第2話 学園の裏には“異能組織”があった
「見てたわよ、さっきの喧嘩」
夕暮れの廊下で声をかけてきたのは、学年一の美少女、**月城 沙耶**だった。
黒髪ロングに完璧なスタイル。成績も運動も全国レベル。
――だが、今の俺にとって一番の謎は、なんでそんな完璧美少女が俺に話しかけてくるのかってことだ。
「で? 見てどうしたんだ」
「普通じゃない。あんな戦い方、ただの高校生じゃできない」
「……まあ、いろいろあってな」
俺、元・異世界勇者。現・陰キャ高校生。
それを口に出すわけにもいかず、適当にごまかす。
沙耶は俺に一枚の紙を手渡した。
「あなた、異能者でしょ? これ、見て」
『選別試験の招待状』
『対象者:異能適性の疑いあり』
「選別試験?」
「この学園には“表”と“裏”があるの。表は普通の高校。裏は――異能者だけが集められた特別課程」
「はぁ……またそういう展開か」
「えっ?」
「いや、なんでもない。……で、俺にどうしろと?」
沙耶はまっすぐ俺を見つめて言った。
「私と一緒に参加して。あなたの力、必要なの」
……このパターン、異世界でも何度も見た。
でも、嫌いじゃない。
「いいぜ。付き合ってやるよ、異能ごっこ」
「ごっこじゃないわよ」
沙耶が小さく笑った。
***
そして数日後。
俺は学園裏の“旧校舎”にいた。
廃校寸前みたいなボロい建物の中には、10人ほどの生徒が集まっている。
全員、ただ者じゃない雰囲気だ。
「よう、沙耶。そいつが噂の新入りか?」
声をかけてきたのは、長身イケメン。
鋭い目つきに、圧倒的な自信――多分、実力もある。
「“神楽 玲央”。異能特別課程のトップよ」
沙耶が紹介する。
玲央は俺を見て、ニヤリと笑った。
「陰キャが来る場所じゃねぇぞ」
「そうか? お前、試してみるか?」
俺が気を少し放つと、空気がピリッと震える。
玲央の目が一瞬、驚きに見開かれた。
「ほう、やるじゃねぇか」
「待て。試験はこれからだ」
黒ローブの中年男が現れた。
「お前たちの力、今ここで試させてもらう。名を“選別試験”という」
ルールは単純。1対1の実戦。相手を制圧したら勝ち。
順番が呼ばれる中、ついに俺の番が来た。
「第七試合――No.17 真田悠斗 VS No.3 柊レンジ」
相手は眼鏡の男子。見た目は地味だが、目が光ってる。
「雷の異能、見せてやるよ!」
そう叫ぶと、彼の手からビリビリと雷が走る。
なかなか派手だな。
だが――
「《風刃断》」
俺の指先から放った風の刃が、雷を切り裂き、そのまま柊の足元をかすめて通過した。
柊、固まる。
観客、生徒、ざわめく。
沙耶、微笑む。
「これが……真田くんの実力」
俺は肩をすくめる。
「まだ本気じゃないけどな」
“元・勇者”は今、陰キャの皮を被って“最強”の座を再び狙う。
次の相手は――学園トップ、神楽玲央か?
……面白くなってきたじゃねぇか。
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(第3話へつづく)