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第一章 07 『説明』

 

「こうなったのは全てヒューさんのせいですからね。私は一生恨みますから…。」


「僕だってあんな手段取りたくなかったさ。けど君が逃げようとするんだから仕方ないだろ?それに話をするだけで大量の報酬を貰えるんだ。旅人のロジェさんからしても悪くない話じゃないか。」


「私は大きく目立ちたくないって言ってるんです!お金なんていくらでも稼げるので別に困ってないですし、名誉なんて私は求めてない!!!!」


 私はようやく副作用の虚無顔から解放されたので、不機嫌そうな顔をしながら今帝都の王宮内にある廊下を歩いていた。現在腕を頭の後ろに回して口笛を吹きながら歩いている機嫌良さそうなヒューと共に広い王城の廊下を歩いている。


 結局あの後龍達にペンダントも返しそびれるし、王城に連行されるしで色々と最悪である。

 普段ならば魔力があるので初級の雷魔法を応用した痺れ付与の魔法なんてどうとでもなるのだが、現在魔力切れに近い状態のためロジェには何も出来なかった。魔力切れで意識が飛んでいないのは奇跡である。


「本当に変わった人だな君は…。普通なら大喜びする所なのにしないなんて…面白い人だよ君は。」


「ホント。あなた達帝都の人って皆自分勝手で困ります…。たまには巻き込まれる側にもなって欲しいくらいですよ。」


 そもそも私は『魔女』の一族なのだ。迫害種族のため、この事がバレれば恐らく私は即処刑されてしまうだろうし、住んでいる村にも何かしら大きな被害が出るかもしれない。


 魔女とは2000年前にこの世界を滅ぼしたと言われる【恐怖の魔女】が存在した。


 その時は世界があと少しで完全に崩壊する所を、勇者が放った一撃により魔女を撃退出来たのでこの世界の文明全てが滅びることがなかったが、その出来事を連想させるような種族である魔女の一族は未だに世界中で迫害対象となっている。


 【白銀の樹林】の近くにある私達の小さな集落は魔女や妖怪と言った世界では差別対象とされている種族が多く住んでいるため特には問題にはならないが、帝都では違う。

 存在が目立つほど迫害されてしまうリスクが大きくなるロジェにとって名誉など全く必要が無いのである。


「お客様。本日の目的のお部屋に無事に着きましたので、どうぞ中へお入りください。」


 そんなこんなでヒューと話していると案内してくれていた執事さんらしき人の動きが止まり、中に入るように指示された。

 私が中に入ろうとドアノブに手を触れたその時、ヒューが執事さんに向けて質問をした。


「あのすみません。今回中にいる人ってロッキーさんだけですか?それとも他に誰かいたりしますかね?」


「はい。本日は騎士団総司令官のロッキー殿の他に貴族の方や国の研究機関の者が何人か中におられます。失礼な事をなされないようお気を付けてください。」


 え?そんな凄い人達が中にいるの?!ほぼ犯罪紛いな事をやらかしてる私に何するつもり!?もしかして魔道具の事がバレたのかな。私は極刑にされちゃう?もう帝都やだ…。


 どうやら中には国の偉い人達が沢山いるらしい。あまりの驚きと恐怖でドアノブを握っていたロジェが、その場で固まり手が震え始める。


 一か八かでドアノブから手を離して質問してみた。


「あのすみません。今から私だけ外に出してもらえたりしませんか?」


「申し訳ございませんお客様。いくら国を救った英雄様でもその申し付けだけはお断りさせていただきます。心の準備が出来ましたら中へとお入りください。」


「あ、アー。ワタシオナカガイタクナッテキタナー。イチドワタシハトイレノホウヲオカリシタ--」


「お客様。緊張なされているのは分かりますが、ご心配なさる事はありません。国を救って下さった英雄様であれば余程のことがない限り悪いようにはされません。どうぞ、中へとお入りください。」


 どうやらダメらしい。渾身の演技を見ても直ぐに返事を返してくるあたり私を絶対に逃がしてくれないようだ。

 てか私が余程の悪いことしてるから行きたくないんですけど!?


 この場をどう切り抜けるか考えていると、ヒューが私の腕を掴んでドアを開いた。


「!? ちょっと!何するんですか!」


「時間が無いんだろ?ならさっさと中に入って終わらせなきゃ!」


「また勝手な事して!まだ私の心の準備が――」


 出来ていない!と言おうとした時には既にロジェ達は中に入っていた。この男は色々と相性がかなり悪そうだ。


「大変長らくお待たせいたしました。騎士団総司令官のロッキー殿、そして国を支える貴族の皆様。私は【彗星の神子】でリーダーをしているヒューと申します。只今この場にこの国を救った新たな英雄様をお連れ致しました。皆様暖かくお迎えください!」


 普段から人の視線を抑えているせいで、私に向けられている大量の視線に落ち着かない。現実逃避したい…。




  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼




 とりあえず席に案内されたので、私は席に座った。普段ではありえない空気感で、緊張が止まらない。


 目の前にはかなり背の高い大柄の怖い人がいた。その男は綺麗な禿頭で、顔に幾つもの傷が残っているし、体格もかなり鍛えられていた。年齢は40代のように見えるが、実力はヒューに負けず劣らず強そうな気配を感じる。…というかそもそもまだヒューくらいしか帝都で強そうな人間に会ってないけど。


「ヒューよ。ここまで彼女を連れてきてくれてとても助かった。心から深く感謝する。」


「ありがとうございます。ロッキー殿。」


「すまない。私の紹介が遅れたな。私は騎士団総司令官のロッキーだ。この国で何かあれば気軽に私に言ってくれ。大体のことはしてやれる。そしてそちらの者よ。名はなんというのだ?」


 この禿げた人は騎士団をまとめる人だったんだ…。名前を覚えるのは苦手だけど、忘れないようにちゃんと覚えておこう。


「…。私はロジェ、様々な場所を旅する魔導師です。先程は広範囲の魔法を無許可で放ってしまってすみませんでした。」


「ほう。ロジェ殿は旅人だったのか。幸いな事に建物にも騎士団にも誰1人被害が出ておらんし全然構わん。」


 どうやら私が起こした大爆発?の件は咎められないらしい。とりあえず一安心だ。


「それでロジェ殿、1つ確認があるのだが良いか?」


「先に言っておきます。私があの時に使った魔法は失敗した術式です。本来の効果であれば龍の意識だけを奪うものであり、人の意識まで奪うつもりはありませんでした。そのため私は今回の事件で沢山の方から名誉など受け取る資格はありません。その事を前提でお話して頂けると助かります。」


 そう話すと、ロッキーが驚きながら言った。


「!? あれほどの威力を持つ魔法が失敗作だと…!?貴方は一体どこまでの実力を持つ魔導師なのですか?」


「私の実力はまだまだ未熟者です。今回の事件で国を救った英雄などと称えたいのであれば、こちらにいるヒューを称えてください。彼は私の魔法を見て即座に空中に逃げる選択を行えるような状況判断力もあり、あの魔法を間近で食らっても意識を失うことなく耐え切りました。龍を倒せる実力がある彼の方が私よりも英雄に相応しい。」


 彼が龍を本当に倒せるかは知らないけど、自分でかなりの実力者って言ってたんだからそれくらいの実力あるでしょ。これ以上私を厄介事に巻き込まないで!


 もう色々と無理だから!!!!!


 横目で彼を確認しながら「受け入れろ」と口パクをしながらサインを送る。そのサインに気付いたのか彼は言った。


「ロジェ殿。そのお言葉有難く頂戴致します。ですが私はその意見には反対です。私は戦場で彼女の活躍を見ておりましたが、彼女は一瞬で高度な広範囲魔法を発動させております。私はそれなりに戦闘力があるのは自覚していますが、龍に関しては仲間達と協力しなければ1匹も倒すことができませんので、彼女の実力には到底叶いません。戦場での活躍も含め彼女を称えるべきだと言うのが私の意見です。」



「……………………………………は?」


 想像とは違う返答が帰ってきたので、思わず声に出してしまった。彼はどうやら出したサインの意味を勘違いしているらしい。

 文句を言いに行こうとその場から立ち、彼のいる方向へ向かおうとしたその時、何かを察したのかロッキーが咳払いをして止めてきた。


「…とりあえずそこまでだ。両者の言い分は分かったが今はその事で2人を呼び出した訳では無い。使える時間が無いのだ。その件は後で問う。だから今は我慢しろ。」


 なんか色々とすみません…。


 とりあえず厄介事を押し付けられることは無さそうなので、一旦席に座り直す。ロッキーは話を続けた。


「とりあえず今回の事件はご苦労だった。2人を中心に戦力として参加した冒険者全員にそれなりの報酬を支払う予定だ。それで問題ないな?」


 私はただ事故で空から落ちただけなんだけど、お金なんて貰ってもいいのだろうか?

 だがその都度会話を止めていても話が進まないので黙って話を聞く。


「だがその前に、戦闘面が保証されている2人には1つ頼みたいことがある。現在帝都の復旧作業などがあり戦力をそちらに回すことが不可能なのだ。2人にしかこの依頼を頼めない。すぐに行けとは言わないが【双璧の砦】というダンジョンへ向かい、中の様子を確認してきて貰えないか?」


 …いや無理ですけど?


 私の戦闘力なんて自慢じゃないけどこの世界で最弱と呼ばれてるサンドホークと同じくらいなのよ!そんな私がダンジョンに行くなんて自殺行為だわ!


 それに先程の落下で薬品鞄からいくつかポーションが無くなってしまっている。爆発ポーションを取り出す時に鞄を閉め忘れていたので、途中で落としたり中身が割れたりしたのだろう。


 現在ロジェが出来る攻撃手段も限られているのだ。そんな状態で☆8の難易度であるダンジョンの双璧の砦に行くとかまさに自殺行為である。


 うんうん。これは絶対断ろう。


 ここで無理に名をあげる必要もないし仮にヒュー達が手伝ってくれるとしても、中で何が出るか分からないダンジョンなんて行きたくない。


「あのすみません。その依頼なんですけ――」


「いいでしょう!【彗星の神子】とロジェ殿でその依頼を受けようじゃありませんか!私達は帝都に返しきれない恩もあるのだから断る理由がない。龍を仕留めきれる程の実力があるロジェ殿までいるならとても心強い。我々5人でこの依頼を完璧にこなしてみせましょう!」




 …………………………………………はい?




 ねぇなんで私を巻き込んだの?君達のパーティで勝手にすれば良いよね?私を巻き込む必要あった???なんなの?君は何か余計なことをしないと死ぬ病気なの?馬鹿なの?


「依頼を受けてもらえるのはとても助かる。今の帝都は怪我で未だに動けない者も多く、帝都の復興作業もあるのだ。無茶を言ってるのは分かっているが、くれぐれも無茶しないよう頼んだぞ。」


「あ、あの!すみません私は――」


「素晴らしい!国を救った実力者2人が協力すれば怖いものなしではないか!」


「双竜の砦は主に龍の住処とされているダンジョンでお馴染みだ。ロジェ殿がいればきっとこの襲撃に関するヒントも得られるだろう!」


 周りの貴族達が勝手に盛り上がり始めてしまった。拍手までしている者もいるし、こうなればもう断るなんて言い出せない雰囲気である。


 どうしていつもこうなるのかな…。あー…現実逃避したい。


サンドホーク...この世界では「最弱」と呼ばれるハリネズミの魔物。

攻撃性もなく子供が少し叩けば死ぬ程度の耐久力しかないので、ペットとして気軽に飼われている。


小説活動自体初心者なので、誤字脱字などあれば気軽に指摘してください。

評価や感想など頂けると創作のモチベになるので、送ってくれると嬉しいです!


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