プロローグ
初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。作者の音佳霰里です。
今回は、某有名ひぐらしゲーに影響されて、サスペンスホラー(ガチ)を書き始めてみました。
…毎回似たような奴ばっかりを書いている気が…?
まぁシリアスな展開ばっかり考えつくせいですよね…しょうが無いですよね…だってシリアス書くの楽しいじゃないですか…
それでは、本編どうぞ!
私は考える。1人寂しく体育座りをしながら、考える。
どうしてこんな事になってしまったのか、私はたった1人、暗い部屋の中で、嘆き続ける。
私に何かを言う人は、もう居ない。
私を助けてくれる人は、もう居ない。
じゃあ私は、一体誰に助けを求めれば良いの?
そんな私の疑問に応えてくれる人は、もう居ない。
―――マレビト様は、何も言わない。
「―――ん……」
早朝、私は窓から差し込んでくる、太陽の光で目が覚める。
朝から変な夢を見てしまった。光の入らない暗い部屋の中、私だけが取り残されている、そんな夢だ。
さながら、都市伝説の『5億年ボタン』みたいだ、と私は思う。
身体に残った気だるさと不快感を吹き飛ばす様にしながら、私はゆっくりと立ち上がる。
私は、寝起きのぼーっとした頭のまま、薄暗い部屋の中で圧倒的な存在感と光を放つ、窓ガラスへと向かう。
窓ガラスを覆うカーテンを掴み、左右へと思いっきりスライドする。
すると、それまでうっすらと部屋の中を照らしていた太陽の光が、邪魔者が居なくなったことで嬉々としてフルパワーで入り込んでくる。
しかし私はそれに動じることも無く、いつもの事だな、と思いながら、厳格に閉じられていた窓を開けていく。
すると、まだ太陽に温められる前の涼しい空気が、私の部屋の中へと流れ込む。それだけで、私の脳はすっきりぱっちりと覚醒する。
そして私の目に飛び込んでくるのは、古き良き日本の原風景。
我が家の周りには一面の緑が広がっていて、そこでは朝早くからお年寄りの方々が精を出して農作業に励まれている。
そこから少し顔を上げると、遠くの方にぽつぽつと人家が見える。
その向こうには、木々に囲まれ、爽やかな色をした山々が連なっている。
その間に見える太陽の光と、実にいいコントラストを醸し出している。
この村の名前は、『小見山村』。人口が1600人程の、小さな集落だ。
それでも、私たちの住んでいる、かけがえのない故郷だ。
顔を洗い、学校の制服に着替える。
「おはよう!」と、朝食を用意してくれている、お母さんに挨拶をする。
「あら、おはよう。……時間は大丈夫なの? もう7時半よ?」
………………?
お母さんに言われ、ギギギと音のしそうな、まるで錆び付いているかのような首の動きで、時計を確認する。
時計の長針は6の所を、短針は7の所を、その役割を間違えることなくきっかりと示している。
……うん、どう見ても寝坊です。今から頑張ればギリギリ学校に間に合うか間に合わないかの時間だ。
私は、トーストに目玉焼きという、ごく普通のありふれた朝食を急いで食べ終えると、歯を磨き、玄関へと向かう。
さあ靴を履いて出発だ、そう思った所で、忘れ物に気付く。
「……おっと、鞄は忘れちゃダメだよね」
私はどうやら、焦りのあまり通学鞄を忘れそうになっていたみたいだ。
私は昔から朝に弱くて、良くこういう事をやってしまう。……小学生の頃なんか、1回パジャマで学校に行きそうになったからね、私。
昔の思い出―――黒歴史、とも言うが―――を懐かしみながら、私はドアに手をかける。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃーい!」
今はお母さんしか居ないみたいだが、家族に行ってきますの挨拶をする。
すぐに行ってらっしゃいの挨拶が帰ってきて、やっぱりこういう事を言い合える人がいるっていうのは良い事だな、なんて少しセンチメンタルな気分に、朝からなる。
そんな気持ちを吹き飛ばすように、私は1歩、家の外へと足を踏み出す。
こうして、私、『新川姫奈』の一日は始まりを迎える。
時代は令和になり、人々は様々な技術を生み出し続けてきた。だが、地球温暖化はとどまる所を知らない。
「ハァッ、ハァッ……!」
夏の初め、ただでさえ暑くって、立っているだけで汗が出て来そうな時期。それなのに、私は汗だくになるぐらい、本気で走って登校をしていた。待たせているのは、大親友の5人だ。
これからはいつも5人で登校しよう、そう言い出した私だが、言い出しっぺの私が、いつも寝坊して最後に待ち合わせ場所に着いてしまう。
なけなしの体力を振り絞ったかいあってか、思っていたよりも早く着くことが出来た。
……が、やっぱり待たされた他の4人はそう思わないみたいだった。
「姫奈ーっ! 遅いよ!」
かなりの時間待たされたからか、少し起こった様子でそう言ってくるのは、幼馴染の1人、『新川亜莉沙』。
艶のある、綺麗な黒髪をストレートにしていて、10人が見たら10人が『優等生だ』と言うであろう風貌をしている。
だがその性格は意外にもお転婆で、天然の気がある。また、好物はダジャレ。
つまり、黙っていれば綺麗な人、と総括されるようなタイプの子である。
「姫奈は朝が弱いからねー……」
そう苦笑しているのは、これまた幼馴染の1人、『池西優里』。
ウェーブのかかった茶髪を、腰の辺りまで伸ばしており、どこかふわふわとした印象が感じられる。
首には、何かの宝石だろうか、キラキラとした物をあしらったネックレスがかかっている。本人曰く、5歳の頃に亡くなったおばあちゃんから貰った、池西家の家宝だとされているネックレス……らしい。
そんなに貴重な物なら、普段から着けなければいいと思うんだけど……
「ハァ……僕はもう姫奈の寝坊癖はとっくの昔に慣れたと思っていたんだけどね……」
そう呆れたようにボヤいているのは、親友の『外ノ池セナ』。
黒い髪を、まるで男の子みたいにショートカットにしている。
とてもクールな性格で、まるで王子様みたいな言動をよくする。たまに、同性の私でも惚れてしまいそうになる時がある。
彼女は学校で、下級生から『お姉様』なんて呼ばれており、最近だとファンクラブまで出来ているみたいだ。
……が、本人は実は隠れ中二病患者で、自分が『格好良い』と思っている理想の自分を演じ続けているという、なんとも疲れそうな『痛い系中二病患者』というジャンルの女の子である。
しかも、本人がそれを自覚しているから余計タチが悪い。
それでも周囲は彼女を『格好良い人』として囃し立てる為、それに追いつくために更に努力をし、偽物の理想と現実の自分のギャップに疲れている、現代の10代女子にありがちな悩みを持つ女の子だ。
ちなみに、隠れ中二病云々は私たちだけの秘密である。セナ本人から打ち明けてくれたのだ。
またセナは去年引っ越してきたばかりのニューフェイスだが、幼馴染である私たち4人と同じくらいの、固い絆で結ばれている。
「ほらほら! 早くしないと遅刻しちゃうでしょ!?」
手を叩き、注目を集めてそういう彼女は、これまた幼馴染の1人である、『神鷹りんな』。
黒髪を右でサイドテールにして、簪でそれを留めている。
学校の制服に簪という、和と洋が入り交じった様な格好をしている。
先の言動からわかるように、彼女は委員長タイプであり、先生達からもよく下級生の面倒を任されたりしている。
またりんなは神社の巫女さんであり、正月など、手伝いが必要な時には、巫女装束に身を包む彼女を見る事が出来たりする。
「ハァ、ハァ……あはは、ごめんごめん……」
私は乱れた息を整えながら、4人に謝る。
「全く……姫奈は……どうせまた寝坊したんでしょ?」
「うっ……」
りんなに図星を―――いつもの事なのだが―――突かれて、ついつい言葉に詰まってしまう。
「……姫奈は、昔からこうなのかい?」
「うん、でも今日はまだいい方なんだよ? 酷い時は8時起きなんて目じゃないんだから……」
セナと亜莉沙がヒソヒソとそう言っている。
……そこ、聞こえてるよ?
隠す気もないヒソヒソ話と、フォローになってない亜莉沙のフォローに、心を痛めつけられる。
「ほ、ほら……! 学校行くよ!」
これ以上ここに留まっていると、私のハートはボロ雑巾のようにされかねないので、1人だけずんずんと先に進んで行く。
後ろから、4人の声が聞こえてくる。
私たち5人は、セナを除いた全員が幼馴染だ。
それだけを聞くと、セナがハブにされているように聞こえるが、そんなことは全くない。
この小見山村で『女子五人組』と言ったら、私達の事を指している、それ位に、私達の仲の良さは有名だ。
多分、この絆はいつまでも途切れることは無いのだろう。
―――例え、私達が離れ離れになったとしても。
そんな寂しい呟きは、うるさいくらいに鳴いている、蝉の声に溶けて行く。
柄にもなくセンチメンタルになる、夏の朝の事であった。
そして、ぽつりとりんなは言うのであった。
「ねぇ皆、……学校は?」
「「「「……あっ……」」」」
……勿論、この後は皆仲良く先生に叱られたことは、言うまでも無いだろう。
いかがでしたでしょうか?
まだほのぼの感を生み出せていたら幸いです!
…こっからジェットコースター並に落としていきたい…
以上、作者でしたー!バイバーイ!