偽物は葉よりも軽く。 -真偽構わず願う少女は、異世界転生した者の様に常識を知らない-
設定をミスして、短編で書いてしまった物です。
ハノコ葉の枝側を摘み、手首で捻る。誰かに教えられた動作を思い出す度に、ハノコ葉の匂いを思う。
匂いの強い、癖のある味で覚えている、と言うよりも少女と教えてくれた誰かを繋がる物が匂いで、味で所詮は朦朧とした記憶の実体を持たない物で。少女はその動作で同盟の拠点から近いハノコの草原に身を屈め、ハノコ葉の他に、軽い小石の下湿った柔らかい土に埋もれている茸を数種類、その泥だらけで傷がある手で取り、同盟に戻る。
同盟の窓口から1人、少女から見れば大人びた印象のある少女の受付から書類を確認しながらぶつぶつとこう聞こえる。
『ハノコが…60枚、状態が良いですね。茸に関しては…見事に粉砕されていて…えーとそうですね…粉末にしたり薬にする前提であれば用途は多様なので…。このくらいでしょうか?マヤさん。』
少女は自身の名前を呼ばれ受付の顔を見上げる。報酬は少女の手を見た後に手渡しではなく木のトレーで出てきて、その上に乗せられた硬く結ばれた小袋は受付によると銀貨で、温情で小袋を結ぶ麻の紐には小さな石鹸も結ばれている。
『…これは、何だろう。』とマヤはそれを手に取り、転がして眺める。乳の色のままのチーズとも考える様子だが、匂いを嗅いでもそのような匂いは無い。
分からない物を渡された事に困惑する。
『結局、あの人も偽物…なのかな。』と呟き、夜に傾いた空に家路を急ぐ。