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プロローグ

 ある街のはずれに大きなお城のような古い豪邸が建っている。

 外見は立派だが、近隣の住民はその屋敷には近づかない。ごくたまに、度胸試しに来た街の若者や浮かれた旅行者が屋敷に近づいたが、その後は二度とその場に近寄らず、何があったのかすらも語ろうとしなかった。

 大きな川のほとりに建つ、その屋敷には昔からひどく恐ろしげな噂が数多くあった。

 曰く、凶悪な鬼が住んでいる。いや、残虐な盗賊団が根城にしているのだ、そんなもんじゃない、《吸血鬼(ヴァンパイア)》だ。人の生き血を啜る恐ろしい《吸血鬼》がいるのだ。違うさ、あそこのはこの世で最も恐ろしい《魂喰(ティーター)》がいるんだ。そうじゃない、幽霊だ、あの屋敷には昔、病気の者がいて、世を呪いながら死んだのだ。違う、あそこは化物の棲家なのだ。人の心臓を喰らう化物がいて、その化物がありとあらゆる種類の怪物を招き、夜な夜な狂乱の宴を開いているのだ。などと、不吉な噂は枚挙に暇がない。

 まるで、屋敷に世に存在する闇が集まっているかのだった。

 そして、近頃――あくまで噂でしかないが――(くだん)の屋敷に人影が出入りしているのを見た、それも窓から出入りしていた、という目撃証言が相次いでいる。

 他の場所ならただの泥棒だ! となるのだろうが、ここでは皆がその正体不明の人影を――存在するかどうかもあやふやな人影を恐れた。

 長年続く噂話には様々な尾ひれがついて、もはや何が真実なのか、街の最長老すら知らない。

 その屋敷を管理する不動産屋は躍起になって噂をもみ消そうとしたが、人々の心に刻まれた恐怖は簡単に消えず、噂は消えるどころか、消そうとすればするほど、さらにひどい噂が立つのだった。

 そもそも、噂を否定している問題の不動産屋すら屋敷には怖がって近づかないので、噂が消えるはずもない。

 それでもなお、物好きなお金持ちが物件を買い取ることもあったが、それも皆二ヶ月と持たずに売りに出されるのが常だった。

 住人が去っては新しい噂が立ち、その噂に魅かれてやってきた住人はまたすぐにいなくなる。負のスパイラルが延々と続いていた。


 そんな、もう呪われているとしか言いようがない妖しい屋敷に、新しい入居者が決まったのは今から三日ほど前だという。

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