神々の審判、開かれる闇の門
神殿での戦いは、ついにクライマックスを迎える。
審判者たちは彼の存在を抹消すべく、本気で襲いかかる。
しかし——
その圧倒的な力に、彼らは恐れを抱き始める。
「これが俺の力だ」
封印されていた“何か”が目を覚まし、世界の理が揺らぐ時——
新たな出会いが、物語の扉を開く。
彼の前に現れたのは、小さな妖精の少女。
いたずらな笑みを浮かべる彼女は、彼に何を語るのか。
そして、彼が知らなかった“真実”とは——?
戦いの果てに、さらなる謎が浮かび上がる。
物語は次のステージへ。
崩れた神殿に、静寂が広がる。
黒煙が立ち込める中、瓦礫の山の向こうから、静かに歩み寄る影があった。
黄金の鎧をまとい、神々の威光を背負う七柱の審判者——彼らは天の理を守る存在であり、この世界の秩序を乱す者に裁きを下す。
その頂点に立つ審判者が、一歩前へ出た。
「……審判の時だ」
低く響く声が、空気を張り詰めさせる。
彼を取り囲むように、審判者たちは陣を敷く。まるで世界そのものが彼の存在を拒むかのように、天の理が圧を増していく。
「貴様の存在は、この世界の理に反する。ゆえに、我らの手で消滅させる」
「またそれか……」
呆れと苛立ちが混じった声が、静寂の中に響く。
「お前たちは“理”だの“秩序”だのと繰り返すが、そんなものが俺を縛れると思うのか?」
審判者たちは何の感情も示さず、ただ冷淡に剣を構えた。
「神々の意志に背く者よ……滅びの刻は、今ここに」
——ドォン!!
突然、審判者の一人が足を踏み込み、地面を砕く。
瞬間、黄金の輝きが弾け、光の槍が天から降り注ぐ。
彼はその場から一歩も動かず、冷静に槍を見上げた。
「……やれやれ、話し合いは無しってことか」
黄金の槍が迫る、一瞬の閃光。
その光は空を裂き、一直線に彼を貫こうとしていた。、彼の瞳が鋭く光を放つ。
「なら、俺も遠慮しない」
神殿の空気が、一瞬にして張り詰めた。
審判者たちの裁きの時が、ついに始まる。
黄金の槍が降り注ぐ。
天から放たれたそれは、まるで光そのものが意思を持ち、標的を貫こうとしているかのようだった。
——ドォンッ!!
地面に突き刺さる瞬間、衝撃波が炸裂し、瓦礫が吹き飛ぶ。
しかし、彼の姿はそこにはなかった。
「遅いな」
審判者たちの視線が空へ向けられる。
彼は既に空中にいた。
黄金の槍が着弾する寸前に足元の瓦礫を蹴り、空へ跳躍していたのだ。
「……この程度か?」
審判者たちは表情を変えず、ただ冷徹に次の攻撃を放つ。
「囲め」
その一言で、彼の周囲に七柱の審判者が一斉に移動し、陣形を組んだ。
——光の鎖が降り注ぐ。
神々の力で編まれたそれは、触れた瞬間に対象の力を封じ込める拘束術。
「貴様の自由は、ここで終わる」
鎖が迫る。
——カチッ。
だが、次の瞬間、その鎖は音もなく宙で停止した。
「……何?」
審判者の声が、かすかに震えた。
それは、わずかだが確かに感じ取れる“動揺”だった。
彼の手が、光の鎖を掴んでいた。
本来ならば、神々の理で形成されたこの鎖を、ただの人間が触れるはずもない。
だが、彼はその“理”すらも覆す。
「こんなものが……俺を止められると思うなよ」
ギシギシッ……!!
彼が握り締めると、鎖がきしみ音を立てた。
「封じるつもりなら、それ相応の覚悟がいるんじゃないか?」
——バキィィンッ!!
鎖が砕ける。
その瞬間、彼の背後に一体の審判者が神速で迫った。
「まだだ」
黄金の剣がキラリと光り、鋭く振り下ろされる。
彼は素早く体をひねり、ギリギリのところで攻撃をかわした。
「——クッ!」
審判者はその場で踏みとどまり、再び剣を構えた。
「神の理は絶対。この世界をゆがめる貴様を、このままにはしておけぬ」
「だから、その“理”ってやつが気に食わねぇんだよ」
彼の声には、ほんの少し苛立ちが混じっていた。
神々が決めた“秩序”という名の檻。
彼はその理に囚われるつもりはなかった。
——ドンッ!!
彼は地面を強く踏み込み、一瞬で相手との距離を縮めた。
黄金の剣が迫る中、彼はためらわずに拳を突き出した。
「これは、俺の答えだ」
——バゴォォン!!
拳が放たれた瞬間、空間がゆがむほどの衝撃が走る。
審判者の一人が吹き飛び、瓦礫の山へと叩きつけられた。
静寂が広がる。
残された審判者たちが、無言のまま剣を握りしめる。
「……なるほど」
審判者の一人が、初めて感情を滲ませた。
それは、警戒——いや、“恐れ”だった。
彼はただ静かに息を吐く。
「さて、次は誰が来る?」
闘いは、まだ始まったばかりだった——。
審判者が倒れ、崩れた神殿に再び静けさが広がった。
しかし、戦いは終わっていなかった。
——バチバチッ……!!
突然、空気が震えた。まるで世界そのものが悲鳴を上げているようだった。
神殿の中に、不気味な力が広がっていく。
「これは……?」
審判者の一人が、不安そうに声をあげた。
——ゴォォォォッ!!
空が裂けた。
黒い雲が渦を巻き、稲妻が天を駆け抜ける。
「まさか……封印が……!」
審判者たちは顔を見合わせた。
その目には、初めて恐れの色がにじんでいた。
彼の体から、黒い光があふれ出す。
ただの魔力じゃない——
この世界のルールを壊す、恐ろしい力だった。
視界がぼやけ、過去と現在が重なり合う。
輝く神殿、立ち並ぶ神々。
そして、その中央に封印される“自分”の姿。
——記憶がよみがえる。
「これが……俺の本当の力……?」
体の奥に眠っていた何かが目覚めた。
——バチバチバチッ!!
黒い光が一気に広がり、空間がゆがむ。
「……この力は……まさか……」
審判者の一人が、震える声でつぶやいた。
「どうした? さっきまでの自信はどこへ行った?」
彼はゆっくりと笑った。
——ゴォォォォォン!!
黒い雷が天から落ち、神殿が激しく揺れる。
天井が崩れ、地面に大きなひびが走る。
すべてをのみ込む、圧倒的な力が解き放たれようとしていた——。「くっ……まずい……!!」
審判者たちが距離を取る。
「これが……俺の力か……」
彼はゆっくりと手を広げ、自らの掌を見つめる。
そこには、今までに感じたことのない“圧倒的な力”が宿っていた。
——この力があれば、神さえも超えられる。
「貴様……!」
審判者の一人が剣を構え、全力で突進してくる。
しかし、彼はそれをただ静かに見つめていた。
——バシュッ!!
審判者の剣が、彼の前で止まる。
まるで見えない壁があるかのように、剣先は彼に届かなかった。
「何……!?」
審判者の目が見開かれる。
「——終わりだ」
彼は無造作に手を振る。
——ズォォォォン!!
次の瞬間、審判者の体が宙を舞い、遠くの壁に叩きつけられた。
審判者がうめきながら地面に倒れ込んだ。
その光景を見た他の審判者たちは、言葉を失っていた。
「これが……封じられていた“力”……?」
彼の中で、かつて神々が恐れた“存在”が、再び目を覚まそうとしていた。
彼はゆっくりと顔を上げ、冷たい瞳で審判者たちを見渡す。
「神のことわり? 世界の秩序? そんなもの、俺には関係ない」
その声は、絶対的な自信に満ちていた。
——俺が、この世界を変える。
戦いの均衡は、完全に崩れた。
瓦礫が舞い、空間がきしむ。
彼の周囲に漂う黒いオーラは、もはやただの魔力ではなかった。
——それは、ルールをも捻じ曲げる存在の証。
審判者たちは恐怖に震え、握った剣がわずかに揺れている。
「……この力、まさか」
審判者の一人がつぶやいた。
その目は、恐怖に満ちていた。
彼はゆっくりと足を踏み出し、彼らをじっと見つめた。
「これが俺の本当の力だ」
雷鳴がとどろく。
——ドォン!!
次の瞬間、彼の手から黒い稲妻がはしり、地面を裂く。
神殿の床が崩れ、審判者たちがバラバラに飛ばされる。
「うっ……!!」
崩れた柱の影に身を隠しながら、審判者の一人が言った。
「バケモノめ……!」
だが、その声は震えていた。
審判者たちは「世界の理」を守る存在。
神々の意志を受け、何百年も世界の秩序を維持してきた。
それでも——
目の前の存在には、まるで勝てる気がしない。
彼は審判者を見下ろしながら、静かに口を開いた。
「神々が恐れる理由が、ようやくわかったか?」
——ドンッ!!
瞬間、彼は一歩踏み込んだ。
そのたった一歩で、空気が震え、審判者の体が反射的に跳ねる。
「な……!?」
「終わらせる」
彼が手を掲げた瞬間、黒い雷が天に昇る。
まるで空そのものが割れるように、光と闇が混ざり合う。
——ゴゴゴゴ……!!
地面が揺れ、神殿の天井が崩れ落ちる。
「クソッ……このままでは……!」
審判者の一人が歯を食いしばり、最後の一撃を放とうとする。
だが——
——カッ!!
次の瞬間、まばゆい光が彼らの間に差し込んだ。
彼は一瞬、違和感を覚える。
「……?」
その光は、審判者たちが放ったものではなかった。
「ちょっと待った」
静寂の中、不意に軽快な声が響く。
彼が振り向くと、そこには——
小さな影が、宙に浮かんでいた。
透き通る翡翠色の羽。
いたずらっぽい瞳が、彼をじっと見つめている。
「やっぱり、すごい力だね。これは情報料が高くつきそうだ」
——シュエル。
どこから現れたのか、小さな妖精が彼の目の前に浮かんでいた。
審判者たちは驚きの声を漏らす。
「妖精……? こんなところに……?」
彼は目を細める。
「何のつもりだ?」
シュエルはクスクスと笑う。
「いや、面白いものを見せてもらったからさ。情報屋としては、このまま黙っていられないでしょ?」
——情報屋。
それは、この世界において単なる噂を流す者ではない。
彼らは「世界の真実」を知り、必要とする者にのみ、その情報を売る者たち。
そして、シュエルはその中でも別格の存在だった。
彼女はクルリと回転しながら、審判者たちに視線を向ける。
「ま、そろそろお開きにしようよ。こんなところで戦い続けても、無駄でしょ?」
彼はじっと彼女を見つめる。
「……どういうつもりだ?」
シュエルはにっこりと微笑む。
「いいこと教えてあげる。神々が君を恐れる本当の理由」
「……」
彼の瞳が鋭く光る。
「君は“禁忌の存在”なんかじゃない」
シュエルは宙でくるりと舞い、微笑んだ。
「——君は、この世界の“真なる起源”なんだよ」
その言葉に、彼は一瞬、言葉を失う。
「……何?」
審判者たちも驚愕する。
シュエルはただ笑っていた。
「さあ、続きはまた今度。私もまだ調べることがたくさんあるからね」
彼はゆっくりと手の力を抜いた。
「……面白い」
シュエルが言った言葉は、確かに“真実”だったのか?
彼はまだ、その意味を知らない。
だが、それを知るとき——
世界の理は完全に覆る。
空に広がる黒い雷が、まるで世界の変革を告げる鐘のように鳴り響く。
戦いは、次のステージへと進む——。
ついに、彼の“本当の力”が目覚め始めた……!
これまでの戦いとは比べ物にならない圧倒的な存在感。
審判者たちの動揺が、その力の恐ろしさを物語っていますね。
しかし、物語はここで終わらない。
戦いの最中、突如現れた 小さな妖精・シュエル。
彼女は何者なのか? なぜこのタイミングで現れたのか?
そして、「君は“禁忌”ではなく、“真なる起源”だ」——この意味とは?
まだまだ謎は深まるばかり。
次回、彼の運命はさらに加速する!
続きが気になったら ブクマ&応援 していただけると嬉しいです!
もっと多くの人に届けば、もしかすると コミカライズ化 も……!?
物語はまだまだ熱くなる。
次回をお楽しみに!