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第二章 11 『光と影』

「こちらが今回の挙式で使う予定のガーデンウエディングの会場になります。」


「案内ありがとうございます。式場自体見たこと無かったので知らなかったんですけど、ガーデンウエディングってこんなに広い会場でやるんですね。」


 ロジェ達は現在、式場内部を案内されていた。今回の式はガーデンウエディングの形式らしく、会場を初めて見たのだが、思っていた数十倍広い空間に案内されたので驚きが隠せなかった。軽く見ただけでも住居が5つは立つスペースがあるくらい広い空間だ。


 広がる青空、差し込む太陽の光、地面いっぱいに広がる花や草木。どれをとっても素晴らしいものである。


「ガーデンウエディングは、最近のブームですからね。我々が日々気合を入れて会場内を整備しておりますし、新郎新婦の方にとって素晴らしい物になることでしょう!」


 結婚式って人生に1度きりだもんなぁ…。そんな大切な式を完璧に成功させようとする式場の人達って凄い。


 自分が挙式を上げた時の妄想でもしながら景色を眺めていると、あーるんがまたしてもニヤニヤしながら話しかけてくる。


「ほほ〜ん。なるほどねぇ。」


「……どうしたの?なんかやたらニヤニヤしてるけど何かあったかしら。」


「いや別にぃ?なんかここに来てからロジェちゃんの顔が真っ赤だし、こういうのに憧れてるのかなぁって思っただけだよ?あー!今回の依頼にグレイちゃんも居れば良かったのになぁ。」


「もう!あーるんは私をからかわないの!」


 どうやら彼女には考えている事がお見通しだったらしい。脳内を即座に仕事モードに即座に切り替えた。


「ほう。ロジェ様もそういう相手がいらっしゃるのですね?」


「私には居ません!居ませんから責任者さんも勘違いしないでくださいっ!」


 そう言いながらロジェがその場から逃げるように、1人で会場内で意味もなく何か探し始める。


「あー行っちゃった。あの子ったらホント素直じゃないんだから。態度からしてバレバレなんだし、本人居ないんだから隠さなくても良いのにぃ。」


「まぁまぁ。彼女はそういうお年頃ですよ。あの若さなら中々素直になれなくても仕方がありません。私もそうでしたから。」


「そういうものなんっすかねぇ。僕はそういう感情持ったことないから分かんないですけど、傍から見ればさっさとくっつけばいいのにってずっと思ってますよ。」


「恋を経験すればいずれあーるん様も分かりますよ。この気持ちは人間全員が通る道です。それを経験すれば、人は更に成長出来るでしょう。」


 会場の端の方で拡張する聴力(ビック・イヤー)を使って隠れて2人の会話を盗み聞きしていたロジェにそんな会話が聞こえてくる。


 あーもうっ!あの子ったらなんて会話してるのかしら。恥ずかしいからやめてよ!これからの仕事がやりづらくなるでしょ!


 2人の会話を止めに行こうとその場から立ち上がろうとした時、あーるんが突然変な質問をした。


「責任者さん。変なこと聞いてしまうんですけど、もし仮に自分の中にかなり高い戦闘技能があったとして、大切な人を危ない目に合わせてしまった場合、どう自分を責めますか?」


「ほう…それはまた中々難しい質問ですね。」


 恐らくあーるんはまだ先日の戦闘の事で落ち込んでいるのだろう。別にあの時の掠り傷なんて治癒魔法やポーションもあるからなんとでもなるし、かなりの人数差があるのにあそこまで奮闘したんだから気にしなくてもいいのに…。戦闘面においての完璧主義もここまで来たら良くないかもしれないわね。


 暫くすると責任者さんが答えてくれた。


「私なら自分を責めず、それを成長の糧にしますかね。もちろん反省はしますが、落ち込んでいても何も変わりませんし、むしろそういう時こそ前を向いて人一倍強くなる努力をします。」


「でも仮にその子に怪我を負わせてしまったら?なんで僕はあの子を守れなかったんだー!ってなりませんか?」


「それはもちろん最初はそんな感じで荒れてしまうでしょう。ですが人はダメな感情に呑まれ続けるとそこからの成長はない。むしろ更なる失敗を重ねるのです。だからこそ同じ事を繰り返さないよう強くなる為に心に火を灯して努力すべきだと私は考えているのです。」


「…なるほど。変な質問したのにわざわざ丁寧に答えて頂きありがとうございます。」


「いえいえ。こんな年寄りが役に立てるなら幾らでも頼ってください。きっとロジェ様も貴方が早く元気になる事を願っていますよ。」


「え?ロジェちゃんが?まだ会ってそんな時間も経ってないのになんでそんなこと分かるの?おじさんってもしかして超能力とか使える感じ?」


 …本当になんでわかるの?そんな会話は責任者さんと1度もしてないし、もしかして私の顔に出てたのかな...。だとしたらめっちゃ恥ずかしいんですけど!!


「約60年ほど私も生きておりますから生きていく上で培われた勘と言ったところでしょうか。これが本当かは分かりませんが、彼女は今貴方の事をとても心配してますよ。」


「そ、そう…。やっぱり僕一人じゃあの子を守りきるのは無理なのかな。」


「私には貴方達に何があったか分かりませんが、そう弱気になった状態だと、いずれ貴方は取り返しのつかない事をしてしまう。貴方が最も大切にしている彼女の事を思うのであれば、そうならないようにだけは気をつけてください。前を向きなさい。」


「待ってください!最後に1つだけ。1つだけ質問!おじさんは何故そんな事を言い切れるの?もしかしたら何か心当たりが――」


「今の落ち込んだ貴方は、昔の私と同じように輝きを失った顔をしているから。とでも言っておきましょう。そう言い切れる理由は私の経験からです。これは歳をとった年寄りの独り言なのであまり深く考えないでくださいね。」


 そう言いながら、責任者さんがガーデンウエディングの会場を散策し始める。その時の責任者さんの後ろ姿は、彼女にとって光り輝いて見えていたらしい。この言葉が彼女の心の中に強く響き、1人の戦士として強くなる1歩を踏み出したのであった。




  △ ▼ △ ▼ △




 ――――――ってちょっとまてぇい!!!



「何急にそんなしんみりとした重たい話なんかやってんのよ!!!そんな話されたら隠れて出るタイミングを見計ってた私がいつまで経っても出られなくなるでしょうが!」


 隠れて盗み聞きしていたロジェが、地面をバンバン叩きながら独り言を言う。隠れて聞いていたロジェはあまりの話の重さで完全に出るタイミングを失っているのである。


「大体!さっきまで2人で明るい恋愛話してたのになんで急にそんな重たい話になるのよ!反省するのは悪いことじゃないけど、温度差が酷いでしょうがっ!」


「ロジェちゃん?さっきからそんな端っこで顔赤くしながらずっと草むらにいるけどなにしてんの?」


 そんな感じで草木の生えた場所で暴れながら文句を言っていると、突然話しかけられた。


「わー!?わわわわわ私は何も聞いてないから!話なんて何1つも聞いてないからね!」


 突然話しかけられて脳内が混乱する。ちなみに既に拡張する聴力(ビック・イヤー)は解除しているので、至近距離で話しても問題なく会話出来るのである。


「………もしかしてロジェちゃん。さっきまでの会話を盗み聞――」


「ほ、ほらあーるん?私さっきね。あっちの開けた場所に使えそうな良い演出を思いついたの!一緒に見に行きましょ!さぁ早く!さぁさぁ!」


 そう言ってロジェがあーるんの手を掴み強引に引っ張っていく。


「んあ!?ちょっとロジェちゃん!?急にどうしたの?ねぇ!ねぇってばーーーー!!!」


 その姿を見た責任者さんは、先程まで落ち込んでいた小さな戦士の顔が、まるで別人のように眩しく光り輝いており、とても嬉しくなったらしい。




  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼




「おいクロ。ようやく例の魔道具を見つけたぞ。場所はサウジストを纏めている貴族の屋敷の保管庫だ。侵入出来そうか?」


「やっぱり貴族の屋敷か。あそこは確か今は帝都の騎士団も多くいる場所だ。かなり慎重に動かないと即座に見つかって消されるぞ。帝都から来たっていう実力者がその屋敷に居てもおかしくはない。」


 クロとモモは暫くサウジストの中で情報収集をし、どうやって『導きの祝儀』を手に入れるかの作戦会議をしていた。


「侵入程度なら楽に出来る。だが貴族の屋敷となれば保管場所の警備が厄介だ。警備員に化けたとしてもそういう貴重品のある保管庫には簡単には入れてくれないだろうからな。」


 『祝福の鬼嫁』が飾ってあったのは博物館だった。だからこそ適当な警備員に成りすまして仕掛けを解除して簡単にすり替えることが出来たし、何も苦戦しなかった。


 だが貴族の屋敷となれば話が変わる。そういった場所には確実に防犯対策として、触ると熱光線が飛んでくる赤外線レーダーが敷かれていたり、警備が普段以上に厳重だったりと一筋縄ではいかないような厄介な仕事へと変わる。


「だが、日没まであと6時間だ。アジトから魔道具を送ること自体はいつでも出来るが、屋敷に潜入する事を考えるとあんまり時間は残ってねえぞ。おいクロ!なんか良い案はねえのか?」


「―一つだけ方法がある。だがこれはかなりリスクが高い。あまりおすすめは出来ないが、屋敷の中にいる特徴的な重要人に成りすますんだ。そうすれば、保管庫に入れるかもしれねえ。」


「おま…本気かよ?あの慎重人間だったお前がそんな方法を取るなんてびっくりだぜ。」


「俺だってリスクが高いからやりたくはないが、これが決まれば突如として言い渡された魔道具の納品だって間に合うし、苦戦することなくすり替えることが出来るだろ?あまり時間が残されてない事を考えればこれが1番丸いんだ。」


 本来ならば魔道具を納品するのは明日のはずだった。何故突然こんなに納品時期が早くなっているかは分からないが、恐らくこれも試されているのだろう。マスターからの指示である以上逆らう訳にはいかないのだ。


「お前らしくねぇが、俺はそういうやり方嫌いじゃねえぜ。じゃあさっさと――」


 行動に移そうとしたその瞬間、マスターに渡した呼び出し用の連絡チップが反応する。


「あれ?マスターからの連絡か?今度は一体なんの連絡なんだ?」


 クロが恐る恐るチップを起動して送られてきたメッセージの中身を見る。


「えーとなになに。サンドホーク愛護団体の皆様に1つお願いがあります。私は今式場会場に居て手が離せません。忙しい所悪いのですが、式場の方まであなた達の作った自慢のサンドホークを数匹ほど連れてきて下さりませんか……!?なんだと!マスターはまだ式も始まっていないのに、もうサンドホークを式場に解き放つつもりなのか?」


「まじかよ…マスターは相変わらず何考えてるか分からねえな。こっちは屋敷に潜入する必要があるから時間もねえってんのに更に追加で要望を出すとは。こりゃあ上位部隊になるのが大変なのもよく分かるぜ。」


「モモ。とりあえずどうする?どっちから先に手をつけるんだ?」


「そんなの決まってんだろ!優先する方は最初から一つしかねえじゃねえか!」


 そう言いながらクロとモモは、アジトから外に出て、命令に従うための行動に出た。




  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



「じゃあ、当日の事は頼んだよ。」


「我々にお任せを。今回もスペア様からの指示通り完璧にこなして見せます。」


 とある者は、2日後に行われる式場会場の中にいた。全ては影の鼓動の作戦を成功させる為である。この者は、かなり前にシャドーからこの作戦を成功させる為の潜入の指示を言い渡されたので潜入を開始し、この街にも式場の関係者にも深く関わっている。


 この街の根が深い所に影の鼓動が既に潜んでいる事も、この者が引き連れている部隊の事も、スペアと呼ばれる自分の存在も、恐らく誰も気付いていないだろう。あとは予定通り事を進めるだけだ。


「式場に参加させる部隊の侵入に関する手続きはこっちでやれるだけ全部やっておいた。僕の指示通りに席の配置が出来るかとか、結界関係の事はお前達の腕次第だ。絶対にやれとは言わないが、くれぐれも慎重に頼んだぞ。」


「こちらで出来る限りを尽くします。」


 その返事を聞き、スペアと名乗る者は式場を後にしようとする。

 すると、当日使うガーデンウェディングの会場で今まで潜入していたスペアも知らない二人組の女がいた。ただの一般人であれば見逃したのだが、圧倒的な存在感を感じさせる気配にあの者達からはスルーしてはいけない予感がする。


「――奴らは一体何者だ?」


 そう言い残して、スペアは偶然見つけた2人の危険人物について個人的に調べる事にした。

拡張する〇〇シリーズはこれからもちょくちょく出す予定です、効果内容は基本的な部分が大きくは変わらないので説明はカットしています。(今回であれば聴力が50倍になる代わりに近くの音が聞こえない。)


進捗報告アカウント

→@Jelly_mochi3

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