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幕間 幸い中の不幸

レイモン達が仲良く病院で談笑している頃、セレストは自室で暴れていた。


「――くそっ!くそっ!!」


部屋に置いてある家具は全て、原形もなく無残に壊れていた。

それでも彼の気持ちは収まらず、至る所に当たり散らしている。

まるで癇癪を起こした子供のように。


「何でだよ!

把握していた関係者は全員、この手で確実に殺したじゃないか!

念入りにアジトも焼いて全部消し炭にした!

なのに、なんで事件が起きるんだよ!!」


セレストは自分の手を見つめた。

彼の目には、数えきれない人の血で染まっているように見えた。



彼は事件が起きることを止めるために、自らの手を汚した。

しかしレニエが関わっていることを知らず、失敗してしまったのだ。

逆に良い感じに国民のグレッラへの敵対心が強まり、彼にとってはかなり状況が悪化している。

そのことが心をさらに強く痛めつけていた。


「僕は無意味なことをしているのか……?

こんな苦痛を味わってまで……?

結局、何も変えられないのか……?

あ……ああ…………」


今度は痛みに耐えられなくなり、頭を掻きむしり始めた。

彼の中には、色々な感情が複雑に激しく駆け巡っている。

もう自分がなんだかわからなくなってしまいそうで、思わず叫びたくなる。

……これ以上は、彼でも耐えられそうになかった。



しかしふと、彼の頭にあることがよぎる。

その途端、彼の口角は少しずつ上がり始めた。


「……ふ……はは……ははっ……

あははははははははははははははははははは!!!」


セレストは体を仰け反るように笑い出した。

辛うじて理性は保っているが、湧き上がる激情は抑えられない。

その状態でたった一筋の希望にすがる彼は、まるで狂信者のようだった。


「そうだ、まだあの戦いがある……

あぁ……そうだった……いひひ……

その時に……あれを壊しさえすれば…………

はは……あはっ……ふひっ……」


そういってセレストは、おぼつかない足で部屋を出てどこかに消えていった。

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