1-2 不思議な少女との接触...
街についてからおおよそ昼である今まで情報をできるだけ集めた。
街の通りで話してることを盗み聞きしたり、情報のありそうな家、あれは確かこの街の一番偉い人の家かな?に忍び込んで書類なんかを盗み見たりしてそれなりに情報を集めることが出来た。
大体はこの街に関することだけど。
この街『フーストレア』はシルヴァム王国にある貿易が盛んな街らしい。
これは街の一番偉い人の家にお邪魔して得た情報だけど確かに街を歩いているときにもその様子は確認できていた。
街並みも大通りなんかは特にだけど殆どがレンガ造りで整えられて結構綺麗で発展しているイメージはあった。
書類的にもシルヴァム王国有数の大都市で王都の次位に大きいみたいな感じで書かれてたしこれがこの世界の最先端っていう認識で間違ってないだろう。たぶんだけど……
あとは、このフーストレアの街はシルヴァム王国の首都、王都『シルフレム』の東側に存在するらしくここから西に向かって進めば王都につくらしい。
ここでの情報集めが済んだらそちらに向かうのもいいかもしれない。
ま、集まった情報はもっとあるけど今のところ有用そうなのはこれくらいかな。
ここが貿易の街ってこともあってかかなりの情報が集まったけど、流石に幽霊についてだったり、俺についての情報については全くと言っていいほど見つからなかった。
やっぱり幽霊とかの情報はかなり限られたところにしかないのかな。例えば、魔法研究が著しく行われているところとか。
俺についての情報なんて幽霊についてなんかより見つかりにくいというか暮部モノにならないレベルだろうから見つかるはずもなく……
「まぁ、これについてはあてずっぽうで探しても砂漠の中から針を探すようなものだったし、そこまで期待もしてなかったし、しょうがないだろう」
このことについては割り切ってしまった方がいいだろう。
「ま、最悪わからなくても俺自体、興味はあれど生前のことを惜しんだりしてないから構わない。だから優先すべきなのは幽霊についての文献とかだな。じゃあ、ここでの調査が済んだらとりあえず王都である『シルフレム』に向かってみるか」
王都ならそれなりに学問の重要なところも担っていそうだしな。
「一先ず、もう一度調べてみるか。街もまだ大まかに回っただけで全部見回ってないしな」
俺は再び歩きだした。
「なんだか視線を感じる………」
昼に二度目の調査を開始してからというものなんだか自分に視線が送られてくるように感じる。
――明らかにおかしい。
なんたって自分は現在幽霊なのだ。
それなのに俺に対して視線を向けてくるということは俺が見えている、または偶然オレオ法を向いているというわけだが、ここ数時間の間ずっと向けられているのだから偶然ではない。
ということは俺が見えているというわけだけどなんで見えてんだ?
というか誰なんだ?
俺のことが見えるということなのだからもしかしたら俺の声も聞こえるかもしれない。
それならいろいろと聞き出せそうだし、なんだかその人物自体面白そうだ。
うーむ、どうにかしておびき出せないものか。
ここの大通りとかじゃ本人も出にくいだろうし声何てかけてくれないだろう。俺は今幽霊だからな。
じゃあ、人通りの少ない路地にでも行ってみるか。そこなら本人も俺に接近しやすいだろう。
そうと決まったら、さりげなく路地に行ってみるか。
俺はさっきと同じように歩いていき途中にあった横の路地に入っていく。
路地に入ったところで物陰にというか物事態にめり込んで隠れていると待っていると、俺を追ってきたらしい少し不審なローブの人物が路地へと入ってきた。
ローブの人物は路地をきょろきょろと見まわしている。
どうやらこの人物で間違いなさそうだ。
「やぁ、だれを探しているのかな?」
「………………!?」
俺は思い切ってその人物に話しかけながら歩み出てみる。
これで本人が聞こえてなければ大恥だがその心配はただの杞憂だったようで俺の声に反応して少しびっくりしながらも俺の方に向かって振り向いた。
そして、
「あなたゴーストですよね?」
そう少女のような声で訪ねてきた。
「おう、そうだけど?」
「お願いです。力を貸してくれませんか?」
「力?」
「はいそうです!」
どういうことだろうか。幽霊に力を貸してほしいというのは……
「えっと、詳しいこと聞かせてくれるかな?」
「わかりました。じゃあ、こちらついてきてください」
俺は話の詳細を聞くために彼女?に案内され路地から彼女の泊まっているという宿屋に移動した。
宿は比較的安く、狭い冒険者などが利用するようなものだ。
聞いた話によると一週間ほど前からここに一人で暮らしているのだとか。
彼女自身も冒険者で今は何とかそれで生活しているそうだ。
「で、本題なんだけど、どうして幽霊である俺に力を貸してほしいのかな?」
少女はさっきまで深くかぶっていたローブのフードを脱いでその綺麗な黒髪をさらし、こちらにこれまた黒くて不思議な魅力のある目をしゃべりかけている俺に向ける。
「えっと、それは私が仇討ちをするのに手伝ってくれないかなと……」
「仇討ち?」
「はい、実はいまから二週間前ほどに私の住んでいた村が謎の集団に襲われたんです。私はその時、運よく村ではなく近くの森に行っていて遅羽有れていないのですが、村にいた村の人たちは私が返ってくる頃には全員…………母や父も、死んでいて………」
「それでその村の人や両親の仇である謎の集団を討ちたいと」
「はい」
「うん、言いたいことはわかった」
言いたいことは確かに分かった。
「でも、なんで人間じゃなくて幽霊である俺にわざわざ頼みに来たの?」
俺じゃなくてももっと強い人間がいるだろう。
それこそ傭兵を雇うとか……いや、流石にそれはお金がかなりかかって無理か。
じゃあ、冒険者なんだし誰かとパーティーを組むとか。
俺は物理的な干渉はほぼ不可能に近いだろうし、それはかなり大きな足枷になりそうだし、わざわざ人間でもない俺に頼む理由はないと思うんだけど。
「それは、私があまり人間が信じれないからですかね……」
俺の質問に少女はそう答えた。
「そうか……」
それもそうか。
襲撃した集団というのはおそらく人間であろう。
そりゃ今回のことはきっと彼女にとって相当なトラウマとして残ったであろう。それこそ人類というものが全員信じられないくらいに。
それなら人間に頼れないのも納得だ。
なぜ人間の姿をしているはずの俺に頼れるのかはいまいちわからんが……
幽霊ということで割り切っているのだろうか?
そこは気にするところではないか……
「うん。わかった」
「で、力を貸してもらえますか?」
それでここからが本題だ。
ここで俺が力を貸すか、貸さないかで俺と彼女の今後は大きく変わってくるだろう。
それで俺の答えは……
「わかった。いいよ力貸すよ。どれだけ俺が役に立てるかわからないけど」
「ありがとうございます!」
俺は承諾することにした。
明確な理由は特にない。あるとするならば単純に気になったから。後、彼女がかなりかわいそうだからだ。
それだけ。
「じゃあ、今日から仲間だ。そういえば自己紹介してなかったな。俺はトオルよろしくな」
「はい、私はリシア。よろしくお願いします」
僕は何とも不思議な少女と仲間になった。