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禁断の名を刻む時――解き放たれし封印

禁断の名を刻む時、運命の歯車が狂い始める。


これまで曖昧だった記憶が、少しずつ形を成し始める。

だが、その名を思い出すことは「世界の理に背く」ということだった。


神々が最も恐れ、封じた名——

それを口にした瞬間、封印された力が解き放たれ、世界は新たな局面を迎える。


そんな中、 可愛い顔してドSな情報屋の妖精・シュエル が登場。

「あんたのこと、もっとヤバいやつが狙ってるよ?」と余裕の表情で言い放ち、

主人公にまとわりついて 名前を聞き出そうとする。


そして、ついに主人公は 自らの名を口にする。

——その瞬間、世界が震え、新たなる影が現れる。


封印が砕かれた今、次に動き出すのは……?


6話、ここから物語はさらに加速する!

ぜひ最後までお楽しみください!!



 ——パキンッ


 鋭い音が響いた。


 空間に生じたひび割れのように、戦場の静寂が裂ける。


 瓦礫(がれき)の上に立ち尽くしていた俺は、その音の正体を探るようにゆっくりと視線を上げた。


  戦いは終わったはずだった。


 七柱(ななばしら)の審判者たちは全滅し、残されたのは崩壊した神殿の残骸のみ。


 ……そのはずだった。


 「ちょっと待った」


 軽快な声が、静寂の中に響く。


 俺が振り向くと、そこには——


  小さな影が、宙に浮かんでいた。


  透き通る翡翠色(ひすいいろ)の羽。

  いたずらっぽい瞳が、じっと俺を見つめている。


 ——シュエル。


  俺の目の前に、世界一可愛くて、世界一ドSな妖精がいた。


 「やっぱり、すごい力だねぇ。これは情報料が高くつきそうだわ」


 クスクスと笑いながら、 翡翠色の光をまとった羽をひらりと揺らし、俺の周りをひらひらと飛ぶ。


 「……妖精か」


 俺は冷たく言い放つが、シュエルは 全く(ひる)む気配もなく、むしろ 得意げに腕を組んで見下ろす。


 「そう、あんたみたいなでくの坊にはもったいないくらい、可愛くて優秀な妖精情報屋よっ♪」


  無駄にキラキラとした笑顔 でそう言うと、くるくると回転しながら俺の肩の上にふわりと降り立つ。


 「ねえねえ、あんたさぁ……七柱の審判者なんかより、もっとヤバい奴がいるって知ってんの?」


 シュエルは 俺の耳元でひそひそと(ささや)くように 言うと、俺の顔を(のぞ)き込んだ。


 俺は黙って彼女を見た。


 「へぇ〜、知らないんだ?」


  ニヤリと意地悪な笑みを浮かべ、俺の頬をちょんと突く。


 「知らないってことは、つまり……あんた、自分の真実を知りたくないんだね?」


  ——この妖精、なかなかの性悪だ。


 俺が少し不愉快な表情をすると、シュエルはくるりと宙を舞い、俺の目の前で 小さな胸を張りながら高らかに宣 言した。


 「まぁまぁ、まずは自己紹介よね! あたしは シュエル様! ただの情報屋じゃないからねっ♪」


  「様」って何だ。


 俺は無言で手をひらりと振り、軽くあしらった。


 そんな俺の態度に、シュエルは 頬をぷくっと膨らませた。


 「はぁ〜ん、そういう態度しちゃうんだ? ふ〜ん……」


  「そんな態度……していいのかなー?」


  わざとらしく溜息(ためいき)をつきながら、俺の耳元で囁くように言う。


 「つまり、あんた 自分の真実 に興味ないってことね?」


  小さな指を俺の胸にトンッと当てながら、にやりと笑う。


 「……何が言いたい」


 俺が冷静に問いかけると、シュエルは くるくると宙で回転しながら楽しそうに笑った。


 「ふふっ、知りたいなら まずは名乗ることね♪」


 俺は 一瞬だけ動きを止めた。


 名前——


 シュエルの言葉に、 過去の記憶の断片が脳裏をよぎる。


  ——『君は“禁忌の存在”なんかじゃない』


  ——『君は、この世界の“真なる起源”なんだよ』


  雷鳴のごとく響く神々の声。

  封印の儀式。

  俺の存在を消そうとした神々の姿——。


 視界が一瞬、霞むような錯覚に襲われる。


  ——名前。


  俺の“本当の名前”——。


  それを知っている者は、この世界にいないはずだった。


 「……」


 俺が沈黙すると、シュエルは 頬をぷくっと膨らませた。


 「ちょっと! 何その反応!」


 「……」


 「ねぇねぇ、 あんた名前って何?」


  しつこく俺の周りを飛び回りながら、興味津々の様子で聞いてくる。


 「……」


 「ほらほら、 だから名前は? 」


  「だから、うるさい」


 俺は軽く手を振って彼女を払う。


  「もう……しらない。情報も教えてあげないから」


  プイッとそっぽを向くシュエル。


  ——この小さな妖精、どこまで俺をもてあそぶ気だ?


  だけど、何故か少しだけ可笑しかった。


  俺は微かに笑い、静かに言った。


 「……わかったよ」


  ——俺の“本当の名前”を、初めて誰かに告げる瞬間だった。


「……わかったよ」


 俺がそう呟いた瞬間、シュエルの翡翠色の瞳が キラリと光る。


 「おぉ? とうとう教えてくれる気になった?」


  「気になった」じゃなくて、お前がしつこかったんだろうが」


 俺は ため息をつき、ふと宙を見上げる。


 崩れた神殿の残骸が散乱し、赤黒い空が広がっていた。


  名前——。


  今まで、誰にも呼ばれなかった、本当の名前。


 この世界に生まれてからずっと “名前を持たない存在” として生きてきた。


 いや…… “名を呼ばせなかった” と言うべきか。


  俺の名前を知る者は、世界にはいないはずだった。


 けれど、今、俺の奥底からその“音”が蘇ろうとしている。


  ——雷鳴のごとく響く神々の声。

  ——封印の儀式。

  ——俺の存在を消そうとした神々の姿——。


 視界の端が揺らぎ、遠い記憶が浮かび上がる。


  神々は俺を恐れた。


  俺の名は、それ自体が“禁忌”だった。


 「ねぇねぇ、だから名前は?」


  ピタッ


 軽く払ったはずのシュエルが 俺の顔の前で浮遊したまま動かない。


  「しつこいな……」


 「 あたりまえでしょ? これ、情報料の代わりだから♪ 」


  “知識”には対価が必要。


  妖精の情報屋にとって、それは絶対のルール。


 俺は 僅かに口角を上げる。


 「……じゃあ、教えてやる」


 「ほほぅ? ついに?」


 シュエルが 期待の眼差しで俺を見つめる。


 「俺の名前は——」


  ズズンッ……!!


  その瞬間——世界が震えた。


  大気が揺れ、地面が軋む。


 「……え?」


 シュエルの翡翠色の羽が微かに揺らぐ。


 まるで この世界そのものが、俺の名を知ることを拒んでいるかのように。


 「……これは、どういうこと?」


 俺は 黙ったまま、地面に浮かび上がる紋様を見下ろす。


 ——光の封印。


 俺の 記憶の深奥に施された最後の結界。


 “本当の名前”を思い出すことすら、封じられていたのか。


 「チッ……ここまで徹底するか」


 俺は 拳を握りしめる。


 「ちょっと! 何が起きてるの?」


  焦ったように俺の周りを飛び回るシュエル。


 「おかしい……普通に名前を思い出すだけで、こんなことになる?」


  違う。


  ただ思い出すだけじゃない。


 俺が “この名を口にすること” は、 世界の理に反する行為 だとでも言うように。


 「……はぁ、やっぱり、あんた相当ヤバいやつだわ」


 シュエルが 呆れたように頬をかく。


 「でも、だからこそ知りたいのよねぇ……“君の真実”」


 彼女は にんまりと笑い、宙でくるりと回転する。


 「いいよ、取引成立! あんたの情報は、 最高級レベルの価値がある ってことがよーく分かったし♪」


 「……俺の名前はまだ言ってないぞ」


 俺は 静かに言う。


 「知ってる。でも、もうすぐあんたは自分で“思い出す”んじゃない?」


  シュエルはそう言い残し、妖精らしい優雅な動きで宙を舞う。


 「さぁ、次のステージに進みましょ?」


 俺はゆっくりと 拳を開く。


  ——封印が解ける時が、ついに来た。


  ——ズズンッ……!!


 大気が震え、地面が低く唸るように揺れる。


 瓦礫の間に走る 亀裂。


 崩れかけた神殿の残骸が、微かな光を放ちながら軋みを上げた。


 「……これ、本当にヤバいんじゃない?」


 シュエルが翡翠色の羽を ぱたぱたとせわしなく動かしながら、俺をじっと見つめる。


 「ねぇ……ホントに“名前”を思い出すだけで、この大地震なわけ?」


 俺は ゆっくりと視線を下げる。


 俺の足元——そこには 光の紋様が刻まれていた。


 それは 世界そのものに刻まれた“制約”。


  俺の名前をこの世界に刻ませないための封印。


 「……チッ」


 俺は 拳を握りしめる。


  名を思い出すことすら許されない?


 どこまでも 神々は俺を恐れていたということか。


 「ねぇねぇ、あんたさぁ……」


 シュエルが 俺の顔の前にぴょんっと飛び出し、目を細める。


 「そんな顔してるけど、ホントに自分の名前、思い出せるの?」


 「……」


 「まさかとは思うけど、怖いとか言わないよね? だって、あんたはあんたなんだから」


  ——怖い?


  俺が?


 「バカなことを言うな」


 俺は 低く呟く。


  恐れているのは俺じゃない。


  俺の“名前”がこの世界に再び刻まれることを、神々が恐れているんだ。


 俺は 光の紋様を見つめる。


 それはまるで、生き物のように うごめいていた。


 「おい……何か聞こえるぞ」


 シュエルの小さな眉が ピクッと動く。


 「え? 何かって——」


  ——その瞬間、世界が“囁いた”。


 『……ヴァ……』


 『……ヴァル……ゼ……』


 「……!」


 俺は 息を飲む。


 聞き間違えじゃない。


 俺の 名前が、封印の奥底から漏れ出してきた。


 『……ヴァルゼクト……』


 その瞬間——


  バチンッ!!!


  光の紋様が砕け、世界が揺れる。


 「ちょ、ちょっと!! あんた今、何を……!!」


 シュエルが 慌てたように俺を見上げる。


 俺は ゆっくりと拳を開き、 今までとは違う感覚 を確かめるように 掌を見つめた。


  “俺の名が戻った”


  世界がそれを認識した——その瞬間、俺の力が目覚める。


 「……俺の名前は——ヴァルゼクトだ」


  雷鳴が轟き、黒い閃光が天を裂く。


  この瞬間、神々が最も恐れた存在が、本当の意味で覚醒した。



  ——ゴゴゴゴ……ッ!!


  雷鳴が響き、大地が軋む。


 世界が俺の名前を取り戻した瞬間—— 空すらも震え上がった。


 黒い雷が大気を裂き、天と地の境界が歪むような感覚。


 それはまるで、世界そのものが俺を“歓迎”しているのか、それとも“拒絶”しているのか——。


  「……え、これヤバくない?」


 シュエルが 驚愕の表情で宙を舞う。


 「ねぇ、ちょっと!? あんた、今すごいこと言ったけど!!」


 俺は 静かに拳を開き、そして握る。


 「……ヴァルゼクト」


 俺がその名を口にするたび、 世界の理が軋むような音を立てる。


 それが どれほど異常なことなのか、今ならよく分かる。


 シュエルが 眉をひそめて俺を見つめる。


 「ねぇ……ちょっと、教えてくれない?」


  「何をだ」


 「“ヴァルゼクト”って、どんな意味なの?」


 俺は 少し目を細め、遠くを見つめた。


 この名前の意味—— それは、俺が俺である証。


 かつて、神々が封じた存在の名——。


 俺はそれを語るつもりはなかった。


 だが、シュエルは しつこい。


 「ねぇねぇ、気になるなぁ〜〜」


 俺の顔の前で ちょこちょこと飛び回り、頬をぷくっと膨らませる。


 「まぁ、情報料としては最高クラスの価値があるけどさ♪」


 「……」


 「でも、教えてくれないと、もう 情報も教えてあげないから!」


  ふんっと横を向くシュエル。


 俺は思わず 小さく笑った。


 「……分かったよ」


 「おっ!?」


 シュエルが ピタッと動きを止め、目を輝かせる。


 俺はゆっくりと 口を開いた。


 「ヴァルゼクト。それが、俺の名だ」


 その瞬間——


  ——ドォォォォンッ!!


 遠くの地平線の向こうから、 眩い閃光が炸裂した。


 シュエルが 目を見開く。


 「……なに、今の?」


 俺は すぐに察する。


 「……来たか」


 シュエルが キョロキョロと周囲を見回す。


 「来たって、何が!? まさか、神々の刺客!? それとも審判者の追加派遣!?」


  ——違う。


  これは、別の何か。


 雷鳴が遠くで響く。


 そして——


  視線の先に、ひとつの影が現れた。


  漆黒の翼を広げた、ひとりの男。


 シュエルが 驚愕の声を上げる。


 「……っ!! まさか、アイツ……!!」


 男の瞳が、 冷たく光る。


 その目が俺を捉えた瞬間、 空気が張り詰めた。


  堕天使・ルシェイド。


 神に背き、天から堕とされた存在。


 そして、 今、この場に現れたということは——。


  「貴様がヴァルゼクトか」


 低く響く声。


 俺は 静かに、ルシェイドと向き合った。


  「……さて、ここからが本当の戦いか?」


  この瞬間、世界の均衡が大きく揺らぎ始める——。






「シュエルだよー! うふっ♪」


今回も最後まで読んでくれてありがとう!

いや〜、ついにあんた(主人公)が本当の名前を思い出しちゃったね。

まぁ、私には最初からバレバレだったけどねっ! うふふ♪


それにしても、いい感じじゃない?

禁断の名を刻む時、封印が解かれちゃって、世界がどんどん面白くなっていく予感!

神々? 審判者? ふーんって感じだね。 でもね、あんたを狙ってるヤバい奴、まだまだいるんだから!

そこのところ、ちゃんと覚悟しておきなさいよね!


そして、読者のみんな!

今回も読んでくれて本当にありがとう!

ここまで読んでくれるなんて、シュエルは感激しちゃうよ〜。

みんな大好き!! ちゅっ♡ ← って言ったら主人公に「やめろ」って怒られそうだけどねっ!


ねえねえ、ブクマって知ってる? そう、あれ! しといてね!

次回もヤバい展開が待ってるから、ちゃんと読みに来なきゃダメだからね!


それじゃ、またね! 次回もシュエルと一緒に楽しもうね♪ うふふっ!

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