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第二章 02 『依頼』

「私に指名依頼――ですか?」


「そうだ。先日の書物にもそう書いたがロジェ殿の活躍っぷりを聞いた帝都管轄の小さな街を管理している貴族から緊急の指名依頼がかかっている。内容は難易度が高いが、これ以上審議に使う時間はない。今すぐに受けてもらうがいいな?」


 えぇ…難易度高いなら尚更行きたくないんだけど。

 てか何するか知らないけど、そもそも運がとてつもなく悪い私に指名依頼なんて出したら大変なことなるよ?良いの?


「ちなみに依頼の内容について確認させてもらっても良いですか?」


「あぁ。急ぐあまり依頼について話すことを忘れていたな。これは済まない。ちなみに依頼内容は既にロジェ殿の元へと送ったのですが、まさか見てないというわけではないだろうな?」


 …まずい。私は中身なんて全く確認してないし、下手したらその事がバレてるかもしれない。どうにかして誤魔化さなくては!


「い、いやいやいや!私がそんなことする訳ないじゃないですか!そんな非常識な人間に見えますか?」


 ロジェがそう言うと、ロッキーさんが疑いをかけるような目を向けながら自身の時空鞄から依頼書を取り出した。ロジェがそれを受け取り、内容を確認する。


 えーっとなになに…。


 依頼内容 今度私の娘の結婚式を行うのですが、現在この結婚式と我々の街【サウジスト】を完全に占拠するという情報を確認しました。娘にこの事を知られることなく結婚式を守って頂きたいです?拘束時間は本来は1週間だけど、既に私が駄々こねたせいで期限が少し過ぎてるから実質3日間、報酬は1億タール…か。


 ――何この如何にも厄介な事になりそうな依頼は。難易度高そうな依頼だし拘束時間も長いくせに報酬が見合ってないから絶対やりたくないんですけど。

 てかやるんだったら結婚式の前に国を守るよう私に依頼するべきでは?色々と考え方がズレてない?


「どうだロジェ殿。この依頼を受けてもらえるな?もう作戦決行日まで時間に余裕が無いし、これ以上相手に迷惑をかけるわけにはいかない。」


 ……改めて確認したけど絶対行きたくない。そもそも運が悪い私がそこへ行けばどうなるかなんて目に見えているのよ!

 貴族の娘さんが魔物に乗っ取られてもおかしくないし、突然式場にドラゴンとか精霊とかやばいのが襲ってきてもおかしくないのっ!!!


「――――私の代わりにこういうのが得意そうなあーるんだけを向かわせるのはダメですか?」


「ロジェ殿、ご冗談はおやめ下さい。笑える冗談にすらなっていませんよ?あーるん殿を連れていくのは別に構いませんが、指名された者が同伴しないのは前代未聞です。」


 で!す!よ!ねー!だだでさえ人に会いたくないのに、そんな神聖な明るいイベント会場に潜り込んでテロ行為を未然に止めるなんて私には荷が重すぎるわよ!

 あなた達が思ってる以上に私はポンコツなんだからねっ!!!


「それに今回この占拠をしようとしているのはを恐らく【影の鼓動(シャドウ・パルス)】と呼ばれる盗賊団だ。奴らは最近この手の方法でいくつもの国や街を占拠し、その国の警備や騎士団が動く前に全てを奪い尽くして、その場所の重要人物を人質に逃げ続ける悪質な犯罪集団だ。最悪の場合は、その占拠された場所は彼らのアジトとして利用され、再生不可能なレベルにまで悪用されている。ここで奴らを取り逃がせば帝都も同じようにいずれ襲われかねない。こいつらを止めるためにもロジェ殿には協力してもらいたい。」


 あーなるほどね。貴族の娘がよく分からないそのシャドウ………なんとかの人質に取られるから結婚式を守れって言ってたのか。

 ―いや私にそんなことやれって言われても無理ですけど?攻撃魔法も使えない私に出来ることなんて道化になって笑い者になるしかないのに!!


「―――先に言っておきますが私は生まれつき運が悪いんです。これは決して受けたくないと言う理由で言ってる訳ではありませんが、私が参加すれば花嫁の方が魔物か何かに乗っ取られるかもしれませんし、晴天の中で行われるはずの結婚式で突然災害のような嵐がやってくるかもしれません。その可能性がある私にこんな依頼を受けさせて大丈夫ですか?」


「神聖なイベントに対して不吉なことを言うでないッ!式場当日は晴れる予定だし、それに加えて魔封じの結界が式場に貼っておる!大体花嫁が魔物に乗っ取られるとかいうそんな馬鹿げた出来事が起きるわけがないだろうがッ!」


 これまでの経験則的にそういう異常事態が起きてもおかしくないんですっ!!

 そもそもみんな龍の襲撃も双竜の砦も全部私1人で動いて何もかも解決したみたいな言い方してるけど、どっちも私は余計なことしかしてないんだからね!!


「……こちらもこんな事は言いたくはありませんが、ロジェ殿は自ら王城を壊した件で責任を取ると言ったのだ。この依頼を受ければその件は終わりにしてやる。だから受けろ。これは強制だ。ロジェ殿は花嫁を守るだけでいい。(シャドウ)の方は、我々帝国が誇るトップに存在する騎士団をいくつか派遣して食い止める予定だ。」


 えぇ…責任から解放されるとしても絶対受けたくないよこれ。仮にこの依頼を達成したらまた私の名前が売れちゃうしやだなぁ。今すぐに帝都から逃げて現実逃避したい…。


「どうしても受けなくてはダメですか?人の目が怖いというのは本当なのですが――」


「――――ッ!さっきから強制だと言っておるだろッ!ふざけてるのか!サウジストへの出発は明日早朝だ!まだ半日以上あるから今すぐ準備を開始しろ!」


 ……私は一度もふざけてなんていません。




  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼




「全く…大した収穫もないし散々だ!」


 ロッキーは、ロジェと別れた後大通りから王城に向かって帰っていた。呼び出された割に特に大した収穫もなく、ふざけた態度を取るロジェに苛立ちを感じる。数日前までそんな態度を取るような者じゃ無かっただけに驚きが隠せない。緊張してその顔を見せていなかっただけで、彼女は元々あのような人間だった線も捨てきれないが、謎は深まるばかりだ。


「この数日の間、彼女に一体何があったんだ…?」


 ロッキーは、彼女との会話を思い出す。この騎士団総出で帝都中を散策しても分からないような事件に巻き込まれて『外が怖い』と言っていたのだ。嘘である可能性も捨てきれないが、あのロジェ殿が怯えるような事件なら早急に対応するべき大事件の可能性もある。


 そもそも先日の龍の襲撃といい、ネオリスの事といい、あの2つの難事件を意図も容易く解決したあの者がトラウマになるほどの事件なんて予想できないが。


 すると、ロッキーが持ち歩いているメトロノーム型の連絡石が反応する。王城からの連絡である。


『報告です!ロッキー団長!ネオリスの残党により、エリー・アーロンを含めたネオリス研究員の護送に使う監獄行きの馬車と人間が全てやられました!奴らを捉えた獄の付近で何か怪しい動きをしていた者がいたとの話も出ております!』


「なんだと!?今すぐ獄の警備の強化と、この国の封鎖を開始しろ!現在謹慎中の彗星の神子にも協力を要請して、獄の近くで警備させる事も同時に行なえ!獄の奴らと組織の残党だけは絶対に逃がすなッ!」


 ふざけた態度をとっていたロジェの言う通り『大きな動き』とやらが、本当にこの国で発生してしまった。


「まさかこの事を知っててロジェ殿はこちらへ呼び出した訳ではあるまいな…真実はともあれ、この依頼が終わったら何故こいつらを止めなかっただとか、その情報を仕入れた情報源はどこなのかだとか、色々聞かねばならん。」


 ロジェ達の住む住居は幸いにも北門に繋がる大通りの端っこに存在する。この場所から行けば王城から向かうよりも早く北通りにある獄へと辿り着けるだろう。報告のあった通り、ロッキーは急いでネオリス残党を投獄している一時的な留置場に向かった。




  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼




「たっだいまー!ようやく部屋からロジェちゃん出てきてくれたんだね!僕とっても嬉しい!!!」


 日が落ち始める頃には、あーるんが帰ってきた。

 帰ってきた途端、魔物の返り血を浴びた服を着た上機嫌のあーるんがロジェに笑顔で抱きつこうと飛んでくる。

 割とこれはいつもの事なので、すぐにロジェは手元に用意していた水いっぱいの大きなバケツを魔法で彼女の頭上に運び、水を直接浴びせて彼女を洗浄する。


 現在ロジェはあーるんがやったとある事で怒っている。

 水を浴びて服が濡れたので、用意してあったタオルで体を拭いているあーるんに対してロジェは質問した。


「ねぇあーるん。ここにロッキーさんが来ること知っててあんなことしたの?」


「うん!だってそうしないとロジェちゃん絶対外に出てこないじゃん?僕だって久しぶりにロジェちゃんに会いたかったしぃ、腹立つおっさんは依頼を届けにこっちまで来るって言ってたから丁度良いなぁって思ったの!」


 ――やっぱり知ってたのね。この子は本っ当に余計なことするんだからっ!


「――私、今回の件であーるんの事少し見損なったわ。まさか…まさかこんな酷いことするなんて思って無かったわよ。」


 それを聞いたあーるんが申し訳なさそうな顔をして聞いてくる。


「えぇー!?でもこれは僕悪くないよね?僕だってこんなのやりたくなかったけど、緊急の指名依頼だなんて聞いたら、あのおっさんを殴って追い返す訳にも行かないし仕方なかったんだよぉ…だから悪いのは全部あのおっさんだから!」


「いいや。これはあーるんが悪いわ。私は今すごく怒ってるんだからね!あれだけやりたくないって言ってた依頼もやらなきゃいけないんだし最悪よもう…。」


「って事はもしかして今日はあのおっさんと話してたんだね。もしかしてそんなにやばい依頼だった…?だとしたらなんかごめんねっ?」


「……確かに今日は依頼の話をしてたんだけど、軽く聞いた感じやばそうだったわ。今回の主な依頼は、貴族の結婚式場の護衛よ。なんかやばい盗賊団が国を占拠しに来るらしいから、私達は花嫁を全力で守れって案件だったわ。私は全然戦えないから戦闘は全部あーるんに任せていいかしら?」


 一応軽く説明しながら、全く受ける気のない依頼書をあーるんに渡す。どうせ戦闘できない私が見たところで出来ることなんて無いので、こういうのは誰かに丸投げするのが正しいのだ。


「はいはーい!そういうのは僕に任せといて!強そうな魔物を殺るのも楽しいけど、強い人間を殺るのもすっごく楽しいんだよねぇ。この前王城を襲撃した時に人殴った時に気絶させる楽しさを体が完全に覚えちゃったからどうしようか悩んでたとこなんだったの!だからぁ、ちょうどいいかも?」


 可愛く舌を出しながら恐ろしい事をあーるんが言ってくる。

 殺ったりなんてしたら正式な犯罪者になっちゃうので本当にやめてください…。


「人の命取るのはダメだからね?ちゃんと生かしておかないとあーるんまで私と同じく犯罪者にされちゃうんだから!もう手遅れに限りなく近い気がするけど。」


「大丈夫大丈夫!その組織のやつや見つけたら相手の生命力を一気に抜いて動けなくするから問題ないって。死にかけてたら最悪僕が生き返る程度に戻すから大丈夫だよ!殺さないように手加減するのも修行だもん!」


 生きてればそれでいいと言うわけじゃないと思うよ…。何事にも加減ってものが大事だからやりすぎないようにだけしてください。


 そんな事を考えながら、ロジェはこの前から気になっていたことをあーるんに質問をする。


「ねぇあーるん。前から思ってたけどあなたが今指に着けてるその黒色の大きな鉱石がついた変な指輪は何?どこで拾ったの?」


「あーこれ?この指輪は双竜の砦の中で怯えて使い物にならない方のゴミが持ってたから僕が奪ってきたの!これ面白くてね!起動させると自分が想像した物がそのまま実際に現実世界に出てくるの!副作用としては、近くにいる魔物が凶暴化した状態で寄ってきちゃう事なんだけど…ロジェちゃんも試しに使ってみる?」


 双竜の砦にいた老人からテレポーションを奪ってたのもそうだけど、この子はいつの間に相手の身につけてる魔道具を見つけて盗んでいるんだろうか。


「攻撃が出来ない私がそんな危険な物を使うわけないでしょ。大体そんな危険な効果がある指輪は没収よ没収っ!明日から暫くはサウジストって場所に行くからあーるんもちゃんと準備しといてね?」


「あー!せっかくこれ魔物寄せとして便利だったのにぃ!これ使えば帝都の近くにいる雑魚ですら高難度ダンジョンのボスクラスの強さになって楽しかったのに…」


 ――え?そんなやばい魔道具なのこれ…?


 ロジェが黒いダイヤモンドの付いた指輪を恐る恐る観察する。

 軽く見た感じは龍の宿場と違って軽く見て分かるような変な術式がある訳でもなく、本当に魔物寄せくらいにしか使えなさそうだった。

 あーるんが使いすぎたせいなのかは分からないが、完全に魔道具の魔力尽きていたので、これならば勝手に起動することはないだろう。


「とりあえずこの魔道具は私が管理しておくわね。式場なんかでこんなの起動してるのがバレたら今度こそ処刑されてもおかしくないんだから。――これ以外にも魔物寄せとか持ってるなら全部私に預けるかこの家に置いていくこと。分かったわね?」


「はーい…。わかったよぉ。」


 そう言うとあーるんがしょんぼりしながら自身のポケットから、帝都で売られている魔物寄せとして使うような魔道具やグレイ特製の魔物用の凶暴化ポーション(多分違法薬物)などを大量に取り出して全部私に預けてきた。軽く数えても30は余裕で超えている。


 この数のアイテムを持ち歩くなんて…私が部屋に引き篭ってた1週間、どれだけ血に飢えてたのかしら?

 これだけあれば普通に1つの国くらい簡単に落とせるんだけど…本当にあーるんは今日何するつもりだったの?

1億タールは一般市民であれば3代は遊んで暮らせる額。

武器のメンテナンスなどでお金のかかる冒険者であっても、武器や手持ちのアイテムを全て買い換えてもまだ大量のお釣りが来る破格の高額依頼です。


ロジェ達は簡単に高額な魔物を狩れるので、少々金銭感覚がおかしくなっているだけという事実を覚えて貰えると助かります。


進捗報告アカウント

→@Jelly_mochi3

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