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第三章 24 『帰宅②』

「え、ロジェお姉様ってこの国に来るまでも沢山の犯罪組織を崩壊させてたのですか!?さっきからお話に出てくる大物賞金首は正体不明の賞金稼ぎに壊滅させられたものばかりだったのですけど、それも全部お姉様のおかげだったとは....私、驚きが止まりません! 流石です、お姉様!!! 」


「そうだよー!だからこの前の影の鼓動の壊滅もロジェちゃんにとって朝飯前なんだぁ。ねー? ロジェちゃん!」


「え、うん? そうだ......ね? 」


 どうしよう。思ってたよりも早くメルがグレイとあーるんに懐いてしまった。別に悪い事じゃないけど、このままじゃ皇帝に会いたくないのに会いに行く事になっちゃうじゃない! それだけは阻止しなきゃなのにっ!


 四人はロジェ達の自宅でまったり雑談していた。どうやらメルは私達が今まで潰してきた犯罪組織や魔物の事にとても興味があるらしく、ずっとグレイとあーるんが誇らしげに語っている。メルの口が上手いのか二人がちょろいのか分からないが、このままだと口車に乗せられて本当に私だけが皇帝に会う事になりそうで最悪だ。


 ――というか、犯罪組織に関しては私は何もしてないのに向こうが勝手に自滅していくだけだよ...一方的に絡んでくるくせに気付いたら崩壊してるせいで私の実績みたいになってるのが本当に腹立たしい。私はそんなの求めてないもんっ!!!


「毎回ロジェはどこから情報を仕入れてんのか知らねえけど、一人で突っ走って勝手に解決するからな。メルもこいつの護衛をやるってんなら相当振り回される事になるし、覚悟しとけよ? 一瞬でも目を離したらすぐ居なくなるんだからびっくりするぜ全く」


「.....毎回言ってるけど、全部成り行きでそうなってるだけだから。褒めてくれるのは嬉しいけどグレイまで私を持ち上げるのはやめなさいよね、まったくっ! 」


「なるほど...分かりました。そういう事なら私、次お姉様とパフェを食べに行く時は一瞬たりともお姉様から目を離しません! 色々と勉強させて頂きます! 」


 ――勉強とは? 私から学べる事なんて土下座の奥義ぐらいだからメルの為になるものなんてないのに...


 この話を続けるとまたメルからの評価が上がってとんでもない事になる気がするので、一旦ロジェが手を合わせて音を出し、注目を集めてこう言った。


「私の恥ずかしいエピソードはこのくらいにして、そろそろ本題に入るわよ。今日私がメルをここに連れてきたのには理由があります」


「本題...? ロジェちゃんがそうやって改まるのなんて珍しいけどどしたの? 」


「実はこの後メルと一緒に王城に行かなくちゃいけないんだけど、その時にメルのお父様の元に連れていかれる事になっちゃって――どうしたらいいと思う? この国の皇帝なんて会うのが怖くて怖くて...」


「だからなんでそうなんだよ! 皇女と仲良くなってんのもそうだが色々過程を飛ばしすぎだ! 別に止めはしないけど、何があったらそうなるんだお前は! 」


「お、落ち着いてくださいグレイお兄様! 私は今日一日ロジェお姉様と共に街を歩いていたのですが、色々と助けられましたし、何より私の優秀な側近としてお姉様を紹介しておいきたいんです。お父様は優しい方ですし、この関係がバレるのも時間の問題なので今のうちに会わせておきたくて。ダメ......ですか? 」


 そういってメロールが両手でポーズを作ってグレイの事を見ている。どうやらこの皇女様は自分のあざとさをどう利用すれば最大まで効果が出るのか知ってるらしい...そういうの良くないと思うよ私。


「という事でどうすれば良いと思う? 私的には厄介事を押し付けられる気しかしてないから今は一人でそこに行きたくありません。何か良い感じに断る理由はないかしら」


 メルの目の前で話す内容ではないけど、どうせ聞かれてようがいまいが、彼女は周りにこの事を告げ口しないから問題ないだろう。軽々しく組んでしまった護衛同盟を今から無かった事に出来ないかなぁ...


「.....まぁ、簡単な方法は1つあるぞ。この前お前に渡した『猛進の猪(ストレート・ボア)』を王城に解き放って騒ぎを起こしてやればいい。騒ぎと共にメルを王城に返してそのままロジェだけすんなり帰ってくれば全部解決だろ。それでも心配だったら俺も着いてくぞ? そこに俺が作った試作品を解き放ってやれば結構な時間稼ぎにはなる。だから騒ぎを起こす事なら俺に任せてくれ! 」


 前者はともかく――というかそれもダメだけど、後者はもっとダメだよ? てかグレイは試作品とやらで実験したいだけなのが目に見えてるし、そんな事したら後でロッキーさんに何言われるか分からないんだから。


「あーずるい! それなら僕も行く! この前襲撃した時は仕方なく全員生き返らせたけど、つまり今回は好き放題していいって事でしょ? 誰が来ようが息の根止めるし、あのおっさんなんて力で黙らせるから僕も連れてってよロジェちゃん! 」


「……二人とも何言ってんの? 壊すのも暴れるのも禁止だから。そんな事したら後で何言われるか分からないし、そもそも私はそんな事するつもりないわよ」


「せっかく試作品を試せる良いチャンス思ってたのに…まぁお前がそういうならやめとくか。お前の計画の邪魔しちゃ悪いしな」


「なーんだぁ。せっかく全力で暴れられると思ってたのにダメなのかぁ...僕もロジェちゃんに嫌われるのはやだしやめとこぉ」


 ダメだこりゃ。昼間に何があったのか知らないけど、今日は二人とも相当なポンコツになってるらしい。その証拠にさっきから目的がどんどんズレている。というかそれだったら結局王城に行ってる事になるし、絶対怒られるからダメに決まってるでしょうがッ!


 そんな事を考えていると、二人の提案を聞いてあわあわ焦っていたメルが大きな声を出して止めてくる。どうやら王城を壊されるのは本当に嫌だったらしい。


「お、王城を壊されると私がこっぴどく叱られてしまいます! そもそも挨拶といえど、私がお姉様達三人の名前紹介するだけですから大した事はしません。時間も長く取らせないと約束するので、一瞬だけ顔を出して貰えませんか? 」


 あれ? しれっとグレイ達も紹介する人にカウントされてない? 私一人だけならやばいと思ってたけど、全員巻き沿いに出来るなら行くのもありね。私が不敬罪で捕まりかけたら二人が黙ってないし、そもそもある程度カバーしてくれるし、本当にやる事が挨拶だけなら結構悪くない条件なのでは?

 いつかそのうちロッキーさんに立て替えて貰った酒場の修理代も持って行かなきゃダメだし、皇帝に会うついでにこれも終わらせておこう。


「...メル。一つ確認だけど本当に挨拶だけなのよね?魔法による一芸披露だとか、依頼を回されるだとかしないのよね?それをしないって言うなら別に行ってあげてもいいわよ」


 魔法の一芸披露なら別に幾らでもやってやれるけど、後者は最悪のパターンだ。また式場護衛クラスの厄介事を押し付けられるのだとしたら絶対に行きたくない。


 正直な事を言えば皇帝なんて死んでも会いたくないが、二人を巻き沿いに出来るなら別に構わない。

 死ぬときは全員一緒だし、仮に依頼を振られたら血の気が多すぎる二人に任せればいい。私が行ったらどうせ碌な事にならないから依頼者の為を思っていかないだけであって、決してサボりたいとか思ってるわけではない...そんなつもりじゃないもん!!!


「はい、別にしないと思いますが...というかロジェお姉様、お父様から直接依頼を回される事なんて絶対にないですし、何をする場所だと思ってたんですか? 」


 いや、物語本とかだと大体『実力が保証されてる○○殿に依頼を頼みたい』みたいな王道展開になるじゃん? 基本的に起きるわけ無いのは分かるけどこうなるのが王道ってものだし、それを考えると行きたくなくなるの!


 でもそんな事正直に言うわけにもいかないしなぁ。頼れるお姉様がそんな馬鹿な事を考えてるなんてメルに思われたくないし、なんて返すのが正解かしら。


「うーん...そうねぇ」


 というかなんかお腹減ってきたわね。最近氷結熱鳥(オーバーフロスト)の話をよく聞くから食べてみたくなってきたなぁ。調理方法分かんないけどあれも一応鳥だし、絶対揚げたり焼いたりしたら美味しいよねぇ...グレイが一度作ってくれた記憶があるけどあの時食べた料理ってなんだっけな。どうでも良い事なのにすごく気になってきた...


「あれ、どうかしたんですか?そんな深く考えるような質問じゃないと思うんですが...私、何かおかしな事言いましたっけ? 大会も近いですし、そんなにもお姉様が深く考え込む程の代物があるなら常識の範囲内であればこちらで準備しますけど。何か必要なものでもあるんですか?」


 そんな不安な顔にさせてごめんねメル。あなたの自慢のお姉様は今めちゃくちゃくだらない事考えてるけど、今喉元まで思い出せてきてるからもう少しっててほしい。えーっと確か...うーん――――


「そうだ、氷結熱鳥の丸焼きだ! 」


 まずい、つい思い出せた事に嬉しくなって声に出しちゃった。どう考えても繋がりのない会話だし、別の事を考えてた事がバレちゃうじゃない!何言ってんの私いいいいい!


 その言葉を聞いた瞬間、メロールの顔が真っ青になって震えていた。


「お、お姉様、王城には氷結熱鳥の在庫なんてあ、ありません。というか災害を起こすような鳥を平気で食べようとしないでください。そんな物はすぐには調達出来ませんよ...」


 ――思い出すのに必死でしっかり話を聞いてなかったんだけど、調達って何の話...?


「私は頼んでないわ。今ちょっと別の考え事してたせいでつい口走っちゃっただけだし、あまり深く考えないでちょうだい。今は要らないし簡単に渡せないものだって私も分かってるからね」


「今は要らない...は、はい。分かりました...」


 なんだかメルが凄く怯えてるんだけどなんで…? 私何が悪いこと言ったかしら。ただ口が滑って丸焼きって言っただけで別に要らないよ。


 そんな怯えているメロールを他所目に持っていくスイーツを準備していると、今度は家に置いてあった連絡石が反応した。別に連絡してくれなくとも珍しく自分から王城に行くというのに一体何のクレームだろうか? 連絡石を決まった位置から全く動かしてなかったせいでちょっと埃を被っていたので軽く掃除してから連絡を取った。


「あーあー、もしもーし。私の声は聞こえてますかー? 今度は何の御用でしょうか。先に言っておきますが、私は連絡石越しに怒られるような事は何もしていませんよ。元々私達はそろそろ王城に向かう為に動き出していたので、緊急性の低いクレームや世間話ならその時お聞きします。なのでこの場でわざわざ話さなくとも――」


『.....おい、これは一体どういうつもりだ? 私は大きな騒ぎを起こすなとあれだけ釘を刺したはずだ。なんの余興なのか教えろ』


 全然話が見えてこないんだけど何で怒ってるの? 思い当たる節がありすぎて逆に分からない。


「....なんの事かさっぱり分かりませんね。私が未来予知や相手の心理を読む術なんてものは持ち合わせてないので、ちゃんと用件をもらわなければ何も分かりませんよ。それくらいロッキーさんも知ってるでしょ? 」


『ッ...色々と言いたい事があるが、まずは確認させてもらおう。今、貴様の元にメロール様はおられるのだな? 』


「え? ま、まぁ普通にいますけど...それがどうかしたんですか? あ、そういえば聞いてくださいよ! メルはとても元気な子で、今日一日ずっと外で動いてたのにまだまだ元気が有り余ってるみたいなんですよ! 流石皇族という事もあってすごいですね皇女様。皆様方の普段の指導の成果が出ているようで素晴らしいです! 」


 すると連絡石越しからだが、今まで聞いた事がないレベルの怒号が飛んできた。そこそこ石との距離が離れているはずなのに、音が大きすぎて耳がキーンとなるし、頭が割れそうなくらい痛くなる。


『やはりあれは貴様の仕業か、一体何を考えているッ! 隣にいたはずのロジェ殿が自らが《霜刻の凍鳥》と戦わずにメロール様に戦いを任せ、それだけに飽き足らず自らの魔法でカエルなんかに変身させるとは何のつもりだ! 皇女様が、万が一にでも怪我をしたらどうするッ!!! あの、人見知りで有名な皇女様を、見殺しにするつもりかぁぁぁぁッ!!! 』


 あーこれ、絶対どこかから王城に通報が入ったやつじゃん。というかあれ戦いじゃなくて馴れ合いだし、誰一人として怪我なんてしなかったんだからいいじゃん! 最終的に五体満足で生きてるんだからそれでいいじゃん!! この完璧な私の采配に何が文句あるのさ...


「うだうだうっせえんだよおっさん。そもそも、ここにいるメルちゃんは自分の意志でこっち来てんだから、てめえらが文句言うような立場じゃねえだろ! 僕はメルちゃんから話しか聞いてないけど、アレはか弱い皇女様を鍛えるためにロジェちゃんがわざとやってんの! そんな事も分からない未熟者のくせに僕のロジェちゃんにそうデカい声で怒鳴らないでもらえるかなぁ。すぐにでも王城(そっち)行ってまた暴れるよ? 」


 いや違うけど...私はただメルが戦いたそうにしてたからパスしただけだよ? 何勘違いしてるのか知らないけど、相手は怒ってるんだから挑発なんてしないでよ。


『だとしても皇女様をいきなり☆7冒険者と戦わせる大馬鹿者がどこにおる! 大体、こちらから皇女様の指南など頼んでおらんし、やるにしても限度というものがあるだろうがッ!!! 』


「そ、それはごもっともですけど、アレはそうせざるを得ないというかなんというか…悪気はなかったんですよ!ほら、メルも相手も見物人も誰一人として怪我してませんし、周りの建物にも被害を出してないし、そこまで怒るほどの事じゃ---」


『そういう問題じゃないッ、とにかく、この石越しにでも全力で怒鳴りつけてやりたいがロジェ殿、今すぐにメロール様と共に王城まで来い。貴様と話をしたいと言ってる客人が来ておる。こっちまで来たら色々と話を聞かせてもらうから覚悟しておけッ! 分かったなッ! 』


 そう言って怒りながらロッキーさんが連絡石の通信を切ってきた。


 いや、この段階でも結構怒ってませんでした? これ以上に怒られるとかもうやなんだけど...。

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