幕間:白キ夢
ワタシには、夢があります。
そう申し上げれば貴方は笑うでしょうか。
ワタシはただ彼らが「幸福」でありさえすれば、
他には何も望みません。
たとえ世界のすべてが彼らを否定しても、
彼らが「幸福」を味わいさえすれば、
それで良いのです。
そう申し上げれば貴方は笑うでしょうか。
貴方がお作りになるのは、
いつも悲しくて切ない箱庭ばかりです。
けれどワタシは自身に課せられた使命を、
もちろん良く理解し、わきまえているつもりです。
だから何も致しません。
貴方が作られた「秩序」が乱れていくさまを、
何があっても静観するのみ。
そう申し上げれば貴方は笑うでしょうか。
ああ、主よ。どうか主よ。
次こそは、次の庭こそは、彼らの願いが聞き入れられますように。
何があっても二人の赤い糸がほつれることなく、
何があっても、もう誰も、傷つけ合うことのないように。
そう申し上げれば貴方は笑うでしょうか。
また、新たな庭が生まれましたね。
ワタシに行けと仰るのなら、
もちろんワタシは進んで参りましょう。
ですから主よ、どうか主よ。
教えて下さい、次こそは。
人の持つ心の優しさを。
人が持つ思いやりの心性を。
それこそは貴方の願いであるはずだから。
「人間」というものを生み出した貴方の、
それがたった一つの願いであるはずだから。
こう申し上げれば貴方は笑うでしょうか。
ワタシには夢があります。
その夢はたった一つ。
今度こそは、彼らが幸せでありますように。
次の庭こそは、彼らが涙を落としませんように。
ワタシは籠鳥。いつだって貴方の籠鳥。
貴方の望みの世界を、どうぞこのワタシにもお見せください――。
〈白キ夢 終〉
白ノ「……我が主よ、どうか答えてください。次の庭こそは、もう誰も傷つかぬ、と」
??『…………』
白ノ「主よ!」
??『……ん、下がって良い』
白ノ「……御意」
黒ノ「………………」