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美濃に木瓜を掲げよ

「評定を執り行う!」


家臣たちがざわつき始めた。なにせ、何について話し合うのか、未だ解っていなかったのだ。義景が天下を目指すというなどと夢にも思っていない。


「静粛に!これより我らは天下を目指すのだ!我が覚悟を聞き給え!」


「てっ!天下!?」


ある家臣が声を出したがすぐに黙り込んだ。流石に遮ったらまずいしね。


「左様!」

そういって義景は己の野望を光秀にしたように高らかに語り始める。

歓声が沸く。(とき)の声が響く。一乗谷はいつになくやる気に満ち触れていたのであった!


「皆!まずはそれの第一歩、美濃攻めじゃぁ!」

目まぐるしく進む展開に光秀と秀満は少々困惑気味であったが、目には光が宿る。

(義景がここまでやる気があるとは、、!)



「良いか!まずは美濃を攻めとる!我らの旗!三盛木瓜を掲げるのだ!

おおーーーーっ!!!!



「では、戦の作戦を練りましょう」

朝倉家の重臣、山崎吉家(やまざきよしいえ)が皆を抑えるように言う。


「美濃を攻略するための進軍路はいかがするか」

「大野を通って稲葉山に直接攻撃は、、」

「いやいや無理であろう、、」


家臣らが意見を言い合う。結局のところ、六角家に援軍を要請し、敵の部隊を引き付けもぬけの殻となった稲葉山をかすめ取るという卑怯臭い戦略になった。うまくいくのだろうか、、



「光秀よ、本当にうまくゆくのじゃろうか?」

「それは義景様のお働き次第にござる」

「ど、どういうことじゃ」

「どういうこともこうも殿の采配がこの戦を左右しているのですから、、まぁ、援軍に関しては私めが話をつけて参りまする、、」


先行き不安。


近江観音寺城


「殿、越前国の朝倉義景様の使者が参られました」

「うむ、通せ」


六角家当主、六角義賢(ろっかくよしかた)。六角家は代々近江国、伊賀国を支配する名門である。父の定頼は現室町幕府将軍、足利義輝(あしかがよしてる)の元服親を務めた。それだけ中央とのかかわりは強かった。それにふさわしく堂々とした威厳のある声で光秀を迎えた。


光秀は義賢の前に出、頭を垂れた。

「明智十兵衛光秀にござる。此度は六角様にお伝えなさねばならぬことがあり参りました。」


「六角義賢にござる。此度は如何なる要件にござるか?」


「六角様もご存じの通り、美濃国を治める斎藤家は今や内輪での戦にて疲弊しており、我が殿もこれを好機と見ておりまする。故に、六角様にも我らとともに美濃斎藤を討っていただきたい所存でございまする。」


「ふむ、左様にございますか。我らも斎藤には手を焼いているところ。奴らを討てれば喜ばしい限り、、」


「では、、お受けいただけるのですか、、」


「真に申し訳ないが、我らは三好(みよし)との戦にて忙しい。兵を送ることはできぬ。」

「なんと、、、」


三好、とは畿内に勢力を持つ家である。もとは管領の細川晴元の家臣であったが、三好家の当主長慶(ながよし)がだんだんと力をつけ、管領晴元を脅かす存在となっていた。


光秀は驚いた。六角は三好との戦を優位に運んでいると聞いていた。だが、実際はじりじりと戦力差が縮まり、今や逆転、三好家の勢力は大きくなるばかりらしい。これはこれは想定外。


粘り強く交渉をしたが、あえなく交渉は決裂。光秀は諦め越前に戻った。




越前国、一乗谷


「義景様、、誠に申し訳ございませぬ、、六角殿は援軍には来ぬと、、」

「な!なんじゃとっ!」


光秀は事情を説明した。義景は腕を組みうんうんと頷きながら話を聞いていた。

「そうなってしまえば仕方があるまい。六角なんぞ頼るべきではなかった!」

こういったものの、何故か義景は怒りの様子が見えなかった。


「殿、何か秘策でも?」

「わしは宗滴様譲りの軍略があるゆえな!六角軍などいらぬ!」


(どこからその自信がわいてくるんだ、、)



弘治3年春。北陸の深い雪が融けてきたころ。ついに朝倉軍は越前大野城に集結。六角軍がない中で兵の士気は下がっている。義景は特にこれと言った代替案を明示していなかったのである。馬鹿か?


「敵は稲葉山にあり!此度、狙うは敵の本城!臆せずすすめーぇっ!!!!」


おおーっ!!


いつもより声が小さいような、、光秀がそう不安に駆られていた中、山崎吉家が声をかけてきた。

「十兵衛殿、震えておられるぞ?安心せい、殿はああ見えて何か考えておる。無関心な間抜けではない」

「は、はぁ、、」


正直物凄く不安。光秀は寒さも相まって全身に鳥肌が立つ。斎藤道三の元で戦をすることと、得体のしれぬ公家かぶれのもとで戦をすることは全く違うのだ。


義景は威風堂々と馬に乗り、越前の谷を縫って進軍する。果たして、あいつは何を考えているのか!?



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