宮園家のメイド
THE.短編作品です。
私の名は、柊木ミサと申します。私は、世界でも五本指に入る宮園財閥の侍女――いわゆるメイドであり、そして宮園家の次期後継者である
「宮園蓮菜」お嬢様専用の小間使なのです。
しかし、最近になってお嬢様の周りに猿が群がる傾向にあって、非常に迷惑この上ない状況です。
あ、もちろん猿というのは「殿方」の事ですわ。
無論、お嬢様に近づく不埒な輩は――このお嬢様専属のメイドである
「柊木ミサ」が…どんな手段を用いても処理致します。命を尽くして生涯お護り通すことを誓いました。
――ということなので、
柊木「お嬢様、お昼のティータイムにコチラ、不肖――私めがブレンドさせていただいたハーブティーでもいかがですか?」
ミサは、微笑を浮かべながら優雅な時間を提案する。
宮園蓮菜は、快くその提案を呑む。
蓮菜「ええ、ミサの手作りなら貰おうかしら」
――はぁーう!!
お嬢様が、蓮菜お嬢様が……ミサの手作りならっと、大切なことなのでもう一度言わせてもらいます。
ミサの手作りならと言いました。
絶対に言いました。録音してあるので大丈夫です。就寝する時にでも聴くことにしましょう。
またもお嬢様コレクションが増えました。
柊木「それでは、お嬢様。こちらがハーブティーになります」
ミサは、蓮菜の腰掛けている。とても羨ましい椅子の斜め右横にあるミニテーブルにそっと置く。
蓮菜「ありがとうミサ。冷めないうちに頂きます」
っと、蓮菜は、屈託のない笑顔でお礼をする。
柊木(ああ~!! お嬢様のぷっくりとした唇にティーカップが……)
将来生まれ変わるならお嬢様の身の回りの物になりたいと強く願うミサであった。
蓮菜「――ッ⁉ ミサ、これすごく美味しいわ! 貴女は何でも出来るのね」
柊木「(はぁぁぁう!?!?)私めには、勿体なきお言葉です。ありがとうございます。お嬢様」
バクンバクンッ。
静まりなさい私の心臓――今は、お嬢様の御前なのに血でも噴き出そうものなら切腹ものですわ!!
いつもどおりに無表情に、ポーカーフェイスよ柊木ミサ。
ふぅ…………ひとまず大丈夫ね…無事乗り切ったわね。
蓮菜「ミ、ミサ? どうしたの俯いて…? まさか体調でも悪いのかしら?
――だとしたら大変、今日はもう休んでいいわよ」
宮園蓮菜は、涙ぐみながら――眉をくの字にして心配そうにミサを見つめる。
柊木「いえ、お心遣い感謝の限りでございます。が、私めの仕事はお嬢様のサポートをさせていただくことであり、それが私にとっては世界で一番よく効く薬でもありますのでご安心くださいませ」
心から心配してくれている蓮菜お嬢様。必死で込み上げてくる嬉しさを押し留めるメイド。
蓮菜「ええ…分かっているわ。本当に貴女みたいな人が私のメイドで良かったわ。でも、毎日とても頼りにしているけれど、私にとって貴女は自慢の出来る従者でもあって、世界で一番信頼の出来る友人…だとも私は思っているのよ。だから自分のことも大切にしてね!」
ありがたきお言葉ァァァキタァァァァァ!!!!
今フラグ建ちましたよね?? 高速建造待ったなしですよね?! ぜぇぇたいバベルの塔並のが建った気がするのですが、そう思うのは…私だけでしょうか!?!?
――おっと、冷静にならなければ……コホン。
柊木「――かしこまりました」
片膝立ちをして、至極真面目な面持ちで、忠誠心を胸にシンプルに返す。
宮園蓮菜は、ミサの心中を汲み取ると――ニッコリと微笑んだ。
そう…柊木ミサは、淑女の皮をかぶった変態である。
◇
蓮菜「美味しかったわ。また良ければ飲みたいわね」
柊木「はい……お嬢様」
ああ~お嬢様が、その神聖なるお口をつけたティーカップですわ!!
このティーカップは洗わずにお嬢様コレクションに追加させていただきますわ。
――お嬢様と同じ時代に生まれて良かった…ッ
最後まで読んでいただけて嬉しいです。
ありがとうございました!