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第三章 27 『王城②』

 皇帝と会うために会議室で待たされること約数十分、ようやくロッキーさんが呼びに来たので、ロジェ達三人は案内されるがままに廊下を歩いていた。


 グレイ達が居るので比較的マシだが、今のロジェは前に進む足がとても重い。そんなロジェとは対照的に、メロールは前に進む度にどんどんテンションが上がっていたので、正直その感情が全く理解出来ない――無敵かな?


 鼻歌を歌いながらテンションの上がっているメロールが後ろを振り返り、ロジェに話しかけてきた。


「お姉様、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ! 私のお父様は優しい方ですし、何より前々からお姉様達に会いたがってましたからきっと悪いようにはされません。仮に何かされそうになったら私が助けるので安心してください! 」


「はぁ、ただでさえ人目に着くような場所を普段から避けてるのに、この国のトッブに会うだなんて普通は緊張が止まらなくなるものなのよ。ね、グレイ? 」


「そうか? 俺は別に緊張しねえけど何が心配なんだよ。聞いた話だとメルの親父に挨拶するだけならすぐに終わるし、問題を起こした訳でもないんだから怖い事なんてないだろ? 」


「それはそうだけど...」


「てかあれだけ何もしないって言ってんのに、持ってきてた薬品含めて荷物は全部没収されたから俺はまともな事出来ねえし困ったぜ。せっかく一発芸にもってこいな薬品を調合してきたってのに少しやりすぎだと思わねえか? 」


「グレイちゃんのは前科あるし、この仕打ちは結構妥当だって。この国で一番偉いおっさんの前に出る以上、相手を暗殺しやすいものは没収されて当たり前だから! まぁ、それだけでグレイちゃんを止められる訳ないし、部屋に侵入者が来たら全部僕の手柄って事で良いよね! 体術なら僕の方が出来るもん! 」


「いや、今から行くのは皇帝のいる部屋だよ? そんなの出るわけ――」


「おいこらそこ、不穏な事を言うなッ! この王城に侵入者など居るはずがなかろう! そうなる前に我々の手で解決してやるわッ! 」


 ロッキーさんはなんか色々と大変そうだなぁ...最近ずっと顔が怖いし、そういう時は甘い物でも食べてリラックスすればいいのに。今こそ私があげたスイーツタルトを食べて落ち着くべきだよ。


「落ち着いてくださいロッキーさん。この発言は心配症な二人が言ってるだけなんでそんな事は基本起こりません。なので私達の発言全てに目くじらを立てなくても...」


「そ、そうですよロッキー・ハルトマン。仮に何か起きたとしてもここに居るお姉様達が守ってくれるので信用してあげてください! 王城を襲撃するような常識知らずな事をするのはお姉様達以外居ませんから! 」


 メルってさ、なんか定期的に私達の事を小馬鹿にしてる気がするんだけど気の所為かな。別に私はそんな事で怒る気なんてないし、二人も子供のやる事だから大目に見てると思うけど、良くないよそういうのは...


「ッ...皇女様がそういうのであれば。とにかく、今から皇帝陛下がおられる場所に入る。陛下も常識のない三人が面会に来る事を知っているとはいえ、要望がない限り余計な事はするなよ? 今回は私と皇女様も同行するので大丈夫だと思うが、陛下に対しては最大限の敬意を持って接し、陛下を第一と思って常に行動する事を心掛けてくれ。分かったな? 」


 ほうほう...まぁ言われなくても最大限の敬意を持って接するけど、私は魔法以外だと人を怒らせない事には自信がある。大体の人は私の不幸話をすればそれなりに楽しんでくれるし、特にネタは用意してないけどなるようになるだろう。


「安心してください。そんな事言われなくても私は相手に敬意を持って立ち回りますし、きっと皇帝陛下も大喜びするようなとっておきの世間話をしてあげましょう! 」



  △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



 ロッキーさんに案内された部屋に入ると、そこはかなり広い空間で派手すぎる装飾はなかったが、床には玉座に向かって繋がる赤いカーペットが引かれていたり、高級感溢れる物がいくつか置かれていたりと、派手すぎないが、どこか威厳を感じる部屋だ。


 そんな部屋の主を象徴するかのように置かれた大きな玉座の前で一人の金髪の男性が堂々たる姿で立って待っていた。年齢は五十代半ばと言った所だろうが、年齢による老いを全く感じさせない程の覇気や威厳を感じる。戦えば強い部類の人だろう。メルと同じ漆黒の瞳が今は少し怖く感じる。


 恐らくこの人がメルのお父様にして、皇帝陛下という奴なんだろうなぁ...ロッキーさんよりも顔怖いし、出来るだけ余計な事を言わないよう慎重に言葉を選ばなくては。


「よくぞ会いに来てくれた、この国で話題が尽きぬ者達よ。私の名前は『パルデル・フォード・イリステリア』だ。このパルデルの名にかけて、今宵は三人を歓迎すると約束しよう」


「ありがとうございます皇帝陛下様。三人を代表しましてこの私が信頼出来る仲間について紹介させて頂きます。私の名前はロジェと申します。私の後ろに居るのはグレイとあーるんです。以後お見知りおきを」


 そう言いながらロジェが膝をつき、自分の事を軽く紹介する。


 というか皇帝様って頭に王冠被ったり宝石とかチャラチャラしたものを沢山つけたり、もっと派手な衣装をしてると思ってたけど、この人はそれを全く付けてないし、衣装も黒や紫をベースとしたシンプルで簡素な衣装だから、実際は意外と違うのね...思ったよりも普通の人だったから安心だわ。これなら気軽に話せそう!


 最低限の礼儀作法を行っているロジェの隣を品のある衣装に着替えているメロールが素通りし、バルデルの元へと移動し、彼女用に用意されていた小さな玉座に座ってこう言った。


「お姉さ――ロジェ、本日は私の無茶な要求に答えて頂き感謝します。あと少しで料理大会もあるというのに、この忙しい時期に顔を出してくれるとは感謝しかありません」


「いえいえ。そんなメロール様が心配される程の事ではありません。むしろ皇帝陛下もお忙しい中、このような時間を作って頂いた事を私達は深く感謝しています」


 余計な事言いそうだし、王城に向かう前にメルと喋る事をざっくりと決めてから『メモメーン』でメモして必死に覚えてきたけど、これで合ってるよね? 間違ってたらごめんねメル。あと、皇帝陛下の前でお姉様って言わないでください...


 ロジェのまともな態度を見て、全く驚きを隠せてないロッキーさんがようやく口を開いた。


「......と、とりあえず本日ロジェ殿がバルデル陛下と面会したがっていた理由を聞こう。なんのつもりでここに来た」


 ――メルに無理やり連れてこられて来たなんて言っても信じて貰えないだろうし、死んでも言えるわけが無い。どうしよう...


 ロジェは脳内を必死に巡らせるが良い感じの返答がない。というかメル、なんでロッキーさんに用件を伝えてくれてないの? 言ってる事が馬鹿すぎて信じて貰えてなかった可能性はあるだろうけど、そういうのは事前になんとかしておいて欲しい。事前に伝えてる前提で動いてたから、この質問について考えてなかったのよ...


「.....私はタイミングを見計らい、この時期であれば問題ないと判断し、私自ら皇帝陛下の元に挨拶をしに来ました」


「ほう...タイミングか」


「私がこの国に来てから色々な事があって、ここまでの実績を残したと言うのに陛下に挨拶をするタイミングがなく、それは人としてどうなのかとずっと思ってましたので。メロール様からの招待もありましたし丁度良い機会かと思ったんです! 」


 多分余計な事は言ってない――よね? 上から目線の発言になってたり、余計な事言ってないよね??


 その発言を聞いたパルデル陛下が驚いたような顔をしながら口を開いた。


「そこに居るロッキー卿から聞いた話によれば、常識がゼロに等しい大問題児集団と聞いていたが、思っていたよりは常識を持っているし、何より自身の立場を弁えておるではないか。私の中にあった貴公達の評価を少し正しておこう」


 一体ロッキーさんの中で私達の評価はどうなってるんだろう。確かに問題は起こすけど、その分ちゃんと依頼なりの協力はしてるし、悪い事してないから少しくらい信用してもらいたいわね。


「それでロジェと言ったな。貴公達の素晴らしい活躍は良い話から悪い話まで聞いているが、まずは一言言わせてくれ。二度に渡るこの国の危機から守って貰った事、そしてサウジストで影の鼓動(シャドウ・パルス)の暗躍を未然に防ぎ、あの街を守りきってくれた事。深く、深く感謝する。貴公が居なければ大量の民に被害が出ており、力を得た犯罪組織が今頃どうなっていたか分からない。これは感謝してもしきれないだろう」


「!? いやいや、皇帝陛下自ら頭を下げて謝らないでください! 私はたまたま事件に出会して、いつの間にか問題が解決してただけですから! そもそも私は大した事をしていません。あれらは全て頼れる仲間達のおかげですから、礼を言うなら私では無く他の方にしてください」


 サウジストの件はともかく、国を襲った龍の襲撃絡みは私がこの国に居なければ起きなかった事件のはずだ。だからここはむしろ大戦犯の私が土下座するような案件だし、そう深く頭を下げないでっ!!!


「いや、我々には貴公に対して返しきれん恩がある。少なくともこのくらいはしなければ国の責任者として居られるはずがない」


 なるほど...皇帝陛下は真面目で情に厚いタイプの人間なようだ。私が主犯格じゃなければニコニコしながらこの実績すらも誇ってたんだけど、流石にやめた方が良さそうねこれは。私はそこまで性根が腐ってないし...


 いつものように実績を拒否してもいいのだが、した所で皇帝陛下の機嫌を損ねてしまう可能性もある。ここは敢えて相手を気遣ってやろう。


「わ、わかりました。とりあえずその件の感謝はありがたく頂戴致しますパステル陛下様。一先ずお茶でも飲んで他の件を――」


「皇帝陛下様はパステルなどという名前ではない。パルデル陛下だ。元々品位が無い事は承知の上で面会させている以上一度くらいは見逃すが、次はないぞ」


 名前、間違えてたのか...なんかごめんなさい。てかいつものロッキーさんなら絶対怒鳴りつけてくる場面なのに言ってこないの珍しいわね。やっぱり皇帝陛下の前だから抑えてるのかしら? 今度からロッキーさんの説教を聞きに行く時はメルを同行させよっと。


「......先程は失礼しました陛下。せっかくの場なんですからそう頭を下げるような話題ではなく、明るい話をしましょ? 互いに忙しいですし、こうして対面して話を機会なんて中々ありませんから暗い話題は遠慮したい――というよりもっと世間話的な物をした方が良いと思うんです! 皇帝陛下さえ良ければそういうお話を中心にしませんか? 」


「わ、私もそう思いますお父様! ロジェお姉――ロジェはお忙しい方ですし、お父様は皆さんに会えたら明るい話をする予定だったと前に言ってたじゃ無いですか! 」


「............確かにそれもそうだな。悪いところを見せてすまなかった。以後気をつけるとしよう」


 そう言って皇帝陛下が堂々とした態度でようやく玉座に着き、堂々たる態度で座り込む。


「それでロジェと言ったな。貴公の事はメロールを通じてよく話を聞いているが、彼女が王城の者以外にここまで懐くのは初めてなのだ。一体何をしたのか教えてはくれないか? 」


 私、何かした...っけ? 魔法杖の注文しに行く途中でこの子と再会してスイーツ食べてたらなんか成り行きで護衛同盟を結ぶ事になっただけなんだけど....どう言うべきなのこれ。馬鹿みたいな話すぎてどう言うべきなのか全くわかんないわね。


「正直私もなんでこんなに懐かれてるかは知りませんが、王城にある本を読んだり、この場所にいる騎士なんかと話すよりも私の不幸話を聞いてる方が何百倍も面白いと彼女はよく言っています。私的にはこうやって皇女様を連れ歩くのは正直めんどくさ――非常に恐れ多いので断りたかったですが、皇女様きっての要望なので断る訳にもいかないので私は受け入れました」


「.......それは興味深い」


 あっぶなあぁぁぁ....今、口が滑って余計な事を言いかけたのよ。怒られてないからギリギリセーフだし、大丈夫大丈夫....落ち着きなさい私。


「それに私のやった事といえば、不幸話をするついでに彼女と共に甘味巡りをしたり、才能はあるのに魔物や対人の戦闘経験が全くなさそうだったので、彼女の為に初心者向けのダンジョンである【四季彩の森】に入って、最低限戦えるようにする為、私なりに鍛えたりした事くらいですね。そうしたらこのように懐かれて流れで王城に案内されたと言う事です。私の独断で勝手な事したのは謝りますが、細かい事は私に聞くよりも彼女の方が詳しいので、私に聞かないでください」


 何一つ嘘は言ってない。彼女は甘味巡りする友達だし、皇女様自ら強くなりたいと言ったのだから無許可でダンジョンに向かったのも本当だ。実際彼女が強くなれば甘味巡りの護衛としても使えるし、私も損する訳じゃないからね。


「なるほど......この子は生まれつき体力がかなり低い事を知っていて、貴公なりに鍛えてくれていたのか。今日聞いたメロール絡みの騒ぎは何事なのかと思ったが、そういう狙いがあったとは知らなかった。幾ら☆1の低難度とはいえ、無許可でダンジョンに行くのは到底許される事ではないが、今回は不問としよう」


 .......はい? 彼女の体力がないなんて話は完全に初耳なんですけど。彼女はそんな事一言も言ってなかったよ?


「........なんの事ですか? 」


「なに。そう隠さなくても良い。実績はこちらでもよく聞いておるし、貴公の情報収集能力がこの国の国家機関よりも優れている事は私も知っている。サウジストの事件でもネオリスとの戦争でも逸早く情報を集め、貴公の持つ未来を見透す力とやらによってほぼ一人で事件を解決に導く為に情報を流したと聞いておるからな。どうやって情報を手に入れたかの方法については聞かんが、その力を使ってメロールが何かに襲われるかもしれない可能性を考慮し、弱点を克服させる為に鍛えていたのだろう? 」


 はぁ、さてはアルロさんやロッキーさんから聞いた情報がまた勝手に拡大解釈されてるやつだなこれ。もうやだ現実逃避したい...


「お父様! 私はロジェと共に散策していましたが、今日だけでも今まで知らなかった沢山の事を知る事が出来たのです! 確かに彼女の指導は厳しく、突然適正範囲外の魔物を私に差し向けたりしてきたりと、沢山の出来事がありましたけど、何時だって彼女は私がピンチになった時は全力で守ってくれましたし、何より戦っている姿はとてもカッコよかったのです! 魔法一つで周りに被害を出す事無く、全てを無効化して問題を解決するその姿はまさに英雄そのものだと私は確信しました! 」


 何を言ってるんだこの子は。私のカエル魔法が失敗してたとこしっかり見てたよね? そもそもダンジョンの時の魔法もオーククイーン相手に頑張ったのはベージュ達だし、第一、私が彼女達を置いて逃げようとしてたとこもちゃんと見てたでしょうがッ! 何言ってんだこの子はーーー!!!


「.......誠に信じ難い話だが、ロジェ殿にそのような目的があったのであれば先程私が怒ってしまった事は深く謝罪しよう。ただし、もう二度と同じような真似はしないように頼むぞ。もし皇女様に怪我でもあれば、我々は陛下に合わせる顔が無くなってしまうからな」


「魔物の件は私と共に来ていた友達のおかげで解決したわけですし、別にそんなつもりで皇女様を振り回した訳じゃありません。それに街での騒ぎの件に関しては私もやり過ぎたと少し反省しております。二度と似たような騒ぎは起こさない事を約束しましょう」


 多分ロリコンさん達は怒ってるけど、あの条件を突きつけた以上は三日くらい大人しくしてるだろう。オークションまであと五日くらいだし、そう何度も何度も関わりが出来るとは思えない。だからあそこまでの乱闘騒ぎなんてもう起きないはずだ...多分。


「....少しではなく、もっと反省して欲しいところだが」


「あはは...そ、そうですねー、ロッキーさんの言う通りだねぇ...」


 ――少しくらい、私の事を信用してくれたって良いのでは?


「それで話は変わるが、貴公は変わった魔法を多く使うと聞く。メロールの話やサウジストでも変わった魔法を沢山使っていたと聞いているし、なによりもこの目で確かめたくなった。実際にこの場で再現して見せよ」


「.....え、そんな事をやって良いんですか? カエル魔法の時と同じように効果範囲の調整をミスして皇帝陛下まで巻き込んでしまう可能性がありますけど」


「構わん。カエル魔法とやらを受けて元に戻らなかった者は居なかったと聞いたし、何より他の魔法も殺傷性の低いものを好んで使っていると聞いている。だからもしその魔法が無理ならば他のものを使えば良いだけだ。使う魔法についてはこちらから指定しないし、私を楽しませることが出来る魔法を使ってみせてくれ。命の保証がされているのであれば責任は追及しない。さぁ、早くやってみせよ」


「そもそも私は使う魔法について大体のリクエストを貰わないと、実際に魔法を出来ない性でして――」


「お姉様、だったら使う魔法はカエル以外でお願いします...」


 メルったら、あなたどれだけカエルになりたくないのよ。カエル状態でも普通に可愛かったのに何が不満なの? ロリコンさん達のメンバーと比べたら美形だったから全然マシじゃん。


 てか本当にどうしようかな。皇帝陛下に無礼のない魔法でかつ、魅力的な魔法でしょ? インパクトのある魔法ならカエルが一番楽なんだけど、メロールに断られちゃったしなぁ...


 試しに薬品鞄に手を突っ込むが、今日の薬品鞄には運の悪い事に変身系のポーションと思われる物は入っていなかった。となれば煙幕を炊いてからポーションを使うと言った誤魔化しは不可能だ。


 ――よし。こうなったら成功率低いけど、この前魔導書を参考にして作ったあの魔法を使ってやるわ! 殺さなきゃ何してもいいって許可は貰ったし、もうどうなっても知らないからねッ!


「......じゃあ分かりました。何が起きても文句は言わないでくださいね?」


 そう言ってロジェが目を瞑り、脳内にこの場に呼び出したい物の姿形を強く想像する。今想像しているのは、グレイ達が連れて帰ってきたあのよく分からない『兎』だ。


 今回ロジェが使うのは『空想の具現化(イメージ・スモーク)』を参考に作ったオリジナル魔法(スペル)だ。効果は自分が想像したものをその場に出現させる魔法である。


 魔法を使った事によってうっすらと紫色に光る黒い髪や、伸ばした手の先から放たれる膨大な魔力を見たロッキーさんやパルデル陛下はとても驚いているが、許可を取っているので遠慮なく魔法を使ってやる。仮に失敗したとしても解除方法はちゃんと作ってあるので問題は無い.............多分。


『グラフィテクター! 』


 術を唱えてから少し経過し、成功したのか確かめる為に恐る恐る目を開けると、グレイ達を除いた部屋にいた十人ほどの騎士やメロール達全員が羽の生えた兎に変化していた。カエル魔法と同じく、変化した兎は当人の特徴を捉えた物が頭や体にデザインとして再現されている。


 ――あれ? こんな広範囲に魔法を設定した覚えないし、私の知ってる現象と全く違う...


 そんな事を考えていると、魔法を受けたはずなのに唯一生き残っている数人の魔導師らしき護衛が驚いてその場に固まっているのを視界に捉えた。そして少しすると、一人の女性の魔導師が代表してロジェの胸ぐらを掴んで激しく体を揺らしながら叫ぶようにこう言った。


「おい貴様、よくも皇帝陛下と皇女殿下にこんな仕打ちを....何をするんだ! 早く魔法を解いて元の姿にに戻せッ!!」


「お、おち、ついて! こ、この魔法は....あ、そうだ! 魔法の影響で出た物や動物は、核を潰せば戻るんです! 皆さんには酷だと思いますが、変身してしまった皇帝陛下達に攻撃魔法を使って一撃で殺してくれませんか? 」


 その言葉を放った瞬間、ロジェは目の前にいた女の魔導師からかなり強めの拳骨を食らった。

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― 新着の感想 ―
皇帝を守る側近に対して「解除する為に一回皇帝を殺してくれない?」はあまりにも鬼畜すぎるし、使い慣れてない魔法を堂々と使う事を含めて主人公のヤバさ具合がここに全部詰まってるw 皇帝に会う前に言っていた…
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