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72話 切り抜け

 魔術攻撃の強みは、派手さと攻撃範囲。

 魔力さえあれば大規模な攻撃をすることが可能で、敵の注目を集めることもできる。

 使い方次第では、罠を張ることだって可能だ。



 ナタンの魔力量は、並の兵士の何倍もあった。

 しかしそれはあくまで普段の話。


 今のナタンは仲間と自分の身を守るために、既に何度も魔術を扱ってきた。

 その上猛烈な吐き気に襲われていた時があったせいで、体力も削がれている。

 そのせいで彼は本気を出せないし、魔術を使える回数も限られていた。



 だが今の彼の後ろには、大切な仲間である王女がいる。

 本当なら気絶した彼女を抱えて逃げ出したいが、数が多すぎて無理だ。

 ……だったらもう、戦うしかない。


(リーダーと約束したんだ!

 だったら命を懸けてでも、ジャッドさんを守らないと……!)


 ナタンは意を決して、インク瓶のふたを開けた。

 そして咄嗟に魔法陣を作り、前方の敵に向かって雷魔術を放った。


 バキバキバキ――!!


 ナタンの雷は大きな音を立てて、立ちふさがる対人兵器全てを巻き込んだ。

 それによる過電流によって機械がエラーを起こし、敵は情けなく沈黙した。

 しかし安堵する間もなく、左右から新しい兵器が押し寄せてくる。

 どうやら焦りすぎて派手にやってしまったようだ。




 ナタンは陣の位置を変え、右の敵に雷を撃った。

 左に対しては口を使って新しいインク瓶を開け、防御魔術を展開する。

 その瞬間、敵の一体の武器がナタンの防壁にぶつかり、がちんと大きな音を立てた。


(反射的に防御を展開したけど、大正解だった!

 もし攻撃魔術を描いていたら……!)


 ふとそんなことが頭をよぎったが、今はそれどころではない。

 右の敵が全て沈黙したのを確認した後、ナタンは雷魔術を左にも放った。



 こうして近くの敵は沈静化したが、また新しい敵がこちらに向かってくるのが遠目でもわかる。

 このまま離脱すれば、確実に追いつかれる。


 そう判断したナタンは片方の陣を炎魔術に書き換え、近くの地面の上に移動させた。

 もう片方は水魔術の魔法陣に変え、隣に持ってくる。

 そして敵がこちらに近づく前に2つの魔術を同時に発動させた。


 すると生じた大量の水が炎で急激に温められ、大量の白い蒸気が生じた。

 煙は瞬く間に周囲を飲み込み、濃霧のようになった。

 これなら敵はナタン達を見つけることはできないはず。


(よし! 霧が晴れないうちにここから逃げよう!)


 後ろにいるジャッドは、未だに目覚める気配はない。

 ナタンは急いで彼女を背負い、チュテレールの本陣に向かって走り出した。




 その時、突然目の前に敵の兵器が現れた。


「!? しまっ――」


 ナタンは咄嗟に相手から距離を取ろうとした。

 しかし間に合わなかった。

 敵の手に取りつけられた刃物が、ナタンの顔に向かって振り下ろされた。


「づっ――!!」


 右目に激痛が走った。

 左目から自分の鮮血が飛び散るのが見える。

 一方、右の視界は真っ暗だ。

 どうやら目を斬られてしまったらしい。


 

 ナタンが痛みに悶えている間、敵は再び武器を振りかざした。

 でも彼は懐に手を突っ込んだかと思うと、銃を取り出して相手に向けた。


 ――バンッ!


 ナタンが発砲した弾は敵の首に当たった。

 その時に重要なケーブルが破損したらしく、敵兵器は無機質な音を立てて崩れた。


「ハァ、ハァ……

 持っていて良かった……」


 以前、レイモンと一緒にジャッドから銃を教わったことがある。

 その日限りのつもりだったが、ジャッドがナタンの才能を見出したのだ。

 彼女は後日も合間を見てナタンに銃のいろはを教え込み、ハンドガンをプレゼントしていた。


 正直、今回当たったのはまぐれだった。

 ナタンは銃を握ってから日が浅い。

 その上片目が見えないせいで、距離感もあまり掴めない。

 この後もこう上手くいくとは限らないだろう。




 再びナタンが走り始めた時には、霧が晴れ始めていた。

 遠くにいる敵のシルエットもうっすらと見えてきている。

 それらはナタンの方に向かってきているような気がした。


(まずい、このままじゃあ間に合わない!

 でもどうする!? もう魔力が尽きかけている!

 まともにやりあう余裕なんてない!)


 ナタンは駆けながら必死に頭を回転させた。

 だが、全力で逃げ続ける以外に思いつかない。

 背中にいるジャッドが目覚めても、恐らくどうにも――



 その時だった。

 急に誰かに右手を掴まれる感覚がした。


 最初は気のせいかと思ったが、ナタンは前方に引っ張られた。

 そして掴まれた部分から徐々に体が透け始める。


「ヴェロニック!?」


 そうしてナタンとジャッドは、ヴェロニックの迷彩魔術によりその場から姿を消した。

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