1-1 なんか死んでるんですけど!!!
おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない。
「……っん」
なんだか寝ているところの感触が全く感じない。まるで宙にでも浮いているみたいだ。
それに目の前がものすごく眩しい。
俺は目を開け上体を起こしてみる。
「えっ………ここ何処…………?」
目の前に広がるのはどこまでも広がる広大な草原。
俺は訳が分からなくなりキョロキョロと周りを見ます。
でも辺りでは小鳥たちが木の周りで鳴いているくらいしか見えない。
――なんでこんなところに俺はいるんだ??
明らかにおかしい。
なぜだかわからないけど起きる前の記憶があまり思い出せないけど、こんなところで寝るはずがない。
こんなところで寝るなんて常識的におかしすぎる。
俺は目の前の状況に明らかに追い付けてない。頭も全くこの突然の出来事に追い付けていない。
「うっ、いてて……」
俺はそれが原因なのか頭痛がする。
僕はその頭を抱え込んで何とかしようと思考を巡らそうとする。
しかし、俺が今の状況を処理しようとした矢先に俺は目の前にある手に途轍もない違和感を覚える。
「え、なにこれ……透けている……?」
なんだか自分の手が青白く透けて見える。
いつものような血の通った肌色とは程遠い。明らかに人間とは言えないような色をしている。
俺は頭の中がすでにパニックだったもののどうにか冷静に対処しようとしていたのに更なる衝撃を与えられ頭がパンクする。
どうにかそのパンクした頭で散らばった思考を集める。
――なんだかよくない気がしてきた。
俺はその理由不明の感覚に襲われながら近くの湖まで行き、水面をのぞき込む。
「なんだこれ…………」
俺はそこに映った自分の姿に絶句した。
なんとそこに映っていたのは全身がさっきの手のように青白く透けた自分の姿だった。
「俺、幽霊になってる…………?」
「嘘だろーーーーーーーーーーーーー!」
草原中に誰にも聞こえない俺の絶叫が響いた。
「どうゆうことなんだ?」
ひとしきり叫んだ俺は叫んだおかげか幾分か冷静になり、パンク状態だった頭もかなり整理されてきた。まだ、今の状況については処理できてないけども。
なので一先ずは今の自分の状況を把握することから始めることにした。
とりあえず、何かの手掛かりになりそうな自分の姿や自分がいたところの周りを見回って情報収集をしたのち自分の頭でそれらを元に考えてみる。
これで若干だけど自分の状況を少しばかり把握できた。
まず、俺は死んで幽霊になったということ。
理由は不明だし、自分が死んだことも信じられないけど今の自分の姿を見る限りそうらしい。
次に、俺はあまり起きるというか死ぬ前の記憶を覚えていないということ。
覚えているのは自分の名前が「透」であるということや自分の使える魔法など自分のちょっとした能力。これもすべてではなさそうだ。それくらい。
名前も「透」という下の名前だけで姓は思い出せない。
あまりっていうかほぼ全てに等しいな。
でも、基本的な知識は覚えているみたいだ。これはよかった。
わかったのは結局大体そのくらいだ。
ここがどこかなのかとかは全く見当がつかない。
「とりあえずどうしたものか……」
幽霊になったとかは分かったもののほとんどわかってない。なんで死んだのかとかな。
となると、まず最初にするべきなのはこの世界について知ることだ。
そうすれば自分について元詳しいことも知れるかもしれないし、今は特に決まっていないこれからすることなんかも決まるかもしれない。
「そうと決まったらまずはここから一番近い街に向かうか!」
そう決めると俺は街のありそうな方向に向かって近くの街道をたどっていった。
「それにしても、あんまり死んだ実感ないなぁ。だって実際に今もこうやって生きているみたいに物事
を考えたり地面を歩けたりしてるしな。街で人間とかにあったら幽霊だって実感がわくのかな?たぶん人間には見えないだろうし」
実際感覚的にはほんとに人間と変わらない。
まぁ、人間の時の記憶ほとんどないけど……
というか、ほんとに俺なんで死んだのかな?意外とあっさり死を受け入れちゃってるけど。
事故死?老衰死?それとも他殺かな?
死ぬ前の記憶がないからどうとも言えないけどやはり結構気になってたりする。
むしろこれ気にならないひとはないだろう。
それになんで幽霊になったのかとかも気になるな。
幽霊って怨念とかでなるイメージだけど俺にそんなものないはずだし。今は記憶ないから死ぬ前のことはわかんないけど。
まぁついでだし、調べられるならそれも調べておこうかな?
そんな感じに一人少し呟きながら歩くこと数時間、やっと街に着くことが出来た。
街は周りを囲む外壁を見た限りかなり大きそうだ。
街の入口である門の前にもかなりの人が入るために並んでいる。
「うわぁ、入るのに結構時間がかかりそうだ」
かなりの人がいるからどれくらいかかるんだろうか。
そんなことを考えていたら、一つ忘れていることに気が付いた。
「あ、そういえば俺幽霊だった。別に気にする必要なかったわ」
自分がどうしても幽霊って自覚できなくて忘れていた。
「それじゃあ、遠慮なくここを通り抜けさせてもらいますか」
俺はそういうと衛兵が守っている横を素通りして門をそのまますり抜けていく。
うーむ、これは幽霊の特権だね。どんな所でもいくらでも入り放題。
結構幽霊の利点ってあるのかもしれないな。
「折角幽霊になってしまったんだし有効に使わないと損だよな。何が出来るかとか、そこら辺のことはあとでしっかり確認しておくか」
俺は早速街での情報集めをすることにした。
※追加補足
透は高校生くらいの年齢です。
まぁ、その若さで死んでいまったらショックですよね。