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第三章 22 『四季彩の森②』

「ぐるおおおおおおお!」


「こ、これはオーククイーンですか!? 確か本の情報通りだと、オークキングの群れの中に限りなく0に近い確率で存在するレア個体なんですよ! しかも何故か怒ってるし、なんで私達の元にこんなのが来るのですか!!! 」


「まさか、これがロジェさんが僕達に課した道化の過錬って事ですか...? 相手は何故か興奮状態だし、僕達だけでも勝てるか正直怪しいですよこれは...」


 何故か私がこれを仕組んで道化の過錬とやらをベージュ達にした事にされてるが、否定するのが面倒なので見なかったことにする。


 てか本当になんでこうなるんだろうねぇ。どうせまた私の運の悪さに反応して中々見れないレア個体が出てきたんだろうけど、なんで私は普通遭遇しないような化け物ばかりと遭遇するのでしょうか? 正直レア物の方が遭遇する関係上、このオーククイーンとやらも何度も遭遇しているので個人的には全然珍しさがない。むしろオークキングの方が見る機会が少ないまである。


「オーククイーンか...これはまた厄介ね。クイーンの方はキングと違って冷静に動くし、見た目からは想像出来ないとにかく高い機動力があるから気をつけるのよ! みんな私より強いんだから頑張りなさい。大丈夫。死にそうになったら私が後ろからフォローしてあげるから!」


 確か遭遇する度にグレイ達がそう言ってた...はず。間違ってたらごめんなさい。私がこうやってメロールと共に後ろに下がって逃げようとしてるのは、戦闘力が皆無に近いからなんです。ベージュ達もそんな絶望したような表情するのやめてよ...。


「そ、そんな。私達だけじゃ勝てるか怪しいですよこれ...」


「ロジェお姉様!? なんで二人に任せて私と一緒に逃げようとしてるんですか!倒した事があるならお姉様も加勢して倒してください! 私と違って戦えるんでしょ!!! 」


 ――えぇ...二人を置いて逃げちゃダメなの?


「世間には逃げるが勝ちって言葉があって――」


「そんな屁理屈並べてでも二人にきつい仕打ちをを与えてる場合ですか! 早く倒しちゃってくださいよ、もうっ!!! 」


 そんなつもりはなかったけど――でもこのまま逃げてもどうせこいつは追ってくるんだし、しょうがない。こうなったらそれっぽい事言って二人のやる気を出してもらって相手してもらおう。戦いが激しくなったところをこっそり逃げるのが良いとみた。


「...私は二人だけでも倒せると思ってたけど、そこまで言うなら私も出来る限りフォローしてあげるわ。だから二人はさっき練習した一撃を放ちなさい。特に炎で相手を拘束できるセレーナはかなり重要になるから絶対失敗しないでよ! 」


 その言葉を聞いたベージュ達の顔色がとても明るくなった。どうやら相当信頼されているらしいけどごめんね? 私は何もする予定ないし、なんなら今から逃げる予定なんだよね...


「あっ、はい。分かりました! しっかりこなして見せます! 」


「了解です! さっきの発言からして少し不安ですけど、僕達の練習の成果を見せてあげましょう! 」


 そう言って二人が魔法の詠唱を始めたので、ロジェが近くに落ちてた木の枝を投げて注目を集めて適当に時間を稼ぐ。そして十秒ほど経つと、すぐさま炎と風の魔法がオーククイーンの頭上に襲いかかった。


「ぐるおぉ...!?」


 ベージュが杖を振ると風で出来た波が鋭い刃に変化して強烈な風の真空波として襲いかかり、オーククイーンに強烈な風の一撃が入る。その光景を確認したロジェは、メルの手を掴んでこっそり端の方へと移動する。


「よしメル、あんたもこっち来て! 」


「え...? あ、はい! 戦場から離れて敢えて単独行動するって事は何か狙いがあるんですね!!」


 ――そんなものないよ。私はここから逃げたいだけだし...けどそんな事を馬鹿正直に言うわけないし、なんとか誤魔化すしかない。


「ま、まぁ...そんなところかしら。とりあえず端の方へ逃げなきゃ危ないの! だから着いてきて!」


 二人は若手トップだし、私の何百倍も強いんだからきっと生きて帰ってこれるはずだ。

 その証拠にオーククイーンが風の斬撃に対抗して手持ちの大斧で振り切ろうとするが、暫くすると耐えきれずに相手が風の圧に潰されて態勢を崩している。ここまで出来るのであれば私には出る幕なんてない。自分にそう何度も言い聞かせる。


「ウルフレイム!」


 その様子をチャンスと見たセレーナがすぐさま巨大な炎で出来た渦で相手を拘束し、そこに炎で出来た蛇のような形をした派手な音がする火炎放射を直撃させているのが見えたが、炎の火力が高すぎて周りが林だった事もあり、軽く林道が炎上した。そのせいでロジェ達の逃げ場がどんどん少なくなっている。


「ゲッ、このまま居たら逃げきれないじゃない...不味いわね」


「お姉様...ここからどうするのですか? 周りは林なので火の手もすぐに回ってきますよ...? このままいたら燃えてしまいます.....」


 うーん...箒で逃げてもいいんだけど、そうしたら後でベージュ達に何言われるかわかんないからなぁ。こうなったら、アレを使うしかないか。普段使う事を避けてた魔法だし、上手くいくか分かんないけど失敗したら私は死ぬんだし、それなら試して死ぬほうが良い!


 キルメも心無しか苦しそうだし、早めに状況を打開する為にロジェは目を閉じて集中し、脳内で術式を練り始めた。圧倒的な魔力を使った事によって出来る魔力の渦により、一瞬セレーナの魔法によって生まれた炎がロジェの周りで止まり、紫がかった私の髪を見てメルが驚いているがそんなものは関係ない。

 そして術式をしっかりと練終わった瞬間にロジェは魔法を発動した。


『マジカル・スクラッチ』


 すると、燃え盛る炎がロジェの手の動かした方向へ同じ方向に動き出すので、他の場所に炎が燃え移らないように対策していく。よく観察すると、炎がロジェの手の動きに倣って激しく燃え盛る炎どんどん一か所に向かって集まり、縮小していくようにも見える。


「お、お姉様。これは一体...?」


「これは魔法の効果範囲を自由に変化させて威力を一か所に凝縮させる魔法よ。凝縮した魔法は体に触れた瞬間に巨大な傷跡になるし、魔法が強ければ強い程死んだと錯覚する程の激しい痛みが伴ったり、大爆発を起こすから、この塊だけは絶対に触れちゃダメよ」


「は、はい! 」


 相変わらず扱いが難しいなこれ...ぐぬぬ。一箇所に集めるだけなら直ぐに終わるけど、私とメルだけが通れる幅の逃げ道を作るとなれば針に糸を通してる気分なのよ...


 そうしてロジェが歯を食いしばりながら苦戦していると、またもや地面の揺れを感じる。これは---うん、間違いなくオーククイーンがこっちに向かってくる足音だろう。多分私が魔法を使ったせいで出来た渦に反応した感じだな。私は戦えないし、今回こそ本当に終わりかもしれない。


「お、お姉様、助けてください! あれがこっちに来てますぅ!!! 」


「うんうん...とりあえずこっちに――あっ」


 そうやってメルの手を引いて、何とか通れる幅の道を作って走り出したその時だった。 ロジェは石に足をぶつけた事で躓き、メルもロジェと同じようにその場で顔から倒れ込んだ。だが、そのお陰でオーククイーンが横に薙ぎ払ってきた大斧を間一髪で避けきったので、運が良かったと言うべきだろう。


「いたたたた...にしても危なかったわね。まさかここに転がってる石に助けられるとは思ってもなかったわ」


「そんな事言ってる場合じゃありません! 次が来ますよこれ!!」


 そう安心出来たのも束の間だった。すぐさま軽く焦げたオーククイーンがロジェ達に向かって攻撃をしてこようとしているのが見える。


「くっ、こうなったら賭けに出るしかないわね。ゲートオープン、出力全開!」


 相手の振り下ろしてくる速度的にも避け切れる気がしなかったので、ロジェはマジックスクラッチで集めていた魔法を全てオーククイーンの斧にぶつけてやった。斧にそれをぶつける事で爆発を起こしてあわよくば倒そうという狙いである。


 相手に攻撃するという事は、自分の呪いが発動するかもしれないけれど、どうせ失敗したら自分が死ぬのだから四の五の言っている場合じゃない。


 オーククイーンは、出力全開となっている凝縮された炎に完全に包まれ、斧の位置を中心とした火属性の大爆発が発生する。あまりの威力にロジェもメロールもその場にしがみつくのに必死だった。


「!? す、すごい爆発...まさか、たおせ――ましたか?」


 爆発した瞬間かなり凄い光が襲ってきたが、それが止むとオーククイーンは大量の血を流しながら高速でマナへの還元を始めていた。これは過剰なダメージを受けて戦闘不能になった証拠でもある。悲鳴も上げていたし、もうこれは襲いかかってこないと見ていいだろう。


 戦闘が終了した事を確認し、浮遊魔法で空を飛んでたセレーナが空からロジェの近くに勢いよく降って来て着地と同時に距離を詰めてくる。そしていつもみたいに魔法の詳細を聞くのではなく、今回はいつもと違ったとある質問をしてきた。相手の表情からしてきっと自分達が見捨てられた事を怒っているのだろう。説教を受ける覚悟は出来ている。


「ロジェさん、貴方まさか――」


「いや、違うの! これはね、決して逃げようとした訳じゃなくて――」


「まさか、オーククイーン程の大物を倒した時に起きる二次災害を防ぐ為にオーバーキルを狙ってたんですか...? 」




 ......?


「ここまで派手にオーククイーンだけを燃やすとは僕も思ってなかったですが、オーククイーンが持っている大量のマナがこの場所に還元された事でダンジョンは直ぐに元の状態に戻る。そういう算段での行動――ですよね? 」


 ...........???


「ロジェさん、幾ら魔導師の端くれだとしても私達は言わなくても分かってますよ! だってこれ程の大物を討伐すればそれの放つ血の匂いに反応した魔物達が寄ってくるので、高速で消滅させる必要がありますもんね! まだ予想の範疇でしかないですけど、凝縮魔法的なものを使ってオーククイーンをオーバーキルして倒す為にはわざと周辺の木を派手に燃やして炎自体の威力を高める必要があった。だから私に炎魔法を使う事を強要させた――そういう事ですよね! 」













「.............................うん。」


 全然違うけど勝手に納得してくれたし、正直に話せば私の印象が最悪になるのでそういう事にしておこう。本当に二人を生贄にしようとしてすみませんでしたああああああああ!


 私の言葉を聞いて、セレーナはとても嬉しそうにその場でぴょんぴょん跳ねていた。


「やっぱり私の予想通りそういう事だったんだ! 燃えてた木達もいつの間にか全部火が消えてるおかげで大炎上の可能性も無くなってるし、凄い技術ですよこれ! 流石帝都自慢の実力者だとしか言いようがありません!!! 私もいつかそんな凄い事が出来るようになってみたいなぁ...」


 すみません...違うんですセレーナ。私はただこの場所から逃げようとしてただけだし、木の炎上はオーククイーンの動きを止めるために、マジカル・スクラッチを最大出力したらたまたま消えただけなんです...そんなダンジョンの炎上を食い止めるだとか狙ってないです。


 本当なら土下座してでも謝りたいところだが、魔法の副作用で立ち上がると気持ち悪くなるので、その場から暫く移動出来ないのであった。なのでロジェは心の中で目の前で頑張っていた魔導師二人に完璧な土下座、通称ハイパーヘッドスラッシュを静かに披露した。


そんな雑談していると、少し離れた場所に移動していたメロールがトコトコと歩いて戻ってくる。手には何か見慣れないものをもっているんだけど、どこで拾ってきたんだろうか


「あの、お姉様。お疲れのところ悪いのですが、このフライパンって何か分かりますか? 一応オーククイーンが消滅した後に発見したので、戦利品だと思うんですがちょっと怖くて...」


そう言って私の手元までメロールがフライパンを持ってきてくれたのでしっかりと確認するが、何処にも傷がない綺麗なフライパンだった。軽く見ただけでも魔道具特有の気配があるので、これもそういう事だろう。


「うーん......僕もこのフライパンを見るのは初めてだな。パッと見ただけじゃ細かい性能までは分かりそうにないです」


「私もお手上げかなぁ。でも安心してください皇女様。料理系魔道具って腐るほどありますし、売るにしてもかなりのお金になるんですよ? しかも大体はメリットのある効果になっている事が殆どなので、これも凄い効果があるかもしれませんよ!! 」


「......!!!」


セレーナの言葉を聞いてメルはとても嬉しそうな表情を浮かべていた。初めてのダンジョンでかつ、人気の場所でこんなものを見つけるだなんてかなり運がいいじゃん。

流石に凄いと思ったので、ロジェはその場でメロールの頭を軽く撫でてあげた。メロールにとって初めての戦利品がフライパンだし、是非とも自ら使いこなしてもらいたいものだ。


「はい! お姉様。この魔道具も差し上げますので、例の大会で使ってください!! 」


「え? いや、でもこれは---」


「いやも、でももありません! 私はお姉様に何としてでも優勝して貰いたいので絶対にこれを使って優勝してくださいね! 私、当日は楽しみにしてますから!! 」


そう言ってメロールが無理やり私に謎のフライパンを所有権を押し付けてきた。まぁ最近の流れ的にも当たりの魔道具だろう。きっと味を美味しくしてくれるものだし、受け取りを拒否するつもりは無いんだけど、なんだか初めての戦利品を貰うのは申し訳ないよこれ....

マジカル・スクラッチのデメリットは、魔法が発動した瞬間にその場に立っていられなくなるほどに地面が揺れていると錯覚します。例えるとすれば、目が回ってその場に立てない状況と似ているかもしれません。

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― 新着の感想 ―
こういう時はいつもみたいにちゃんと否定すればいいのに、否定するどころか乗っかったりしてるから後でその他からの評価が凄い事になるんやろなぁってw 「..........................…
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