愉快なお肉屋さん
「本日は町で話題のお肉屋さんにおじゃましていまーす!」
明るい声でレポーターの女性がマイク片手にカメラに向かって手を振った。
「こんにちわ~」
「いらっしゃい。どうぞ見ていってください」
店内から、いかにも肉屋の店主といった感じのやや恰幅のよい中年の男が現れた。
「宜しくお願いします!では、早速少し変わっているという商品を見て回りましょう」
「どうぞ、こちらです」
店主に案内され、少し奥まった場所には大型のガラスケースの中で金属のバットに乗せられた幾種類の生肉があり、その脇の業務用冷蔵庫にはきれいにプラトレーにパックされたお肉が並べられていた。
「美味しそうですね~。でも一見普通のお肉に見えますが……。あ、でも商品名がどこか……これは『豚のバラバラ肉』??」
「はい、豚バラです」
「こっちは、『豚老師』?」
「豚ロース(肩肉)です」
「さらには『豚の微塵切り』?━━あ~なるほど、豚の挽き肉ですか」
「さすがに『豚の轢死体』というのは止めました」
「それはちょっとグロいですねえ。で、こちらが『牛と豚の逢瀬』。つまりは合挽き肉ですか」
「こちらは如何ですか?『牛兄貴の半か丁か!』。まあ、サイコロステーキなんですが」
「(駄洒落かよ!)はは……ユニークなネーミングですね。━━あれ?」
レポーターがひとつの豚肉のパックを手に取った。
「これは…………えーと、『豚肉の辻斬り』!?━━でも見た目は唯の豚肉のブロックのようですが……」
「いえいえ違います」
不意に店主がすうっとレポーターの脇を通った。すると━━。
パックの中の肉が、音も立てずに切れ目が入り見る間に豚こま切れになっていった。
「ひゃあっ!!」
「おっと危ない」
思わずレポーターが放り投げたパックを店主は片手でキャッチした。
「ここここここれはいいいいったいどうやって!?」
慌てふためくレポーターに、店主はニヤリと笑って言った。
「企業秘密です」
話と関係ないですが、年内に短編100本目が目標です。
今年もヘンな話を書いていきます。