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義景は弱き者を知った男に候

弘治三年(1557年)美濃国。朝倉義景は僅かな兵を率いて斎藤義龍の本陣へ夜襲を仕掛けたところ、見事に成功を収め、義龍を亡き者にしたのであった。


「敵の本陣へ切り込んだのです、何とかここを脱さねばなりませぬ!」


明智十兵衛光秀が義景に叫んだ。


「うむ、そうであるな!皆の者!残党を狩りつくすのだぁ!!」


勢いに乗る朝倉軍は残る斎藤兵たちを斬り伏せる。だが、これは時間との戦いである。当主義龍が死んだとなればすぐさま前線の部隊が取って返してくるだろう。義景たちはそれより前にここを脱し、本陣に首を持って帰らなければならぬ。


「殿!私が敵を引き付けまする!早う本陣へお戻りなされ!」


「景鏡!すまぬ!必ずや生きて帰ってくるのだ!」


(この手のフラグで簡単に帰っちゃう奴いるんだ、、)

光秀はそう思った。


殿(しんがり)を務めるのは朝倉景鏡。死に物狂いで追いかけてくる斎藤軍を最後尾にて追い払う大変重要な役目である。


「斎藤の弱兵ども!この景鏡が相手だ!」


景鏡の勇ましい叫びに義景は胸を痛めた。己は夢のため、朝倉家のために生きねばならぬことは間違いない。それは分かっていることだ。だが、己に従ってくれている者たちが命を賭して戦うのをいわば見捨てるに近い行動で返す。義景にとっては悲痛である。戦、やはり厳しいものだと。


己が歩む道は修羅の道だと。


これは序の口にすぎないのだと。





朝倉軍本陣


「殿!それに光秀殿!秀満殿!お戻りになられましたか!」


吉家が出迎えてくれた。

義景が高々と掲げた。


「そ、、それは、、まさか!」


「義龍めの首じゃぁ!儂はやったのじゃ!」


おおっ、と陣から歓声が上がる。程無くして、


えい!えい!おーっ!!


大きな勝ち(どき)が上がった。

光秀の心にあった霧が一気に晴れ上がる。この男、間違いなく持っている。


それから暫くして、景鏡が陣に戻ってきた。


「殿、、!戻りましたぞ、、!」


「かっ、景鏡!よう戻ってまいた!!そなたの功績は目を見張るものがあるぞ!」


「ありがたき、、幸せ!、、どうやら、、斎藤軍は全軍撤退した模様でござる、、!」


「おい!あまり無理をするでないぞ!だが、、よう知らせてくれた!休んでおれ」


天下統一への初戦はまさかの大名討ち取りという大戦果を挙げた。そして、朝倉軍はその勢いのまま敵の本城、稲葉山になだれ込むのであった!





翌日。


先日まで甲冑を叩きつけていた大粒の雨は嘘のように止み、青空が一面に広がった。これはまさに朝倉軍の勝利を天が祝福しているのだと、兵たちの士気は一気に上がった。意気揚々と進軍。その速度は大

野城出立時と同じ軍とは思えないほどだ!


「言ったであろう?六角軍など必要ない、とな!」


六角軍が援軍に来なかったことを義景はやっぱり気にしていたらしい。


「光秀、、ここだけの話、儂は己の非力さを恥じていたのだ、、こうして勝ち戦と相成れたのもそなたたちのおかげ。心から感謝するぞ。」


義景は光秀に耳打ちした。だが、少々心に何かを抱えていそうだったので光秀は返答した。


「いえ、殿があっての我らでござる。殿のことを心から信じ、忠義の心を持つからこそこうして皆様方は殿のために死力を尽くせたのでござる。」


「そうか、そうか!光秀、これからも頼りにしておるぞ」


義景さまは上機嫌なご様子にて。まだ自身に自信がなかったのだろうか。 なんちゃって。




美濃、稲葉山


朝倉軍は本巣での決戦から数週間後、稲葉山を包囲。程無くして一斉攻撃を加える命令が陣を駆け回った。

「皆!敵勢は義龍めの死にて統率がとれておらぬ!一気呵成攻め立てるのだ!」


兵たちの足音が轟音となって響き渡る。新たに斎藤を率いることになった義龍の子、龍興(たつおき)は二十歳にも満たぬ。とてもではないが斎藤軍をまとめ上げることはできなかった。


「曲輪が突破されました!」


「敵勢が一斉に攻め立て壊滅しました!


「城門!突破されました!」


続々と駆け付ける伝令に龍興はすぐさま気が動転し、震えたまま立てなかった。家臣らは逃げるよう言い聞かせたが、龍興の耳には入らなかった。もはや逃げ場はないのである。


乱世は非情である。あっという間に朝倉軍が本丸になだれ込み龍興は縄にかけられた。稲葉山には木瓜の旗が高々と掲げられた。それは鉄壁の要塞、稲葉山の完全なる陥落を意味した。


「殿、斎藤龍興めをひっとらえましたぞ!」


朝倉景紀により龍興は義景の面前へ引きずり出された。龍興は一言も発しない。


「まだ若いではないか、、景紀、この者を放してやれい」


「なっーー


「放せといっておる!縄を斬るのだ!」

義景は鋭い目つきで怒鳴った。


珍しく、いや、光秀は初めて義景が怒る姿を見た。

義景は、自らが力のない者だと認めている。従って、非力でまだ若輩の龍興を哀れに思ったのだろう。


「恐れながら、、龍興を当家の人質とすることで斎藤を従えては、、」


「ひっ、人、、! いや、よい。この者を一乗谷へ連れていく。光秀、頼めるか」


「はっ」


「くれぐれも丁重に扱うのだぞ、もうこの者に辛い思いをさせとうない」


義景は光秀に囁いた。これも義景の気遣いだろう。




兎にも角にも、朝倉軍は斎藤軍の要、稲葉山を攻略したのだ!次回に続く!









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