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第二章 34 『ハッピーウエディング①』

『本日は皆様、お披露目パーティにお越しくださいまして、誠にありがとうございます。天候は少々悪天候ですが、参加者全員に雨避けを配布し、安全面には我々式場の者が最大限配慮しますので、ご安心ください。』


「ねぇあなた。雷の鳴るこの嵐の中でガーデンウエディングって新郎新婦は何考えてるのかしら。私はてっきり屋内でやると思ってたのに…」


「にしてもこんな雨風に見舞われるとは運が無いですね今回の新郎新婦というのは。我々は参加するだけなので文句はないですが、ある意味本当に思い出だらけの式になりそうだ。」


「ミネストローネさん。こちらが追加の傘と風避けになります。貴方は我々の商会の柱なんですから風邪をひかないようにこちらへ来てください!」


 結婚式場では定刻になった為、嵐のような雨の中地獄のガーデンウエディングが始まった。この式に巻き込まれた参加者がこの悪天候の中で傘を指しながらざわめき始めている。天候の方は時間が増せば増すほど雨風が強くなり、雷も少し落ちてきている結構危険な状態だった。


 こんな天候の中でガーベラ達が決行を判断すると聞いた時には驚いたが、一体この新郎新婦の2人は何を考えているんだ?


 そんな疑問がアルロの中で残る中、近くにいたあーるんに話しかける。


「あーるん様、ロジェ様に我々の配置位置について教えてないのですが本当に大丈夫なのですか?」


「ロジェちゃんなら心配しなくて大丈夫だよ。あの子って基本1人でなんでも解決しちゃう凄い子だからそんな事聞かなくても何とかしてくれるはず!戦闘面は変わった魔導師だからちょっと心配だけどそれ以外は基本さいきょーだから!アルロさんは心配しなくて大丈夫!」


 アルロ達は自分を含めた3人の配置場所を決めたのだ。

 元々は各自それぞれバラバラに場所につき警備を行う手筈になっていたのだが、セージが会場の出入口付近で待機し、あーるんは自身の優れた嗅覚で式場の中に紛れた影の人間を炙り出すために会場の中央付近で移動をしながら探る手筈になっている。


 そしてこの3人は、メトロノーム型の連絡石を持っており、常に会話繋げているので何かあればすぐさま連携を取れるようにしてあるのだ。


 彼女は今何をしているのか分からないが、連絡石の事もそうだし、配置位置ってかなり大事な情報だが、本当にこの事を伝えなくて大丈夫なのか?


「それに、連絡石に関しては僕があとでこっそり渡しとくから大丈夫。だからアルロさんは娘さんの晴れ舞台に集中しななよ!街の警備の事もあるんだからこっちの事は僕達に任せて!」


 アルロは本来ならロッキーに街の警備の方を指揮してもらう手筈になっていたのだが、帰ってしまったので彼の代わりにこの街の警備代表の者と連絡石を通じて情報が入るようにしてある。

 基本的に彼はその地位に辿り着いてからの歴も長く、指揮に問題は無いと思うが、最悪の場合はアルロも現場に向かう予定だ。


「分かりました。その言葉を有難く受け取り、私は娘の結婚式に集中するとしよう。あとは任せましたよあーるん様。」


「りょーかい!まっかせといて!」


 そう言って見た目は小さいがとても頼りになるピンク色の髪をした強者はどこかへと行ってしまった。

 この先何が起こるかはアルロですらも分からないが、自分のあと僅かしかない命に娘の晴れ舞台を焼き付けよう。そう思ったのだ。


『皆様、新郎新婦のご入場の準備が整ったようでございます。お二人は階段から降りてまいりますので、新郎新婦のお顔が見えましたら、皆様どうぞ大きな拍手でお迎えください。』


 ――おぉ。ついにガーベラの晴れ舞台か。事故により早くにして亡くなった我が妻、アンナはしっかりと彼女の姿を見ているだろうか。アンナよ。ガーベラはここまで大きくなったぞ。


 そう考えながらアルロは、今亡き彼女の母の写真を自分の席に立て、彼女が入場してくるのがしっかりと見えるように配置した。


 そして入場の為のドアが開いた時、アルロの脳内が一瞬で停止した。




 ――見間違えか?ガーベラとライトの性別が逆転しているように見えるのだが。



 何度も目を擦ったり、頬を引っ張ったりして確認するが、何回確認しても2人の性別は完全に入れ替わっていた。彼女の後ろになぜかいるロジェの姿を確認出来たが、そんな事は気にならなくなる程のすごい問題が発生している。


「華のあるイベントだというのに、私が一体何をしたと言うのですか…神様。」


 そう言い残して最後にもう一度入場してくる2人の姿を見つめてしっかり確認すると、2人は元の性別に戻っていた。その事に全く理解が追いつかない。



 ――さっきのは気の所為か?というか気の所為であって欲しい所だが…



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



 ロジェは何故か新郎新婦と共に式に入場する事になり歩いていたのだが、性別が入れ替わった2人を見た時の周りの視線がやばいのと、ライトさんの親族が突然の出来事に何人か気絶したのでNG単語を誰にも聞こえない程度の声量で発言し、強制解除したのだ。(ちなみに服装は、元の性別に合わせた服装に戻るので、強制解除しても大問題にはならない)


 ――それ!なのに!なんで私がガーベラさんに怒られなきゃダメなんだー!!!


「ちょっとロジェ!なんで解除するのよ!早く魔法を掛け直して!」


「絶対嫌ですよ!アルロさんもめちゃくちゃ困惑してましたし、ライトさんの親族はその姿を見て失神してるんですから二度と使わせません!!これは私の独断です。」


 2人はかなり近い距離にいるので、小さい声であれば周りにバレる事無くある程度のコミュニケーションは取れるのだ。


 それをいい事に彼女は周りに手を振りながらずっと文句を言っていた。――もうホントこの護衛依頼、色々とめちゃくちゃだし受けなきゃ良かった。今から帰っちゃダメかな…


「はぁぁ!?そんな事したら例の作戦が通じなくなるじゃない!どうするのよ!」


「そもそもこの天候の時点で式を中止に出来たのに、そうしなかったのはガーベラさんでしょ!結局式をやりたいのかしたくないのかどっちなんですか!!!」


「……あの時はライトの言葉を聞いて確かに集まってくれた人に申し訳ないなって思ったのよ。あの時はそもそも時間もほぼなかったしぃ――だから…式場をぶっ壊す方向に持っていった方がいいかな…って。」


「性別変換してる時点で申し訳ないでしょ!反省してください!!!」


 やっぱりこの人の考えてることが理解できない…。私よりも頭のネジが外れてる人ってどうすればいいのかわっかんないんだよなぁこれ。

 しかも周りの目線も後ろから出てきたメイド服の私に視線が集まりつつあるから視線の数に慣れて無さすぎて凄く吐きそう…現実逃避したい。


 ――そもそも私は本当は会場で料理でも摘みながら適当に警備するだけだったのに!!なんでこんな事に巻き込まれなきゃダメなの!!!


 そんな文句をぶつぶつ言いながら進んでいると、どうやら新郎新婦席に着いたらしい。ロジェはこの隙に逃げ出そうとしたのだが、メイド服の服の端をガーベラに強く掴まれているので逃げる事は許されなかった。どうやらどうやっても私を巻き添いにしてくるらしい。


『今、新郎新婦様がメインテーブルへご到着でございます。皆様今一度大きな拍手を御願い致します!』


 ――こんな雨の中拍手なんて出来るかっての。

 天候は時間が経つにつれて酷くなるから『険悪』だし、参加者も雨に濡れてるせいで気分が『最悪』だしオマケに一生私をここから解放してくれないからガーベラさんは『害悪』だし、この挙式何一ついい事ないんだけど…


 そんな事を考えていると、私の後ろから突然あーるんが現れた。後ろから声が聞こえるが、あまり目立ちたくないのでロジェは顔を後ろに向けることなく新郎新婦の隣に立ち続ける。


 一応ここ、1番式場で目立つ場所だから、主役よりも目立つ事をしないで欲しいんだけど…。てかあなたも一応仕事あるわよね。なのに本当に何してるの?


「やっと見つけたよロジェちゃぁん!なんでこんな場所にずっといるのかわかんないけど目の前でネズミ野郎から花嫁を守るなんてかっこいー!」


 そう言って後ろから彼女が抱きついてくる。どうやらこの子は結婚式場であっても関係ないらしい。

 あと何度も聞くけどネズミって何?居ないよ?会場にサンドホークなら一応いるけど、こんな嵐の中に出歩く野生のネズミなんているわけないじゃない。何言ってるのかしらこの子。


「………何言ってるか分からないけど、一体こんな所まで来て何しに来たの?あと目立ち過ぎたら怒られるから少し離れて。」


 恐らく余計な事で目立つと式場中止作戦(仮)が成功しなくなると思っているのだろう。

 ロジェのメイド服を掴んでくるガーベラさんから感じるオーラと、服を掴む彼女の力が凄い事になっているので今すぐにでもやめて頂きたい。


「僕?僕はね、ロジェちゃんに届け物をしに来たの!これセージちゃんやアルロさんは持ってるからポケットに入れといて!細かいことはあとで連絡するから!」


 そう言って彼女はまたもや一瞬で姿を消して行った。目立つだけ目立って勝手にどこかに行ってしまったので傍迷惑な子である。悪い子じゃないから別に文句言わないけどね…


 ロジェはポケットの中にある連絡石を起動し、あーるんから細かい作戦を聞く。どうやら私の居ない間に残りの3人は全然通信石で連絡を取れるようにしていたらしい。


 通信石は5つの石まで通信先を設定できる高価で便利な魔道具だ。離れた位置からでも連絡が取れる優れものだが、1つの石が壊れたり魔力切れになった場合、設定した石全てが使えなくなってしまうので几帳面な人にしか使えないアイテムである。


 ロジェも昔からよくアクシデントに巻き込まれるので、すぐに村の人間と連絡が取れるように持ち歩かされていたのだが、高確率で魔物やモンスターの襲撃で巻き込まれるせいで一瞬で使い物にならなくなるので、持ち歩くのが禁止されているアイテムの1つになっている。


 なるほどなるほど…最悪この式場の出入口にはお兄さんがいるから参加者の誘導くらいは任せても大丈夫そうね。あの人なんだかんだコミュ力抜群だしそれなりに戦えるから影の鼓動相手でも何とかするっしょ。少なくとも私よりは上手くやれるはずだ。


 ――となれば参加者の避難という唯一の仕事まで奪われた私は何をすればいいんでしょうか?もうどこかで料理でも食べて遊んでていいかな。あと関係ないけどお腹すいた…。


 そんな事を考えていると、式場の遥か西の方からこの式場に向かって小さな子供サイズの精霊がやってきていることに気付いた。親精霊とはぐれて迷子になってこの街に来た可能性もあるが、何の為にこんな場所まで来たのかは知らない。…というかもしかしたらこいつが嵐の原因なのでは?


 ――そもそも子供サイズの精霊がこんなに酷い嵐を作れないし、子供がいるって事は親精霊が近くにいるって証明でもあるんだけど。こっち来たりしないよね?


 ロジェは一応精霊の存在を他のメンバー3人に伝えることにした


「ガーベラさん。少しだけ離れますね。私も仲間に連絡することがあるので。」


「え!?あ、私は不安だからロジェはすぐに戻ってきてよ!」


 一体私のどこを見て頼りになると思っているのだろうか?私の事をただのポンコツだって最初に見抜いてたよね?ポンコツに出来ることなんて何も無いんだから!


 そんな事はさておき、残りの3人に精霊の存在を伝えた。


「もしもし。みんな聞こえる?今子供っぽい精霊が近くまで来てるんだけど、もしかしたら親精霊が近くにいるかもしれない。多分嵐の原因もこいつだし、上手いこと追い払ってくれるかしら。」


『――つまりあの精霊がロジェちゃんの言ってたやばい精霊って事?』


 確かに私は冗談半分で言ったけどさ、子供の精霊がやばい力を持つわけないでしょ?私の手元には『空想の具現化(イメージ・スモーク)』はもう無いんだし、興奮状態になってる訳でもないんだから強いなんて有り得ないわ。


「そんな訳ないでしょ?だから親精霊を興奮させない程度に上手いこと誰か追っ払ってくれない?親精霊は怒ると何しでかすか分からないからくれぐれも慎重にやってね。」


 親精霊は怒ると高位精霊(ハイエレメント)の5倍は強いとされているのだ。怒れる精霊がこの街に来たらどこまで被害が出るのか分からない。


『ごめんよ嬢ちゃん達。僕は今手が離せそうにないから代わりにいってくれないか?今式場の見取り図を見ながら不審なところがないか内部を確認してるんだ。外に出るまで時間がかかる。』


 お兄さん…あなた出入口付近の警備してるんじゃ無かったんですか。そういうのは事前に終わらせておいてくださいよ。


『もちろん私も無理だ。親族の者が途中退室して戻ってくるなど何か怪しまれて仕方が無い。2人に助太刀出来なくて申し訳ない。』


『って事は僕がやるしかないかぁ。じゃあ今から行ってくる!』


 そう言って1つの連絡石の接続が切れた。空を見ると安心と信頼の赤い羽根が空に姿を現した。

 あぁ見えて彼女は怒っている時以外は頭の回転が早くてまともな思考回路をしているので上手いこと説得してくれるだろう。


 ――多分私が説得するよりも上手くやると思う。


 そう思いながら空を見上げていると、式場に水飛沫が上がった。これは確かロジェが『アクトピクチャ』で演出を5倍に設定していた物である。シャボン玉の破裂を派手にしたが、老人が驚いても心臓が止まらない程度の破裂音が響くので死人は出ないはずである。


『本日の天候は少々悪いですが、この水飛沫と共に生まれた新郎新婦の方々を盛大にお祝いしたいと思います!派手に飛び散る水飛沫が雨の雫と違って美しく舞っており最高の一時を演出しており、この夫婦の美しさを過剰に演出していると言えるのではないでしょうか!』


 ロジェはアナウンスを聞きながら、会場から少し離れた広場から戻る。そしてふと空を見上げると、あーるんによって平和的解決法で追い返された子供の精霊がロジェの魔法によって過剰に演出された水飛沫の塊を食べていた。



 ――なんか水の塊を食べてるけど本当に大丈夫だよね?この先この精霊が変なことしたりしなきゃいいんだけど…。

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