安全運転が出来ないんですか？

「止まってくださ～い！

　はーい　前の白のワンボックス、止まってください」

　チッ、ちょっとスピード出しすぎたか？

赤いランプが屋根の上で回る、白黒の車が後ろから追いかけて来る

仕方ねぇ、とりあえず一旦止まってやるか

　道路のど真ん中に停車させると、後ろの車も俺の車の真後ろに止まる

んん？あの車、１人しか乗ってない？

なんだよ、１人かよ。こーゆーのって２人１組で乗ってるものじゃねーのか？

「こんばんは～　運転手さん、お急ぎだった感じですか？」

　後車から降りてきたおっさんが、なにやら手に持ちながら聞いてくる

「見てわかるらろ、急いでるっちゃ、急いでる」

　お急ぎだから走ってるんだよ、のんびりでいいなら徒歩で行くよ

「お兄さん、えー23時18分。117キロ、57キロオーバーになりますね」

　なんだ、57キロか、よくある事だ

「すいません、免許証を、見せて貰ってもいいですか？」

　おいおい、マジか

俺に免許を見せろとは、なかなか見る目があるじゃねーか

「免許証ならねーよ、教習所には４年ほど通ったから、運転には自信がらる！」

「４年ですか、熟練教習生ですね！本日はどちらまでいかれるんですか？

３時間もここをグルグルと周ってると　通報がありましたが」

「３時間？まら３時間しか走ってないのか、もっと運転してるつもりだったんだけどな」

　飲酒運転中の感覚って、やたら短く感じるよな

ほろ酔いのいい気分になるから、時間なんて気にしてられねーし

「うわ～お兄さん、お酒の臭いがすごいね！　信号無視を続けてたのも　このせいかな？

ちょっと車降りてもらえる？ナンバープレートもついてないし

シートベルトは――やっぱりしてないか」

　今イベント中だってのに、車外に出ろって？コイツ鬼だ

「アルコールケンサは、受けた事ある？」

　けんさ？ケンサ、あー検査ね！あるある！

「ほんの、６回くらいっすかねぇ～」

　痛む頭で、頑張って思いらすが、さっぱりわからねー

長年運転してきたら、こんなもんだろ

「これね、この風船に息をパンパンになるまで膨らませて貰っていい？」

　めんどくさっ、ひたすらにめんどくさっ！

袖振り合うも他生の縁だったか？　こんな日があってもいいかも？

んなわけねーよ、よくねーよ

「そういや、どうして俺って声かけられられんたんだ？」

　気になって尋ねてみる、他に車1台も走ってないのに？

「お兄さんの車が、さっきから同じ道を3時間ほどグルグルと周ってるって通報があってね？

　わざわざ、私が来たんだよ」

　ご苦労様、おっさん

んで誰だよ、俺を通報したヤツは！　失せろ、めんどくせー事に付き合わせやがって

「それじゃこれに息を吐いてくれるかな？はい、ふぅ～って感じでいいからね」

　吸ってえー、ふうううううううううううう！！！

こんなもんだろ、こんなもんか？

うわ無理吐きそう、いきなり息を吐きすぎたか　

おええええええええええええゲホッゴホッうげぇ

あー気持ち悪い～

おもいっきり吐いちまったけど、少し楽になったからいいか

「はい、ご協力ありがとうございました」

　おっさんが目盛りを見ながら一言返す

おいおい、このおっさん。俺のゲロをスルーか？

そこは大丈夫ですかって気遣うところだろ、なんだコイツは？

「おお、これは……結構飲まれてますね

基準の0.15mg/Lを超えて、0.87mg/までいっちゃってますよ。」

「どのくらい飲まれました？　何時から何時ごろくらいまで？」

なもん一々覚えてねぇよ、ついさっき、あんたに声かけられた時も飲んでたしな

「あ～そうだな、らぶん、午後７時過ぎからあんたに声かけられるまで？

どのくらー？どのくらー飲んだって、言はれてもな

しっかり覚えているのは、ハイボールをジョッキで5～６杯とお～～～～～

ウォッカのショットオおおおおおおエッツ、３杯？4杯？

後はらーめだ、はっきり覚えてねー　そこそこ飲んだ」

「今も車内に置いてた、お気に入りで、口直ししてたところ！

そーだ、おっさんもどう？」

　1人で飲むのもいいが、やっぱり誰かと飲む方が酒も話も弾むよ

つっても、ここにー2人しかいねーから、ほぼ飲み会ほど盛り上がらねーけど

「お兄さんなかなかいける口だね？　しかも助手席に置いてるこの酒って？」

　マジか、このおっさんこの酒を知ってるのか？

「おっさん知ってるの！？そう、スコットの●レンフィ●ィッ

やっぱり飲酒運転にはこれが1番！お、日本酒も捨てがたいって？

あはははははは！！！気取ってみたが、俺は飲めりゃーなんでもいいんだけどね！」

　おいおい、この酒を知ってるとは　

なかなか見る目のあるおっさんじゃねーか！

「それにしても凄いな、●レンフィ●ィッだけでも2瓶空いてるじゃないですか

　お兄さん、お酒好きなんだね？」

　酒は百薬の長だからな、飲まずに運転なんて、やってらんへぇし

「さて、本題だけどお兄さん、なんでこんな所を3時間もグルグル回ってたの？

この道で迷ったなんて、今まで1人もいなかったんだけどな

こんな通報を貰ったのって、お兄さんが始めてなんだよ？」

　おいおい、マジか！俺が1人目って嬉しい話じゃねーか

3時間も粘ったかいがあるってーもんよ、これを何かの記念に残せねぇかな。

「何してたらって？今、ソシャゲの周回をしてらんだ

俺のスマホ、この車のハンドルと連動させてるから、周回と運転をセットで出来る高性能

な？お得だし、趣味を２つもれきるなんて、羨ましいだろ？」

「酒も飲んでるから３つか　あはははは！」

　やりたい事はやらねーと、生きてるかいがねーってもんだよ　

あ？いや４つか

「やけにスピードが出てると思ったら、ながらスマホしてたんですね」

　運転もそうだが、ソシャゲのレイド周回もスピードが命

やはり楽に周回出来るとストレスフリーなんだよ

「クラクションとハイビームは、ポチミスした時の八つ当たりだから大目に見てよ」

　たまに操作ミスがあるとイラッとしちゃうのが欠点だよな

「イライラした時に、モノに八つ当たりしたくなる気持ちは、よくわかりますよ

怒りに任せて、他の車と、の車間距離を詰めようとしなかったのは偉い、流石ですね！」

　んだよコイツ、俺を停止してきたくせに、褒めてくれるとかめちゃくちゃ優しいじゃん

俺の車1台しか、走ってなかったおかげだが　結果オーライ

「ちなみにお兄さん、どなたか跳ねた事は　あります？」

「無いけど、ある！」

　前言撤回、こいつ失礼なヤツだな

ひき逃げ、当て逃げなんて事、するわけねーだろうがよぉ！

たしかにいのししの群れを、引き逃げしたことならあるけど

最後までハンドルには　運転には、真摯に向きあってきた俺への煽りか？

「お兄さん怒らないで、落ち着いて落ち着いて、すいませんね、確認するのは決まりですから」

「話は変わりますが、先程ドアポケットに置いてあった無色澄明な錠剤、あれは何だったんです？」

　コイツしっかり見てるらん、腐っても仕事には、真面目か？

「うんにゃ、ありゃフェン●ニルだね！

海外の友人から送ってもらった、今イチ推しの、俺のお気に入り」

　キめる時には最高の薬なんだよな

やっぱり人生ってストレスを抱えっぱなしはダメ、リラックスリラーックス

　今夜はまだ2回しかやってねぇから、意識が何度かトンだだけだしよ。

「フェン●ニル、ですか、それはーーあまりいい友人じゃないみたいですね。

海外で、ゾンビみたいになってる人達の動画を見た事がありませんか？」

「いや　知らねーな、他人は他人、自分は自分だろうが

人の趣味趣向に、ガタガタ口を挟んでんじゃねーよ！」

　さりげなく俺の友人を馬鹿にしてんじゃねーよ

「車のトランクも、見せて貰ってもいい？　お時間とらせてごめんなさいね

どれどれっと、お、この折り畳み式サバイバルナイフは、刃渡り9ｃｍくらいかな？

特殊警棒まで持ってるんだ、これも、一般人が許可無く持ってちゃアウトなんだけど、よく手に入ったね？」

　昨今は、こんなご時世だしな

煽り運転してくるヤツをわからせる、道具の１つや２つと言わず３つは欲しい

「何かあった時の備え、は大事ですからね。　煽り運転をしなかったのは、素晴らしい！」

「俺は世界を煽ってるから、毎日煽り運転をしてたらこの様らよ」

　せっかく褒めてもらったわりーな、おっさん

俺は毎日煽り運転をしてるんだぜ、いいドライブには良い煽り運転だ

「そうかー、それは残念だ」

　少し、しょんぼりするおっさん

「チッ、レイドイベントが終わっちまったー、やる事もなくららーたし、そろそろいくか」

「お忙しい中、停めちゃって、すみませんね、これも仕事ですから」

　おっさんが、申し訳なさそうに、頭をかきながら謝る

仕事じゃしょーがねーか、オロロロロロロッ！ゴホッうわ吐いた吐いた

おっさんのおかげで、車外に出てて良かった

「グルグルと周ってましたけど、この道を真っすぐに進めば地獄なんで、お気をつけて逝ってくださいね」

「ちゃんと進むから心配いらねーよ、このまま突っ込むのれ」

　やけに厳つい顔の連中が向こうで睨んでるから、周回を続けたけどよ

諦めて素直に突っ込むとするか、あの扉ぶっ飛ばしていいよな？

---

煽り運転をされたので、腹いせです。