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導星のレガシー 〜世界を導く最後の継承者〜  作者: 烏羽 楓
第一章 忍び寄る灰の気配
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第28話「Eランクへの道と、災厄の影」

 ――日が昇る少し前の早朝。ルークは、学園ギルドに来ていた。


 流石にまだ閉まっているかと思ったが、明かりが灯り、どうやら開いているようだ。中に入ると、早朝にも関わらずチラホラと生徒の姿が見えた。


 受付カウンターに受付嬢の方も座っており、通常通り運営されているのがわかる。どうやらここは二十四時間稼働しているようだ。


 ルークはその歩を進め、受付カウンターを訪れた。


「すみません、クエスト受けたいのですが」


「クエストですね、ギルドカードの提出をお願いします」


 ギルドカードを提出すると、受付嬢のお姉さんはそれを確認しながらいくつかのクエスト用紙を机に並べる。


「ルーク様のランクですと、現在こちらの五つのクエストが受注可能になります」


 出された用紙に目を通していく。薬草採取にスライムの討伐――どれも冒険者として最初に通る基本的な依頼ばかりで、難易度も高くはなさそうだ。


「このクエスト全て達成したら、Eランクに昇格とか出来たりしますか?」


「はい、可能ですよ。ビギナーランクですと、三つクエストを達成するとEランクに昇格されますよ!」


 それを聞いたルークは早く終わりそうなクエストを三つ選ぶ。


「これ受注でお願いします」


「一度に三つ受注でいいですか?ギルドとしては一つずつの受注を推奨しているんですが……」


「大丈夫です、そのまま三つ受注でお願いします」


「かしこまりました。では、手続きを進めますね」


 受付嬢はクエスト用紙に受諾印を押すと、ギルドカードと共にルークに手渡す。


「では、左奥の扉の先にダンジョンへのゲートがあります。一般のダンジョンとは異なり、万が一命に関わるダメージを受けても強制送還されます」


 強制送還の仕組みについては、試験の時と同じのようだ。

 

「ただしその場合、ドロップ品や報酬、ポイントは全て失われ、ランキングにも影響が出ます。ご注意くださいね」


 その説明に納得したルークは、小さく頷く。


 三つの依頼――初歩の内容だが、それをどうこなすかで実力は見えてくる。ルークは小さく息を整えると、迷いなくゲートの部屋へと向かった。


 扉を開けると、入試の際に見たロストレリックの門に似たゲートがそこにあった。その手前には職員が立っており、ルークが持っていた受諾印の押されたクエスト用紙を確認した後、道を開けた。


 ルークは、一呼吸をした後、ゲートの中へと足を進めた。


 一瞬光に包まれた後、すぐに視界が晴れてくる。


 そこに広がっていたのは、岩肌の壁を削り一定の広さを確保した広間。ルークは周りを見渡すが、ゲート以外の物は特になく人も居ない。等間隔に壁に掛けられた松明の光が辺りを照らすが、広間から繋がる洞窟は暗く、視界は悪そうだ。


「凄いな、ゲート型のダンジョンは初めて潜ったが、ちゃんと魔素が存在している」


 周囲に満ちる魔素が、肌の内側にじわりと染み込んでくるような不快感を伴っていた。


「さてと、クエスト達成に必要なのは……」


 ・ゴブリン五体の討伐。

 ・採取して三日以内の魔力草を八つ納品。

 ・鉄鉱石を二つ納品。


 ルークはクエスト用紙を見ながら、内容を再確認する。剣を抜き、ふーっと息を軽く吐き集中する。


(一気にいこう)


「《ソナー》」


 洞窟全体に魔力の波が走ると、すぐさまルークは走り出す。足取りに迷いはなく、既に洞窟内の地形や状況は把握していた。


 道沿いの先、分かれ道を左に曲がり通路を抜けた先、少し開けた広場に出るとそこには二体のゴブリンの姿。


 ギャギャッ!と奇怪な鳴き声を出しながらルークを視認すると襲いにかかってくるが、ルークは二体の間を通り抜ける。その瞬間、ゴブリンの首が飛び血しぶきが上がる。


 「まずは、二体」


 ルークの手には、討伐証明部位であるゴブリンの右耳が二つあった。


 それを腰袋にしまいながら、洞窟の奥へと走り抜ける。


 道中、見かけた魔力草を摘みながら鉄鉱石の採掘も済ませ探索を進めていると、洞窟の壁に違和感を感じた。足を止め、岩壁を凝視する。


 その壁は、やけに魔素濃度が一点に集まって視界をボヤけさせていた。


(これは……)


 怪しさを感じたルークはその壁に向かって、斬撃を食らわせる。


 すると、硬そうに見えた岩壁がいとも簡単に瓦解する。その先には、広々とした空間が広がっており、高濃度の魔素が蔓延していた。


 ――モンスターハウス。日々変化するダンジョンにおいて、稀に密閉された空間ができ、そこに出来る魔素溜まりによって起こされる一種の災害。生き物が纏う身体マナに反応すると、高濃度に凝縮された魔素を媒体に大量の魔物が現れ、一気に襲いにくる。


 また、その規模が大きくなり連鎖することにより、発生するのが大規模災害(スタンピード)だ。


「……厄介だな」

 

 一瞬、眉をひそめながらも、ルークは集中力を高めてモンスターハウスに足を踏み入れた。


 その瞬間――、五十体は超えるであろう魔物が湧き出てくる。ゴブリンにスケルトン、ロックウルフなど様々な魔物がひしめき合いながらルークの方へと一斉に向かう。


「《鋭利強化》《靭性強化》《身体強化》」


 三つの強化魔法を発動させ、その魔物達の海へと自ら飛び込んでいくと、手当たり次第に切り伏せていく。倒しても倒しても、次々に湧き続ける魔物の波。その勢いに、一瞬足が鈍る。

 

「……まだか……っ!」

 

 魔力の消耗も激しい。だが、それでもルークは剣を振る手を止めなかった。攻撃は次第に研ぎ澄まされ、魔物の群れを斬り裂いていく。


 次第に魔素溜まりが解消されると、魔物の湧きが止まる。


 しばらく激しい戦闘の音が洞窟中に響き渡り、静けさを取り戻した時、そこに広がるのは魔物たちの死屍累々の山だった。


 魔物の死体の山に座り込み、ルークは一呼吸する。


「ふう、疲れた。ソロでやるもんじゃないな」


 呼吸の乱れを整うと、ルークは立ち上がり、手際良く魔物達を解体し、大きめの収納袋にしまう。


 一通り解体を済ませると、帰路についた。


 学園ギルドに戻ると、ルークは受付で達成報告と共に解体した素材の買い取りも済ませる。


 大量に持ち帰られた素材の数々。


 受付嬢が伝えた金額に、ルークは思わず眉を上げる。

 

「……二十三万? 本当に?」

 

 思った以上の額に驚きつつも、それがソロでモンスターハウスを突破した対価だと納得する。

 

「ふっ……ソロでも、やれるもんだな」


 そして、ルークの手にはEランクのギルドカードが握られていた。クエスト達成により無事昇格することが出来たのだ。


 ギルドホールで、Eランクに上がったことをガイ達に伝えようとMADを操作していると、ふとダンジョンゲートの部屋から出てくる一人の人物の姿が目に入る。

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