。」


「まぁいいよ。結局いつもみたいに何か考えがあってあんな事してたのは分かってるし、お前がそう言うなら俺からはこれ以上追求しない。もう終わった事だしな。」


「......ちなみに私、いつも言ってるけど本っ当に何も考えてないからね?あーるんはともかく、あなたまで私の事を策略家だとか変な勘違いしないでよ。」


 ――本当に周りから私がどう見えているのかすごく気になる。私の考えてる事なんて人の視線と今日食べるご飯の事くらいだよホント…。


「分かった分かった。あとお前に届け物だ。暫くの間何も食ってなかったから家で死にかけてたし、これからはちゃんと世話してやれよ。こいつを飼うって言い出したのお前なんだから。」


 そう言ってグレイが指を鳴らすとロジェの頭上から1匹の黒猫が空から降ってきた。恐らくグレイが念魔を無駄使いして連れてきたのだろう。


 彼の虚術の1つに『空間拡張』という物がある。所謂制限付きの時空鞄(マジックバック)のような魔法だ。維持するのに絶大な魔力を消費する点や入る容量に限界がある点などがあるが、その分入れた物の状態を新鮮なまま保存してくれる特殊な術式だ。......グレイは常に限界ギリギリまで中身が入ってるせいでまともに機能していないのが欠点だけど。


 彼はこのような空間拡張や持ち運び式研究室などの変な虚術の使用により、ただでさえ少ない念魔の魔力を9割近くを戦闘に関係ない物に捧げているので、彼は虚術という魔法をそう何度も連発して使えないのである。


 ――ところでその魔法ってそういった使う方をするものじゃないんだけど、本当になにやってんの?


「あー!ちゃんとキルメも連れてきてくれたの!?村に帰るまでもう会えないと思ってたから嬉しい!…てか、この子はあなたの事をめちゃくちゃ嫌ってるのによくここまで連れてこれたわね。何を言って丸め込んだわけ?」


「一応腐ってもキルメはお前の使い魔みたいな存在なんだから無理やりにでもここまで連れてくるのは当然だろ。そもそも定期的な餌やりすらサボって出かけるなんてお前は一体何考えてんだ?ただの猫なんだし見つかっても特に問題ないんだから外に行くなら一緒に連れてけば良かっただろ。」


「あははは......この子を連れてくのを忘れてたぁ。」


「はぁ....昔っからロジェは抜けた所があるけど、ホント何考えてんだよお前は。」


 ――言えない。2人が家に帰ってくる前にこっそり帝都行って寄り道して帰る予定だったなんて絶対言えない!!!


 まるで輝く太陽のような琥珀色の瞳に、飛べないくせに体に小さな羽が2つ生えている可愛い黒猫、『キルメ』は私の使い魔……というか魔物でもなければた正式な使い魔契約すらしていない野良猫である。この子はロジェ達の家で飼ってるペットなのだ。


 キルメはとある事件で出会った頃から何故かずっと私に懐いてくれており、そこから長い年月を過ごしているので、三馬鹿が共に暮らし始めた後で唯一追加された家族と言っても過言ではない。(ちなみに実験動物としてしか見てこないグレイには酷く脅えており、彼が触ろうとすると全力で逃げる。)


 そもそもキルメは一度に食べる量は多いが、1ヶ月は餌を与えなくても余裕で生きていける体質を持つ不思議な子なのだ。なのに空腹で死にかけてるなんて初めての症状だ。何かあったのかな…


「ごめんねキルメ....本当はすぐに村に帰る予定だったし仕方なかったの。その分あとで沢山ご飯を食べさせてあげるから許してね。」


「夜明けの時だ。」


 そしてキルメは何故か知らないが『夜明けの時だ。』と女性っぽいけどちょっと低い声で鳴く謎の猫なのだ。最初出会った時からそうだが基本的にこの言葉以外は話さないので、傍から見れば本当に猫なのか疑わしい存在なのである。別に襲い掛かってくるわけでもないし、面白い鳴き声してるから気にしないけどね....


 キルメを抱き抱えながら階段に寝転がり、ロジェは笑顔を浮かべながらこう言った。


「ふぅ.....とりあえず良かった。キルメもこっちに来るなら私の心配事はもう完全に無くなったし、キルメだけじゃなくてグレイにあーるんもいるなら怖い物なんて何一つ無くなっちゃったわ。ホントに私の為にわざわざここまで助けに来てくれてありがとね。グレイ!」


 これからも私は自分の運の悪さで厄介事に巻き込まれ続ける事になると思うが、信頼出来る仲間が全員揃っていれば何が来ても乗り越えられるだろう。そう思うとロジェは笑みが止まらなかった。


「あぁ。俺もお前が無事に生きててくれて本当に良かったよ。あーるんが書いた置手紙を見てからお前の事をずっと心配してたんだ。よく無事に生きてたな。」


 そう言ってグレイがロジェの頭を軽く撫でてくる。突然の出来事にロジェの脳内が混乱し始めた。


 ――え?急にどうしたの?普段はそんな事絶対に言わないし、どれだけ頭がおかしくなろうがこんな事しないじゃん。もしかしてあの雷に打たれてから思考回路でもおかしくなったわけ?中身でも変わったの?


 ロジェは再び顔を真っ赤し、急いでキルメで自分の顔を覆い隠す。自分の想い人に突然そんな事をされる日が来るなんて思ってもいなかったので勝手に大ダメージを受けた。


「....グレイって普通なら恥ずかしい事を平気でするわよね。女誑しって言われないの?」


「はぁ?お前何言ってんだ。長い事ずっと共に暮らしてる家族みたいな存在が生きてて良かったって言う事の何処が女誑しに繋がるんだよ....。馬っ鹿じゃねえの?」


 ――違う違う…そうじゃない。そうじゃないのよグレイ。あなたがさっきやった行動は私的にクリティカルヒットなのッ!そんな事されたら私の身が持たないよぉ.....。


「とにかく!そんな発言するなんてあなたらしく無いって事よ。普段は死んでもそんなに恥ずかしいセリフなんて言わないから私もびっくりしちゃったわよっ!全くッ!」


「.....お前、もしかしてだけど俺が見ないうちに変なとこでも打ったんじゃねえだろうな?発言の意味わからなさが前より悪化してるし、なんか変だしちょっと頭見せろ。どこか怪我してねえか見てやる。」


「夜明けの時だ....。」


 そう言いながらグレイは顔を近付けて来るがロジェは呆れてるキルメを上手く使って全力で拒否した。ただでさえ隣に座ってるだけでこんなにもドキドキしてるのに、こんな状態で接近されたら自分がどうなってしまうか分からない。


「おいキルメを使ってガードすんな――あぁ!もういい!勝手にしろ!お前がなんか大怪我してても俺は知らねえからな!」


「それに関してはホント大丈夫だから...。怪我する前に基本あーるんが助けてくれたし問題ないってぇ....」


 ――この男、ホント私の事をどう思ってんのかしら。私は1人の女として見て欲しいのに全然そんな素振りないから困っちゃうよ...。


「それで、ロジェ。お前に1つ言っておきたいことがある。」


 ――今度は何を言うつもりなのかしらこの男は。もう心臓バックバク過ぎて体力持たないよぉ…


「な、なに?今度はどうしたの?」


「なんか帝都の王城にいるおっさんが凄い怒ってたぞ。話があるから帝都に帰ったらまず一番に王城まで来るように伝えとけって言われてさぁ....。お前、これの次は何やらかしたんだ?」


 ――――――はい?


「.........え?ちょっと聞き間違いかもしれないからもう一度言ってくれる?」


「だから、王城にいる地位が高そうなおっさんが帝都まで戻ってきたらとりあえず王城まで来いって言ってたぞ。」


 あれ?何かがおかしい。少なくとも今回は(多分)ロッキーさんに何も迷惑かけてないし、むしろ影の鼓動の完全壊滅をやってのけたのだから怒られる筋合いなんて無いはずだ。.......私は何もしてないけど。


「...........ちなみになんだけどグレイ。あなた何も余計な事はやってないわよね?例えばあーるんみたいに王城をぶっ壊したとか、中にいる人を何人か殺しかけたとか。」


「おいおい。俺を馬鹿にしてんのか?そもそも一般人なんかに手を出した所で何も旨みがないし、第一それはお前が1番嫌ってることなのは理解してるからやる訳ないだろ。」


「そうよね!グレイはあーるんと違って話が通じるからあまり問題起こさないし、大丈夫よね!あはははは....」


 じゃあ何故怒ってるのかしら.....?私がロッキーさんと絡んだのだって最初の方で屋敷の壁をぶっ壊した時だけだし、その後はすぐに帝都に帰ったはずだよね。何しに帰ったのかは知らないけどなんで私に.....?


「あー。でも原因っぽいものなら少しだけあるぞ。ロジェが今持ってる爆発ポーションの上位互換の物を王城に投げて壁をぶっ壊した事と、その怒ってたおっさん相手に新しく作ったポーションを使わせて性能実験したくらいだ。けど全部元に戻してからこっちに来たし、怪我した奴も気絶した奴も全員生き返ってるし問題ないはずだろ?俺からは他に思い当たる節はないけど、なんか問題あったか?」


 ―――それよそれ。絶対その事で私にクレーム入れに来たでしょロッキーさん。もうやだ現実逃避したい.....。


 というかなんで毎回ピンポイントで1番襲っちゃいけない王城ばかりみんな襲いかかるのよッ!確かに私が勝手に1人で帝都に行ったことも悪いけど、私が居ないからってやり過ぎにも程があるでしょうがっ!!


「あれ?もしかしてまずかったか?けど大丈夫だ。さっきも言ったが全部元に戻してきたし、壁もちゃんと修復してきたし大丈夫だと思ってんだが.....それなら『無闇矢鱈に人に手を出さない』ってルールも守ってる事になるだろ?」


 ロジェは一度深呼吸し、手元で抱き抱えていたキルメに話しかける。キルメは私を見て怯えることなんて基本ないし、その時の声はちゃんと優しく話していたはずだ。なのに何故かキルメが私の顔を見て酷く怯えている。不思議な事もあるものだ。


「ねぇキルメ?あなたは嫌かもしれないけど1つだけお願いがあるの。今すぐグレイに向かって爪を立てて攻撃してきてくれないかしら?やってきてくれたらあとで沢山ご飯あげるからお願い......ね?」


 全力で威嚇して凄く嫌がるキルメを余所目にロジェは無理やりビックスポットンで巨大化させ、グレイに向かって無理やり攻撃させるよう差し向けた。


 そしてこの後、効果時間中にキルメが暴走して式場会場の中を逃げ回り、その中にいた人達が追いかけ回されたり、攻撃されかけたりと大変な騒ぎになって挙式会場のほとんどが使い物にならなくなってしまうのだった。この事件はキルメ達に追いかけ回された人達の間で『泣き喚く黒猫伝説』という変な噂が完成し、『この場所で式をあげると一生新郎新婦が別れない』という伝説が出来上がる事になるのだが、それはまた別のお話。


 ――はぁ....グレイのせいでロッキーさんが怒ってるなら、まだまだ帝都から離れる事は無理そうだなぁ。せっかく私以外が頑張って依頼以上の事を成し遂げたってのに、これだけやっても帝都で自分の身分を隠し続けなきゃダメだなんて最悪だよぉ。



 もうやだ.....目に見えてるお説教から逃げ出して人目のない場所で目立たず過ごしたい......。

これにて第二章 『挙式護衛編』は一部終了になります!まだ少しだけ書き残した事があるのでもう少しだけ第二章が続くのですが、皆様いかがでしたでしょうか?


この章は一章と比べて3倍くらいの長さになってしまいましたが、作者的には書きたい事は大体書けたのでかなり満足しております。(三馬鹿が揃うまでのチュートリアルが長すぎた事や、最後の方は少し駆け足気味な事になったのは反省点ですが...。)


ようやくロジェの想い人、グレイが合流という事で問題児の三馬鹿がようやく全員出揃いました。謎のペットのキルメも追加され、仲間が全員合流した事により、安心感に包まれた事でロジェの今まで被っていた化けの皮が更に剝がれます。それによって今までよりも素が出たり、今よりも更に自由にし始めるかもしれません。


そして第三章ですが・・・もちろん描きます。ですがここ最近は犯罪組織の話しか書いてなかったので、次はあまりハードな戦いが多くない比較的平和な内容をやろうと思っております。


ここまで読んで面白かった!とか、続きが気になる!とか、あれば評価や感想など頂けると創作のモチベになるので、送ってくれると嬉しいです!


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