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2話 勉強会 / 足りないものだらけ

翌日、朝早くからフィーネの家に行くと早速勉強を始めたが、開始から1時間経過する前に俺とフィーネは別々の意味で頭を抱えていた。



「全っ然分かんねぇ!知らねぇよこんなの!」



俺はフィーネの言う内容が理解出来ずに。



「こんなので今までどうやって生きてきたの...」



フィーネは俺の頭が想定以上に悪かったため。

いや、それで頭抱えられると複雑な気分になるんだが...。



「まさかアルム王国の起源すら知らないなんて...」



そう、俺はアルム王国の起源すら知らなかった。そもそも、俺は何を知っていて何を知らないかすら分からない。


今まで勉強をサボってきたツケが回ってきたらしい。今じゃなくても良くね?とも思うけど今でなければ多分俺はやらなくなるから、今で丁度良かったのかも。

それに付き合わされるフィーネには申し訳ないけど。



「そもそもさぁ、この村に住んでて国の起源とか知る必要無いだろ?だから、俺が知らないのも仕方ないんだよ」



開き直ってフィーネにそう言うと、フィーネは大きなため息をついた。



「結果的に必要になってるから仕方ないことはないでしょうに...」



開き直ってみたものの耳が痛い一言を言われた。



「じゃあ、世間一般的な常識的知識から教えるわ」



フィーネはそう言ったものの俺は全く理解出来なかった。2度、3度と教えられて理解出来たのは以下のことだ。



①俺たちの住む村も含まれるアルム王国は初代国王の名前からとったもの。


②アルム王国は隣の国であるハイルディン帝国と仲が悪いこと。


③一方で、少し遠くにある、極東郡国家とは同盟関係にあり、互いに留学生を送り出す程度には良好な関係を築いていること。


④ハイルディン帝国と今戦争が起きれば確実にアルム王国が負けること。



この4つのことだけだ。これを理解するのに1時間近くかかった。



「帝国ってのはそんなに強いのか?」


確実に負けるということは帝国が強いのか、王国が弱いのか、どちらかだろう。

出来れば帝国が強い方がいい。

どうせなら敵は強い方がいい。その方がより燃えるから。



「強いわ。貴方が逆立ちしても勝つことは出来ない。だから、帝国に喧嘩を売るのはやめておきなさいよ?」



フィーネが今不思議なことを言った。当たり前だろ。



「逆立ちして勝てるわけないだろ。お前何言ってんだ」



俺がそう言うとフィーネはそうだったわね...と零しながら複雑な表情をしていた。

たまに見るおかしな顔だ。フィーネが不思議なことを言って、それに突っ込むとこんな反応をされる。理由は分からない。



「そういえば、今は神歴658年だけどさ、それより前の情報って無いのか?」



ふと気になったことを聞くとフィーネは当たり前でしょ、と返してきた。

疑問が増えた。



「なんで無いんだ?」



「.........確かにどうして無いのかしら」



どうやらフィーネにも分からないらしい。

俺の中でフィーネはなんでも知っているイメージがあったから意外だ。



「フィーネにも分からないことはあるんだな」



「当たり前でしょ、私は別に全知全能じゃないんだから、知らないこともあるわ」



この話はこれで終わり、その後、日が暮れるまでフィーネの家で勉強をした。

帰る前にテスト?とかいうのをしたがまるで点数が取れず、明日もまた同じ内容の勉強会をすることになった。

でも、フィーネはあまり嫌そうな顔をしなかったから、怒ってはないんだと思う。

と言うより、そう思いたい。

























〜アルム王国王都付近の街〜



俺は今絶望している。

少し選択肢ミスったらトゥルーエンドはおろか、ハッピーエンドにすら辿り着けないマゾゲーとすら呼ばれるゲームの世界に転生したとかなんの冗談だよ!



「うぇぇぇぇ.........鬱だ...」



思わずそんな言葉が出る程度には絶望している。そんな俺に両親はこれでもかと心配し、甘やかそうとするが俺がそれを拒否するため、より心配している。

それはそうだ。まだ、8つの子供が鬱だ、なんて言ってたら心配にもなるだろう。



「アレンちゃん本当にして欲しいことは無いの?」



買い与えられた自分の机の前で項垂れる俺にそんな言葉をかけてきたのは母であるフローラ・フォルカス。

子供がいることを信じられないほどに若く見える美人だ。



「大丈夫だから。して欲しいことなんて何も無いよ」



そう返すと母さんは悲しげな瞳で父に泣きついた。



「どうしましょうあなた...アレンちゃんがぁぁ...」



「大丈夫さフローラ。僕達の子供だよ?何も心配いらないさ」



気丈に振る舞うが全身が小刻みに震えていて、説得力なんて皆無なこの男性が俺の父であるフランツ・カルフォン。

整った顔立ちが台無しになるほど動揺している。



「母さんも父さんも大丈夫だから。別に何かあった訳じゃ無いから」



そう俺は説得しようとするが両親は更に震え出す。マナーモードのケータイみたいだ。

そんな両親を後目に俺は思考を進める。



出来るなら入学前にフィーネとヨハンに会っておきたい。アプデであの二人の生存ルート出たし、なによりフィーネとヨハンの戦力が必要だ。

無印だけなら、別にフィーネは居なくてもいいんだが、アプデしたせいでフィーネとヨハンが必須とまではいかなくても居た方が良いキャラになった。


それに戦うとなると面倒。かなり強いし、俺自身5回以上コンテニューした。


ゲームならコンテニューできるから良いんだが、生憎この世界は現実。コンテニューも無いし、ロードもセーブも無い。


そして、最たる理由がフィーネは可愛い。とてつもなく可愛い。

敵として出てきた時は冷徹で、感情を全て削ぎ落としたようになっているが、そもそものフィーネは泣き虫なオドオドとしたキャラだ。


泣き虫フィーネが好きな俺としてはあんな冷徹キャラになって欲しくない。

いや、冷徹キャラでも好きなんだけどね。

フィーネの闇堕ちフラグは幼なじみのヨハンが死ぬこと。

アプデ前はヨハンは必ず死ぬキャラだったが、アプデで増えたとあるアイテムにより、生き残ることが出来る。

つまり、そのアイテムさえあればヨハンは死なないし、結果フィーネは泣き虫のまま闇堕ちもしない。



「問題はそのアイテムが周回プレイしなきゃ手に入らねぇことなんだよなぁ...」



ゲームではアプデ後に1周クリアするとニューゲームを選んだ際に引き継ぎアイテムの中に表示されていた。

さらに問題はそのアイテムの見た目がさっぱり分からないこと。

なんせ、アイテム名が[弱い心]なのだ。

概要も、[誰も侵すことの出来ない弱き心。敵を倒す力は無いが、誰かを救うことが出来る]なのだ。

最初はまるで意味がわからなかった。

まず、心がアイテムって意味不明だったし、概要も意味不明。

てか、誰も思わねぇだろ。

このアイテムがヨハンの生存フラグを立てるのに必要とか。

チュートリアル前に[弱い心]を装備した状態でヨハンに話しかけるとヨハンが通常とは違うセリフを吐くのだ。


通常は『凄いな。そのパンドラギアに選ばれるなんて...。俺も負けられないな。』


そして、アイテム装備時は『死んでなんかやらない。まだ、やり残したことが沢山あるんだ』


となる。最初見た時はこれが生存フラグとは思わなかった。どっちかと言うと死亡フラグだろうと思った。


しかし、チュートリアルを進めようとするとヨハンが生き残ったのだ。

さらに進めるとヨハンは性能自体は低いのだが、生存確率が馬鹿みたいに高いのだ。

防御力、回避率が共にトップクラスで、スキルも生存に極振りされている。

お陰でアプデ後の敵を倒すパーティは主人公、ヨハン、フィーネの3人がテンプレだった。


つまり、ヨハンとフィーネはほぼ必須。

なんとしても、[弱い心]を手に入れなければならない。

でなければ、待つのは死だ。

鬱だ...。


この時の俺は頭の片隅にはあったが、考えないようにしていた。

[弱い心]が見つからない場合や、そもそもフィーネやヨハンが強かったのはプレイヤーが操作していたからであり、現実となった今は強いかどうかは分からないということを...。

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