ブラウン管
ブラウン管のテレビが、ビデオ1で付けっぱなしになっている音がする。
「テレビ付けっぱなしだよね?」
「そうだよね?」
兄弟で話し合いつつ、僕はリモコンを手にする。
「こらっ! 今からご飯なのにテレビは駄目!」
母がそんな見当違いのことを言った。
「テレビ付けっぱなしだから切るの」
そう言ってリモコンから電源を切ると、母は目を丸くした。
そんな懐かしい夢を見て、目が覚めた。
時刻は深夜三時。
喉が乾いていたのでお茶を飲みに台所へ向かう。
途中リビングを通る時、最新型のテレビがウィーンと唸っていた。
何かの番組を録画でもしていて、ハードディスクが回っているのだろう。
最新のテレビは映像も綺麗で雑音もしないというけれど。
私からすると、今のテレビの方がよっぽどうるさい。
ハードディスクもファンもウィンウィン鳴るし。
湿度が高ければ基盤もジリジリと鳴る。
『普通の人』は綺麗で静かで素敵なテレビを楽しめるのだろう。
だけれど私は、その恩恵にあずかれない。