第二章 44 『怒る精霊①』
――さてどうしたものかね…。
ライトは式場に仕掛けたとある物を発動しようと動き出していた。シャドーが突然作戦変更の指示を出したのは意外だったが、そうせざるを得ない状況になっているのだろう。
この作戦を潰さない為にもライトは自分の指示を忠実にこなす。それがライトの影の鼓動としての仕事だ。
――上手く罠にかかってくれていると良いが、あーるんと名乗る女は上手く引っ掛かるだろうか?
シャドーは現在自分が尾行されている事に気付いている。それを利用して奴を抹殺すればシャドーからの命令にあった『主戦力の1人であるピンク髪の女をロジェという女から引き剥がせ』という命令がこなせるのだ。
そもそもロジェとか名乗る女は勝手に何処かへと飛んで行ったのでスペアは何もしなくても良いが、奴の動きは異常なくらい早い。
だからこそしっかりと奴らの距離は引き剥がす必要があるのだ。
「そろそろ終わりにしましょうか、あーるんさん。貴方の尾行は既にバレてますよ。」
そうしてスペアは屋内会場に仕掛けていたシャドー特性の魔法が込められた保存指とシャドーの生み出した蠟燭型の空間転移用の魔道具を起動させ、相手に宣戦布告をする。
起動させたのは屋内用会場に1つだけ仕込んでいた蝋燭型の魔道具だ。この魔道具はシャドーが作ったものなので理屈はよく分からないが、話によれば魔法の効果範囲を拡張出来るらしい。
シャドーの持つ『虚術』の魔法が入った結界指と合わせて使えば空間と空間が離れて戻れない。と錯覚させる事が可能になる。脱出するならスペアの持つ結界指と蝋燭を同時に壊さねば不可能だろう。
「チッ。やっぱり気付かれてたか。まぁいいさ。お望み通り出てきてやるよ。」
そうしてあーるんと名乗る女が姿を見せた。この女の擬態能力はやはり異常だ。とてつもなく技術が高い。
「それで?お前は式場から離れたこんな場所で何やってんだ?何か用がなければわざわざ破壊された後の屋内用の式場会場なんて来ねえだろ。まだ何か企んでるならさっさと全部吐けよ。」
「どうやら君はもう僕の正体に気付いているようだね。まぁ君はもうこの空間から暫くは出られないから種明かししてあげよう。」
そうしてライトは自分の変装衣装を剥ぎ、本来の姿を見せた。筋肉質な体に腰に構えた1本の長い剣。そして絵に書いたような殺し屋と言わんばかりの顔つきをした屈強な男に変化した。
「なんかやたらタイミング良く話が動くからおかしいと思ってたけど、やっぱりてめぇが内通者だったか。ここまで警戒しといて正解だったよ。」
「ははははは!俺の名前はスペアだ。お前の擬態能力は裏社会でもトップクラスだし、ここまで誘導すんのも苦労したぜ。だけどてめぇも、この街も、どう足掻こうがもう終わりだ。俺達影の鼓動が完全に動き出した以上は我々の手に落ちるのも時間の問題だからなぁ!」
「さぁ?それはどうかな。僕の信じる最強の魔法使いがこの街を全て守りきるって言ったんだから、てめぇらの力じゃ落としきれねぇよ。あの子ならきっとこの街も式場も全てを守りきるし、てめぇらのボスも倒してくれる。だから今僕は僕の出来る事をするだけだ。」
「はぁ?どうやってだ?この式場は既に大量の仕掛けが施されてる。ここにいる仲間に指示すれば今すぐにでも終わらせれるし、何よりここの職員を含めた会場にいる人間の過半数は俺の内通者だ。その最強の魔法使いとやらはどこかへ飛んで行ったと言うのに、どうやってこの建物全てが一瞬で崩壊するような魔道具や仕掛けをどうやって止めるってんだよ!」
まだ空間を切り離してから時間は経っていないので、ギリギリ連絡は届くはずだ。一応作戦の開始時刻は伝えてあるが、今からスペアが部隊に連絡を出せばすぐにでも奴らは動き出すだろう。
だがその言葉を聞いて、目の前の女は大きな高笑いを上げた。
「……ぎゃはははははは!まだてめぇは嵌められたって事に気付いてねぇのか!愉快な奴ばっかだなこの組織は!知れば知るほどマヌケばっかで笑いが止まらねえよ!」
「……なに?」
そう言ってあーるんと名乗る女は指を鳴らした。すると、彼女の後ろから緑の髪の男とアルロが姿を見せたのだ。そしてアルロの手には連絡石が握られている。
「やれやれ……ほんと姉ちゃんは人使いが荒いな。僕は依頼の監視役で来ただけだと言うのに。少しは怪我人も気遣ってくれよ。」
「……全てこの耳で聞いてたぞライト。いや、影の鼓動の幹部のスペア!」
「!? まさかお前!」
「あぁそうだ!僕の大好きな子が命よりも大切にして持ってる特別な力を持つ道具を借りて、2人も一緒に僕と尾行してたんだ。てめぇの発言は連絡石を通じて式場のアナウンスから全体に響いてる。会場ではてめぇの発言を聞いていたあの婆さんが結界がない事を良い事に仕掛けや仲間を全員燃やして破壊してるとこさ!」
クソ!してやられた。まさか姿隠しの効力を持つアイテムを使うとは想定外だ。これでは式場内部に仕掛けた部隊が崩壊し、作戦が通用しなくなるじゃねえか!
「いつからライトと入れ替わっていたんだ。というか本物はどこにやった!答えろスペア!」
「バレたなら仕方ねぇよな。俺はずっと間抜けな爺さんで笑ってたぜ。影の鼓動の侵入にも気付かねえし、本物に無理やり自白させた情報をちょっと話せばすぐに信じるんだからちょろいちょろい。だけど本物は我々の手で管理してるし、全員無事だから予告状が終わればちゃんと解放してやるよ。だから――安心して死ね!」
そう言ってスペアは即座に手元の剣を抜き、不意打ちと言わんばかりの速度でアルロの首を取るべく地面を蹴るが、近くに控えていた緑の髪の男の剣によって不意打ちを止められる。
「あのケーキに取り付いてた魔物にやられてた男か。てめぇじゃ前菜にすらならねぇ。どいてろ!」
「おっと。そんな簡単にやらせませんよ。この人を守るのは今回の僕の仕事だし、僕だってある程度鍛えてるから舐めてもらっちゃ困る。まぁ本当なら僕の手で影の鼓動に落とし前を付けたかったけど、彼女に出番を譲ったし、今回僕は補助に回らさせてもらうよ!」
そう言って緑の髪の男が片手で剣を止めながら自分の後ろに小さな氷塊を大量に出現させたので、その光景を見てスペアは1歩引いて戦況を立て直す。そしてその氷塊を薙ぎ払おうとした瞬間、氷の塊が消えた。
――いや、消えたんじゃねえ。
「おいどこ余所見してんだよ"!」
―――俺が例の女に蹴り飛ばされたんだ…
あーるんの強力な蹴りが発動したためスペアは派手に吹き飛び、隔離された屋内会場の壁に大きくぶつかった。空間が離れている以上は壁を突き抜ける事は無いが、壁がなければきっと突き抜けて外まで飛んでいっている程の威力だ…軽く蹴ったにしては力が異常過ぎる。
――これは……まずいな。舐めプしている余裕は無さそうだ。
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「結局またノーヒントで探す事になりましたね...あのおじモンめっ!余計な事しちゃって…次会ったら絶対文句言ってやるんだから!」
「でも意外とかっこよかったでしょ?死ぬかもしれないって言うのに同士の為にあそこまで命かけれるんだもの。人気が出るのも頷けるわね!」
「あれは猫じゃなくて人間ですっ!アレを猫と同じにするとか可哀想なので一緒にしないで上げてください!!」
ロジェとガーベラは再び空中で散策を再開していた。一応自傷ダメージでやられたおじさんにはあと僅かしかない貴重な回復ポーションをぶん投げてきたので生きてるとは思うが少し心配である。喋れる状態にまで戻ったら花束はどこに飛んでいくのか等も聞きださなくてはならないのだ。
「でもさっきからこの辺りに向かって色んな人が攻撃してるし、あの人みたいに奪い合いをしてるならこの辺りに花束があるんじゃないかしら。影の鼓動が警備の人と戦ってる可能性もあるけど、雨もなんかさっきと比べたら比較できなくなってるぐらいに強くなってる、もしかしてこれも何か関係してるのかしら。」
それは不思議な光景だった。空から見れば分かるが、さっきからずっと空中のとある場所に向かって爆弾を投げたり、魔法を使っている音や痕跡が見えているのだ。1つの戦場として攻撃が激しくなっている可能性も否定は出来ないが、さっき花束が空中へ飛んでいった事を考えればあそこで花束を奪い合っている可能性がある以上、見に行かないわけにはいかない。
「とにかく行ってみないとわかりません。まさかとは思いますが、ガーベラさんは精霊に喧嘩売ったりしてませんよね?精霊は理由もなく人を無暗に襲う事はないはずなんですけど、鬼化してる最中に何かしてたとかだったら大変な事になります。」
「私を何だと思ってんのよ!確かに人格は20%くらい乗っ取られてたけど、そんな自殺行為みたいな事なんてするわけないじゃない!というかこの街に精霊がいるの...?私はそんな事聞いてないわよ。」
2割も乗っ取られてたなら有り得るのでは?というかそれが本当なら、私も鬼化してる状態で襲われてる可能性がそこそこの確率であったわけだし本当に怖すぎるんだけど...
「私が見かけたのは子供サイズの精霊です。見た目からして多分水属性の精霊だし、子供がいるという事は高確率で近くに親が存在する事を意味するので、間違いなくこの雨と関係してると思います。私の知らない間に喧嘩売ってない事には安心しましたが、もし精霊が怒っているなら怒りを沈静化しないと街が滅ぶかも。」
そもそもなんだけどこの街ってなんでこんな短時間に二回も精霊が現れるわけ?普通こんな街中に精霊ががっつりと入り込んでくるわけないし、『空想の具現化』も押し付けたから効果を発揮しないはずなのにおかしくない?この街呪われてるのでは?
「ちなみにロジェはその精霊の沈静化の方法は分かってるの?」
……わかるわけないじゃん。運が悪い私は精霊は当たり前のように何度も遭遇してきたけど、戦うのはいつだってグレイやあーるんだし、私がその場にしてもやることは基本応援と治癒魔法を使ってあーるんを治療するくらいだ。だから精霊の対処法なんて知らないし、どうやったら意思疎通を取れるかも分からない。
――分かるのは精霊が強いって事だけです。誰にでも分かる事しか分かりません…
「……無駄に精霊と遭遇しているので攻撃パターンはよく知ってますが、それ以外は詳しいわけじゃないのでなんとも...…でも今の状態でも分かるのは、怒った精霊にはこちらもそれなりに強い攻撃を続けるとおとなしくなるかもしれないという事だけです。ちなみにガーベラさんって鬼化はもう一度出来ます?」
合ってるかは分からない。分からないけど、いつも戦ってる2人は攻撃を続けて追い返しているのだ。だから多分間違いではないはずだ。分かんないけど!!!
「なるほどねぇ。ちなみに変身自体は自体は一応出来なくはないわ、けど今はあまりやりたくはないかも。なんたって怖いし...。でもどうしてもやれっていうならやるわよ!」
「雲のアレと戦ってる時のガーベラさんはどこ行ったんですか...」
「あの時は仮面に乗っ取られてたから戦闘意欲を掻き立てられてただけよ!あれに力を授けられてからはあの時ほど戦いたいと思わなくなってるし、力以外元に戻っちゃった。」
仮面に誘惑されてるとやたら戦いたくなるとかもう呪いのアイテムじゃん。やっぱあの仮面怖いよ...。そしてなんでガーベラさんはそんな危険なアイテムを使いこなしてんの?仮面を渡したのは私だけど、無暗に使わない方がいいよそんなの。
「まぁとりあえず事情は分かりました。なら私の方で何とかしてみます。言っておきますけど私はあまり戦闘力は高くないというかほぼ0に近いのであまり期待しないでくださいね!」
「あの時ケーキを爆発させたくせに、そんな事よく言うわね...ずっと思ってたけどロジェはなんでそんなにも自己評価が低いの?あなたは強いんだからもっと誇っていいのに。」
「....何度も言いますが、あれはたまたまですから。運が良かっただけですよ。」
――誰か知らないけどあの時ケーキを止めてくれた人、本当にありがとう!この事がバレてたら私がちゃんとした犯罪者になってたわ!!!
そんな会話をしていると、ロジェの視界に何か高速でこちらにやってくるのが見える。よく観察するが距離があるのでよくわからない。
「ガーベラさん。こっちに向かって来てるあれって何か分かります?」
「うーん...何かが来てるのは分かるけどはっきりとしたのは分からないわね...。攻撃が徐々に私達のいる方向に近付いてるのは分かるけど、はっきりとは分かんないわ。」
もしかしたら魔物か何かに花束が引っ掛かっているのだろうか?だとしたら上手く奪い返せばいいだけだし楽なんだけど....
そうしてこちらに向かってやってくる不思議な何かを眺めていると、ついに視界に捉えられる位置まで何かが近付いてきた。
―――あれは...もしかして親精霊?
そしてロジェの目の前に巨大な雨雲が出現し、姿を突然現した。大きさ的に式場で見つけた子精霊の5倍はあるだろう。精霊から感じる力も強さも明らかに異常だし、間違いなくこの精霊は怒ってる。
「きゅ。きゅきゅきゅきゅきゅ?」
――やばい。戦った事がないし、相手が翻訳ポーションも在庫切れだから何言ってるかわからない。
どんなに弱い精霊であろうと1度でも精霊の類倒せば、精霊の命を狩った証明として相手の言語、精霊語が分かるようになるという非常に嬉しいようで嬉しくない戦利ボーナスが存在する。なぜこんな力が貰えるのかの理屈は未だに解明されていないが、精霊に関する種族は仲間意識が非常に強いので言語が分かる精霊以外の種族を見つけた場合、他の精霊達が敵を取りやすくするためにしているというのが一番の有力な説らしい。本当ならいい迷惑である。
「ちょっとロジェ!なんかやばそうだけどどうするのよこれ!」
私は生まれつき運が悪いのでこういう絶望する場面に何度も出くわしてきた。だからこそ言える。
――戦闘出来ない私がこんな怒った精霊相手に足掻いてもどうにもならないじゃないかと。
こうなったら話せる自信はないが、一か八かでコミュニケーションを取れるか試してみる。運が良ければ話が通じるだろう。何もせずに命を落とすぐらいなら適当に会話をして時間を稼ぎ、騒ぎを見つけたあーるんに助けてもらう事を祈るしかない!
「きゅうきゅーきゅ?きゅーきゅうきゅうきゅ、きゅきゅ!(なぜ怒っているのですか?手伝える事があれば、私も協力しますよ!)」
見様見真似だけど、ちゃんと私の言葉が伝わってくれたらいいな。欲を言うならこの言葉を聞いて飛んで行った花束の場所を教えてくれるといいんだけど....。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
―――――なんだとッ...!この、人間風情がッ!
親精霊は現在、魔力が異常な女に確認の為の質問をしていた。この母は温厚な性格だし、感情に流されて暴れる程精神が子供ではないし、種族の中でもトップクラスで平和主義な性格をしていると言われている。だから母が質問したのは「1つ質問があります。貴方は私達に攻撃してきましたか?」という内容だった。
本当に自首するのであれば治す方法だけを聞いて終わりにするつもりだったし、嘘をついて逃れようとするのであれば即座に捕まえてから街から離れ、あまり影響のない場所で尋問のような事をするつもりだった。黒装飾の男にもこの女の事が終われば同じ事をする。そのつもりだった。
だが、目の前の女は予想外の事を発言したのだ。
――何が「お前のような弱者に構ってる暇は価値がない。失せろ。私の話が聞こえなかったのか?」だ....!ふざけるんじゃない!精霊術による強力な魔法も使えない三流程度の人間がッ!
子精霊に攻撃したら、話を聞いた親精霊が報復として街や国は崩壊させる。その常識を知った上で私に向かってその発言をするとは相当死にたいようだなこのクソ尼ッ!
聞き間違いな訳がないが、母はもう一度だけ確認する事にした。
「私の聞き間違いか?もう一度同じ質問をするぞ。」
精霊は人間の言葉を喋れないだけであって別に人間側の言葉は理解出来る。過去1000年近く生きてきたが、遭遇した冒険者は全員この事を知っていたのでこれは共通認識だと思っていたし、同期の高位精霊や契約精霊達も皆口を揃えてコレが常識としてこの事が伝わっていると言っていた。
なのになぜ我々の精霊語を使ってこの女は話す!分かってやっていると考えれば余計に腹立たしいッ!
目の前の女は迷いなく、こう答えた。
『きゅきゅう。きゅきゅーきゅう、ききゅう。(聞き間違いじゃない。あれは全て私の発言だし、これは愚か者への配慮だ。)』
―――なるほどなるほど。.どうやら聞き間違いじゃないようだな.。つまりこいつはわざとしているのかッ!
『ちょっとロジェ!なんかさっきよりも相手が怒ってるんだけど本当に大丈夫なの?これ!』
私を煽ってきた女は全てを諦めたかのような間抜けな顔をしていたが、どうやら後ろにいる女はまともだったらしい。この忌々しい女は確実に処すとして、後ろの女は見逃してやるのも悪くはない。そもそも弱者に手を出すつもりはないので、攻撃する際は彼女だけには当たらないよう手加減しよう。
そんな事を考えていると、魔力が異常な女は更に口を開いた。
『きゅうきゅきゅー?きゅうきゅ、ききゅっきゅーきゅうきゅ!(どうやら相手は聞く耳を持つ力すらない愚か者らしい。こいつの子供?も大したことなかったし、残念だったよ!)』
『もう!そのきゅうきゅう言うのやめなさい!私は何言ってるかわからないんだから!』
――こいつッ!更に口を開いたかと思えばすぐに煽り、挑発ついでにうちの子まで攻撃したと自白しやがってッ!絶対にこいつだけは許さない。地の底まで追いかけて体を剥ぎ、内臓を抉り出して破裂するまで水攻めしてやる。絶対に絶対に...!
『きゅうー。ききゅきゅうきゅう....。きゅうきゅう?(ごめん。つい私の本音が出ちゃった...。許してくれないかな?)』
その言葉を聞いて堪忍袋が切れ、母は叫びながら目の前にいる忌々しい女に全ての怒りを向ける事にした。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
―――どうしよう。適当にきゅうきゅう言ってたら相手が本気怒ってしまった。
ロジェは魔力の乱れを察知し、即座に逃げを選択した。怒り狂う精霊の力によって災害クラスの嵐がこの街を襲っているし、ここまで怒った精霊なんて私は戦った事がないので本格的に倒し方がわからない。私は普通の精霊すら戦った事もないんだけど!!!
「ロジェ!あんた本当に何したのよ!」
「私ですか!?私はただ困ってるなら力になるって言っただけですよ!他は何もしてません!!」
ロジェが言ったことは、「困ってたら私も助けます。」とか「この雨だけでもやめてくれない?」とかの頼み事だけだ。一度も挑発なんてしてないし、誤解されるような発言は1度もしてないのだ!
――なのになんでこんな怒ってるの…?
『きゅきききゅきゅー!!!』
精霊が何か叫ぶ度に雨風が強くなるし、遠くの景色が見えなくなるほど雨が降り始めた。恐らくあの精霊は本気でロジェを殺しに来ている。ただでさえ私は何も出来ないってのになんか酷くない!この世界!!!
「とりあえずこの怒らせた精霊はどうするの?あんな怒った状態だと私が仮面つけてもあれに勝てるか怪しいわよ!」
――本当にどうしよう…あーるんは何故か連絡付かないし、双龍の砦の時も大概やばかったけど今回は本当に冗談になってないし、油断したら私は即死ぬ!!!
「………とりあえず、あーるんを探すしかないわ!今何処にいるか分かんないけど、あの子なら強いしきっと何とかしてくれるはず!」
ロジェ1人だけではこんな化け物はどうしようも無いので、どこかに居ると思われる親友のあーるんを探す為に街中を飛び回る事にした。
ちなみにロジェの認識阻害ローブは体に触れてるだけで勝手に発動するので、ローブに腕に掛けてたりすれば相手から認識されなくなります。二人はあーるんの仮面とロジェのローブを借りて尾行してました。(セージが氷塊を出した辺りであーるんが仮面を回収し、自分の元に戻してます。)
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