戦闘凶、異世界人と出会う
カミナSideの話です。前回の話と内容が被ります。
次回もカミナSideの話になります。
今回も次回も読まなくても話の流れに問題は有りません。
「―――はい、オーク6匹の各指定の部位を確認しましたので、依頼は完遂です。お疲れ様でした。
他にゴブリン4匹、レッサーハウンド6匹の素材、オーク3匹の肉と素材も買い取りという事でよろしいでしょうか?」
「・・・うん、買い取りでおねがい」
いつも担当してくれるギルド職員が部位の状態の確認と計算を始めたので、自分も少し計算してみることにする。
(えっと、依頼があったオークの討伐は6匹で1500リュオンで、他に素材は善し悪しが有って値段が変わるけど、問題は無いと思うから基本の金額で考えればいいし、ゴブリンが100・ハウンドが120・オーク肉が540で素材が210だから―――)
「―――合計で8150リュオンです。いくら受け取りますか?」
今回は中々の大金だ。これだけで一月近くは持つ。だが受け取るのは今日明日の分だけでいいから、後はギルドに預けておく。
「・・・1000リュオンだけでいい」
「分かりました、こちらが報酬です。後の金額はこちらで責任を持って預からせてもらいますね」
「・・・じゃあ、また明日来る」
そう言って担当員の男と別れ、もう殆ど店が閉まっていたため、屋台で軽く食事を取った。
その後、自分の住処に帰ろうと路地に入ると―――
「―――えた奴には、最初にやる権利をくれてやる!」
―――という声が聞こえてきた。
「・・・いつもいつも、ご苦労なこった」
と、悪態をついた。人攫い・強姦・窃盗・殺人、ここではよくあることだ。だが、自分を襲う奴はここには居ないので関係ない。そう他人事のように考えて――しかし嫌悪感を持って――自分の寝所に帰てっいった。
―――帰ってきたカミナが一番最初に気づいたのは、自分の寝床に居る人の気配だった。
(・・・あれ、誰かいる? 男と女の2人?)
「しょんべん臭いのはやだけど、早く終わらせなきゃリーダーに怒られちまうからな」
そう言いながら男は怯える女を、カミナがいつも使っている布団に押し倒した。
「へ、へ、へ、おあつらえ向きに布団まで敷いて有るじゃねえか!じゃあ、早速!」
「ぃ、いゃ!・・・やぁ・・やめ・・て!」
「へへ、逃げてくれて助かったぜ!おかげで初物を奪えるんだからなぁ〜!」
「だれか、たすけ・・・」
女は助けを求めてるようだし、同意の上では無い事が分かるが―――
(・・・はぁ、強姦かよめんどくさいな。そいうことは余所でやってほしいんだけど。しかも別にその為に布団敷いている訳じゃ無いからな?)
面倒には思いながらも、止めなきゃさらに面倒になるので止めることにする。
「はぁ、人の寝床で盛ってないで・・・余所でヤッて欲しい」
―――ドスッ―――
―――そう言って、男の股座を蹴り上げた。
「―――」
―――バタッ―――
「ぇ?・・・ぁ・・・ぇ?」
女は状況がつかめていないのか、意味有る言葉を出さなかった。
―――と、そこで布団が黄色く湿っていることに気づいた。
・・・え、まさか、漏らしたの?
「はぁ・・・しかも、漏らしたの?洗濯・・・めんどくさい」
「ぇ?・・・ええと・・?」
目の前で自分の布団に座っている少女がこちらを見ている。
「えっと、ありがとう・・・」
「・・・どういたしまして?」
「「・・・」」
(―――何故か助けたのに睨まれているんだけど)
こういうのには関わらない方がいい、面倒は出来るだけ避けたい。
「・・・そこの男持って、どっか行ってくれない?」
「え!? いや、そこの人に襲われそうだったんだけど!?」
「・・・? えっと、それが何か?」
「・・・!?」
(何でこの子驚いてるの?面倒なことになりそうだったからこいつを排除しただけで、助けようとしたわけじゃ無いよ?)
「・・・ここじゃ、襲う襲われるはいつものことだよ? 力あるものが奪い、力なきものは奪われる。
・・・ただ、それだけのこと」
「なら、あなたも奪ったりしてるの?」
何でこの状況でそんなことを聞いてくる・・・
「・・・いや、奪うことなんかしないけど? ちゃんと働いて稼いでるし」
「え? じゃあなんで、こんな所に住んでるの?」
「・・・宿屋を追い出されたから」
「・・・え? 何で?」
「・・・『周りも迷惑してるから、もう来ないでくれ』って言われて追い出された」
「・・・何をしたらそうなるの?」
「・・・さあ? 普通に暮らしてただけだよ?」
自分は普通に生活してるだけだ、それなのに何故かいつもあっちから一方的に攻められる。
(まぁ、床を腐らせちゃったのはさすがに拙いと思ったけど)
「とりあえず、掃除をコマめにしたらいいんじゃないのかな?」
「・・・面倒だよ」
「それなら宿の人に頼めばいいのに」
「・・・」
(いや、人が部屋に入ってくるとかやだでしょ)
「・・・ていうかさ、周りにそういうこと手伝ったり言ってくれる人居ないわけ?それ以前に、掃除くらい自分でしようよ!」
「・・・居たら、こんなとこに住んでない―――それと、掃除面倒」
面倒なことは後回し、どころかしない!(キリッ
「ねぇ、その布団綺麗にしてあげよっか?」
っと、ふざけたことを考えていたら(ふざけてる自覚はある)、女が布団を指で指しながら言ってきた。
てか、汚したの君じゃなかったっけ?
「え、今? ・・・というか、汚したの君だよね?」
「まあ、そうなんだけどさ・・・ちょっと貸して、清浄」
そう女が唱えると、布団が見る見る綺麗になっていく。
(魔法使えるのか、基軸は水属性いや、木属性魔法か?)
「・・・驚いた、それ、魔法? さっきの奴も、魔法で撃退すれば良かったのに」
「あー、いや、それは無理なんだけどねえ・・・とりあえずさぁ、宿屋に移動しない?話はそれからで!」
隠したいことなのか、この場では話したくないらしい。というか―――
「・・・? 何で宿屋行くの?」
「こんなとこで生活しているのはよくないよ?やむおえない事情があるなら別だけど。私、家事得意だからしばらく面倒見てあげるよ! それならここで生活する必要も無くなるでしょ?」
「・・・何でそうなったのかは分からないけど、そうだね。ベットで寝た方が気持ち良いし別にいいけど、宿屋出禁くらってるよ、オレ?」
「あー、まあ、探せば泊めてくれる宿も在るでしょ・・・あー、でね、その?」
「・・・ん? なに?」
「今手元にお金が無くてね? えっと、少し貸して欲しいんだけど・・・」
「・・・もしかして、掏られたの?」
「え!? 何でわかるの!?」
「・・・何で分からないと思うの?それの方がもっと不思議だよ?そもそも―――」
『こんなところに逃げてきてる時点で、攫われたのではなく、自分からついて行ったんだろ?』
―――っと、続けようとしたら乱入者がやって来た
「おい!居たぞ!」
「おいおい!1人やられてんじゃねえか!」
「おい、ジャンがやられてるぞ!」
「ああ!ジャンがやられた!」
「落ち着け!ジン!」
「くそう!ジャンの敵!」
また増えたよ、面倒なことになった・・・
「・・・まさか、此処に逃げ込むとはな」
「おいおい、あいつ、カミナじゃねぇか?」
「は? あのカミナ?」
「・・・始めて見た」
「あれが、ベルセルクか・・・」
その二つ名、恥ずかしいから止めてほしい。
「・・・いやぁ///」
恥ずかしい二つ名に照れていたら女が声を上げて言った。
「いやいやいや!こいつがベルセルクって、無いでしょ!寧ろベルフェゴールでしょ!」
えっと、ベルフェゴールってなんだ? 分からないが多分褒められている気がする。
「・・・何言ってんだこの女?」
「さぁ?」
「頭おかしいんじゃないですか?」
「あぁ、気狂いか・・・」
何か女が悶えているが、大丈夫かこいつ? 確かに、少し頭が残念な気がする・・・じゃなきゃこんな状況になってないか。
「まぁ、いい。で、カミナ、そこの女と知り合いか?」
「・・・んー、別に知り合いってわけでもないけど。それが何か?」
それを聞くと、リーダー格であろう男は、
「ちょいとそこの女に用が有ってな、渡してくれねぇか? 俺はアンタと戦いたくはねぇが、これも仕事なんでね。・・・渡してくれねぇとあっちゃ、力ずくで奪わなきゃならねぇ」
「・・・」
別に渡してもいいけど、渡したら渡したで夢見が悪そうだ。でも面倒だし渡してもいいか。
と、考えていると女が話しかけてきた。
「―――ねぇ、別に、私を庇う必要ないよ?騙されて付いて行っちゃったのは私だし、例え抵抗したとしても、この人数差じゃ、勝てないだろうし・・・」
―――ッピク―――
(・・・あ? こいつ、勝てないって言ったか?)
「・・・ねえ、勝てないって、今言った?」
「ええ、この人数差じゃどれだけ強くても―――」
「俺が、勝てない? この人数差で? バカ言うなよ・・・―――分かった、こいつは渡さねねぇ!俺がこいつらに負けると言ったんだ!その言葉を後悔させるまでは、絶対に渡さねえぞ!」
ふざけやがって! 俺が勝てないだと? よし、予定変更だ、絶対後悔させてやる!
「・・・はぁ、理由がちとあれだが、交渉決裂ってやつだな。おい野郎ども! 戦闘準備だ! こいつはそこらに転がっているような雑魚じゃねえ!絶対に油断すんじゃねえぞ! 全員、気合入れてけ!」
「えっと、あれ?」
当たり前だ、そこらの雑魚と一緒にするな。あと女、そこに居ると邪魔だ!
「―――こいよ、格の違いを教えてやる」